被災ママ・イラストレーター アベナオミさんに聞いた 防災を考えるための ヒント アベナオミさん 防災減災特集 ≪プロフィール≫ イラストレーター。防災士。多賀城市在住。 2 児の母。地域情報誌編集部で、グラフィックデザイナー をしながらイラストレーターとしても活動を開始。 2010 年に漫画家としてデビュー。2011 年に東日本大震 災にて被災し、 そのときの様子や防災を伝えるコミックエッセイなどを執筆。 被災体験をもとに、本当に必要な防災、続けられる防災に取り組む。 BLOG「うさぎとお絵描き」http://illustrator-abe-naomi.blog.jp 未来に伝える東日本大震災 平成 25 年に本市と連携協定を締結した東北大学災害科学国際 研究所の柴山准教授にお話をお伺いしました。 きっかけは 3.11 「宮城県沖地震が来るとはいわれていましたが、小さ い子ども (当時 1 歳 7 カ月)がいるときに大きな震災が起 きたことが、自分自身とてもショックでした」 そう語るのは、東日本大震災時、まだ 1 歳のお子さん を抱え、自宅避難をしていたイラストレーターのアベナ 東北大学 災害科学国際研究所 柴山 明寛 准教授 ≪プロフィール≫ 1976 年静岡県生まれ。東 海大学工学部卒業。工学院大学工学研究科修 了。博士 (工学)。東北大学大学院工学研究科、 (独)情報通信研究機構勤務を経て 2008 年よ り東北大学大学院工学研究科助教。2012 年 より災害科学国際研究所にて現職。 オミさん。 震災を通して実感したことや必要なものを、震災から 5 年の節目である昨年 3 月から、 「1 日 1 防災」として発 東日本大震災とはどのような災害だったのか 9 東日本大震災は、内陸にも被害をもたらしまし たが、津波による被害で数多くの尊い命を失って 99 しまったというのが最大の特徴です。 宮城県は、過去に何度も地震を経験しているこ とや、 ・ パーセントの確率で大規模な地震が 発生するといわれてきたことから、他県に比べて 地 震 に 対 す る 防 災 意 識 が 高 か っ た と い え ま す が、 3 その反面、津波に対する意識は決して高かったと 45 はいえません。 多賀城高校で設置した津波プレートは、市民が 常に津波を意識し、ここまで津波が来たことがあ 2 多賀城市の被害の特徴は るという目印でもあります。この活動は、次世代 に避難することが何よりも大切だということで が密集し、海までの見通しがきかないこと。その につながる素晴らしい活動だと思います。 す。今回の教訓を使うところ、使えないところが ため、海がどの方向にあるか分かりづらく、海か 多賀城市というまちには、そもそも つの特徴 があります。①沿岸部のまちなのに、海に接して ら何キロ離れているかもよく分かりません。折し 津 波 プ レ ー ト は、 町 中 に 点 在 し て い ま す の で、 それを通して意識を高めておくと良いと思います。 い る の が 300 メ ー ト ル だ け で あ る こ と、 ② 交 も国道 号や産業道路では、大渋滞が発生してい どのようなことに気をつけたらいいか あるので使い分けが重要です。 ました。そのとき、幹線道路に海から津波が襲来。 通量の多い幹線道路が 本(国道 号、産業道路) 片や、砂押川への津波遡上によって一部決壊した 次に起こるかもしれない災害では、東日本大震 災の経験を活かすところ、使えないところをしっ 方向からの津波到来に 2 45 あること、③沿岸地域は地形の起伏が少なく建物 河川堤防からの氾濫水が、海とは反対方向からま ちに溢れ出すといった かり考えていかなければなりません。活かすとこ ろというのは、避難行動や避難後の行動に関する よって被害が拡大したのです。 教訓として 時間に余裕があったということです。また、過信 1 こと。使えないところは、津波の到達するまでの 今回の震災では、地震が発生してから津波が到 達するまでの時間が長かったため、次に起こるか してはいけないのが、以前使えていた建物や全国 広報多賀城 2017.3 から差し伸べていただいた支援です。これらは、 3 もしれない津波災害でも、 時間後に来るんだと もあるので、発災後の対応も考えておきましょう。 潜在的に思ってしまっている方も多くいらっしゃ ●住む場所によっても‥ マンションでは、エレベーターが止まった際、自力で階段を上がることを考え、重いもの(例えば、水など)は 備蓄しておくなどの準備が必要です。高層階になると、地震の揺れでバスタブに貯めた水が室内に溢れ出すこと あることを前提にせず、別な方法を考えておく必 不安解消に役立つおもちゃや絵本 など るかもしれません。実は、震源地によっては、津 衣類、食糧(ミルク、離乳食が作れるような備え) 要 が あ り ま す。 東 日 本 大 震 災 を 経 験 し た か ら と ●子どもがいる 年齢やアレルギーの有無によっても必要なもの、 量が異なります。 いって、次の備えができたということではないの 移動の手段や場所、服薬の有無や内容を確認しま しょう。 波到達までの時間が短くなる可能性があるので ●高齢者がいる す。今回の教訓は、津波が到達するまでの時間に 例えば‥ いうことに気をつけていただきたいと思います。 「防災」と一言でいっても、家庭環境や住んでいる 場所など、身の回りの状況によって人それぞれです。 一般的にいわれているような備えのほかに、自分 にとって必要となるものは何か考えてみましょう。 で、経験を活かしながら、臨機応変に対応すると 想像力を豊かにして、自分に合った防災を考える むしろ津波警報が出たら安全確保しながら直ち ▶東日本大震災の際に備忘録として アベさんが書き留めておいたメモ は、熊本地震で多くの方に SNS などで拡散されました。 余裕があるということではありません。 信し、熊本地震の際に話題になりました。 3.11 を経験したからこそ得ることができた自分の気 づきは、どんどん他の人たちと共有していかなければな らないと感じ、アベさんの取り組みが始まりました。 ▲多賀城高校で設置した波高標識 東日本大震災の津波の到達地点を表しています。 広報多賀城 2017.3 2
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