今後の地域の課題を考える(PDF:164KB)

「独居高齢者の看取りから事例から、今後の地域の課題を考える」
医療法人社団めぐみ会 田村クリニック 在宅事業部
めぐみ訪問看護ステーション ○富澤佐由理(看護師)
1.はじめに
多摩市には、65 歳以上の高齢者が約 4 万人暮らしている。平成 28 年度の高齢化率は
27.7%と初めて国の 27.5%を超えた。今後平成 37 年には 32.6%まで上昇することが見
込まれている。また平成 28 年度の前期高齢者数は 22,362 人、後期高齢者数は 18,026
人であったが、平成 37 年度には数字が逆転し前期高齢者数は 16,744 人、後期高齢者
数は 30,237 人となる。世帯別には、
平成 27 年に世帯主が 65 歳以上の単独世帯が 6,008
世帯、夫婦のみの世帯が 6,209 世帯であり、両世帯を併せると世帯数全体の 23.1%と
なる。今後更なる増加に伴い、孤独死、詐欺等高齢者にまつわる問題が増加して行く
事が考えられる。今回、訪問看護ステーションからの事例を通して独居高齢者の看取
りを経験する事により、地域における現状及び課題について考える。
2.事例 75 歳 男性
病名:上行結腸癌・多発肝転移
家族構成:2 か月前に妻他界。長男は小学校 1 年の時に離縁した妻に引き取られ音信不
通、妻の連子である義娘とは疎遠。
介護度:申請中(新規申請)→介護5(他界後決定)
経過:平成 28 年夏頃手術目的にて A 病院入院。通院による化学療法の為秋頃退院。退
院後は独居生活を行う。退院 1 か月後、全身の倦怠感・脱力感あり食事も殆ど摂取で
きなくなり救急車にて A 病院再入院。前回入院時に妻を亡くした事による闘病意欲の
低下著しく自力では立位困難な状態。本人が自宅療養を強く希望され自宅退院となる。
退院直後より「早く死にたい」
「迎えにきてほしい」
「体を少しずらしてほしい」と頻
繁にケアマネやサービス事業所に連絡がある。退院 2 日後の朝、他界されている事を訪問
介護にて発見。訪問医にて看取り実施する。
課題:①紹介から他界されるまで約1週間であった為、他界された後の行く先、金銭
管理調整が間に合わなかった。医療面では紹介状・看護添書など引継ツールがあるが、
生活情報等を引き継ぐツールがない。②家族はいるが関わりを拒否している為、終末
期の精神的フォローを行う人がいない。
3.考察
本事例は、介入当初より家族の関係拒否があり関係機関にて対応を行っていた。金銭
管理について権利擁護制度利用検討するも導入までに時間がかかる等対応困難、認知
力問題なしの為成年後見制度利用不可。他界後に義娘に連絡し死亡確認や葬儀の件に
ついて確認するも関わりを拒否される。その為、唯一の家族である息子様に何度も連
絡を行うも繋がらず。翌日の夜、連絡がつき担当ケアマネジャー説得にて葬儀対応及
び金銭管理を依頼する事ができた。今後、金銭状況や家族との関わり等生活面での情
報が充実する事により、入院から在宅での看取りまで連続して問題点の解決が図れる
のではないかと考える。
4.まとめ
核家族化等から独居高齢世帯・高齢夫婦世帯が今後増加していくと考えられている。
そして病院の在院日数も減少し、早期退院を迫られるケースが増加していく。また、
終活やリビングウィルを実行している人はごく僅かしかいない。今後、スムーズな在
宅復帰や在宅での看取りを行う為には医療面同様、生活面での情報の引継が重要とな
ってくる。今後、めぐみ訪問看護ステーションが所属する、田村クリニック在宅ケア
相談室としては、近隣医療機関と協力し生活面での「クリニカルパス」を作成してい
きたい。