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Ⅰ
序
論
第1章
後期計画(改訂版)の策定にあたって
(1)後期計画(改訂版)の策定の 趣旨
平成 17 年 10 月に、旧 1 市 2 町が合併し誕生した新生「大田市」は、合併協議にお
いて定められた、新市建設計画に基づき、平成 19 年度から平成 28 年度を計画期間と
する「大田市総合計画」を策定し、
「自然・歴史・ひとが光り輝く
だれもが住みよい
県央の中核都市」の実現に向けてまちづくりを進めてきた。
また、平成 23 年度には、
「大田市総合計画後期計画(平成 24~28 年度)」を策定し、
人口定住に結びつく産業振興や、安全・安心なまちづくりを、後期計画の重点施策と
して取り組んできた。
このような中、少子高齢化等を背景とした、人口減少の急速な進展、市民の価値観
やニーズの多様化、地方分権の推進等 、当市を取り巻く社会構造の 変化を踏まえ、今
後の進むべき方向 とその実現に向けた行政施策を明らかにするため、現行の「後期計
画」を 2 カ年延長して、新たな政策課題や 施策事業などを追加し、「大田市総合計画
後期計画」の改訂版として策定するものである。
(2)後期計画(改訂 版)の性格と構成
「 総合 計 画 」に お い て は 、大 田 市 の目 指 す べ き 将来 像 を
『自然・歴史・ひとが光り
輝く だれもが住みよい 県央の中核都市』 として掲げ、これを実現していくための基
本的な施策を定めており、新しい時代にふさわしいまちづくりを、総合的かつ計画的
に推進するための指針として明らかにし、「基本構想」、「基本計画 」及び「実施計画」
により構成している。
①基本構想
当市の将来像とその実現を図るために必要な基本方策 等を示し、これを実現する
た めの 主 要 施 策の 大 綱 を 掲げ 、 市 勢 振興 の 基 本 的方 向 を 明 らか に し た もの で あ り、
後期計画改訂版においても同様としている。
②基本計画(後期計画 改訂版)
「 基 本構 想 」 を 具 現化 す る ため に 必 要 な 各施 策 の 考え 方 を 体 系 的に 示 す もの で、
後期計画改訂版 (H29~H30)」2 カ年間の 各分野における現状と 課題、施策の展
開方法について定めており、後期「実施計画 」の基本方針となるものである。
③実施計画(後期計画 改訂版)
基本計画で示された施策を、現在の社会情勢 などを踏まえた上で、行財政の変化
に即応しながら、当市が実施する具体的な事業計画を定めたもので、事務事業につ
-3-
いて毎 年ロー リン グ 方 式によ り見直 しを 行い 、予算 編成 の 指 針 と す る も の で あ る 。
第2章
大田市の概況
(1) 自然・地理的概況
当市は、島根県のほぼ中央部に位置し、東は出雲市、西は江津市、南は飯南町・美
郷町・川本町に接し、北部は日本海に面している。
総面積は 435.71k㎡(県内 6 番目)で、北東から南西に伸びる海岸線は 46kmに
および、平坦部から山間部へと奥深い行政区域を有している。市の南東部には標高
1,126m の 大 山 隠岐 国 立 公園 に 属 す る 国 立 公 園 三瓶 山 ( 以 下「 三 瓶 山 」と い う 。)、南
西には標高 808mの大江高山があり、これらを主峰とする連山に囲まれた山間傾斜地
が多く複雑な地形を呈している。
河川は、三瓶川及び静間川のいずれも流路延長が長く 、山間地を縫うように流れて
おり、この流域に耕地が開け、市街地が形成されている。
気候は、日本海型気候に属し、比較的温暖ではあるが、山間地域と平坦地域で はか
なりの温度差がある。
また、地質的には白山火山帯に属することから、当市は 数多くの温泉に恵まれてい
る。
(2)歴史的概況
当市は、出 雲地域と石見地域の境界に位置しており、双方の文化の中継点として 石
見銀山を中心に発展し、戦国 時代から江戸時代はじめにかけては、日本経済のみなら
ず世界経済にも大きな影響をもたらした地域として栄えてきた。
(3)社会的概況
当市を地勢的に分類すると海岸部、市街地部、山間部に大別することができるが、
その大半は中山間地域である。市内にある大小 500 余りの集落は、市の中心市街地を
除き、大部分が中山間地域に散在しており、高齢化の進行が著しく集落機能の低下が
懸念される集落も多く見られる。
道路網については、国道 9 号が海岸沿いを東西にJR山陰本線と並進し、国道 375
号は南北に走っており、これら国道を結ぶ肋骨路線として、主要地方道・一般県道及
び広域農道が通じ、市道と結ばれている。
山陰道の整備については、平成 16 年度に事業着手 された「仁摩・ 温泉津道路」が
平成 27 年 3 月 14 日に開通したところである 。現在、未開通区間である 出雲ICから
浅利IC(仮称) まで 事業着手されており、全線開通に向け着実に事業が進められて
-4-
いる。
地域医療については、 開業医の高齢化、後継者不足により診療所数は、年々減少傾
向にある。特に中山間地域では、顕著な傾向にあり、これらの地域での医療提供体制
の確保は、喫緊の課題である。
大田市立病院は 、平成 32 年度グランドオープンに向け、新病院建設を進めている。
大田二次医療圏の中核病院として、 更に、政策医療を担う自治体病院として 、その役
割が十分に発揮できるように医師確保対策 等を進めている。
(4)人口の推移と動向
当市の人口は、昭和 35 年の国勢調査では 66,021 人であったが、その後、国の高度
経済成長に併せ、都市部への労働力供給をその原因として、若者を中心とした人口の
流出減少が続き、平成 27 年国勢調査において 35,166 人となるに至った。
特に、昭和 35 年から昭和 45 年にかけての人口減少は著しく、この 10 年間で 14,546
人(減少率 22.0%)も減少している。
しかし、昭和 50 年を境に若年層の市内定住とUターンの増加及び平均寿命の伸長
により、微減ないし横ばい傾向に転じたものの、昭和 60 年以降現在に至るまでは再
び減少となっている。
特に、ここ最近の人口の推移は、平成 17 年と平成 27 年を比較すると、この 10 年
間で 5,537 人(減少率 13.6%)の減少となっている。
また、人口全体に占める 65 歳以上の高齢者の割合は、平成 27 年国勢調査において
全国平均が 26.6%、島根県平均 32.5%であるのに対し、当市は 38.2%(年齢不詳を
除く)と高く、今後においても人口の減少・高齢化が続くものと予想される。
これまでにも、定住対策は市行政において全ての施策に反映させる最重点課題と位
置付け、総合的に取り組んできたところであるが、人口の減少は地域の自立と 活力を
阻害する最大の要因であることから、今後においても若者の働く場の確保対策や人口
減少の著しい地域の振興等、平成 27 年度策定した、「大田市まち・ひと・しごと創生
総合戦略」を着実に実施していく。
-5-
○ 人口及び世帯数の推移
昭和35年
区 分
実 数
昭和40年
実 数
昭和45年
増減率
実 数
昭和50年
増減率
実 数
昭和55年
増減率
実 数
昭和60年
増減率
実 数
増減率
総 数
66,021
人 58,564 人 △ 11.3 % 51,475 人 △ 12.1 % 49,433 人 △ 4.0 % 49,570 人
0歳~14歳
21,709
人 16,077 人 △ 25.9 % 12,077 人 △ 24.9 % 10,247 人 △ 15.2 % 9,694 人 △ 5.4 % 9,382 人 △ 3.2 %
15歳~64歳
37,898
人 35,672 人 △ 5.9 % 32,160 人 △ 9.8 % 31,177 人 △ 3.1 % 31,008 人 △ 0.5 % 30,310 人 △ 2.3 %
うち15歳~
29歳(a)
11,891
人 10,073 人 △ 15.3 % 8,259 人 △ 18.0 % 8,229 人 △ 0.4 % 7,523 人 △ 8.6 % 6,878 人 △ 8.6 %
65歳以上
(b)
6,414 人 6,815 人
年齢不詳
0 人
0 人
(a)/総数
若年者比率
18.0 % 17.2 %
(b)/総数
高齢者比率
9.7 % 11.6 %
世帯数
15,889
世帯
6.3 % 7,238 人
15,387
世帯
- %
-
総 数
実 数
47,291
増減率
人 △ 4.0 %
8,322 人 △ 11.3 %
15歳~64歳
28,120
65歳以上
(b)
年齢不詳
人 △ 7.2 %
6,101 人 △ 11.3 %
人
12.9 %
25 人
- %
10,824
(a)/総数
若年者比率
12.9 %
(b)/総数
高齢者比率
22.9 %
世帯数
15,224
世帯
世帯
-
実 数
44,953
人 △ 4.9 %
人 △ 9.0 %
5,637 人 △ 7.6 %
人
12.9 %
0 人
- %
12,220
12.5 %
-
27.2 %
△ 0.9 %
15,069
世帯
16.2 %
世帯
平成12年
7,138 人 △ 14.2 %
25,595
16.6 %
△ 3.2 % 14,923
増減率
-
実 数
42,573
増減率
人 △ 5.3 %
人 △ 8.2 %
5,413 人 △ 4.0 %
人
8.3 %
0 人
- %
13,238
-
12.7 %
-
-
31.1 %
△ 1.0 %
14,986
世帯
%
-
0 人 15.2 %
-
10.7 % 9,585 人
17.9 %
0.2 % 15,258
世帯
%
-
△ 0.6 %
実 数
40,703
増減率
人 △ 4.4 %
人 △ 4.9 %
5,058 人 △ 6.6 %
人
0.9 %
0 人
- %
13,357
-
12.4 %
14,804
世帯
- %
-
-
19.5 %
2.2 % 15,368
実 数
37,996
0.7 %
世帯
増減率
4,372 人 △ 12.7 %
20,456
人 △ 8.4 %
4,116 人 △ 18.6 %
13,162
人 △ 1.5 %
6 人
34.6 %
△ 1.2 %
平成27年
人 △ 6.7 %
10.8 %
-
32.8 %
25 人
平成22年
5,009 人 △ 14.3 %
22,337
8.1 %
14.0 %
-
平成17年
5,848 人 △ 18.1 %
23,487
10.7 % 8,868 人
0 人 -
-
14.1 %
△ 3.2 % 14,900
%
-
平成7年
0歳~14歳
うち15歳~
29歳(a)
0 人 16.0 %
-
平成2年
区 分
6.2 % 8,009 人
0.3 % 49,277 人 △ 0.6 %
14,312
世帯
- %
-
-
△ 3.3 %
実 数
35,166
増減率
人 △ 7.4 %
3,980 人 △ 9.0 %
17,653
人 △ 13.7 %
3,349 人 △ 18.6 %
人
1.4 %
188 人
- %
13,345
9.5
%
37.9 %
-
-
世帯 △ 4.9 %
資料:国勢調査
13,613
○ 人口の推移
区 分
総 数
平成17年3月31日
平成22年3月31日
平成27年3月31日
実 数 構 成 比 実 数 構 成 比 増 減 率 実 数 構 成 比 増 減 率
人
男
41,818
19,576
女
22,242
人
-
%
46.8
%
53.2
39,330
18,481
20,849
%
-
%
47.0
%
53.0
人
△ 5.95
△ 5.59
36,984
17,510
△ 6.26
19,474
%
-
%
47.3
%
52.7
△ 5.96
△ 5.25
△ 6.60
(資料:住民基本台帳)
-6-
○ 出生・死亡数の推移
区分
出生
死亡
増減
(各年12月31日現在、単位:人)
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
260
285
279
255
286
269
262
245
260
240
236
638
570
570
615
580
589
657
644
649
582
621
△ 378 △ 285 △ 291 △ 360 △ 294 △ 320 △ 395 △ 399 △ 389 △ 342 △ 385
資料:市民課
○ 人口動態の推移
区分
自然動態
社会動態
計
(各年12月31日現在、単位:人)
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
△ 378 △ 285 △ 291 △ 360 △ 294 △ 320 △ 395 △ 399 △ 389 △ 342 △ 385
△ 128 △ 197 △ 247 △ 237 △ 135 △ 194 △ 147
217 △ 249 △ 106 △ 204
△ 506 △ 482 △ 538 △ 597 △ 429 △ 514 △ 542 △ 182 △ 638 △ 448 △ 589
資料:市民課
(5)産業の推移と動向
当市の産業は、農林漁業を中心とする第 1 次産業と、製造業及び土木建設業等の第
2 次産業、並びに商業、サービス業等の第 3 次産業が相互に関連して成立している。
第 1 次産業のうち、農業については、水稲を中心に畜産、果樹、施設園芸等の複合
経営が主流であるが、市域の大半を中山間地域が占めているなど、必ずしも土地条件
に恵まれていないため、小規模・零細な経営が 続いている 。また、生産性及び所得の
不安定に加え、農業就業者の高齢化、後継者不足等により生産意欲が低下するなど、
当市の基幹的産業である農業を取り巻く環境は厳しさを増している。一方、畜産業に
おいては、中四国地方最大規模のメガファーム(酪農)もあり、県内一の産出額を誇
っている。水産業につ いては、沿岸漁業を中心に営まれており、近年、漁業資源の減
少や魚価の低迷等により漁業生産額・漁業就業者が減少しているが、全国でも珍しい
「一日漁 」により鮮度が維持され、ブランド力が高ま る中、平成 25 年 9 月に市内 4 カ
所の魚市場が統合されたことで高度な衛生管理が可能となり、 販路拡大の取り組みが
進められている。
第 2 次産業については、これまで地場産業を牽引してきた瓦産業が他の屋根材の普
及等により消費が伸びない状況にある中、高い技術力を有する電子部品等製造業や人
工皮革製造業、輸送用機械器具製造業等の誘致企業や、独自の技 術力を備えた市内企
業が当市の製造業を牽引している。景気低迷や生産拠点の海外進出等により厳しい状
況が続いていたが、近年の国内の緩やかな景気回復により、当市でも企業 の設備投資
の増加や雇用環境の改善など回復の兆しを見せている。また、当市の製造業は、窯業
や誘致企業を除き、水産資源を利用した食品加工、縫製等小規模・零細な企業が中心
で、総じて競争力が弱い現状にある。
第 3 次産業のうち商業については、郊外及び市外大型店舗への購買力流出や、 市内
大型小売店舗の閉鎖、 空店舗の増加により、中心市街地の空洞化・衰退化が生じてい
る。その一方で、創業支援制度を利用したUIターン者の新規起業は徐々に増えつつ
あり、平成 26 年度にはインキュベーションルームを活用したIT企業の新事業所開
-7-
設があった。今後も、新規起業の支援を行うことによって、新産業や雇用機会の創出、
地域経済の活性化が期待できる。また、観光等サービス業においては、世界遺産であ
る「石見銀山遺跡とその文化的景観」を有しながら、市内宿泊の誘導といった滞在を
促す提案が十分になされていなかったため、 旅館等を中心に厳しい経営環境にあった
が、近年は、観光資源の積極的な情報発信により、滞在型 の観光が増加傾向にある。
全国的に訪日外国人客が年間 2,000 万人を突破し、当市においても外国人観光客の
入込み数は増加傾向にある。インバウンド(外国人誘客) 対策をいっそう進め、より
多くの外国人を市内に迎え入れることで、外国人客による観光消費額の拡大が見込め
る。また、任意団体であった大田市観光協会は、 観光客の志向や価値観の変化、イン
バウンドといった新たな需要に対応できる観光地づくりを進めていくため、 会員の発
展と大田市の観光振興の「中核的推進機能」を目指し、平成 27 年 4 月 1 日から一般
社団法人として新たなスタートを切っ た。平成 28 年 7 月には、三瓶山を含む「大山
隠岐国立公園」が国立公園を世界に向けて PR する環境省の事業「国立公園満喫プロ
ジェクト」の対象地に選定された。2020 年までに受け入れ環境の整備を重点的に進め
ていくこととされており、関係機関と連携を図る 中で、三瓶山への受け入れ態勢の充
実や、情報発信に積極的に取り組んでいる。
○ 大田市市内総生産
(単位:百万円)
平成19年
1.産業
第1次産業
農業
林業
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
平成25年
86,957
82,403
83,590
87,577
91,802
86,625
85,626
4,124
4,075
3,883
3,811
4,044
4,238
4,056
1,960
2,086
2,049
2,080
2,261
2,424
2,342
261
245
217
273
299
316
349
1,904
1,745
1,618
1,458
1,483
1,498
1,366
24,780
22,014
22,932
26,478
29,892
25,358
24,591
550
466
346
345
292
320
336
製造業
13,904
11,523
12,224
15,265
20,012
13,217
13,828
建設業
10,325
10,025
10,362
10,867
9,588
11,820
10,426
80,766
78,483
56,775
57,287
57,866
57,029
56,979
電気・ガス・水道業
1,611
1,572
1,571
1,542
1,435
1,379
1,344
卸売・小売業
9,941
9,933
10,273
10,258
11,072
10,606
10,841
金融・保険業
3,968
3,109
2,944
2,942
2,882
2,676
2,501
19,267
19,286
19,462
19,374
19,085
19,270
19,277
運輸業
3,591
3,233
3,023
3,022
3,246
2,971
2,625
情報通信業
2,503
2,591
2,747
2,767
2,747
2,729
2,866
サービス業
17,171
16,590
16,756
17,382
17,400
17,398
17,525
20,018
19,552
19,743
19,545
19,459
19,689
19,058
水産業
第2次産業
鉱業
第3次産業
不動産業
2.政府サービス生産者
3.対家計民間非営利サービス生産者
4.輸入品に課される税等
市内総生産 合計
2,695
2,617
2,588
2,907
2,818
2,912
2,896
△501
△606
497
613
818
790
920
110,171
105,177
106,418
110,641
114,896
110,016
108,499
※端数処理の関係で内訳と合計が一致しない場合がある。
-8-
(資料:島根県市町村民経済計算)
産業人口の動向は、第 1 次産業の衰退に併せて就業人口も逐年減少してきており、
第 2 次産業就業人口については増加傾向から近年減少傾向に転じ、第 3 次産業就業人
口については近年横ばい傾向から 若干減少傾向にある。これを就業人口割合で見ると
第 3 次産業については、平成 12 年国勢調査以降、就業人口全体の半数を超える状況
にある。
第 1 次産業就業人口については、全国的にも減少傾向にあり、これは農工間の所得
の格差、機械化等による省力化、米価決定における市場原理の導入、輸入品の増大に
よる価格低迷や漁業資源の減少等、極めて厳しい諸情勢から生産意欲、就労意欲を無
くしたことが要因に挙げられる。 一方、規模の大型化や経営の近代化等がなされ、後
継者も育成されるなど、新しい動きも見 受けられる。
次に、第 2 次産業就業人口については、当市から産出する良質の粘土を資源とする
瓦産業の規模拡大と、昭和 40 年以降の企業誘致による製造業等の進出により増加し
てきたが、国内産業の低迷が続く中、企業誘致を取り巻く環境については、なお厳し
い状況にあるなど、第 2 次産業における雇用増に結びつく状況には至っていない。
-9-
○ 産業別人口の動向
区 分
昭和35年
実 数
総 数
第1次産業
就業人口比率
第2次産業
就業人口比率
第3次産業
就業人口比率
分類不能数
区 分
総 数
第1次産業
就業人口比率
第2次産業
就業人口比率
第3次産業
就業人口比率
分類不能数
昭和40年
実 数
昭和45年
増減率
実 数
昭和50年
増減率
実 数
昭和55年
増減率
実 数
31,867 人 28,603 人 △ 10.2 % 27,718 人 △ 3.1 % 25,599 人 △ 7.6 % 25,968 人
17,588 人 13,835 人 △ 21.3 % 12,132 人 △ 12.3 %
昭和60年
増減率
実 数
増減率
1.4 % 25,527 人 △ 1.7 %
8,601 人 △ 29.1 %
6,897 人 △ 19.8 %
6,332 人 △ 8.2 %
55.2 %
48.4 %
-
43.8 %
-
33.6 %
-
26.6 %
-
24.8 %
-
4,940 人
5,112 人
3.5 %
5,399 人
5.6 %
6,342 人
17.5 %
7,663 人
20.8 %
7,705 人
0.5 %
15.5 %
17.9 %
-
19.5 %
-
24.8 %
-
29.5 %
-
30.2 %
-
9,337 人
9,650 人
29.3 %
33.7 %
2 人
6 人
3.4 % 10,177 人
-
平成7年
増減率
-
41.5 %
10 人
平成2年
実 数
36.7 %
5.5 % 10,624 人
実 数
-
43.9 %
32 人
平成12年
増減率
4.4 % 11,395 人
実 数
-
45.0 %
13 人
平成17年
増減率
7.3 % 11,483 人
実 数
0.8 %
-
7 人
平成22年
増減率
実 数
増減率
23,803 人 △ 6.8 % 23,033 人 △ 3.2 % 20,893 人 △ 9.3 % 19,607 人 △ 6.2 % 17,951 人 △ 8.4 %
4,903 人 △ 22.6 %
4,481 人 △ 8.6 %
3,010 人 △ 32.8 %
2,468 人 △ 18.0 %
1,985 人 △ 19.6 %
20.6 %
19.5 %
14.4 %
12.6 %
11.1 %
-
-
-
-
-
7,690 人 △ 0.2 %
7,224 人 △ 6.1 %
6,544 人 △ 9.4 %
5,309 人 △ 18.9 %
4,765 人 △ 10.2 %
32.3 %
31.4 %
31.3 %
27.1 %
26.5 %
-
11,205 人 △ 2.4 % 11,326 人
47.1 %
-
49.2 %
5人
2人
-
1.1 % 11,332 人
-
54.2 %
7人
-
0.1 % 11,804 人
-
60.2 %
26 人
-
-
4.2 % 11,130 人 △ 5.7 %
-
62.0 %
-
71 人
(資料:国勢調査)
第 3 次産業就業人口については、ライフスタイルの変化・多様化に伴う市民購買力の増
加や余暇時間の増大に加え、近年の福祉・介護・医療サービス分野の 増大 など、サービス
業を中心に雇用の場が確保されたこともあり、平成 22 年には、産業全体に占める割合は
62%と、就業人口全体の半数を超える状況にあ る。今後も第 3 次産業就業人口の割合は増
加していくものと見られる。
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(6)行財政の状況
ア.行政の状況
昭和 28 年に制定された町村合併促進法の施行を機に、昭和 29 年に市制を施行して
以来、4 次に渡る合併を経てきた「大田市」と、昭和 29 年にそれぞれ町村合併し、町
制を施行した「温泉津町」、
「仁摩町」が、平成 17 年 10 月 1 日に合併し、人口 41,728
人(住民基本台帳人口)、面積 436.11k ㎡(合併当初)の広範な市域を持つ新生「大
田市」を形成するに至った。
当市の行政機構については、市域の拡大による新たな行政需要等に対応できるとと
もに、合併後の行政サービスに支障をきたさないよう留意する中で、合併による効果
を最大限に発揮できる組織、機構として、平成 17 年 10 月 1 日現在において、本庁 7
部 3 局 42 課(室、局、署、場、センター)、 2 支所(8 課)及び 1 病院、1 診療所を
設置(職員数 868 人)したところであるが、多様化する行政需要に対応するため 逐次
見直しを行い、平成 28 年 4 月 1 日現在においては、本庁 9 部 1 局 49 課(室、局、署、
場、センター)、2 支所(2 課)及び 1 病院を設置(職員数 763 人)している。
今日、行政に対する市民ニーズは、社会情勢のグローバル化やボーダーレス化とあ
いまって、多様化・高度化・複雑化しており、国・地方を問わず、より効率的な行政
運営が求められている。これまでには平成 18 年 11 月に策定した「大田市行財政改革
推進大綱」を基に行財政改革を進めてきたところであり、さらに、平成 27 年 3 月に
は「第 3 次大田市行財政改革推進大綱」を策定し、協働によるまちづくりの推 進、事
務事業の見直し、民間委託・民営化の推進、組織・定員の適正化、総人件費の抑制等
の行財政改革推進施策を実施しているところである。
今後においては、高齢化の進行等に伴い、住民の行政需要はさらに増大し、ますま
す多様化していくことが予想され、より効率的かつ効果的な行政運営を目指すととも
に、広域的な視点に立ち、周辺地域との交流や連携による新しいまちづくり、地域づ
くりを進めていく必要がある。
イ.財政の状況
こ れま で 道 路 整備 や 下 水 道整 備 等 の 遅れ て い た 社会 資 本 の 整備 や 、 義 務教 育 施 設、
定住促進に向けた各種公共施設の整備等、市勢の発展に資する戦略的なプロジェクト
の推進に積極的に取り組む中、事業の選択と集中により財政健全化に向けた取組 んで
きた。しかし、従来から市税等の自主財源に乏しく、事業実施にあたっては、地方交
付税、国県補助金等の依存財源を主体として、市債の発行や各種基金の取崩しにより、
その財源を確保してきた。
その結果、平成 27 年度末における地方債現在高(普通会計)は 337 億円に達し、
実質公債費比率(普通会計)は 3 カ年平均 で 13.9%となっており、さらに、これまで
整備してきた各種公共施設にかかる公債費 の上昇が予想され、施設の老朽化に伴う維
持管理費の増大が市財政の大きな負担となっている。それに加え、耐震化への対応や
将来的に見込まれる大規模改修等の更新費が、厳しい財政状況に拍車をかけることが
危惧される。また、大田市立病院の建替え や、次期可燃ごみ処理施設の整備 等の大型
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プロジェクト事業の実施を控え、今後の財政運営は極めて厳しいことが予想される。
このような状況を踏まえ、今後の財政運営は、国・県の動向等に十分注視しながら、
一層の歳入確 保に努めるとともに、歳出においては事業の取捨選択、優先順位付けに
併せ、経常経費のさらなる節減を図る必要がある。
○ 財政状況を表す主な指数(普通会計)
区 分
経常収支比率(%)
平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度
86.8
90.9
91.9
91.7
93.0
92.0
0.290
0.281
0.276
0.278
0.277
0.278
3.4
1.7
1.6
2.5
1.8
1.9
経常一般財源比率(%)
96.1
96.8
96.3
96.4
96.7
97.6
公債費負担比率(%)
24.0
24.7
23.3
22.0
23.1
21.5
公債費比率(%)
18.4
17.3
16.8
15.9
14.4
12.8
実質公債費比率(3カ年平均、%)
19.6
18.1
16.8
16.0
15.1
13.9
112.2
97.4
95.5
91.7
85.5
91.2
財政力指数(3カ年平均)
実質収支比率(%)
将来負担比率(%)
地方債現在高(千円)
33,782,005 32,449,517 32,536,342 33,281,895 34,023,094 33,661,494
(資料:財政課)
ウ.公共施設の整備状況
当市においては、これまでに遅れていた社会資本の整備や住民福祉と生活環境の向
上及び若者定住促進を図るための諸施策を積極的に進めてきた結果、主要公共施設の
整備水準は向上した。
しかしながら、当市は総面積が 435.71k㎡と広い上、地勢的にも市域の大半を中山
間地域が占め、加えて大小 500 余の集落が散在していることなどにより、地理的条件
の悪い地域において道路や上下水道施設等の整備が進んでいない状況もある。
今後においては、若者 の流入・定住、地方移住の促進や健康で安心して暮らせる地
域づくりの推進の 観点からも、生活インフラのさらなる整備が必要 であるが、人口の
減少が続く現状においては、これらの動向を見極め る必要がある。
同様に、施設については、必要性と運営の効率性といった両面のバランスを十分検
討した上で、整備を行 い、既存施設においては、複合化、集約化、用途変更するなど、
保有総量の縮減を図る 必要がある。
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