Ⅲ.発がん性分類

産衛誌 57 巻,2015
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表Ⅱ- 1. 生物学的許容値
物 質 名
アセトン
インジウムおよびインジウム化合物
エチレングリコールモノブチルエーテルおよび
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
キシレン
クロロベンゼン
コバルトおよびコバルト無機化合物
(酸化コバルトを除く)
3, 3’- ジクロロ -4, 4’- ジアミノジフェニルメタ
ン(MBOCA)
ジクロロメタン
水銀および水銀化合物(アルキル水銀化合物
を除く)
スチレン
テトラヒドロフラン
トリクロロエチレン
トルエン
鉛
測 定 対 象
試 料
物 質
尿
アセトン
血清 インジウム
尿
総ブトキシ酢酸
尿
総メチル馬尿酸
(o-, m-, p- 三異性体
の総和 )
尿
4- クロロカテコール
(加水分解)
血 液 コバルト
尿
コバルト
尿
総 MBOCA
尿
尿
尿
血 液
尿
尿
尿
尿
血 液
尿
血 液
血 液
尿
二硫化炭素
尿
フェノール
尿
ヘキサン
尿
尿
ポリ塩化ビフェニル類(PCB)
メタノール
メチルイソブチルケトン
メチルエチルケトン
血液
尿
尿
尿
ジクロロメタン
総 水 銀
生物学的許容値
試料採取時期
提案
年度
40 mg/l
3 µ g/l
200 mg/g・Cr
作業終了前2時間以内
特定せず
作業了時
’01
’07
’08
800 mg/l
週の後半の作業終了時
’06
120 mg/g・Cr
作業了時
’08
3 µ g/l
35 µ g/l
50 µ g/g・Cr
週末の作業終了前2時間以内
週末の作業終了前2時間以内
週末の作業終了時
’05
0.2 mg/l
35 µ g/g・Cr
作業終了時
特定せず
’05
’93
週の後半の作業終了時
’07
マンデル酸とフェニル
430 mg/l
グリオキシル酸の和
スチレン
0.2 mg/l
テトラヒドロフラン
2 mg/l
総三塩化物
150 mg/l
トリクロロエタノール
100 mg/l
トリクロロ酢酸
50 mg/l
トルエン
0.6 mg/l
トルエン
0.06 mg/l
鉛
15 µ g/100 ml
プロトポルフィリン 200 µ g/100 ml 赤血
球または
80 µ g/100 ml 血液
デルタアミノレブ
5 mg/l
リン酸
2-ジチオチアゾリジ
0.5 mg/g・Cr †
ン-4-カルボキシル酸
総フェノール
250 mg/g・Cr
(遊離体,グルクロン
酸抱合体,硫酸抱合体)
2, 5- ヘキサンジオン
3 mg/g・Cr
(酸加水分解後)
2, 5- ヘキサンジオン
0.3 mg/g・Cr
(加水分解なし)
総 PCB
25 µ g/l
メタノール
20 mg/l
メチルイソブチルケトン
1.7 mg/l
メチルエチルケトン
5 mg/l
’05
’94
週の後半の作業終了時 ’07
作業終了時
(’15)
週の後半の作業終了前2時間以内 ’99
週の後半の作業終了前2時間以内 ’99
週の後半の作業終了前2時間以内 ’99
週の後半の作業終了前2時間以内 ’99
週の後半の作業終了前2時間以内 ’99
’13
特定せず
’94
特定せず
(継続曝露 1 ヶ月以降)
’94
特定せず
(継続曝露 1 ヶ月以降)
作業終了時(アブラナ科 ’15
植物を摂取しない時期)
’08
作業終了時
週末の作業終了時
’94
週末の作業終了時
’94
特定せず
作業終了時
作業終了時
作業終了時または高濃度
曝露後数時間以内
’06
’10
’07
’06
† …暫定値
Ⅲ.発がん性分類
日本産業衛生学会は,ヒトにおける疫学的証拠*を最も
重要な拠り所として,動物実験の結果およびその解釈と
る物質・要因である.この群に分類される物質・要因
は,疫学研究からの十分な証拠がある.
併せて検討を行い,発がん性分類を行う.本分類は,ヒ
「第 2 群」はヒトに対しておそらく発がん性があると
トに対する発がんの証拠の確からしさにより分類するも
判断できる物質・要因である.「第 2 群 A」に分類され
のであり,発がん性の強さを示すものではない.
るのは,証拠が比較的十分な物質・要因で,疫学研究か
そ こ で, 国 際 が ん 研 究 機 関(International Agency
らの証拠が限定的であるが,動物実験からの証拠が十分
for Research on Cancer)が発表している分類を併せ
である.「第 2 群 B」に分類されるのは,証拠が比較的
て検討し,産業化学物質および関連物質・要因を対象と
十分でない物質・要因,すなわち,疫学研究からの証拠
した発がん性分類表を定める(表Ⅲ-1).
が限定的であり,動物実験からの証拠が十分でない.ま
「第 1 群」はヒトに対して発がん性があると判断でき
たは,疫学研究からの証拠はないが,動物実験からの証