資生堂、環境にやさしい高性能洗浄剤を開発 ~化粧品ガラスびん

資生堂、環境にやさしい高性能洗浄剤を開発
~化粧品ガラスびんリサイクルに活用~
資生堂は、使用済みのガラスびんを資源として蘇らせることを目的に、当社化粧品のガラスび
んリサイクルを 2000 年 6 月に福岡市で試験的にスタートし、2001 年 4 月からは全国展開を行って
います。その一環で、使用済みのガラスびんのカレット(びんを破砕したガラス片)を洗うための従
来とは全く異なる構造から成る、環境にやさしく高性能な洗浄剤を開発しました。
ガラスびんリサイクルのシステム
お客さまより当社化粧品取扱店へお持ちいただいた使用済みガラスびんは、静岡県の掛川工
場内にある再処理センターへ集約してカレットとし、ガラスびんメーカーに納めます。ガラスびんメ
ーカーではカレットを再生ガラスびんとしてリサイクルし、当社各工場に納品されます。
回収した使用済みガラスびんには、油性汚れ(主にクリーム等に由来)と水性汚れ(主に化粧水
などに由来する保湿剤や回収・保管時に付くほこり・汚れ等)が付着しています。ガラスびんメーカ
ーへは、これらの汚れをきれいに洗浄してから納入する必要があります。
「環境にやさしい高性能洗浄剤」の開発
資生堂はカレット洗浄に用いる洗浄剤にも環境へのやさしさを求め、独自に開発を行いました。
洗浄剤の主成分である界面活性剤の分子構造は、水になじみやすい部分(親水基)と油になじ
みやすい部分(親油基)とから成っています。(次頁)従来型の洗浄剤中では、界面活性剤は親水
基を外側に、親油基を内側にして分子が集まり、「ミセル」と呼ばれる球状の集合体を形成してい
ます。この形態では油になじみやすい部分が内側にあるため、油性の汚れになじんで溶かし込む
(=洗浄力)には限界がありました。洗浄力を高めるためには界面活性剤を増やす必要があり、
環境への負荷が大きくなる懸念がありました。
資生堂は環境にやさしい洗浄剤の条件を①洗浄力が高く、使用量が少なくて済む ②*1)生分
解性が高く、自然界ですぐに分解する として検討を行った結果、シャンプーに使われている生分
解性が高い界面活性剤に植物由来の油脂を加えることで、新しい洗浄剤の開発に成功しました。
*1)生分解:化学物質が自然界の微生物に分解されて主に二酸化炭素と水に戻ること。生分解性
が高い程、環境への負荷が小さくなる。
「環境にやさしい高性能洗浄剤」のメカニズム
今回新たに開発した洗浄剤は水性汚れを溶かし込む水の層と、油性汚れを溶かし込む油の層
が絡み合った特殊なミクロ構造から成り、水性・油性両方の汚れに対して非常に高い洗浄力を示
します。従来型の洗浄剤と比較し、約4分の1の量でほぼ同じ洗浄力を発揮します。この構造は、
バイコンティニュアス(バイ:両方、コンティニュアス:連続)構造と呼ばれており、その調製条件(温
度、組成など)が難しいため、洗浄剤として利用されたのは今回が初めてです。
この洗浄剤の環境への負荷をOECD(経済協力開発機構)ガイドラインで定められた生分解性
テストで確認したところ、工業用や家庭用(洗濯用)に汎用されている*2)直鎖アルキルベンゼンス
ルホン酸(LAS)系洗浄剤に比較して 5 日後の生分解率が約 2 倍高いという結果が得られ、環境に
やさしい性質が確認されました。
*2)LAS:1960 年代に当時の合成洗剤が河川に滞留し発泡するなどの問題を引き起こしたこと
を受けて開発された界面活性剤で、比較的環境にやさしいとされる。
資生堂は、掛川工場内の再処理センターでのカレット洗浄に本洗浄剤を 2001 年 10 月から使用
しています。今後は化粧品や市販用洗浄剤などの分野で、この技術の応用を検討していきます。
洗浄剤モデル図
ミセル
油
水
親水基
親油基
界面活性剤
従来型の洗浄剤
新洗浄剤