統合失調症とその回復を 理解するために

医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症とその回復を
理解するために
【監修】山梨県立北病院
院長 藤井 康男
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
これからお話すること
統合失調症は、決して珍しい病気ではありません。
統合失調症の治療では、症状を抑えながら、よりよい生活を送ることを目指します。
統合失調症の経過は長く、一様ではありません。
まわりの協力を得ながら自分の目標を見つけ、達成しましょう。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症は、決して珍しい病気ではありません。
(人)
850,000
800,000
795,000
773,000
一生のうち、100~120人に1人が
統合失調症を経験するといわれ、決
して珍しい病気ではありません。
750,000
713,000※
700,000
日本には、約773,000人※※の患者
さんがいらっしゃいます。
650,000
600,000
2008年
2011年
2014年
※福島県など一部地域を除いた数値
※※参考:気管支喘息は約1,177,000人、
アレルギー性鼻炎は約663,000人
の患者さんがいらっしゃいます。
(2014年調査)
厚生労働省患者調査
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症の治療では、症状を抑えながら、
よりよい生活を送ることを目指します。
糖尿病などの生活習慣病と同じく慢性的な
病気で、治療を中断すると再発することが
知られています。
治療を継続することによって、症状を上手
にコントロールしながら、よりよい生活を送
ることを目指します。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症の経過は長く、一様ではありません。
まわりの協力を得ながら自分の目標を見つけ、達成しましょう。
<症状の変化>
良
好
治療法があっていると、
症状が改善して、
できることが
増えます。
発症前
急性期
慢性期
回復へ
症
状
治療法があって
いないと、
症状がなかなか
改善しません。
不
良
時間
治療を
やめてしまうと、
症状が悪化して
しまいます。
監修: 藤井 康男
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
サポートの3つの柱も利用しながら、
回復を目指しましょう。
デイケア
作業所
訪問看護
自立支援医療制度
障害者手帳制度
これらのサポートを申し込む際には、担当窓口に相談してください。
 まずは、病院の担当窓口(ケースワーカー、看護師など)へ
 市町村の担当窓口へ
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症とは
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症は、思考や行動、
感情を統合する能力が低下する病気です。①
平常な心  統合する能力がある
思考や行動、感情を一つの目的にそってまとめていく能力
= 統合する能力
思考
行動
感情
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症は、思考や行動、
感情を統合する能力が低下する病気です。②
統合する能力を失った心  統合失調症
統合する力が長期にわたって低下するため、精神面へ症状が現れます。
思考
感情
行動
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症の主な症状は、幻覚と妄想です。①
幻覚
実際に存在しないものを感じてしまう状態です。
たとえば幻覚の一つである幻聴は、だれも
いないのに「私の悪口を話す声が聞こえる」
などと訴えます。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症の主な症状は、幻覚と妄想です。②
妄想
誤った考えであるにもかかわらず、本人はそれが正しいと
確信している状態です。
たとえば妄想の一つである被害妄想は、事実ではないのに
「私はねらわれている」などと訴えます。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症には、
次のような症状が現れることもあります。①
発症初期の症状が落ち着いてくると目立つようになるもの
ほかの人とのかかわりに興味を失ってしまいます。
そのため、極端に身だしなみが乱れたり、
足の踏み場がないほど部屋に物が散乱したりする
場合があります。
感情が鈍くなります。そのため、笑ったり泣いたり
することが少なくなるなど、表情に動きがなくなる
場合があります。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症には、
次のような症状が現れることもあります。②
認知機能に影響するもの
記憶力や集中力など(認知機能)が低下してしまいます。
そのため、単純な作業でもやり遂げることが
困難になる場合があります。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症が発症する原因については、
まだ、詳しく解明されていません。
脳をはじめとした神経系が関係していると考えられています。
過剰なストレスが発症のきっかけとなります。
さまざまな原因が互いに影響した結果、発症に
至るといわれています。
⇒環境や患者さんの性格、遺伝が直接の原因では
ありません。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
統合失調症の治療と
回復のためのサポート
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
主な治療法は、薬物療法と心理社会的療法です。①
薬物療法
薬物療法の基本は、抗精神病薬による治療です。
抗精神病薬にはさまざまな種類があり、同じ種類の薬でも異なる
剤形(薬の形状)の薬が用意されていることもあります。
 錠剤
 経口液剤
 注射剤(デポ剤※を含む)
 細粒剤
などがあります。
※長期間、効果が持続
する薬のことです。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
主な治療法は、薬物療法と心理社会的療法です。②
心理社会的療法
統合失調症の症状へ対処するための知識や技術を身につけて、
社会への復帰を目指します。入院時だけでなく、退院後はデイケアなどに
通いながら治療を続けます。
心理社会的療法には、
 心理教育
 生活技能訓練
 作業療法
などがあります。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
薬物療法は継続して行い、
徐々に心理社会的療法を行う機会を増やします。
薬物療法
心理社会的療法
発症初期
(急性期)
症状が落ち着いて
きたら(慢性期)
回復へ向けて
薬物療法により症状をやわ
薬の効果がありつつも、副
再発防止の目的で、薬物療
らげ、十分な休息をとるよう
にします。
作用を最小限にとどめるこ
とができる量で薬物療法を
続けます。
法を続けます。社会復帰を
目指して、患者さんの生活
に、より即した心理社会的
療法を行います。
ここに示したのは、おおよその経過です。実際には、患者さんの症状によって差があります。
監修: 藤井 康男
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
薬物療法の基本は、抗精神病薬による治療です。
抗精神病薬は、脳の働きを
調整することで統合失調症
の症状を改善させ、再発を
防止する薬です。
きちんと
服薬し続けることが
大切なのね。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
抗精神病薬にはそれぞれ特徴があり、
効き方や副作用に個人差があります。
最近の抗精神病薬
アセナピン
パリペリドン
アリピプラゾール
ブロナンセリン
オランザピン
ペロスピロン
クエチアピン
リスペリドン
クロザピン
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
「症状が残る」「副作用をおさえたい」などの理由で、
抗精神病薬の切り替えを行う場合があります。
薬の切り替えの例
薬1
薬2
<切り替えの理由>
症状が残ってしまう。
薬3
<切り替えの理由>
薬の副作用が
強く出てしまった。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
「治療法が自分にあっていない」と感じる場合は、
治療法の変更を、医師とともに検討してみましょう。
今の薬を
増量・減量する。
薬の剤形を
変更する。
もっとあう薬(成分)に
切り替える。
心理社会的療法を併用する。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
回復を目指したサポートには3つの柱があります。①
自宅から「デイケア」や「作業所」に通い、
サポートを受けることができます。
「デイケア」では、日常生活の仕方や症状への対処の仕方などを
習ったり、「作業所」では、さまざまな活動をとおして仕事の習慣を
身につけたりします。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
回復を目指したサポートには3つの柱があります。②
「訪問看護」では、
生活の場でサポートを受けることができます。
「訪問看護」では、スタッフが定期
的に自宅まで訪問してくれます。
訪問時には、治療を継続していく
ためのサポートを受けることがで
きます。
日常生活を送るうえでのサポート
を受けたり、本人と家族の悩み
や不安などについて相談したり
することもできます。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
回復を目指したサポートには3つの柱があります。③
「自立支援医療制度」や「障害者手帳制度」などを
利用することができます。
「自立支援医療制度」の利用で、
通院医療の負担軽減ができます。
「障害者手帳制度」の利用で、公
共機関等で料金の優遇などが受
けられます。 ※
受けるためには、いくつかの条件
があるので、病院や各市町村の
窓口※※に相談してください。
※手帳の種別や等級、各地方自治体により、受
けられるサービスに差があるため、利用の際は
確認が必要です。
※※市町村によって受付窓口の名称が異なるの
で、確認が必要です。
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医療関係者用 統合失調症の患者さんへ
まわりの協力を得ながら
自分の目標を見つけ、達成しましょう。
病気があっても、それなりに満足し意義がある生活を送ることは十分可能
です。自分が何をしたいのか、もう一度考えましょう。
思い描いた生活が実現するよう、適切な治療やサポートを得ましょう。
相談したいことがあったら、支えてくれている人たちに声をかけてみましょう。
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