DCと資産形成シリーズ【連載】第二回

み ら い ま な ぶ
資 産 形 成 の コ ツ
(No.16-013)
2017年2月15日
DCと資産形成シリーズ【連載】
第二回『海外事例からDCを考える』
今 回 の ポ イ ン ト
公的年金に依存する日本の老後資金とその影響
日本の老後資金は、少子高齢化の影響で、厳しい財政運営が予想される公的年金への依存度が高く
なっています。公的年金を補完する私的年金についても十分とは言えず、また企業年金は終身給付部
分が限定的なため、長期にわたり、安定した年金収入を望むことが難しくなっています。このため、退職後、
金融資産を毎月取り崩している家計が多くみうけられ、経済協力開発機構(OECD)によると65歳
以上で貧困リスクを抱える割合は、世界平均が12.8%に対して日本は19.4%と上回った結果となって
います。日本の高齢者の労働市場への参加率が、海外に比べて高くなっているのには、このような背景も
一因とみられます。
海外における年金動向
一方、海外の年金動向はどうでしょうか。図表1は2005年末と15年末の米国、カナダ、日本の年金資
産の確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の割合を示したものです。日本はカナダと共に、
圧倒的にDBのシェアが高く、過去10年間で米国は着実にDBからDCにシフトしているのに対して、日本
やカナダの変化は緩慢だったことが分ります。図表2は公的年金の純所得代替率(退職直前の所得に
対する公的年金給付額の比率)と、高齢者依存率(生産年齢人口に対する65歳以上の人口比
率)を表しています。日本は純所得代替率、高齢者依存率ともに厳しい水準にあるにも関わらず、DB
からDCへのシフトが進んでいないことがわかります。
(図表1)先進国とDBとDCの割合(%)
米国(2005)
米国(2015)
47%
(図表2) 先進国の所得代替率と高齢者依存率
高齢者依存率 高齢者依存率
国名
純所得代替率
(2015年)
(2050年予想)
53%
40%
60%
カナダ(2005)
97%
3%
カナダ(2015)
95%
5%
日本(2005)
99%
日本(2015)
96%
DB
米国
44.8%
24.7%
39.5%
カナダ
47.9%
25.9%
46.4%
日本
40.4%
47.2%
78.4%
(出所)OECD(2016年)
1%
4%
DC
(出所)wills Towers Watson(2016年)
行動経済学の知見を活かした英国のDC制度
では、海外では、どのようにしてDCの普及に取り組んでいるのでしょうか。DC制度の効果的な活用例
として、2012年に開始した英国の国家雇用貯蓄信託 (National Employment Savings
Trust:以下NEST)を取り上げます。NESTの特徴は、主に次の3点です。(次ページに続く)
2016年12月16日 『iDeCo(イデコ)』のWEBコンテンツを拡充
2017年11月19日 第一回『DC制度拡充の背景と期待』
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■当資料は、情報提供を目的として、三井住友アセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するもので
はありません。■当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。■当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく
変更されることがあります。■当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証
するものではありません。■当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資
料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。■当資料に掲載されている写
真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。
み ら い ま な ぶ
資 産 形 成 の コ ツ
①対象者は制度に自動加入。脱退可能ですが、脱退しても3年後に再度自動加入となります。
今 回 の ポ イ ン ト
②加入後は、まず自らの退職年に満期が到来するターゲットイヤー・ファンドで運用。事後的に商品の変
更は可能。
③給与に対して、加入者が給与の最低5%、事業主は段階的にアップして2017年から3%、合計最
低8%を拠出した上、国が1%分を加入者に還付。
注目されるのは、NESTにおいて、行動経済学の知見が生かされていることです。例えば、①の自動加
入は、老後計画のような遠い先で困難な問題を先送りしないように設けられた仕組みとなっています。ま
た、②のターゲットイヤー・ファンドの特徴においても、加入者が20代の時は、物価上昇率程度のリターン
を目指す低リスクの資産配分で、運用に慣れてもらう「ならし運転」の期間を用意することで、運用の初
期段階で相場の大幅な下落を経験しても、運用放棄をしないように配慮した設計となっています。以上
は、少し強引な施策にも見えますが、結果として2014年時点では、対象者110万人のうち加入しなか
った人の比率は8%、ターゲットイヤー・ファンド以外の商品を選択した比率は1%程度になっています。
退職後の資金計画をふまえた資産形成を
日本でDCがスタートしてから15年が経過し、60歳を迎えた加入者が資金の受け取りを開始していま
す。このため、退職後の資金を消費するステージへの移行に際しては、長期的な資金管理の必要があり
ます。日本のDC投資教育は、退職時までの資金計画が中心となっていますが、長い退職後の期間に
おいて、ポートフォリオを管理し、どのように貯蓄を取り崩していくべきなのか、具体的な運営方法を考える
ことが大切です。具体的には、安定した退職後の所得を確保するため、公的、私的年金、DCを含む金
融資産の運用や、終身年金保険などとの組み合わせや補完について、個人事情や年金の給付条件、
その他資産状況を勘案して全体的な設計をすることをお勧めします。図表3は、老後資金を確保する
手段とカバーする年齢の将来イメージを示しています。(小畠)
(図表3) 老後の資産確保手段と年代のイメージ
DC満期金を含む手元資金の運用
労働収入
終身年金保険
公的年金
医療・介護保険
リバースモーゲージ(注1)
(注2)
DB企業年金(有期)
60歳
65歳
70歳
75歳
80歳
85歳
90歳
95歳
100歳
(注1)持ち家を担保として銀行や自治体から融資を受けて、借りたお金は死亡時に自宅を売却することで一括返済する仕組み
(注2)上記はイメージであり、実際とは異なる場合があります。
(出所)三井住友アセットマネジメント作成
2016年12月16日 『iDeCo(イデコ)』のWEBコンテンツを拡充
2017年11月19日 第一回『DC制度拡充の背景と期待』
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■当資料は、情報提供を目的として、三井住友アセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するもので
はありません。■当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。■当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく
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