中国 で 増 え る 収蔵家

中国で増える収蔵家
ただ、彼の職業がよく分からなか
った。名刺をもらうと「収蔵家」と
入念に説明してくれた。
亥革命発祥の地、武昌の歴史を特に
れた。彼は自らの出身地であり、辛
その歴史について詳しく紹介してく
なっているよ」とも言う。
品の価値は今や数倍、いや数十倍に
老人は本当に目が利くね。この収蔵
がる」と言った。だが同時に「あの
このような行為は文化財の保存に繋
それを見た収蔵家の彼は、その行
為を褒めちぎって「現代中国では、
だった。
いほどの収蔵品が展示されている。
建ての本格的な建物に、入り切らな
あらず。元学校の校舎を使った2階
ているだけだと思っていたら、さに
個人というから簡単な収集品を飾っ
かかわらず、開けてもらい見学した。
文物がどんどん無くなっていくので、 やっているから」と言って、夜にも
便利さや先進性の追求により貴重な
入館料は無料だという。
が「そこは個人博物館で知り合いが
館はとうに閉館している時間だった
物館へ行こう」と言う。普通の博物
さらに、武漢に帰る直前、既に暗
くなった道を進みながら「今から博
本来は使わなければその価値がない
多いともある。茶器でも能面でも、
それを私蔵して外へ出さない場合が
高める」ともあるが、日本人の場合、
と あ る。「 良 き 蒐 集 は 世 界 の 価 値 を
は力になるが、それ以上に熱心が力」
という章があり「物を集めるのに金
れ た そ の 本 の 中 に「 蒐 集 に つ い て 」
偶然、柳宗悦の「茶と美」という
本を先日読んだ。 年以上前に書か
られる。
のだ、と今さらながら強く感じさせ
経済の支えがあって成り立つものな
だけ書かれていた。
そして、帰りにふらっとある家に
入ると、置かれていた看板をわずか
さまざまな骨董品を集めていた。骨
ったのだ。
為のようにも思えるが、半面、それ
これは爆買いによる見せびらかし行
一般の人々に公開しているという。
して、自分たちの収蔵品を展示し、
残していこうというムードが出てき
った今、彼らの中にも、貴重な物を
実だろうが、経済の高度成長が終わ
るといわれる。それはある一面で事
中国人は、金に任せて世界の絵画
あさ
など美術品・芸術品を買い漁ってい
ということではなかろうか。
董品収集というよりは、当時の生活
今や彼のような収蔵家と呼ばれる
人が中国各地におり、元々は二束三
によって急速な経済発展から文化財
今回は、彼の車で湖北省と湖南省
の境にまで足を延ばした。そのとき
で、以前、漢口の租界を案内され、
訪ねた小さな町では、元官僚で余生
200元でさらっと買い取ってしま
用品、商売道具を保存するため、散
文だった物に価値が生まれ、取引さ
ているのもまた事実である。
こっとう
年前の商家の看板から農耕道具まで、 このような古物を買い集めることだ
逸しないように地元民から買い集め
が守られているとも言える。文化は
つな
を故郷で送っている老人とも出会っ
70
れるようになっている。
彼らによると、今、収蔵家が中国
全土に1万以上の個人博物館を開設
った。彼の仕事は各地を旅しながら、
げ、一カ所に保管しているという体
すが・つとむ 東京外語大中国
語科卒。金融機関で上海留学、
台湾2年、香港通算9年、北京同5
年の駐在を経験。現在は中国を
中心に東南アジアを広くカバー
し、コラムの執 筆 活 動に取り組
む。
た が、 そ の 老 人 は100 〜 200
湖北省武漢市で、ある中国人男性
と知り合った。彼はとても親切な人
須賀 努
て、100年以上たつ旧家を借り上
2017.2.13[月]
金融財政ビジネス 第 3 種郵便物認可
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コラムニスト・アジアンウオッチャー