JA全農 ET研究所ニュース 平成29年3月号 厳しい寒さも和らぎ,春はもうすぐそこまで近づいていますね。コールドストレスから解放される春は,いよいよ本格的な 採卵シーズンの始まりです。今回は,栄養管理が採卵成績に及ぼす影響についての論文を紹介します。 乾物摂取量の過多は過剰排卵処置への反応性を低下させる 背景 不適切な栄養管理による過肥(太りすぎ)は,分娩後の卵巣機能回復を遅延させるだけでなく,卵子や受精卵の質 を低下させることが報告されています。採卵成績向上のためには,過剰排卵処置への反応性が最も重要なポイントの一つ となっていますが,過肥との関連性は明確になっていません。本研究では,乾物摂取量 (DMI) の過多が過剰排卵処置 後の採卵成績に及ぼす影響について検証しています。 回収卵数計測 卵胞数計測 卵胞数計測 黄体数計測 材料と方法 Wk-3 Wk0 Wk7 D0 D4 D7 D8 D9 D15 持続性 P4製剤 out, PG AI AI 採卵 D5 D6 FSH漸減投与 持続性 P4製剤 in DMI 高 群(1.7M: 維持量の170%) BCS 3.5 ⇒ 4.1 DMI 低 群(0.7M: 維持量の70%) BCS 3.5 ⇒ 3.0 Nelore牛 (未経産)39頭 結果 1.FSH投与後の卵胞数 47.9 20 b 23.5 0 30 33.6 20 b 10 15.7 0 DMI 低 DMI 高 回収胚数 15 a 受精卵数(個) 40 40 a 黄体数(個) 卵胞数(個) 60 3.採卵成績 2.採卵時の黄体数 10 9.9 5 移植可能胚数 a a 5.3 b 6.7 b 3.8 0 DMI 低 DMI 高 DMI 低 DMI 高 a, b: P<0.05(有意差あり) DMIが高い群では… 過剰排卵処置後の卵胞数が少なかった 採卵時の黄体数,回収卵数が少なかった DMI過多により, FSHに対する反応性が低下 DMIが高い群では血中のインスリン濃度が高かったことから,過剰な乾物摂取に伴う過肥によってインスリン抵抗性が生じ, その結果過剰排卵処置への反応性が低下した可能性が考えられます。この研究の他にも,過肥によって卵子の質が低下し OPU/IVF後の胚盤胞発生率が低下したといった報告もあり,栄養管理は効率的な受精卵生産のための重要なポイント になると考えられます。一方で,分娩後のDMI低下は負のエネルギーバランスを引き起こし,疾病や繁殖障害の原因となるの で要注意です。それぞれのステージと用途に合わせた適切な栄養管理を心がけたいものですね。 (文責:真方) 出典: Embryo production in heifers with low or high dry matter intake submitted to superovulation. Mollo et al., Theriogenology 92(2017) 30-35
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