カキっこ! - ちゃんと

7
2017 年 3 月 3 日(金)
゛
ちゃんと
科 技
カキっこ!
青木 広宙(あおき ひろおき)
開け、サイエンスのトビラ
No.14 みんな大好き! カレー! のおはなし
こ!
゛
科
技
っ
カキ
千歳科学技術大学 理工学部 電子光工学科 准教授
1973 年、新潟県に生まれる。全国の大学を転々として 2013 年より現
職。千歳市在住。専門は画像工学、医用工学、福祉工学、スポーツ
工学など。博士(工学)
。趣味は、書道、水墨画、カレー作り(味は
プロ級)
。
みなさん、
こんにちは。千歳科学技術大学の青木です。今回は、よい話題が
すが、
なんとか閉店する直前にお店を訪れることができました。たどり着く
ときどきですが、
この連載を読んでくださっている方々とお話しをする機
間。
あと数人で私の番、というところで、お店から女将さんが出てきました。
思いつかなかったので、
カレーのお話しでもしたいと思います。
会があります。
そして、たいていカレーのことを聞かれます。自己紹介のと
ころに冗談半分で
「趣味はカレー作り(味はプロ級)」なんて書いてしまって
いるからなのですが…。
と、
店の外には長蛇の列ができていました。12 月の寒空の下、待つこと 1 時
「ライスがなくなりそうなので、
今日はここまでで。すみません。
」
残念そうにお店を離れていく他のお客さんをかき分けて、
わたしは女将さ
んに懇願しました。
わたしがカレー作りをはじめたのは、
学生時代に毎日のように通い詰めて
「ルーだけでいいから食べさせてください! こっちは広島から来たんで
るカレーを食べさせてくれるお店でした。
しかし、インド式といっても、ナ
女将さんは、
びっくりしたような顔をしましたが、お店に入れてくれまし
いたカレー屋さんがきっかけです。
知る人ぞ知る名店で、
「インド式」と称す
ンといっしょに食べるような、
いわゆるインドカレーとは全然ちがうタイプ
のカレーでした。
どのようなカレーかというと、
スープ状のカレーに炒めた野菜と肉がたく
さん入っていて、
北海道のスープカレーにちょっと近いような、そうでもな
いような? 一食一食、
マスターがフライパンで野菜を炒めている光景に、
カレー屋さんなのに中華料理屋さんにいるような錯覚を覚えてしまう。
そん
な店内は、
学生だけでなく社会人のお客さんも多く、毎日、お店の前には行
列ができていました。
大学を卒業してからはお店に行く機会が激減しましたが、
インターネット
でレトルトが購入できるようになったこともあり、
お店のホームページをと
きどきチェックするようになりました。
トップページには、マスターや女将
さんの近況が綴られているのですが、
ある頃を境に閉店をにおわせるネガ
ティブな書き込みが目につくようになりました。
このとき、
わたしは気づいてしまったのです。
(閉店してしまったら、
このお店のカレーを一生食べられなくなる…)
ちょっと考えれば当たり前のことなのですが、
もし本当に閉店してしまっ
たら、
自分は正気でいられないかもしれない。そんな焦燥感に駆られました。
この瞬間、お店のカレーを自分の手で再現できるようになろうと、修行の
日々が始まったのでした。
それから数年の月日が流れ、
そのお店は、本当に閉店することになりまし
た。
その頃、わたしはお店がある東京から遠く離れた広島に住んでいたので
す!」
た。
ライスもギリギリ足りたようで、わたしは、この日の最後の一杯を食べ
ることができたのでした。
食べ終わった後、
マスターと話しをしました。お店には 100 回以上通っ
ていましたが、
実はこのときまでマスターと言葉を交わしたことはありませ
んでした。
マスターのカレーを再現しようと悪戦苦闘していることを伝える
と、
作り方について少しだけヒントを与えてくれました。そして、マスター
愛用のフライパンをひとつプレゼントしてくれたのでした。
その
1 週間後、お店は 38 年間の
歴史に幕を閉じたのでした。これ
が、
4 年ほど前のお話です。
長くなりましたので、わたしが
お店の味を再現できたか否かにつ
いてはまたの機会に…。
ちなみに、
そのお店は、昨年の春
に場所を変えて復活しています。
といっても、マスターや女将さん
はお店に立ってはいないのですが
…。レトルトの通販をされていま
すので、ご興味がある方は取り寄
せてみてください。お店の名前は
「夢民
(ムーミン)」です。
(下)
(上)
と青木カレー
夢民カレー