RESASと 融機関データを融合させた 地域中核産業分析モデル

RESASと⾦融機関データを融合させた
地域中核産業分析モデル
〈函館市・宿泊業の分析事例〉
平成29年2⽉
経済産業省 北海道経済産業局
株式会社 北洋銀⾏
 分析モデルの概要、活⽤⽬的

北海道経済産業局及び(株)北洋銀⾏は、共同で「地域中核産業分析モデル」を作成しました。

本モデルは、政府が運⽤するビッグデータ「地域経済システム(RESAS)」にて、道内各地の中核産業を
抽出し、北洋銀⾏の取引先財務データにて同産業の収益性や投資⼒等の分析を⾏った上で、各地域の産業・企業
の「稼ぐ⼒」強化に向けた取組を提案するものです。

本モデルの活⽤については、地域⾦融機関が、主要な営業地域の産業分析を⾏った上で、取引先と「経営課題」
や「⽬指す将来像」などを議論し、共に検討するための対話ツールとすることを想定しています。
• 道内各地域(広域地域⼜は⾃治体単独)について、「稼ぐ(付加価値額)」と「雇⽤」貢献度の⾼い
産業(地域中核産業)を抽出。
【第1段階】 • この地域中核産業の「付加価値額」、「従業者数」、「労働⽣産性」などの指標について、経年変化
や全国・全道との⽐較分析を実施。
RESAS
• 地域中核産業に属する北洋銀⾏取引先企業のうち、原則10社以上を抽出。
【第2段階】
• 抽出した企業群の財務データ(平均値)を活⽤し、資産、負債、収益性、キャッシュフローの推移
などから、財務の傾向と課題を分析。
財務データ
• 上記分析を踏まえ、地域中核産業の実情に応じ、企業の「稼ぐ⼒」強化に向けた取組を提案。
【第3段階】
• 地域⾦融機関は、企業と対話を深め、経営課題の解決に向けたソリューションを提供。
→機械やIT導⼊等による労働⽣産性の向上、国内外の販路拡⼤、⼈材確保、公的⽀援メニュー活⽤など
対話ツール
1
【第1段階】
RESAS分析
2
1-1 函館市の産業構造分析

函館市における産業別の付加価値額(稼ぎ)、従業者数(雇⽤貢献)の構成を分析。
※付加価値額=売上⾼-費⽤総額+給与総額+租税公課(費⽤総額=売上原価+販売費及び⼀般管理費)

付加価値額、従業者数ともに⼤きい産業は、2次産業は「製造業」、「建設業」、3次産業は 「卸・⼩売業」
「医療・福祉」、「宿泊・飲⾷業」、「運輸業」、「サービス業」の計7業種。

これら7業種で、付加価値額84.1%、従業者数81.0%と、ともに80%超を占めており、これらが函館市の主要
産業と⾔える。
■産業別の付加価値額(企業単位 2012年)
卸・⼩売業
22.5%
医療・福祉
20.9%
製造業
15.5%
■産業別の従業者数(事業所単位 2014年)
建設業
8.9%
宿泊・
飲⾷業
5.9%
卸・⼩売業
22.4%
医療・福祉
14.6%
出典:RESAS(産業マップ>全産業花⽕図)
サービス業
9.1%
製造業
9.2%
建設業
7.7%
運輸業
5.2%
5.2%
宿泊・飲⾷業
11.9%
運輸業
6.1%
3
【参考1】域外資⾦を稼ぐ産業

地域産業は、地域外を主な市場とする「域外市場産業」(製造業、観光業など)と、地域内を主な市場とする「域内市場産業」
(⼩売業、対個⼈サービス業など)に分けられ、地域⼈⼝が減少する状況下において、地域経済の持続的発展には、地域外から
資⾦を獲得する「域外市場産業」の活性化が重要となる。

北洋銀⾏がルートエフ(株)、(株)北海道⼆⼗⼀世紀総合研究所と共同で取り組む「ILO産業分析(※)」でも、同様の考え⽅
により産業を「Inbound型」、「Local型」、「Outbound型」に区分。うち域外市場産業は、Inbound型、Outbound型となる。

この産業区分に基づき函館市の主要産業を分類すると、「域外市場産業」は「製造業」、「宿泊業」、卸・⼩売業の「卸売業」と
「無店舗⼩売業」、「運輸業」となり、これらの産業が域外資⾦獲得への貢献が⼤きいと考えられる。
■ILO産業分析における産業区分
ILO産業区分
域外市場産業
域内市場産業
Inbound型
(宿泊業)
Outbound型
(製造業、卸売業等)
Local型
(建設業、医療・福祉業、
サービス業等)
※ILO産業分析
 北洋銀⾏が、ルートエフ(株)、(株)北海道⼆⼗⼀世紀総合研究所
と共同で構築した、「税務データを活⽤した産業分析」のこと。
 ⾃治体の持つ税務データを活⽤し、地域産業の実態を迅速かつ継続的
に把握することが可能。
 ⾃治体の戦略策定やその評価をサポート。
4
1-2 函館市の「域外市場産業」分析

函館市の「域外市場産業」に分類される主要産業について、付加価値額と従業者数の⼤きさ(産業全体に対する
構成⽐の⼤きさ)を 産業中分類ベースで⽐較分析。

製造業は、「⾷料品」、「⽣産⽤機械器具」、「輸送⽤機械」が⾼く、3次産業は「宿泊業」「道路貨物運送
業」、「飲⾷料品卸売業」、「建築材料等卸売業」が⾼い。

これらの業種が、稼ぎ、雇⽤貢献、域外資⾦獲得の三⾯において貢献度が⾼いと考えられ、主要な域外市場産業
と⾔える。
付加価値額
従業者数
はん⽤機械器具製…
電⼦部品・デバイ…
■域外市場産業の付加価値額、従業者数構成⽐(2012年)
8.0%
6.0%
4.0%
域外市場産業 2次産業(製造業)
出典:RESAS(産業マップ>稼ぐ⼒分析)再編加⼯
無店舗⼩売業
その他の卸売業
機械器具卸売業
建築材料,鉱物・…
飲⾷料品卸売業
繊維・⾐服等卸売業
各種商品卸売業
⽔運業
道路貨物運送業
宿泊業
その他の製造業
輸送⽤機械器具製…
業務⽤機械器具製…
⽣産⽤機械器具製…
⾦属製品製造業
鉄鋼業
窯業・⼟⽯製品製…
化学⼯業
印刷・同関連業
家具・装備品製造業
⽊材・⽊製品製造…
繊維⼯業
⾷料品製造業
0.0%
飲料・たばこ・飼…
2.0%
域外市場産業 3次産業
5
1-3 主要「域外市場産業」の圏内への集積状況分析
1-2で抽出した主要な「域外市場産業」について、圏内への集積状況を把握する為、付加価値額、従業者数に
ついて、それぞれの産業全体に対する構成⽐を、全道と⽐較し分析。

対全道特化係数は、全道の構成⽐=1とし、それに対する圏内の構成⽐。1を超えて⼤きくなる程、集積していると⾔える。
(例)A産業の付加価値額構成⽐が、函館市10%、全道5%の場合→特化係数=10%÷5%=2.0

製造業では、輸送⽤機械が集積度が⾼いが、⼤⼿造船企業がけん引していると考えられる。

3次産業では、宿泊業の集積度が⾼い。
■域外市場産業の対全道特化係数(付加価値額、従業者数、円のサイズは付加価値額の⼤きさを⽰す)
特化係数
(付加価値額)
域外市場産業
2次産業(製造業)
特化係数
(付加価値額)
6
2.0
輸送⽤機械器具製造業
特化係数(付加価値額):4.55
特化係数(従業者数) :2.10
付加価値額:8,033百万円
5
4
1.5
⽣産⽤機械器具製造業
特化係数(付加価値額):3.01
特化係数(従業者数) :1.29
付加価値額:3,614百万円
3
2
1.0
⾷料品製造業
特化係数(付加価値額):1.87
特化係数(従業者数) :1.23
付加価値額:19,799百万円
1
域外市場産業
建設材料等卸売業
特化係数(付加価値額):1.27
特化係数(従業者数) :1.04
付加価値額:5,789百万円
宿泊業
特化係数(付加価値額):1.47
特化係数(従業者数) :1.24
付加価値額:4,416百万円
道路貨物運送業
特化係数(付加価値額):0.53
特化係数(従業者数) :0.58
付加価値額:4,673百万円
飲⾷料品卸売業
特化係数(付加価値額):1.30
特化係数(従業者数) :1.16
付加価値額:10,234百万円
0.5
0
3次産業
0.0
0
1
2
3
4
出典:RESAS(産業マップ>稼ぐ⼒分析)再編加⼯
5
6
特化係数
(従業者数)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
特化係数
(従業者数)
6
1-4 函館市の宿泊業の北海道内での位置

函館市の宿泊業の規模について、北海道内での位置を把握するため、各項⽬を道内他⾃治体と⽐較。

宿泊客延数をはじめ、企業数や事業所数といった項⽬も、札幌市に次ぎ道内2位の位置にあり、道内シェアも
それぞれ⾼い。

函館市は北海道内でも有数の観光都市であり、宿泊業が中核産業の⼀つと⾔える。

以下、宿泊業について分析を⾏う。
■函館市の宿泊業 北海道内での位置(カッコ内は道内シェア)
順位
宿泊客延数
(千⼈泊_2015年度)
企業数(社)
(市内本社_2014年)
事業所数
(市内所在_2014年)
1位
札幌市
12,133.7
(35.0%)
札幌市
217社
(8.9%)
札幌市
391事業所
(12.5%)
札幌市
10,672⼈
(26.8%)
2位
函館市
3,786.4
(10.9%)
函館市
137社
(5.6%)
函館市
188事業所
(6.0%)
函館市
3,034⼈
(7.6%)
3位
釧路市
1,377.2
(4.0%)
旭川市
100社
(4.1%)
釧路市
135事業所
(4.3%)
旭川市
1,565⼈
(3.9%)
4位
登別市
1,284.2
(3.7%)
釧路市
96社
(4.0%)
旭川市
121事業所
(3.9%)
釧路市
1,553⼈
(3.9%)
5位
倶知安町
1,014.8
(2.9%)
北⾒市
78社
(3.2%)
北⾒市
98事業所
(3.1%)
登別市
1,255⼈
(3.1%)
出典:宿泊客延数:北海道観光⼊込客数調査報告書(北海道経済部観光局)
企業数、事業所数、従業者数:RESAS(産業マップ>⾃治体⽐較マップ)より引⽤
従業者数
(事業所単位_2014年)
7
1-5 函館市の宿泊客の動向

函館市の宿泊客の動向について、経済産業省が提供する「観光予報プラットフォーム」により分析。

函館市の宿泊客の推移(2014年〜2016年)をみると、2016年は過去2年を⼤幅に上回って推移しており
⾜元の観光客の⼊り込みは好調。ただし、夏季と冬季の乖離が⼤きく、通年での安定稼働に課題を抱える。

宿泊単価をみると、1万円未満の割合が低下しているのに対し、1万円以上〜3万円未満は増加しており、好調な
観光⼊り込みを背景に、宿泊単価も上昇傾向にあることがうかがえる。
■函館市の延べ宿泊客数実績(千⼈泊)
延べ宿泊客数
■函館市宿泊客の単価別割合
2016年の宿泊⼈数は
⼤幅に増加
うち海外客
100%
2016年
5,693.6
863.2
2015年
4,184.7
630.7
80%
2014年
3,956.9
406.1
70%
2016年
90%
4%
3%
3%
6%
3%
6%
3万円以上〜5万円
37%
44%
60%
未満
50%
〜1万円未満
40%
30%
20%
1万円以上〜3万円
未満
50%
2015年
5万円以上〜
56%
48%
1万円以上〜3万円未満が増加
→平均単価は上昇している。
41%
10%
2014年
1⽉
2⽉
3⽉
4⽉
5⽉
6⽉
0%
7⽉
8⽉
9⽉
10⽉ 11⽉ 12⽉
出典:経済産業省「観光予報プラットフォーム」(http://kankouyohou.com/)
2014年 2015年 2016年
8
【参考2】 函館市の宿泊客はどこから来ているか

国内の宿泊客は、⾸都圏(1都3県)からの来訪が41%を占めるほか、道内客も15%と⼤きなウェイトを占め
る。また、宮城県からは5%(同+2ポイント)と増加しており、北海道新幹線開業の効果とも考えられる。

海外からは、中国や台湾を中⼼とした東アジアからが73%を占めるほか、東南アジアからの来訪も増加(18%、
同+1ポイント)するなど、アジアからの訪⽇客が⼤半を占めている。
■国内客(2016年1⽉〜12⽉)
■海外客(2016年1⽉〜12⽉)
北海道:15%
(前年⽐△8p)
中国:40%
(前年⽐+3p)
⻘森県:3%
(前年⽐△1p)
⾹港:12%
(前年⽐△4p)
宮城県:5%
(前年⽐+2p)
タイ:6%
(前年⽐△1p)
⼤阪府:4%
(前年⽐±0p)
兵庫県:2%
(前年⽐△1p)
愛知県:4%
(前年⽐△2p)
韓国:5%
(前年⽐±0p)
東京都:16%
(前年⽐+1p)
神奈川県:10%
(前年⽐+2p)
埼⽟県:9%
(前年⽐+3p)
千葉県:6%
(前年⽐+1p)
出典:経済産業省「観光予報プラットフォーム」(http://kankouyohou.com/)
台湾:16%
(前年⽐△1p)
マレーシア:4%
(前年⽐+2p)
シンガポール:8%
(前年⽐±0p)
9
1-6 宿泊業の企業数、事業所数の動向

函館市内の宿泊業の、「企業数(函館本社)」及び「事業所数(ホテル、旅館など市内所在の宿泊施設数)」の
推移を⽐較すると、事業所数は増加に転じているのに対し、企業数は減少傾向にある。

また、営業客室数の推移を⾒ると、旅館の落ち込みが⼤きい。

北海道新幹線開業などを⾒据え、市外資本の進出が活発となった反⾯、競争激化により廃業を余儀なくされる
市内企業が増えていると考えられる。
■函館市宿泊業の企業数(市内本社企業数)、事業所数(市内所在数)
企業数
240
220
事業所数
ホテル客室数
市内事業所数は増加
218
3,501
3,353
3,326
3,062
3,133
3,088
6,265
6,359
6,380
6,488
6,393
6,368
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
188
180
6,000
162
160
旅館客室数
旅館の客室数が減少傾向
10,000
8,000
200
180
■函館市内のホテル・旅館の営業客室数
140
137
140
4,000
2,000
120
企業数(市内本社)は減少
100
0
2009年
2012年
2014年
出典:RESAS(産業マップ>製造業花⽕図)再編加⼯
出典:北海道保健統計年報より作成
10
1-7 函館市の宿泊業企業の⽐較分析

函館市の宿泊業企業について、1社当たりの売上⾼、付加価値率、1社当たりの従業者数を⽐較分析。

1社当たりの売上⾼は78.2百万円と、全道・全国や道内他都市と⽐較しても低く、⼩規模な先が多い。

付加価値率は40.3%と⾼い⽔準。サービス品質の⾼さを強みとしていることが分かる。

1社当たりの従業者数は、売上規模と⽐較すると多く、サービス提供のため⼈⼿を要していると考えられる。
■宿泊業企業の指標⽐較(2012年)
1社当たりの売上⾼(百万円)
函館市
付加価値率(付加価値額÷売上⾼)
函館市
78.2
札幌市
794.5
旭川市
113.7
旭川市
釧路市
97.2
釧路市
登別市
北海道
117.1
北海道
全国
118.9
全国
0
200
400
600
800
34.3
北海道
22.3%
30%
12.7
全国
30.8%
出典:RESAS(産業マップ>全産業花⽕図)再編加⼯
10.7
登別市
20.6%
20%
16.0
釧路市
28.0%
10%
46.1
旭川市
34.2%
0%
13.5
札幌市
14.8%
登別市
342.6
函館市
40.3%
札幌市
1社当たりの従業者数(⼈)
40%
50%
16.4
0
10
20
30
40
50
11
【第2段階】
⾦融機関保有の取引先財務(平均値)分析
12
2-1 抽出10社平均の財務状況

北洋銀⾏の取引先から、函館管内の宿泊業企業10社(売上⾼30億円未満)を抽出し、その平均の財務状況に
ついて、2010年と2015年との推移、及び同業(宿泊業)の全国中⼩企業平均と⽐較。

総資産、売上とも6期前と⽐較し伸張しており、業容は拡⼤。現預⾦、収益⼒(営業利益+減価償却費)とも、
全国平均より⾼⽔準にある。
■函館市の宿泊業企業10社平均の財務状況推移(2010年→2015年)
6期前(2010年)
(百万円)
(百万円)
1,600
1,600
1,400
1,200
1,000
1,275百万円
流動資産
19%
1,400
流動負債
12%
1,200
748百万円
800
600
400
固定負債
固定資産
77%
81%
200
66%
売上原価
23%
負債・純資産
売上⾼
B/S
現預⾦ :13%
売上債権: 2%
棚卸資産: 1%
販管費
短期借⼊: 5%
⻑期借⼊:77%
直近期(2015年)
1,479百万円
6期前⽐1.2倍
流動資産
500
流動負債
450
15%
400
22%
875百万円
6期前⽐1.2倍
固定負債
800
66%
固定資産
78%
400
200
営業利益
10%
減価償却
5%
総資産
販管費
66%
19%
負債・純資産
売上⾼
B/S
現預⾦ :17%
売上債権: 3%
棚卸資産: 1%
300
200
売上原価
18%
0
350
250
純資産
P/L
⼈件費:25%
全国中⼩企業平均(2014年 15,934社)
1,000
600
純資産
11%
0
総資産
営業利益
4%
減価償却
7%
■全国の宿泊業企業平均の財務状況
短期借⼊: 4%
⻑期借⼊:66%
P/L
⼈件費:24%
150
100
259百万円
流動資産
19%
固定資産
流動負債
20%
固定負債
68%
81%
50
純資産
13%
0
資産
153百万円
営業利益
2%
減価償却
7%
負債・純資産
B/S
現預⾦ :10%
売上債権: 2%
棚卸資産: 1%
短期借⼊:10%
⻑期借⼊:62%
販管費
70%
売上原価
21%
売上⾼
P/L
⼈件費:30%
出典:中⼩企業実態基本調査(中⼩企業庁)
13
2-2 抽出10社平均のキャッシュフロー推移

抽出企業10社平均のキャッシュフロー(CF)について、過去9期(2007年〜2015年)の推移を分析。

営業CFは、毎年プラスを維持しており、9期平均では79百万円。特に2012年以降は増加傾向で推移しており、
営業活動によるキャッシュ獲得は堅調。

投資CFは、継続して投資を⾏っており、9期平均では62百万円。特に2015年は⼤きく伸びている。

財務CFは、9期平均では△4百万円と返済を進めているが、2015年は調達に転じている(投資資⾦の調達)。
■抽出企業10社平均のキャッシュフロー推移
営業CF
(百万円)
投資CF
財務CF
現預⾦増加額
150
129
69
61
50
0
△50
△100
68
47
0
△7
34
16
8 14
31
28
51
36
17
3
△1
△21
△40
△82
79
60
△9
△38
△29
△40
△68
97
93
89
100
△71
△38
△52
13
△4
△24
△57
△62
△144
△150
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
9期平均
14
【参考3】抽出10社平均のキャッシュフロー要因別推移

税引前純利益が2011年以降増加傾向にあり、好調な業績推移がうかがえる。

設備投資(有形固定資産増減)は、3〜4年おきに⼤型投資が⾏われている。

借⼊⾦は返済を進める傾向にあったが、投資の活発化に伴い、直近は増加している。
単位:百万円
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
税引前純利益
23
8
6
25
15
21
53
63
97
34
減価償却費
77
65
57
57
52
52
49
51
46
56
売上債権減少額
4
2
1
5
△5
△1
△2
△3
△4
△0
棚卸資産減少額
△0
△2
1
△0
△1
2
0
1
1
0
買⼊債務増加額
△5
△3
0
△0
△0
△3
0
1
1
△1
その他流動資産減少額
△11
3
△9
6
3
1
△1
2
△3
△1
その他流動負債増加額
△22
3
△9
△1
13
△1
11
18
19
3
△3
△6
0
△3
△9
△12
△17
△35
△27
△12
61
69
47
89
68
60
93
97
129
79
25
△7
△7
△0
△4
10
△14
△8
△24
△3
△100
△38
△8
△89
△74
△23
△40
△49
△125
△61
7
7
△14
7
7
△8
2
0
5
1
△68
△38
△29
△82
△71
△21
△52
△57
△144
△62
短期借⼊⾦増減
7
13
16
△13
△31
20
2
△8
11
2
⻑期借⼊⾦増減
△36
△78
△2
20
57
△59
△37
△20
22
△15
29
25
0
0
6
0
△5
5
20
9
△0
0
2
0
△0
△0
3
△1
△2
0
0
△40
16
8
31
△40
△38
△24
51
△4
△7
△8
34
14
28
△1
3
17
36
13
法⼈税等
営業CF
有価証券増減
有形固定資産増減
その他増減
投資CF
社債発⾏・償還
その他増減
財務CF
現預⾦増加額
2015年 9期平均
15
 まとめ
【第1段階(RESAS分析)】

「稼ぎ」、「雇⽤貢献」、「地域集積」の⾯から、宿泊業は函館市の中核産業の⼀つ。

函館市に宿泊する観光客数は増加傾向にあり、特に2016年は⼤幅に増加。宿泊単価も上昇しており、⾜元の
環境は⾮常に良好。

宿泊客がどこから来ているかを⾒ると、⾸都圏からが最も多く、次いで道内客。その他、東北からの来訪も
増加しており、北海道新幹線開業の効果も⾒られる。
海外客は、中国や台湾など東アジアが中⼼。タイやシンガポールなど、東南アジアからのウェイトも⾼い。

⼀⽅で、市外⼤⼿資本などの進出により競争は激化。⼩規模な地場企業は撤退を余儀なくされている。

他都市などと⽐較した市内企業の特徴として、付加価値率は⾼い⼀⽅で、売上⾼に⽐し従業員数が多い。
⾼いサービス品質維持のため、多くの⼈⼿を要していることがうかがえる。
【第2段階(抽出10社の平均財務データ分析)】

過去5年で総資産、売上⾼とも伸張。収益⼒も向上しており、全国同業の中⼩企業平均と⽐較しても⾼⽔準。

営業CFは安定しており、近年は好調な観光⼊り込みを背景に増加傾向。

3〜4年毎に⼤型投資を実施しており、宿泊客のニーズ変化に対応し継続的な投資を⾏っていると考えられる。

潤沢な資⾦を背景に、借⼊は圧縮を進めているが、直近(2015年)は⼤型投資に合わせ資⾦調達を⾏っている。
16
 課題、ソリューション

函館市の宿泊業企業は⾜元の業績は良好と考えられるが、今後も持続的に発展していくためには、例えば
以下のような経営課題(今後取り組むべき施策)も考えられる。

⾦融機関は、分析結果をもとに、企業と「経営課題」や「⽬指す将来像」などについて対話を深め、個々の
企業の実情に応じた適切なソリューションメニューを提案することで、「稼ぐ⼒」の強化をサポート。
経営課題
ソリューションメニュー
 設備投資
 融資⽀援
 公的補助⾦の活⽤
 サービスの差別化
 成功事例、他地域の動向等の情報提供
 ビジネスマッチング
 耐震化への対応
 IT化等による効率化
 省エネルギー投資
 地場⾷材の提供、⾼齢層への配慮(⾷事など)
 体験型観光サービスの提供
 閑散期の付加サービス強化
 地場の卸売企業などとの連携
 対外情報発信
 ビジネスマッチング
 ⼈材確保
 外部専⾨機関の紹介
 顧客リストの整備、メルマガ等による情報提供
 訪⽇客受⼊体制の整備、海外への情報発信
 労働条件・環境の整備
(処遇、健康管理、託児所などの側⾯⽀援)
 動線整理など現場カイゼンによる作業効率化
 コンサル、IT企業等との連携
17
 【参考資料①】地域経済分析システム(RESAS)とは
 地域経済に係わる、官⺠の様々なビッグデータ(産業構造、⼈の流れ、⼈⼝動態、等)を
グラフやマップで、わかりやすく「⾒える化」するシステム。
 地域産業の特⾊や、将来の⼈⼝推移などが把握でき、経営戦略の策定やマーケット調査の
基礎資料として活⽤できる。
 インターネットにより、誰でも利⽤が可能。
https://resas.go.jp/ (Google Chromeよりご覧ください)
【機能の⼀例】
産業マップ
観光マップ
⼈⼝マップ
売上⾼、従業者数などから、地域の
産業構造を把握。
携帯電話のGPSデータなどから、⼈の
流れやにぎわい、外国⼈観光客の
動向を把握。
⼈⼝推移や年代別の構成、将来予測
(2040年まで)などを把握。
※出典:経済センサス など
※出典:㈱Agoop など
※出典:国勢調査 など
18
【参考資料②】企業財務の概要
【企業活動のイメージ】
② 資⾦を運⽤(投資)して
① 資⾦を調達し
B/S
負債・純資産の部
流動負債
• 買掛⾦
• 短期借⼊⾦ 等
B/S
資産の部
どのように
調達?
P/L
何に
投資?
流動資産
• 現預⾦
• 売掛⾦
• 棚卸資産 等
固定負債
• ⻑期借⼊⾦ 等
③ 利益を上げる
利益
【企業成⻑のイメージ】
売上
費⽤
固定資産
• ⼟地、建物
• 機械設備
• 投資有価証券 等
純資産
• 資本⾦
• 利益剰余⾦ 等
投資した資産を元に
売上を⽴て
利益を上げる
利益を蓄積し、資産を増やすことで
会社が成⻑していく。
新資産
負債
新資産
負債
資産
負債
売上
費⽤
売上
利益
純資産
T期
既存
資産
既存
純資産
費⽤
既存
資産
利益
利益
利益
T+1期
既存
純資産
T+2期
19
【参考資料③】企業財務の概要
【キャッシュフロ-の概要】
営業CF・・・①
利益を上げる
営業活動による利益
売掛⾦の増減
在庫の増減
買掛債務の増減・・・等
投資CF・・・②
1
資⾦を投資
借⼊の増減
株式の発⾏ ・・・等
2
3
設備等の取得
有価証券の購⼊
貸付による⽀出 ・・・等
財務CF・・・③
営業
CF
4
資⾦を調達
5
6
7
現預⾦の増減
・・・①+②+③
8
+
+
+
+
-
-
-
-
投資
CF
+
+
-
-
+
+
-
-
財務
CF
⼀般的な状況
+
営業CFに加え、資産の売却と
借⼊により資⾦を調達。
将来⼤きな投資を計画中?
-
営業CFに加え、資産を売却し
借⼊を圧縮。
財務リストラを進めている。
+
営業活動CFに加え、借⼊をし
投資を実施。
将来への明確な戦略が⾒られる。
-
営業CFにより投資を⾏い、
同時に借⼊も圧縮。
強固な営業基盤を持つ。
+
営業CFのマイナスを、
資産の売却と借⼊で補填。
営業建て直しが急務。
-
営業CFのマイナスと借⼊返済を
資産売却で賄う。
過去の蓄積を切り売り。
+
営業CFマイナスと投資資⾦を
借⼊で賄う。
創業間もない会社に多い。
-
営業CFがマイナスだが、
投資を実施し、同時に借⼊を圧縮。
現預⾦の蓄積が厚い。
20
【本資料の問い合わせ先】
経済産業省北海道経済産業局
総務企画部 企画調査課
TEL:011-709-2311(内線2520、2521)
FAX:011-709-1779
E-mail:[email protected]
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