560V 入力、オプトカプラ不要の絶縁型フライバック・コンバータ デザインノート559 George Qian はじめに 従来の絶縁型高電圧フライバック・コンバータでは、高 いレギュレーション精度を実現するのに、オプトカプラを 使用して 2 次側のリファレンス回路から 1 次側にレギュ レーション情報を伝送します。 問題は、オプトカプラに よって絶縁設計が大幅に複雑になることです。伝播遅延、 経時変化、および利得の変動が存在し、それら全てによっ て電源のループ補償が複雑になり、信頼性が低下する 可能性があります。更に、起動時には、最初にデバイス を起動するのにブリーダ抵抗または高電圧の起動回路が 必要です。起動回路の部品に高電圧の MOSFET を追 加しない限り、ブリーダ抵抗は望ましくない電力損失の 発生源になります。 圧は、2 本の外付け抵抗と第 3 の温度補償抵抗(オプ ション)により設定されます。境界モード動作は、優れた 負荷レギュレーション性能を得るのに役立ちます。 出力 電圧を検出するのは 2 次側電流がほぼゼロになるときな ので、外付けの負荷補償抵抗およびコンデンサは不要で す。その結果、LT8315 ソリューションは部品点数が少 なくて済み、絶縁型フライバック・コンバータの設計を大 幅に簡略化することができます。 入力電圧範囲が 20V ~ 450V と広いフライバック・コ ンバータの完全な回路図を図 1 に示します。その出力 電圧は 12V で、5mA ~ 440mA 超の負荷電流範囲で 高いレギュレーション精度を維持します。出力電流の供 給能力は入力電圧に応じて高まり、入力電圧が 250V ® を超えると出力電流は 440mA に達する可能性がありま LT 8315 は、630V/300mA のスイッチを内蔵した高 す。このフライバック・コンバータのピーク効率は 85% 電圧のフライバック・コンバータです。LT8315 では、 です。 図 2 に示すように、オプトカプラがなくても、負 オプトカプラ、複雑な 2 次側のリファレンス回路、追加 の起動部品、および外付けの高電圧 MOSFET は必要 荷レギュレーションと入力レギュレーションは高精度を維 持します。 ありません。 内部デプレション MOSFET による起動 性能と簡略性 LT8315 は 630V の MOSFET を内蔵しており、熱特 性が改善された 20 ピン TSSOP パッケージ内部の回 路を制御します。このパッケージは、高電圧のピン間隔 に対応するため 4 つのピンが欠損しています。 絶縁側 の出力電圧を 3 次巻線からサンプリングすることにより、 オプトカプラ不要でレギュレーションが可能です。出力電 LT8315 は、しきい値が負電圧でノーマリオン型のデプ レション・モード MOSFET を内蔵しています。起動時に、 LT8315 がスイッチングを開始する電力を確保できるよ うに、この MOSFET は INTVCC のコンデンサを 12V L、LT、LTC、LTM、Linear Technology、Linear の ロ ゴ お よ び Burst Mode はリニアテクノロジー社の登録商標です。その他全ての商 標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。 VIN 20V TO 450V 5:1:2 0.44µF 600Ω 20k 47pF 10µF BIAS EN/UVLO FB 61.9k TC LT8315 SMODE DRAIN 10µF VC 470pF 160µH DCM INTVCC 100k 22nF SOURCE IREG/SS GND VOUT+ 12V 640µH 93.1k 5.11k 4mH 200µF VOUT– 5mA to 220mA (VIN = 50V) 5mA to 320mA (VIN = 100V) 5mA to 380mA (VIN = 150V) 5mA to 440mA (VIN > 250V) 330mΩ 121k dn559 F01 図 1.入力電圧範囲が 20V ~ 450V と広い完全な 12V 絶縁型フライバック・コンバータ 2/17/559 12.4 非絶縁型降圧コンバータ FRONT PAGE APPLICATION LT8315 の高電圧入力能力を非絶縁型ソリューションに 応用するのは簡単です。 非絶縁型コンバータは絶縁型 コンバータのトランスが不要ですが、その代わりに、比 較的安価な汎用のインダクタを磁化部品として採用しま す。 OUTPUT VOLTAGE (V) 12.3 12.2 12.1 12.0 11.9 VIN = 50V VIN = 100V VIN = 150V VIN = 250V VIN = 350V VIN = 450V 11.8 11.7 11.6 0 100 200 300 400 LOAD CURRENT (mA) 非絶縁型降圧アプリケーションでは、LT8315 のグラン ド・ピンを降圧構成のスイッチ・ノード(電圧が変動する ノード)に接続します。LT8315 の独自の検出方式では、 スイッチ・ノードをグランドに接続した場合にのみ出力電 圧を検出するので、図 3 に示すように、結局は単純な 降圧回路図になります。FB ピンでのダイオード D2 と 2 本の抵抗により、帰還経路が形成されます。 500 dn559 F02 図 2.図 1 のフライバック・コンバータの 負荷レギュレーションと入力レギュレーション 非絶縁型降圧コンバータの回路図を図 3 に示します。 このコンバータは、20V ~ 560V のきわめて広範囲の 入力電圧を 12V の安定化出力に変換します。この回路 は 85% もの高い効率を達成することができます。 まで充電します。このため、外付けブリーダ抵抗やその 他の起動部品は必要ありません。INTVCC がいったん 充電されると、デプレション・モード MOSFET はオフし て電力損失を低減します。 まとめ 低静止電流 LT8315 は 18V ~ 560V の広い入力電圧範囲で動作 し、最大 15W の絶縁出力電力を供給します。このデ バイスはオプトカプラが不要であり、低リップルの Burst ® ソフトスタート、 プログラム可能な電流制限、 Mode 動作、 低電圧ロックアウト、温度補償、低静止電流などの豊富 な機能を備えています。 LT8315 は、通常は出力に少量のプリロードが必要であ り、これは静止電流として入力に戻ります。負荷が非常 に軽くなると、LT8315 はスイッチング周波数を低減し ますが、最小電流制限は維持します。これは、出力電 圧を適切にサンプリングする間、電流を低減するためで す。標準の最小スイッチング周波数は約 3.5kHz です。 スタンバイ・モードがイネーブルされると、最小周波数 は更に減少して 220Hz になり、超低静止電流の場合は 16 分の 1 に減少します。 高レベルの集積化により、さまざまなアプリケーションで、 部品点数が少なく高効率のソリューションを設計するの が簡単になります。該当するアプリケーションは、バッテ リ駆動システムから自動車、産業用機器、医療機器、通 スタンバイ・モードでは、LT8315 のプリロードは、通常、 信機器の電源、更には絶縁型補助電源 / ハウスキーピ 全出力電力の 0.1% 未満であり、静止電流は 100µA ング電源まで、多種多様です。 未満です。これは、常時稼働システムで高い効率を要 求されるアプリケーションにとって重要です。 VIN 20V TO 560V D1: CENTRAL CMDSH2-3 D2, D3: CENTRAL CMMR1U-06 D4: MICRO COMMERCIAL SMBJ5350B-TP 4.99k D1 10pF BIAS DCM EN/UVLO 10µF 11k FB D2 INTVCC 10µF 47k TC LT8315 SMODE DRAIN VC SOURCE IREG/SS 100nF GND 100nF 1.24k 10nF 330mΩ 1mH D3 44µF D4 VOUT 12V 3mA TO 120mA dn559 F03 図 3.非絶縁型降圧コンバータの回路図:20V ~ 560V 入力、12V/120mA 出力 データシートのダウンロード www.linear-tech.co.jp/LT8315 リニアテクノロジー株式会社 102-0094 東京都千代田区紀尾井町 3-6 紀尾井町パークビル 8F TEL(03)5226-7291 FAX(03)5226-0268 http://www.linear-tech.co.jp DN559 LT/AP 0217 • PRINTED IN JAPAN © LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2017
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