巻頭言 情報の信頼性の向上を 目指して 財務大臣政務官 杉 久武 昨年 8 月に財務大臣政務官を拝命し 7 カ月が経過しました。税制改正大綱や予算編成を初めて政 府の一員として経験しました。財務省職員の昼夜を分かたずの奮闘に敬意を表したいと思います。 私は国会議員になるまで公認会計士として約 15 年間、監査法人に勤務しました。父が税理士で あることと、 「企業のドクター」としての公認会計士の仕事に魅力を感じて志し、大学 4 年生のと きに当時の公認会計士第 2 次試験に合格し、監査法人に就職しました。 「監査」という言葉は一般に理解されているようで、意外とそうではないことに政治家となって 気付かされました。検査、調査、監査など第三者が物事の妥当性などを確認するときに使われる言 葉は様々あり、政治の現場でも何か社会問題が発生したときにそれらの言葉が使われて再発防止等 が議論されますが、その違いを正確に理解されている方は多くないと感じます。 「監査」の定義を調べると「ある事象・対象に関し、遵守すべき法令や社内規程などの規準に照 らして、業務や成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、その証拠に基づいて、監査 対象の有効性を利害関係者に合理的に保証すること」とありました。ここで重要なことは、「合理 的な保証」がなされることです。 現代は情報通信技術が飛躍的に発展し、一昔前と違い簡単に様々な情報に接することができるよ うになりました。その一方で、本当にその情報が正しいのかどうかが分からないことも増えまし た。情報の信頼性を確保することが益々重要な時代になったと痛感しています。情報の誤りを指摘 して正すことも必要ですが、それよりも信頼できる情報が社会に提供されることの方が大切であ り、それを担保する手段の一つが信頼するに足ることを第三者が保証することです。 保証の奥深さは海外赴任で学びました。30 歳から米国の会計事務所に 3 年間駐在しました。ペー パードライバーでしたが、10 月に赴任したため、すぐに雪深い中を車で走って職場に行かねばな らず、英語の壁にも悪戦苦闘しながら過ごした日々に懐かしさを覚えます。米国では、保証水準に よって業務が、合意された手続、レビュー、監査と別れており、利害関係者から要求される保証の 水準や費用対効果を考えて業務が行われていましたが、保証された情報であることに対する社会か らの理解と信頼は高いと感じました。日本では監査の有り無しといった二者択一がまだまだ多いと 感じます。また、監査といえば決算書という印象が強くありますが、日本でも企業の財務書類に限 らず多様な分野で様々な水準の保証が広く認められる社会を構築していく必要があるでしょう。 また、この年末年始を過ごす中で、公認会計士の駆け出しのころ、年末や年始に現金や有価証券 の実査や、製品や商品の棚卸しの立会に奔走したことを思い出しました。監査といっても会計帳簿 を眺めている訳では決してありません。現場に足を運ばなければ見えないものが沢山ありました。 財務大臣政務官としてこれまで貨幣大試験や造幣局、印刷局、税関、熊本の被災地の視察などを 行いました。様々な政策を遂行するなかでも、現場のことが分からなければ「絵に描いた餅」にな りかねません。これからも現場第一で様々な課題に取り組んでいきたいと思います。 財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。 1 ファイナンス 2017.2
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