北海道における 新的新素材産業の創出への取組

北海道における⾰新的新素材産業の創出への取組
平成29年2⽉21⽇
バイオ産業課
(本発表資料のお問い合わせ先)
経済産業省北海道経済産業局
地域経済部バイオ産業課 辻、小林
電話:011-709-2311(内線2554~2556)
FAX:011-707-5324
E-mail:[email protected]
概要
 経済産業省北海道経済産業局では、⾰新的な新素材として期待される「発酵ナノ
セルロース(NFBC)」について、平成28年度「戦略的基盤技術⾼度化⽀援事業」
※1 により⽀援を⾏っている。
 同事業により量産化を⽬指すNFBCは、現在⽇本国内を始め、各国において実⽤
化研究が⾏われている「セルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)」 ※2である。
 本技術は、糖質など⾷品由来の原料と果実から分離した菌株を使って発酵法によ
りナノ合成(ボトムアップ)を⾏う。⼀般的な⽊材パルプなど植物由来の原料から、物
理的・化学的にナノ化(トップダウン)する⽅法と異なる特徴を有することから、⾼い安
全性が要求される医療分野や⾷品分野への⽤途展開が期待されている。
 本技術と地域への波及効果に着⽬し、本取組を広く知っていただくため、3⽉17⽇、
札幌市内において「セルロースナノファイバーサミットin北海道」を開催する。
※1 「中⼩企業のものづくり基盤技術の⾼度化に関する法律」に基づき、中⼩企業のものづくり基盤技術(バイオ、複合・新機能
材料、機械制御等)の向上につながる研究開発、試作品開発から販路開拓までの取組を⼀貫して⽀援することを⽬的とした
事業。
※2 強度が鋼鉄の約5倍、重量が鋼鉄の約5分の1でカーボンニュートラルであるナノサイズの極細繊維状物質「セルロースナノ
ファイバー」は、次世代の素材として期待され、2030年には市場規模が1兆円/年を⽬標に掲げている。活⽤分野は、⾃動
⾞や電気電⼦分野など多くの産業応⽤が期待される。
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1.セルロースナノファイバー(CNF)とは
 ⽊材から化学的・機械的処理により取り出した均幅が数〜20nm※3程度、平均⻑さ
が0.5〜数μm程度のサイズの繊維状物質。
 鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度を持ち、熱による膨張・収縮が少なく、環境負荷の
少ない植物由来の素材。
※3 nm(ナノメートル)は、⻑さの単位で、10-9メートル(m)、1 nm = 0.001 µm = 0.000001 mm
製造⼯程の概要
⽊材
伐採・
チップ化
ナノ化
パルプ化
チップ
パルプ
ナノセルロース
各種⽤途展開
⾃動⾞
樹脂への混合による構造材
ゴムへの混合によるタイヤ等
フィルム
有機EL基板
ガスバリア性・
低熱膨張フィルム等
フレキシブル
ディスプレイ等
インク
ボールペンインク(実⽤化)
化粧品等
消臭剤
表⾯積の⼤きさを活かした
消臭機能(紙おむつが実⽤化)
(出典)「〜素材⾰命〜セルロースナノファイバーの将来展望(経済産業省製造産業局素材産業課)」、京都⼤学⽮野研究室資料、三菱鉛筆(株)・第⼀⼯業製薬(株)資料、⽇本製紙(株)資料
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2.発酵ナノセルロース(NFBC)とは
 CNFは、ある種のバクテリア(酢酸菌など)及び糖質を原料とした発酵によるボトムアップ
法でも製造することができ、天然由来の原料を発酵することによるメリット(⾼い⽣体適合
性) がある⼀⽅、事業化が困難なデメリット(低い⽣産効率と⾼い製造コスト)があった。
 北海道⼤学では、⾼効率に直径20nmの「発酵ナノセルロース(Nano-fibrillated
Bacterial Cellulose: NFBC)」を合成することに成功。その技術を基に、草野作⼯(株)(江
別市)らが事業化に取り組んでいる。
 NFBCは、⾷品由来の原料と果実から分離した菌株を使って製造するため、⽣体適合
性が⾼く、従来の⼯業製品以外に、医療や⾷品分野への⽤途展開も期待されている。
製造⼯程の概要
運搬・圧搾
テンサイ、糖蜜
サトウキビ 等
ナノセルロースを排出
フィルム
有機EL基板
(ゲル、シート、スポンジ等)
⽣体適合性が必要な分野への展開
従来の各種⽤途展開
⾃動⾞
発酵ナノセルロース
発酵・遠⼼分離
インク
消臭剤
(出典)「〜素材⾰命〜セルロースナノファイバーの将来展望(経済産業省製造産業局素材産業課)」、
京都⼤学⽮野研究室資料、三菱鉛筆(株)・第⼀⼯業製薬(株)資料、⽇本製紙(株)資料
⾷品
医薬品
化粧品
医療機器
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3.発酵ナノセルロースの特徴
 国内で研究・事業化開発が進められているパルプ由来CNFと⽐較して、原料や製造⼯
程の違いから、⼀定な「繊維幅」や「⽣体適合性」に特徴。
⽐較項⽬
発酵ナノセルロース
パルプ由来
セルロースナノファイバー
原料
農作物(単年度作物)
植物(森林資源等)
ナノ化⼿法
ボトムアップ
(発酵によるナノ合成)
トップダウン
(解繊等によるナノ化)
繊維幅
約20nm
数nm-100nm
⽣体適合性
◎
○
製造⼯程
発酵
機械的・化学的処理
原料調達容易性
○
(農作物の未利⽤部分を利⽤)
◎
(豊富な森林資源)
競合
菌株・製造法・物質の特許保有
(13カ国に国際出願済。⽇⽶で取得済)
国内、⽶国、欧州、
中国、韓国他
コスト・量産性
△
(北海道内でのみ研究・製造)
○
(国内で多くの量産化研究)
産業応⽤
特に医療・⾷品分野への展開に期待
幅広い産業応⽤に期待
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4.発酵ナノセルロースの事業化に向けた取組
 課題であった「⽣産効率」 、「製造コスト」等を克服するため、戦略的基盤技術⾼度化
⽀援事業(サポイン事業)を活⽤し、効率的培養⽅法と分離精製技術の確⽴による量
産化について、研究開発を実施中。
[事業の進捗状況と成果]
•
3t/年の試験製造設備が稼働
→平成29年1⽉に、3t/年の製造が可能なテストプラント
を設置(草野作⼯(株)(江別市))し、量産化に向けた⽣産
技術の確⽴と低コスト化の実現を⽬指し試験継続中。
•
•
有機溶媒に対して、均⼀な分散に成功
→ナノセルロースの⽤途拡⼤のため、メタノールやエタ
ノールなどの有機溶媒中に均⼀に分散させることが求め
られている。NFBCは、有機溶媒中でも均⼀に分散する
ことが確認され、様々な⽤途への利⽤可能性が広がった。
毒性試験で無害判定
→⽣態適合性を客観的に評価するため、評価ラットによる
単回投与毒性試験※4を実施したところ、⽔を投与した場
合と差異がないことが確認された。
※4 多量に摂取した場合に⽣命や健康維持に⼤きな影響が無い
ことを確認する試験。
(3t/年の試験製造設備)
従来品
開発品
凝集(ダマ)がなく
溶媒に分散(混合)
(有機溶媒(メタノール)への分散状態)
左:従来品、右:開発品
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5.北海道を⾰新的素材の⼀⼤拠点に
 NFBCの⽣産・利⽤を拡⼤し、北海道が、⾰新的素材⽣産拠点の⼀翼を担うことにより、
地域資源を活かした新たな産業と雇⽤を創出することを⽬指す。
 テンサイから砂糖を製造する⼯程で発⽣する糖蜜からNFBCを製造することで、地域の
農業を⽀え、環境対策への貢献も期待される。
上流から下流、そして上流へのエコシステム
(農業が⼯業を⽀え、⼯業が農業を⽀える)
地球温暖化対策にも貢献
農業の競争⼒強化に向けた輪作体系の維持に貢献
原料となるテンサイは、北海道の畑作農業の輪作体系
維持に不可⽋な作物。
安定的な
素材提供
セルロースナノ
ファイバー
素材製造企業
輪作パターン
【⼗勝】
地元の農産
資源の利⽤
⼩⻨
じゃがいも
4輪作
⾖類
【網⾛】
じゃがいも
⼩⻨
3輪作
テンサイ
テンサイ
テンサイの活⽤は環境対策にも貢献
医薬品、⾷品
医療機器
最終製品
メーカー
テンサイ(甜菜)
⽤途拡⼤
付加価値向上
農業
原料となるテンサイは光合成効率が⾮常
に⾼いことから、CO2の吸収⼒が⾼い作物
(稲や⻨と⽐べて1.5〜2.5倍)。
テンサイ:サトウキビと同じく砂糖の主要原料であり、北海道が全国シェア100%を
占める。国内砂糖⽣産の75%を占める重要な畑作物の⼀つ。
H28年産の作付⾯積は約6万ha、収穫量は約319万t。
(農林⽔産統計) 6
6.「セルロースナノファイバーサミットin北海道」の開催
 北海道経済産業局では、北海道におけるセルロースナノファイバーの開発及び活⽤を促
進するため、CNFの研究開発に取り組む⼤学や企業等が⼀堂に会し、情報共有や意
⾒交換を⾏う、「セルロースナノファイバーサミットin北海道」を開催します。
「セルロースナノファイバーサミットin北海道」開催概要
【⽇時】
平成29年3⽉17⽇(⾦) 13:30〜16:30
【場所】
ニューオータニイン札幌3F「鶴の間」
【主催】
経済産業省北海道経済産業局
【後援】
ナノセルロースフォーラム
【対象】
CNFに関⼼のある企業、⼤学、公設試、
⾏政機関等
【参加費】
無料
【プログラム(予定)】
<特別講演>
「素材⾰命セルロースナノファイバーの将来展望」
経済産業省 製造産業局素材産業課⾰新素材室⻑ 井上 悟志
「地域におけるセルロースナノファイバーの取り組み」
(地独)京都市産業技術研究所 研究戦略フェロー/
ナノセルロースフォーラム地域分科会⻑ 北川 和男 ⽒
<北海道における事例紹介>
「発酵ナノセルロース(NFBC)の事業化について」
北海道⼤学⼯学研究院 准教授 ⽥島 健次 ⽒
草野作⼯株式会社 企画室⻑ 松島 得雄 ⽒
「京都プロセスの紹介と北海道⽴総合研究機構の取り組み」
北海道⽴総合研究機構 ⼯業試験場 材料技術部
⾼分⼦・セラミックス材料グループ 瀬野 修⼀郎 ⽒
「CNFの表⾯改質の最新動向について」
苫⼩牧⾼等専⾨学校 創造⼯学科 准教授 甲野 裕之 ⽒
「バクテリアセルロースゲルの⽤途開発について」
⼩樽商科⼤学 商学部 教授 沼⽥ ゆかり ⽒
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草野作⼯(北海道)
(3トン/年)
《参考》国内のCNF研究・⽣産拠点
 世界に先駆けて、⼤学などの研究機関と製紙メーカー・
川下企業との連携による研究・事業化が、⽇本全国で
⾏われています。
※記載以外にも多数の企業・⼤学・研究機関がCNFを研究中。
⽇本製紙
江津営業所(島根県)
(30トン/年)
産業技術総合研究所
中国センター
(広島県)
2017年9⽉稼働予定
⽇本製紙
岩国⼯場(⼭⼝県)
(30トン/年)
中越パルプ⼯業
⾼岡⼯場(富⼭県)
京都⼤学
⽣存圏研究所
(リグノCNF 1トン/年)
モリマシナリー
(岡⼭県)
スギノマシン
(富⼭県)
(1トン/⽇)
⽇本製紙
⽯巻⼯場(宮城県)
(500トン/年)
第⼀⼯業製薬
⼤潟事業所
(新潟県)
2017年4⽉稼働予定
森林総合研究所
(茨城県)
星光PMC
⻯ヶ崎⼯場(茨城県)
中越パルプ⼯業
川内⼯場(⿅児島県)
(100トン/年)
2017年6⽉稼働予定
⼤王製紙
三島⼯場(愛媛県)
(100トン/年)
北越紀州製紙
⻑岡⼯場(新潟県)
王⼦HD
富岡⼯場(徳島県)
(40トン/年)
⼤阪ガス
(⼤阪府)
ダイセルファインケム
(⼤阪府)
(出典)「〜素材⾰命〜セルロースナノファイバーの将来展望(経済産業省製造産業局素材産業課)」
⽇本製紙
富⼠⼯場(静岡県)
(CNF強化樹脂10トン/年)
2017年6⽉稼働予定
特種東海製紙
島⽥⼯場(静岡県)
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