PV大量導入時にも適正に電圧維持可能な新たな電圧・無効電力制御

M
研究紹介
Introductions of Research Activities
PV大量導入時にも適正に電圧維持可能な新たな電圧・無効電力制御方式の提案
大量で不規則に変動するPV出力に対しても支店系統の電力品質を維持できる制御方式の提案
Proposal of a New Voltage and Reactive Power Control Method Capable of Maintaining
Appropriate Voltage even under Massive Introduction of PV
A control method that ensures the power quality of 77kV power system even with a large and irregular fluctuation of PV output
(電力技術研究所 流通G 系統T)
(Power System Team, Power System Group, Electric Power Research
and Development Center)
When photovoltaic power generation (hereinafter referred to as
“PV)” is massively introduced into a power system, the power system
voltage fluctuates greatly due to fluctuation of PV output. With the
conventional voltage and reactive power control (hereinafter referred
to as “VQC control”), it becomes difficult to maintain an appropriate
voltage. Therefore, we have proposed a new VQC control method
that can maintain the voltage of the power system even with the mass
introduction of PV with fluctuating output.
太陽光発電(以下、PV)が電力系統へ大量に導入さ
れると、PVの出力変動により電力系統の電圧が大きく
変動し、従来の電圧・無効電力制御(以下、VQC制御)
方式では適正な電圧を維持することが難しくなる。そこ
で、大量のPVが出力変動しても電力系統の電圧を維持
できる新たなVQC制御方式を考案したので紹介する。
1
から末端に向かって電圧は徐々に下がることから変電所
背景と目的
出口の電圧を管理することで電圧維持ができた。しか
出力変動の大きなPVが電力系統に大量に導入される
し、PVが大量に導入されるとPVの出力変動により潮流・
と、需要ピークの変化や不規則な電圧変動が生じ、従来
電圧分布が変化し、変電所出口の電圧だけを管理する方
の需要曲線の特性を利用したタイムスケジュール方式の
式では個々のお客さまの到達電圧を許容範囲内に維持す
VQC制御は機能しなくなることが予想される。
ることが難しくなることが課題であった。
そこで、㈱東芝と共同研究にて、電力の潮流(電力)情
3
報のみで不規則・不定期な電圧変動にも対応可能な
新たなVQC制御方式
VQC制御方式を検討した。
(1)VQC制御のアルゴリズム
2
変電所出口の計測値から推定したお客さまの到達電圧
PV大量導入時の課題
を第3図のようにA ∼ Eの5段階に評価し、A、B、D、Eで
第1図に示す電力系統(今回対象としている支店系統、
あ っ た 場 合 に は、C
主に77kV送電線)には1つの送電線に複数のお客さま、
となるよう電圧調整
PV、配電変電所が接続されている(第2図)。従来は負荷
を実施する。電圧調
のみであり、送り出し点である変電所出口(計測箇所)
整を担う装置は、変
到達電圧(推定値)
上限電圧
基準電圧
圧器タップ、各送電
D
不感帯
C
制 御
A
第3図 到達電圧の評価基準
用コンデンサ/補償
各お客さ ま の電圧判定
制御対象
第1図 電力系統全体図
許容範囲
B
下限電圧
線の調相設備(進相
77kV
E
制 御
各区間の電圧判定
区間J
C
B
A
A
A
区間K
B
A
A
C
E
区間L
B
B
C
D
区間M
E
E
区間N
C
A
A
A
B
E
C
(1)各区間の電圧判定方法
各区間の電圧判定
区間J
A
区間K
A
区間L
B
区間M
E
区間N
D
支店系全体の電圧判定
A
(2)変電所全体の電圧判定方法
第2図 支店系模擬系統例
技術開発ニュース No.156 / 2017-2
GN156_P35-36_M.indd 35
第4図 系統電圧判定方法
35
2017/02/08 9:15
M
Introductions of Research Activities
用リアクトル:SC / ShR)である。
J3
【pu】
第2図の模擬系統におけるVQC制御のアルゴリズムを
以下に説明する(第4図)。
変電所からの送電線を区間Jから区間Nとし、区間毎に
J3上限
J3下限
0.98
1
0.97
0.98
0.96
0.95
0.96
0.94
各お客さまの到達電圧を推定し、判定基準(第3図)によ
逸脱箇所
0:30
0:40
0:50
1:00
1:10
1:20
1:30
(a)全体図
りA ∼ Eで評価する。各区間の電圧判定には区間内の評
価の数が最大のものを採用(第4図(1)の区間Jの場合、
J3
【pu】
A×4、B×1、C×1よりAを採用)する。さらに変電所全
体の電圧判定には、各区間の評価の数が最大のものを採
用( 第4図(2)の 場 合、A×2、B×1、D×1、E×1よ りA
を採用)する。
J3上限
1:40
1:50
【T】
0.94
1
0.97
0.98
0.96
0.96
0.95
0:30
0:40
0:50
1:00
1:10
1:20
1:30
(a)全体図
これらの結果をもとにVQC制御指令を出力し、電圧調
整を行う。変電所全体の電圧は変圧器タップにて制御、
逸脱箇所
1:40
1:50
【T】
0.94
1:05
【T】
(b)拡大図
J3
【pu】
0.98
J3下限
0:55
(1)先行制御なし
J3下限
1.02
0.94
J3
【pu】
1.02
研究紹介
J3 下限
【T】
0:55
(2)先行制御あり
1:05
(b)拡大図
第6図 先行制御アルゴリズムによる検証結果
各区間の電圧は調相設備にて制御することで、お客さま
4
への到達電圧を許容範囲内に維持する。
新VQC制御方式の評価
(2)予測値を考慮した先行制御アルゴリズムの導入
(1)の方式で提案した手法では、計測から制御までを
第2図の模擬系統における先行制御アルゴリズムの検
1分周期で行っており、計測から1分後の制御時点でPV
。
証結果を示す(第6図)
の変動による電圧変動(例:下がる)方向と電圧制御す
第6図(1)は先行制御なしの場合、第6図(2)は先行
る(例:下げる)方向が同じになる場合等、条件によっ
制御方式を適用した場合の結果である。第6図(1)では、
ては電圧逸脱が発生することが判明した。そこで、対応
電圧逸脱が発生しているが、第6図(2)では、電圧逸脱
策として、需要、PV出力の(1分先の)予測を用いる先行
していない。このように、1分先のPV出力と需要の予測
制御方式を考案した。
を考慮した先行制御方式を適用することにより、電圧の
第5図に先行制御方式の概要を示す。上段が検証に使
逸脱を防ぐことができた。
用した模擬系統で、下段が先行制御方式を示す。先行制
5
御方式では、送り出しの潮流を、比較的変動の少ない需
今後の展開
要と不規則に変動するPV出力に分離し、カルマンフィル
タ(過去20分データを使用)を適用することにより計測
今回、送り出し点の潮流情報のみで制御可能な新たな
から1分先の潮流の変動範囲を予測している。この予測
VQC制御方式を考案した。
範囲に対しお客さまの到達電圧が許容範囲を逸脱しない
実系統へ採用する際には、PV出力と需要の分離精度、
ように変圧器タップや調相設備等の制御量を求め、計測
予測手法の信頼度、不感帯の調整幅、制御および予測タイ
から1分後に制御する。
ミングの条件等の課題を解決する必要があり、引き続き、
支店系統VQC制御への適用を目指し検討をすすめる。
77kV
模擬系統
275~154kV
SC/ShR
J1
K1
送り出し点潮流
J2
K2
L1
L2
M1
M2
J5
J6
K4
K5
PV1
L4
PV1
J4
J3
K3
L3
PV
負荷
N1
送り出し点
潮流(計測)
支店系統VQC(先行制御)
入 力 テータ
゙
(t)
送り出し点
電圧(計測)
出 力 テータ
゙
(t)
入 力 テータ
゙
(t-m1~t)
PV
送り出し点潮流
カルマン
フィルタ
VQC制御指令
(変圧器タップ、調相)
出 力 テータ
゙
(t+1)
PV予測
(上限/下限)
分離
負荷
20分
カルマン
フィルタ
負荷予測
電圧
先行
制御
(t+1)
m1:カルマンフィルタ対 象 期 (20分)
間
第5図 先行制御方式概要図
執筆者/浅野充俊
技術開発ニュース No.156 / 2017-2
GN156_P35-36_M.indd 36
36
2017/02/08 9:15