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2016 年度学位記授与式にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
本日はお忙しい中、後援会長はじめ関係各位のご臨席を賜り、厚くお礼申し
上げます。
保護者ならびに関係者の皆様、おめでとうございます。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。
私事ですが、入学時は入試責任者として皆さんをお迎えし、このたび学長とし
て送り出すことになった栄を心より喜んでいる次第です。
さて、国際社会に目をやれば、長い歴史をかけ多くの人々の血を流して獲得
した自由と民主主義によりグローバル化してきた社会が、一転してナショナリ
ズムの台頭を懸念するような内向き志向になってきているように感じられます。
私はこのことを深く憂慮しております。
これから先、どのように考えていけばよいのか、学生にどのような生き方を
示していけばよいのか等について、自分に問いかけていました。
そんな折、二つの出来事が私に勇気とヒントを与えてくれました。
一つは沖縄のハンセン病施設への訪問をした時のことでした。そこはキリス
ト教の宣教師がハンセン病の患者を救うために、命がけで作った場所でした。
沖縄の離島のさらに端っこの場所です。宣教師が地域住民に対し、こう懇願し
たそうです。
「この人たちは危害を加えることがないから、何とかここにおいて
ほしい。安住の地を与えてほしい。皆さんには迷惑がかからないようにします。」
彼は対立や権利意識、自己主張ではなく、ただ単にハンセン病の方々の命を守
りたい、そっと見守ってほしいという願いで地域の方々にひたすらお願いをし
ました。今もなお施設ではハンセン病の完治した方々が穏やかに暮らしていま
す。一人の宣教師が人として多くのハンセン病患者を救った歴史がそこにあり
ました。
もう一つの出来事は、ミシェル・オバマ(前大統領夫人)のホワイトハウス
での生活に対するテレビインタビューでした。
そこでミシェル・オバマは「私は黒人です。私は黒人奴隷の作ったこのホワ
イトハウスで毎日、朝を迎えます。ホワイトハウスの前では、白人の子供も黒
人の子供も仲良く、楽しそうに遊んでいます。」
このような内容だったと思いますが、私は思わず胸が熱くなりました。
この二つの話は、私たちに何を教えてくれているのでしょうか。
人は、人種、宗教、性別、経済的地位等によって差別されてはならないので
す。「人はみな同じ」なのです。これは私たち人間にとって、絶対的真理です。
学問が「真理の探求」であるならば、このことこそ絶対的真理であり、カト
リック学校の教育理念の根底に流れる普遍的価値です。普遍こそ、長い歴史の
中で自由と平等の社会を築いてきたのです。
みなさんは、一人一人を大切にする明の星短大の卒業生です。誇りをもって
未来に挑戦してください。決して、人を欺くことなく、勿論自らを欺くことな
く、常に正しさを求めて行動してください。それが皆さんの受けた明の星の教
育です。
とはいっても、老人施設で苦労することもあるでしょう。子供や親の言動に
苦労することもあるでしょう。職場での人間関係に苦しむこともあると思いま
す。そのときは、相手を家族だったらどうだろうと考えてみてはいかがですか。
必ず、皆さんの心は相手に対して、それまで以上のやさしさや思いやりに包ま
れると思います。
それでも、つらい時、苦しい時は母校明の星を訪ねてください。いつでも皆
さんをお待ちしています。遠いところに勤務する方は、明けの明星にお祈りく
ださい。明の星は常に皆様をお守りします。
青森明の星短期大学を卒業したことを誇りに持ち、未来に向かって進んでく
ださい。
最後に、皆さんと私がともに考えた学園祭のキャッチフレーズをはなむけの
言葉として送ります。
「キャッチ ユア
ドリーム」
必ず、皆さんの未来は開けることを信じ、式辞とします。
2017年3月9日
青森明の星短期大学
学長
石田一成