リサーチ TODAY 2017 年 2 月 10 日 みずほ総研試算で潜在成長率は1%近くまで上昇 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 みずほ総合研究所は、2016年12月に行われたGDPの基準改定を反映させると日本の足元の潜在成長 率は+0.9%と、基準改定前の推計値(+0.5%)から大きく上昇しているとの試算結果を盛り込んだ、潜在 成長率に関するリポートを発表している1。現在掲げられている実質+2%の成長目標からすると、0.9%と いう潜在成長率は依然低いが、これまでの日本経済に関する悲観的な見方を払拭するだけのインパクトは ある。今後、成長目標の達成には、官民が総力を挙げて第4次産業革命などの生産性向上に取り組む必 要がある。 ■図表:潜在成長率の推計値 1.8 (%) 1.6 改定幅 1.4 改定後 改定前 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 -0.2 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年度) (注)「生産関数アプローチ」による推計値。 (資料)内閣府などより、みずほ総合研究所作成 潜在成長率が上方修正された要因を3要素(潜在資本投入、潜在労働投入、TFP(全要素生産性))に 分析すると、潜在資本投入とTFPの上昇が寄与していたことが分かる。資本投入の増加は、アベノミクス開 始後の不動産関連投資や、省力化投資・R&D投資の増加を受けたものだ。TFPは今回上方修正されたが、 2000年代まで1%台の水準にあったことを考えれば、まだ改善の余地を残している。アベノミクスの成長戦 略がまだ十分な成果を挙げているとは言えないため、我が国は引き続き総力を挙げて第4次産業革命等 の生産性向上策に取り組む必要がある。また、労働投入には大きな変化がないが、今後この水準を上げる ためには女性の労働参加の拡大等を持続的なものにする必要がある。 1 リサーチTODAY 2017 年 2 月 10 日 ■図表:潜在成長率の寄与度分解 基準改定前 (%) 基準改訂後 潜在資本投入 潜在労働投入 TFP 潜在成長率 2.5 2.0 2.5 (%) 潜在資本投入 潜在労働投入 TFP 潜在成長率 2.0 改定後は 資本投入が持ち直し 1.5 1.5 1.0 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0 -0.5 -0.5 (年度) -1.0 90-95 95-00 00-05 05-10 10-12 (年度) -1.0 90-95 13-16 (注)「生産関数アプローチ」による推計値。資本投入は、 民間企業資本ストックの粗ベースの数値を、JIP デー 95-00 00-05 05-10 10-12 13-16 (注)「生産関数アプローチ」による推計値。 (資料)内閣府などよりみずほ総合研究所作成 タベースの情報を用いて純ベースに修正した。 (資料)内閣府などよりみずほ総合研究所作成 下記の図表は需給ギャップの推移を示す。基準改定に伴い、2016年7~9月期の需給ギャップは、▲ 1.1%から▲0.7%に上方修正された。デフレギャップが続くことから、今後も金融緩和が必要になるが、物 価水準の上昇には依然時間を要しそうである。また、デフレの脱却に向けても潜在成長率をより一層高め るための持続的な成長政策が重要になっている。 ■図表:需給ギャップ推移 (潜在GDP比、%) 1.0 0.0 -1.0 小幅な上方修正 -2.0 -3.0 改定幅 -4.0 改定後 改定前 -5.0 10 11 12 13 14 15 16 (年) (資料)内閣府などよりみずほ総合研究所作成 1 徳田秀信 「GDP 基準改定により潜在成長率は 1%近くまで上昇」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2017 年 1 月 27 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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