安渓遊地編著『廃村続出の時代を生きる』(南方新社)

山口県立大学学術情報 第 10 号 第 2 部 平成28年度 学術出版助成
安渓遊地編著『廃村続出の時代を生きる』(南方新社)
国際文化学部国際文化学科 教授 安渓 遊地
この本は、2016年度の山口県立大学出版助成をいただき、鹿児島の南方新社からの刊行を予定している。
人口減少社会を迎えた日本では、今後コミュニティの崩壊と消滅という廃村現象が続出することが予測されている。
また、噴火・地震・津波などの天災や、それに複合して起こる原発事故などのおりに、退避と移転を余儀なくされた
コミュニティはどのように復興あるいは崩壊していくのだろうか。この過程についてのフィールドワークは充分とは
言えない。実は、西表島から屋久島にいたる九州の南に連なる島々では、過去にそうした廃村という現象がたびたび
起こってきたし、予想に反して今日まで残った集落もある。本書は、1974年以来、琉球弧の島々で私がおこなってき
たフィールドワークに基づいて、新しい手法で人と自然の関係を考察する民族考古学(エスノアーケオロジー)の分
野に関する研究報告を第一部とし、そのノウハウを若者たちのフィールドワーク学習の中にどのように生かすことが
できるかを述べた第二部を主な成果とし、第三部は他の地域との比較の意味で、沖縄島北部、口永良部、スペインな
どの報告を加え、人口の急激な減少が起こっている山口県の足下でどのように取り組んでいけばよいのかを考えると
いう内容である。
第一部 西表島の廃村と人々の暮らし
第1章 廃村の考古学──鹿川村の遺構と遺物そして植物からみた人々の暮らし
第2章 廃村の住民の語り──記憶と物的証拠をつきあわせる
第3章 明治20年田代安定「八重山島巡検統計誌」──幻の資料を台湾で見つける
第4章 戦争の爪痕──アントン丸事件と浦内川の洪水
第5章 話者が筆をとる──鹿川・崎山・網取の暮らしを語り継ぐために
第二部 若者たちとの廃村探訪──屋久島を教科書に
第6章 屋久島フィールドワーク講座・人と自然班の歩み
第7章 世界遺産の森を歩く──屋久島西部林道の住居跡を訪ねて
第8章 山の中の電化生活──屋久杉伐採の最前線・小杉谷
第9章 屋久島最高の村──石塚集落での生活
第三部 何が限界か──廃村・存続・復活の分かれ道を探る
第10章 やんばるの森の別天地──沖縄島北部のユッパー(横芭)
第11章 火山の島に生きる──聞き書き・口永良部島の暮らし
第12章 スペイン・ナバラ州での廃村復活の動き
第13章 廃村続出の時代をどう生きるべきか──山口県での実践へ
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