「頭蓋内胚細胞腫における(1)bifocal tumor の意義、(2)髄液細胞診陽 性症例の治療についての後方視的研究」について この度、当科(大阪大学医学部脳神経外科)におきまして、頭蓋内胚細胞腫の患者 さんの診断精度の向上や治療効果改善のため、「頭蓋内胚細胞腫における(1)bifocal tumor の意義、(2)髄液細胞診陽性症例の治療についての後方視的研究」と題した 多施設共同での臨床研究を行うことになりました。 1. 研究の概要 頭蓋内胚細胞腫瘍は、頭蓋内に発症する腫瘍の一つで、胚腫(ジャーミノーマ) がその 50〜60%を占めます。近年、国際グループによって頭蓋内胚細胞腫の診 断・ 治療・予後に関する指針が確立されつつありますが、以下の 2 つの問題につ いては、まだ解決されておりません。 (1)脳腫瘍の診断には、手術での腫瘍組織の摘出による診断、生検術が必要とな ります。本腫瘍は松果体や神経下垂体といった脳の深部に存在することから、生検 術には一定の危険が伴います。松果体と神経下垂体という場所に腫瘍が同時発生し た場合、 『尿崩症あり』 『腫瘍マーカー陰性』といった条件があれば、組織診断がジ ャーミノーマであり、生検術は不要という考え方があります。この仮説が正しけれ ば、組織診断のための手術を行わないで、治療を開始することでき、患者さんにと ってのメリットは大きいと考えられます。しかし、この仮説がどの程度正しいかど うかについては、検証はされておりません。 (2)ジャーミノーマにおいて、手術の前に行われた髄液細胞検査で陽性(脳や脊 髄の周囲を循環する髄液に腫瘍細胞が検出される)の場合があります。この場合、 脳と脊髄の両方に対して放射線治療を行うべきかどうかについては、決まった指針 がありません。 本共同研究の主研究施設である東北大学大学院神経外科学に診療録情報を収集 し、解析・検討することで、この 2 つの問題を解決することを目的とします。 2. 研究の対象 研究の対象となるのは、1990 年 1 月から 2015 年 12 月までに大阪大学医学部附 属病院脳神経外科で治療を受けられた以下の条件を満たす患者さんが対象となり ます。 (1) 『松果体部と神経下垂体部の病変が存在』 『尿崩症がある』 『AFP, HCG、HCGbeta などの腫瘍マーカー陰性』の 3 点を満たす患者さん ジャーミノーマ以外の症例の頻度を検討するため、頭蓋内胚細胞腫(ジャーミノー マ、胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫、混合性胚細胞腫瘍)以外にも、松果 体実質由来腫瘍や神経膠腫などが含まれる可能性があります。 (2)臨床的にまたは、病理学的にジャーミノーマと診断された患者さんで『髄液 細胞診疑陽性・陽性』あるいは、 『治療前に細胞診による評価がされており、その所 見に関係なく MRI にて脳室・脊髄などに播種を有する』 3. 研究の方法 各共同研究機関おいて診療録、画像、病理所見を後方視的に検討し、情報を収集 します。 収集する情報は(1)、 (2)に該当する患者についてそれぞれ以下を収集 し、解析を予定しています。 (1)に該当する患者さん 背景(性別、年齢、初診時の症候) 、初発時臨床検査結果(腫瘍マーカー値・髄 液細胞診) 、MRI 所見、病理所見、再発時の所見 (2)に該当する患者さん 臨床背景(性別、年齢、 ) 、初発時臨床検査結果(腫瘍マーカー値・髄液細胞 診) 、MRI 所見、病理所見、再発時の所見、再発までの期間 また、頭蓋内胚細胞腫コンソーシアムが中心になって行っている胚細胞腫の遺伝 子異常を検討する研究(課題名:分子プロファイリングによる新規標的同定を通じ た難治がん治療法開発:悪性脳腫瘍克服のための新規治療標的及びバイオマーカー の創出に向けた多施設共同研究による小児頭蓋内悪性腫瘍の遺伝子解析)で解析が 行われた患者さんについては、臨床情報と遺伝子異常の相関を検討するために頭蓋 内胚細胞腫コンソーシアム(代表 国立がん研究センター脳腫瘍連携研究分野)に 個人情報を除き匿名化された情報を提供します。 4. 研究結果の公表 この研究により得られたデータは非常に重要ですので、個人情報が特定できな いようにした上でデータを学会や学術誌で発表し、また厳正な審査を受けて承認さ れた研究者にのみ利用を許可された公的データテベースに登録して審査を経て許 可された研究者と情報を共有することがあります。 5. 個人情報保護に関する配慮 患者さんの試料や診療情報からは住所、氏名などは削られ新しく符号がつけら れます(匿名化)。これらの解析結果については、大阪大学医学部脳神経外科および 共同研究機関には守秘義務があり、患者さん及びご家族のプライバシーの保護には 十分注意いたします。匿名化された情報は厳重に保管します。したがって、学会や 学術誌などへの研究成果の発表またはデータベースへの登録などによって、患者 さんの個人情報が漏れたり、特定されたりすることはありません。 患者さんもしくはご家族がこの研究へのご参加を希望されない場合は、以下の 連絡先までご連絡いただけましたら、その方の資料は本研究に利用しないようにい たします。 6. 連絡先 本研究のお問い合わせ・紹介に関する連絡先は下記の通りです。また対象患者様 で当研究への参加を同意頂けない場合にも御連絡ください。 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-2 大阪大学医学部 脳神経外科 香川尚己、阿知波孝宗 FAX 06-6879-3659 TEL06-6879-3652
© Copyright 2024 ExpyDoc