マ ネ ー サ プ ラ イ ・コ ン ト ロ ー ル の あ り方 を 巡 っ て3 マ ネ ー サ プ ラ イ ・コ ン ト ロ ー ル の あ り方 を 巡 っ て 佐 久 1.は 間 敬 じめ に 1980年 代 後半 か ら90年 代 は じめ の マ ネ ーサ プ ラ イ の乱 高 下 の原 因 につ い て, 上 智 大 学教 授 の岩 田 規 久 男 と 日本 銀 行 の翁 邦 雄 との 間 の論 争(い わ ゆ る「マ ネ ー サ プ ライ 論争 」)が 行 わ れ た 。 論 争 の な か で,マ ネ ーサ プ ラ イ の コ ン トロ ー ル につ い て は,岩 は 日銀 理 論 に基 づ い て議 論 を 田 は貨 幣 乗 数 理 論 に基 づ い て,翁 展 開 して い る。 この小 論 で は,マ ネ ーサ プ ライ ・コ ン トロ ー ル に 関す る岩 田 ・翁 の 主 張 の相 違 を明確 にす るた め に,両 理 論 の基 本 的枠 組,相 違,問 題 点 を論 ず る こ とにす る。 11.貨 幣乗数 理論 素 朴 な 貨 幣 乗 数 理 論 の 基 本 的 枠 組 み を示 す と次 の と お りで あ る1)。 マ ネ ー サ プ ラ イMは,定 義 に よ り現 金CUと 預 金Dの 合 計 で あ る。 す な わ ち M=C1十D(1) で あ る。 ベ ース マ ネ ー 一 …-Hは,定 なわち H=CU十 、R(2) 義 に よ り現 金 と準 備 預 金Rの 合 計 で あ る。 す 4 で あ る 。(1)式 と(2)式よ り M一 物伽 が 成 立 す る 。mは 一 器 綴(3) 貨 幣 乗 数 と よ ば れ る 。(3)式 はmが 安 定 し た 値 を と る な ら ば, 日本 銀 行 が ベ ー ス マ ネ ー の 供 給 を コ ン トロ ー ル す る こ と に よ り,マ ネ ーサ プ ラ イ を コ ン トロ ー ル す る こ とが 可 能 で あ る こ と を 示 して い る2)。 こ の 素 朴 な 貨 幣 乗 数 理 論 で は 明 ら か に され て い な い マ ネ ー サ プ ラ イ の 決 定 メ カ ニ ズ ム を,銀 行 行 動 の 理 論 を導 入 して,説 論 か ら述 べ る4)。 預 金,D=預 行行動 の理 こ こ で 使 用 さ れ る 記 号 の 意 味 は 次 の と お りで あ る 。R=準 金,L=貸 出,C=イ ス な ら資 金 調 達 額),β=支 ル レ ー ト,物=預 明 し よ う3)。 まず,銀 ン タ ー バ ン ク 市 場 で の 資 金 運 用 額(マ 払 準 備 率,銀 行 の 利 潤=π,rL・=貸 出 金 利,rc=コ 備 イ ナ ー 金 金利 。 銀 行 の バ ラ ン ス ・シ ー トは,簡 単 化 の た め に 日銀 借 入 と 自 己 資 本 を省 略 す る と R十L十C==D(4) で 表 わ さ れ る。RとDの 問には R=β1)(5) が成立す る。 次 に,貸 出 にか か る費用 関 数 を ん=h(L),ん'(L)>O,h"(L)>0(6) と仮 定 す る 。 銀 行 の利 潤 は π ニrLL十rcC-7fDZ}一 一h(L)(7) と な る 。 す べ て の 金 利 を所 与 と して,銀 行 が バ ラ ン ス ・シ ー トの 制 約 の 下 で 利 潤 最 大 化 を 図 る と仮 定 す る 。(4)式 と(5)式 を(7)式 に代 入 す る と π 一(rL-rc) と な る 。(8)式 よ り,利 .L-一 一h(L)+{(1一 β)rc-rD}D(8) 潤 最 大 化 の た め の 一 階 の 条件 は rL-h'(、L)=?rc(9) (1「 β)rc-rD⑳ マネーサプライ ・コン トロールのあ り方 を巡 って5 とな る。(9)式 か ら,銀 行 の貸 出 供 給 関 数 はrLの 増 加 関 数,TCの 減 少 関 数 とな るQ 銀 行 部 門全 体 の 貸 出 供 給 関 数 は,個 の増 加 関 数,rcの 一方 別 の 銀 行 行 動 が 同 質 と仮 定 す れ ば,rL 減 少 関数 と表 わす こ とが で きる。 ,民 間 非 銀 行 部 門 の貸 出需 要 関 数 は,rLの に貸 出金 利,横 軸 に貸 出額 を とれ ば,貸 減 少 関 数 と仮 定 す る。 縦 軸 出需 要 ・供 給 曲線 は図1の よ う に描 か れ る。 こ こで,銀 行 の貸 出行 動 に影 響 を与 え る コ ール レー トの 決 定 につ い て説 明 し よ う5)。 コー ル レー トは金融 機 関 全 体 の準 備 預 金 に対 す る需給 の均 衡 か ら決 定 され る。 準備 需 要 曲線dは う る。 準 備 供 給 曲線Rは 図2の 図2に よ う に,コ ー ル レー トの 減 少 関 数 とみ な し お い て垂 直 な 直 線 で 表 わ され て お り,日 本 銀 行 が準 備 供 給 量 を変 え ない 限 り,一 定 で あ る。 以 上述 べ た 貸 出市 場 と準備 市 場 との 間 の調 整 過 程 を検 討 す る こ とに よ り,マ ネ ーサ プ ラ イの 決定 メ カニ ズ ムが 明 らか に され る6)。 図1に お け る垂 直 な直線 五 は,銀 行 全 体 の貸 出可 能 最 大 額L*を 銀 行 が 超 過 準 備 を持 た な い と きは,ベ 大額 はL*=mHoと 図1の ース マ ネ ー をHoと 示 して い る。 す る と,貸 出可 能 最 点Aの な る。 超 過 準 備 はABで 状 態 で は,銀 行 全 体 の貸 出可 能 最 大 限 よ り少 く,銀 行 全 体 の あ る。 こ の状 態 は,図2の 点A'で 示 され,A'B'の 準備 の 超 過 供給 が存 在 す る。 超 過 準 備 を持 った銀 行 は,準 備 市 場 に準 備 を放 出 し よ う とす る ので,コ ー ル レー トrcは 貸 出金 利 がrLで 消 滅 す る 売 まで 低 下 す る。 こ れ に と もな い,銀 か らS(γ'c)へ 図1の 点Cの 変 化 しな け れ ば,超 過供給が 行 の 貸 出供 給 曲線 はS(rc) と下 方 に移 動 し,貸 出金 利 は 苑 とな る。 状 態 で は,銀 行 全 体 の超 過準 備 はCDに に下 が る に と もない,準 備 需 要 曲線d(rL)はd(γ ル レー トが 舜 にお い て は,CDに 分 まで下 方 に移 動 す る。コ ー 等 しい準 備 の 超 過 供 給C/D'が この よ うな調 整 は,両 市 場 が 同時 に均 衡 す る ゲ㌔,T*cに こ の よ うに して,貸 な る。 貸 出金 利 が 吃 存 在 す る。 な る まで 続 く。 出市場 と準 備 市場 が 同時 に均 衡 に達 す る こ とに な る。 そ 6 図2 図1 rb S(r・) S(rV ・0 塑﹂ ' b r B レ乍 s(r・') *0 一∼ *L一 一 ∼ d(r・) d`rQ d㈹ R L 0 の と き の 銀 行 の 貸 出 額 はL*と な り,マ Hoに な る。 貨 幣 乗 数 を乗 じたmHoに 皿.日 ネ ーサ プ ラ イ もベ ー ス マ ネ ー の 供 給 量 銀 理論 日銀 理 論 は 次 の 二 つ の 特 徴 を持 つ7)。 ① 日本 銀 行 は ベ ー ス マ ネ ー を コ ン トロ ー ル す る こ と は で き な い 。 ② コ ー ル レ ー ト を コ ン トロ ー ル す る こ と に よ り,マ ネ ー サ プ ラ イ を コ ン トロ ー ルす る。 ま ず,日 本 銀 行 が ベ ー ス マ ネ ー を コ ン トロ ー ル で き な い 理 由 に つ い て 説 明 し よ う8)。 ベ ー ス マ ネ ー は銀 行 券 と準 備 預 金 か ら成 っ て い る が,両 者 の性 格 が 異 な るの で 別 々 に考 え よ う。 銀 行 は預 金 者 の 銀 行 券 引 出 し に対 し取 付 け を 避 け る た め に,受 け 身 に な らざ る を え な い 。 銀 行 券 の 発 行 残 高 は 需 要 に よ っ て 決 ま る 。 銀 行 券 に対 す る 需 要 は, マネーサ プライ ・コン トロールのあ り方 を巡 って7 月 単位 で み る か ぎ り,金 利 の影 響 は受 け な い。した が っ て,銀 行 券 を コ ン トロ ー ルで きな い。 わが 国 の準 備 預 金 制 度 は後積 み方 式 で あ るの で9>,準 備 需 要 は前 月 の 預 金 量 に規 定 され る。 も し 日本 銀行 が 準 備 需 要 に対 し同調 的 に準 備 を供 給 しな けれ ば, 短 期 金 利 は乱 高 下 す る こ とに な る。 日本 銀 行 は金 利 の乱 高 下 は適 当 で ない と考 え て い る ので10),準 備 預 金 もコ ン トロ ー ル で きな い 。 次 に,後 積 み方 式 にお け る金 利 決 定 の メ カ ニ ズ ム につ い て 説 明 しよ う11)。単 純 化 の た め に,マ ー ケ ッ トに存 在 す る各 種 金 利 の うち,オ み が 存 在 す る世 界 を考 え,財 政 収 支,銀 ーバ ー ナ イ ト金利 の 行 券 需 要 は捨 象 す る。 後 積 み方 式 に お い て は,積 み 最 終 日の金 利 は次 の よ うに 決 ま る。積 み 最 終 日 に お い て は,金 融 機 関 は どん な金 利 で あ って も,準 備 を積 む義 務 が あ るの で, 準 備 需 要 は金 利 非 弾 力 的 とな る。 日本 銀 行 は積 み 最 終 日に は,オ ーバ よナ イ ト 金 利 を乱 高 下 させ る の を避 け る ため に,同 調 的供 給 を行 って い る。 そ こで,積 み 最 終 日の準 備 に対 す る需要 ・供 給 曲線 は,図3の よ う に重 な り合 うこ とに な る。 この よ うな場 合 に は,日 本銀 行 が 金 利 決 定 力 を もつ こ とに な る。積 み 最 終 日 の 金 利 は,ベ ー スマ ネ ーの供 給 量 に関 係 な く,日 本 銀 行 の供 給 価 格(金 よ り決 まる12)。つ ま り,ベ ース マ ネ ー と金 利 の 間 に は1対1の 利)に 対 応 関係 は存 在 して い な い13)。 日本 銀 行 が 積 み最 終 日に金 利 決 定 力 を もって い る ので,銀 行 は積 み 最 終 日の 予 想 金利 と比 較 して行 動 す る。銀 行 の 利 潤 最 大 化 行 動 は,日 々 の オ ーバ ーナ イ ト金 利 が 予 想 金利 よ り低 い と思 え ば準 備 を前 倒 しに積 も う と し,高 い と思 え ば 積 み を遅 らせ よ う とす る。 この 点 をふ まえ た銀 行 の行 動 に よ り,日 々 の 金利 は 決 ま る。 こ の よ うに して,金 利 は決 ま るの で あ る が,現 実 に は 日本 銀 行 が シ グナ ル を 送 る こ とに よ り金 利 を誘 導 して い る。 基 本 的 シ グナ ル と して は公 定 歩 合 を用 い, 日常 的 な シ グナ ル と して は積 み 進捗 率 を用 い て い る。 日本銀 行 に よ るマ ネ ーサ プ ラ イの コ ン トロ ー ル は,コ ー ル レー トの変 動 を通 8 図3 'O r R 0 R。=d。 じて行 って い る。 で は,日 本 銀 行 に よるマ ネ ーサ プ ラ イの コ ン トロ ー ル ・メ カ ニ ズ ム とは どの よ うな もの か 。 説 明 の便 宜 上,マ と りあ げ て,4つ 第1は,日 ネ ーサ プ ラ イ の抑 制 の場 合 を の経 路 が存 在 す る こ とを明 らか に しよ うユ4)。 本 銀 行 に よ る イ ン ターバ ン ク市 場 金 利 の引 上 げ は,民 の貸 出 の 限界 採 算 を悪 化 させ,民 間金 融 機 関 間金 融 機 関 の貸 出 を抑 制 す る とい う経 路 で あ る。 第2は,イ ン タ ーバ ンク市 場 金 利 の上 昇 は金 利 裁 定 を通 じて,オ 金利 も上 昇 し,そ の結 果,規 ー プ ン市 場 制 金 利 預 金 が オ ー プ ン市 場 へ 流 出 し(い わ ゆ るデ ィス イ ン ター メ デ ィエ ー シ ョ ン),預 金 銀 行 は資 金 不 足 か ら貸 出 を抑 制 せ ざ る を え な くな る とい う経 路 で あ る。 第3は,長 期 金 利 を含 め た全 体 と して の金 利 の 上昇 が,企 業 や個 人 の支 出 活 動 を直 接 抑 制 す る とい う経 路 で あ る。 第4は,金 利 の上 昇 に と もな い,土 地 や株 式 とい った 資 産価 格 が 下 落 す る こ とに よ り,企 業 や個 人 の支 出活 動 を抑 制 す る とい う経 路 で あ る。 マ ネーサ プ ライ ・コ ン トロー ル のあ り方 を巡 って9 第1と 第2の 経 路 が,民 間 金 融 機 関 の 貸 出 行 動 を通 じて,マ 供 給 面 か ら抑 制 す る の に対 し,第3と て,マ 第4の 経 路 は,支 ネ ーサ プ ラ イ を 出 活 動 に影 響 を及 ぼ し ネ ー サ プ ラ イ を 需 要 面 か ら抑 制 す る 。 ]V.両 理 論 の問題 点 貨 幣 乗 数 理 論 と 日銀 理 論 と の 間 の 基 本 的 な 問 題 に つ い て,ベ ン トロ ー ラ ビ リテ ィ,ベ ースマ ネーの コ ー ス マ ネ ー とマ ネ ー サ プ ラ イ の 因 果 関 係,そ 需 要 ・供 給 の 金 利 弾 力 性 の3点 して 準 備 か ら考 え て み よ う。 日本 銀 行 は ベ ー ス マ ネ ー を コ ン トロ ー ル で き な い と の 主 張 に 対 して,堀 (1980)は 内 次 の よ う に 批 判 し て い る 。 こ れ は ベ ー ス マ ネ ー の 事 後 的 な 定 義 を, そ の 需 要 ・供 給 の 関 係 と混 同 して い る 。 日本 銀 行 は ベ ー ス マ ネ ー に対 す る 需 要 は コ ン トロ ー ル で き な い が,ベ ー ス マ ネ ー の 供 給 に つ い て は コ ン トロ ー ル 可 能 で あ る。 ま た,日 本 銀 行 が 準 備 需 要 に対 して 同 調 的 な 供 給 を行 わ な け れ ば,金 高 下 を もた らす との 主 張 に 対 して,次 行 が 同 調 的 供 給 を行 わ な い 場 合 に は,銀 な る 。 こ の 場 合 に は,金 利 の乱 の よ う な 批 判 が な さ れ て い る15)。 日本 銀 行 は多 額 の超 過 準 備 を保 有 す る よ うに 利 の 乱 高 下 は金 利 の 調 整 と銀 行 制 度 全 体 で 保 有 さ れ て い る超 過 準 備 額 の 調 整 に よ っ て 避 け られ る 。 翁(1993b)は マ ネ ー に 占 め る シ ェ ア は あ ま り に も小 さ く,後 準備 預金 がベ ース 積 み 方 式 の 預 金 制 度 の 下 で は, 厳 格 な ベ ー ス マ ネ ー ・コ ン トロ ー ル を行 い う る よ う な 超 過 準 備 を創 り出 す こ と は 不 可 能 と反 論 して い る 。 ベ ー一ス マ ネ ー の コ ン トロ ー ル を積 極 的 に 主 張 して い るT.マ a)は,ベ ー ス マ ネ ー ・コ ン トロ ー ル を可 能 に す る準 備 預 金 制 度 と し て 同 時 積 み 方 式 の 採 用 を提 案 して い る16)。こ れ に 対 し,翁(1993b)は が1980年 ッ カ ラ ム(1993 連 邦 準 備 制 度(FRB) 代 前 半 に非 借 入 準 備 を タ ー一ゲ ッ トとす る こ と を放 棄 した 事 実 を も っ て, 同 時 積 み 制 度 の も と で も準 備 量 を 政 策 手 段 と して 使 用 す る 困 難 を示 し,受 れ が た い も の と し て い る 。 こ の 翁 の 主 張 に対 し,T.マ ッカ ラ ム(1993b)は け入 10 そ の時 点 でFRBは,ま だ後 積 み 方 式 を採 用 して い た ので,例 と して は適 当 で な い と指 摘 して い る。 ベ ー ス マ ネ ー とマ ネ ーサ プ ライ の 因 果 関係 につ い て ,貨 幣乗 数 理 論 で はベ ー ス マ ネ ー → マ ネ ー サ プ ラ イ で あ るが,日 銀 理 論 にお い て は マ ネ ーサ プ ラ イ→ ベ ー ス マ ネ ー とな る。 日銀 理 論 にお け る 因果 関係 は,後 積 み方 式 にお いて は預 金 創 造 が 時 間 的 に先 行 して,そ れ に見 合 う よ うに所 要 準 備 が 保 有 され る とい う メ カ ニ ズ ム に よ る もの で あ る17)。鈴 木 ・黒 田 ・白川(1988)に よ る グ レ ンジ ャー の 因果 性 テ ス トで は,日 銀 理 論 を支 持 す る結 果 が え られ て い る。 翁(1993a)は 岩 田が 用 い た 図2の よ う な金 利 弾 力 的 な準 備 需 要 曲線 は長 期 分析 が 前 提 で あ り,日 々 な い し月 々 の短 期 金 融 市 場 金 利 の形 成 につ い て 分析 に 用 い る の は現 実 的 で ない と批 判 して い る。植 田(1993)は 金 利 弾 力 性 の 度合 い は,準 備 預 金 制度 を は じめ と した短 期 金 融市 場 の様 々 な制 度 の枠 組 み に依 存 す るの で,制 度 が 変 われ ば,積 み最 終 日で も準備 需 要 が 金 利 弾 力 的 とな りうる と 指 摘 して い る。 古 川(1994)は で あ る ので,積 日銀 貸 出 の計 測 の結 果 よ り準 備 供 給 が 金 利 に関す る増 加 関 数 み最 終 日に お い てベ ー ス マ ネ ー の供 給 量 と金 利 の 間 に1対1の 対 応 関係 は な い との 翁 の 主 張 とは真 正 面 か ら衝 突 す る こ と に な る と述 べ て い る。 V.お わ りに 貨 幣 乗 数 理 論 と 日銀 理 論 のマ ネ ーサ プ ラ イ ・コ ン トロ ー ル の相 違 を簡 単 に示 す と次 の よ うに な る18)。 貨幣乗数理論 ・ 〈一スマネー(操作変数)一:-」レレー トく 罪茎舗1錨]一 マネー 一"7・5d(中 間目標) 日銀理論 コールレート(操 作変動)く1麟ll欝]一 マネー 棚(中 間目標) マ ネ ー サ プ ラ イ ・コ ン トロ ー ル の あ り方 を 巡 っ て11 中 間 目標 と して の マ ネ ー サ プ ラ イ を コ ン トロ ー ル す る 場 合 の 両 理 論 の 基 本 的 対 立 は,操 作 変 数 と して ベ ー ス マ ネ ー と コ ー ル レ ー トの ど ち らが 好 ま しい か と い う点 に あ る と思 わ れ る 。 操 作 変 数 と して ベ ー ス マ ネ ー を 採 用 す べ き と い う理 由 と して,次 の点 が あ げ ら れ る19)。 ① ベ ー ス マ ネ ー は 中 央 銀 行 の バ ラ ン ス ・シ ー トに表 わ れ る 項 目 な の で,き わ め て 正 確 に コ ン トロ ー ル で き る 。 ② 金 融 緩 和 ま た は 引 締 め 状 況 の 指 標 と して 曖 昧 さが 残 る 金 利 よ り も,ベ ース マ ネ ー の 方 が 政 策 手 段 と して 優 れ て い る。 こ れ に 対 し,コ ー ル レ ー ト を採 用 す べ き理 由 と して は,次 ① 日本 銀 行 は 金 利 の 乱 高 下 を適 当 で な い と考 え て お り,ベ に コ ン トロ ー ル し よ う とす る と,短 の 点 が 考 え られ る 。 ー ス マ ネ ー を一 定 期 的 に は大 幅 な 金 利 の 変 動 を起 こ す20)。 ② ベ ー ス マ ネ ー を コ ン トロ ー ル す る の に適 した 調 節 の フ レ ー ム ワ ー ク を 設 計 す る の が 実 務 的 に は な か な か 容 易 で は な い21)。 マ ネ ー サ プ ラ イ ・コ ン トロ ー ル の た め に,ど る か につ い て,こ ち らの操 作 変 数 の 方 が優 れ て い れ ま で も多 くの 理 論 的 ・実 証 的 な研 究 が な さ れ て き た が22), い ま だ 結 論 は で て お らず,今 後 の 課 題 と して 残 さ れ て い る 。 注 1)古 川(1985)を 参照。 2)こ の よ う な 解 釈 に つ い て の 批 判 は 翁(1993a)を 3)さ ら に 包 括 的 な 資 産 市 場 の 一 般 均 衡 に 基 づ い た 分 析 に つ い て は,堀 参照。 内(1980)を 参照 。 4)岩 田 ・堀 内(1983),川 5)池 尾 ・岩 佐 ・黒 田 ・古 川(1993)を 6)岩 田(1993)を 参照。 7)岩 田(1993)を 参照 。 8)翁(1993a),岩 9)わ 口 ・三 木 谷(1986),池 田(1993)を 密 に い え ば,後 参照。 参照。 参照 。 が 国 の 準 備 預 金 制 度 で は,積 て い る の で,厳 尾 ・金 子 ・鹿 野(1993)を み 期 間 が そ の 月 の16日 か ら 翌 月 の15日 まで と な っ 積 み と同 時 積 み の 混 合 形 態 で あ る。 こ の 点 に つ い て 12 は 翁(1993b)を 参 照。 10)翁(1992a)を 参 照 。 植 田(1993)は 金 利 の 大 幅 な 変 動 が 望 ま し くな い と い う理 論 的 根 拠 が は っ き り して い な い と 指 摘 し て い る 。 11)翁(1991),(1992a),(1992b)を 12)岩 村(1991b)は 参照。 最 終 日 の 金 利 決 定 を 中 央 銀 行 と市 場 参 加 者 と の 金 利 決 定 ゲ ー ム と して 説 明 して い る。 13)図3に 示 さ れ る よ う に,最 の 供 給 量)に 対 し て,金 終 日 の 準 備 量(こ 利 が 而 の と き も あ れ ばrcの こ の 点 に つ い て は 翁(1992a),岩 田,白 れ に銀 行 券 を加 え れ ば ベ ー ス マ ネ ー 田(1993)を 川(1988),鈴 と き もあ る とい う こ とで あ る 。 参照 。 14)鈴 木,黒 木(1989),(1993),岡 部(1991)を 15)堀 内 ・高 橋(1981)を 16)準 備 預 金 制 度 と ベ ー ス マ ネ ー ・コ ン トロ ー ル の 可 能 性 に つ い て は,岩 参照。 参照 。 村(1993a) の 補 論 を参 照 。 17)堀 内 ・高 橋(1981),翁(1993a)を ユ8)岩 田(1993)を 19)T.マ 参照 。 ッ カ ラ ム(1993b)を 20)翁(1993b),植 田(1993)を 21)翁(1992a)を 参照 。 22)吉 参照 。 野(1989)を 参 照。 参照 。 参照。 参考 文 献 池 尾 和 人 ・金 子 隆 ・鹿 野 嘉 昭 『 ゼ ミ ナ ー ル 現 代 の 銀 行 』 東 洋 経 済 新 報 社,1993年. 池 尾 和 人 ・岩 佐 代 市 ・黒 田 晃 生 ・古 川 顕 岩 田規 久 男 『 金 融 政 策 の 経 済 学 』 日本 経 済 新 聞 社,1993年. 岩 田 規 久 男 ・堀 内 昭 義 岩村 充 『 金 融 ・新 版 』 有 斐 閣,1993年. 『 金 融 』 東 洋 経 済 新 報 社,1983年. 「金 融 市 場 に お け る 量 と金 利 の 決 定 メ カ ニ ズ ム 」 『 金 融 研 究 』 第10巻 第2号, 1991年7月(1991a). 岩村 充 「短 期 金 融 市 場 の 金 利 決 定 モ デ ル 」『金 融 研 究 』第10巻 第4号,1991年12月(1991 b). 植 田和 男 「マ ネ ー サ プ ラ イ ・ コ ン ト ロ ー ル を 巡 っ て 」 『 金 融 研 究 』 第12巻 第1号, 1993年3月. 岡部光 明 「日本 の 金 融 政 策 」 『 金 融 学 会 報 告 』71,1991年1月. 翁 邦雄 「日本 に お け る 金 融 調 節 」 『 金 融 研 究 』 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