2020 年東京オリンピック・ パラリンピックに係る調査団 報告書

ダイジェスト版
2020 年東京オリンピック・
パラリンピックに係る調査団
報告書
<2012 ロンドン大会レガシー>
<2016 リオデジャネイロ・パラリンピック大会>
渋谷区
■ 調査目的
1 史上最高といわれた 2012 ロンドン大会について、その開催準備、運営及び大会後のレガシー(ハード・
ソフト両面)などの調査を行う。
2 2016 リオデジャネイロパラリンピック大会の現地視察により、大会運営、おもてなしや大会気運などの調
査を行う。
3 2020 東京大会の開催準備や運営に係る課題を明らかにし、必要な施策を検討する。
■ 調査行程・内容
月日
1
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2
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3
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4
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6
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7
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8
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9月11日
(日)
9 月 12 日
(月)
9 月13日
(火)
9 月14日
(水)
9 月 15 日
(木)
9 月 16 日
(金)
行程
[羽田国際空港発]
[ロンドンヒースロー国際空港着]
(2)クィーン・エリザベス・オリンピック・パーク視察
ロンドン市
(3)ロンドン市内のバリアフリー状況
(4)スポーツ施設「SPACe」視察
(5)ロンドン市における障害者施策の事例検証
[ロンドンヒースロー国際空港発]
[リオデジャネイロガレオン国際空港着]
(6)マラカナ地区「文化プログラム」視察
(7)ウィルチェアーラグビー競技会運営・会場視察
(8)ジャパンハウス視察
(9)パラ卓球競技会運営・会場視察
(10)リオ交流活動「ジーコサッカーセンター」訪問
ロンドン市
移動日
リオデジャネイロ市
リオデジャネイロ市
[リオデジャネイロガレオン国際空港発]
[ロンドンヒースロー国際空港着]
(土)
[ロンドンヒースロー国際空港発]
(日)
移動日
(1)ニューアム区自治体訪問
9 月 17 日
9 月 18 日
備考
[羽田国際空港着]
移動日
移動日
*(1)~(10)は、報告番号です。
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(1)ニューアム区自治体訪問
視察の視点! 自治体の役割・大会成果やレガシー
○自治体の関わり
ロンドン大会の主要な舞台であったオリンピックパークは、イーストロンドンと言われた工業地域を再
開発したため、区は再開発事業として、会場整備に関与しました。「ホワイトエレファントは造らな
い」というコンセプトで、「無駄な建物は造らず、造ったものは、レガシーとして残す。」というもので
す。さらに、インクルーシブデザインを取り入れ、高齢者、障害者など多様な人々をプロセス(設計
や開発)の初期段階から積極的に巻き込み、会場整備を行ってきました。
○大会の盛り上げへ
大会を観戦しに行くことができない市民のために、区独自のライブサイトを開設しました。また、区
出身の選手たちは、社会貢献の一環として、ボランティア
で学校訪問やイベント出演を行いました。
○ボランティアの活躍
ボランティアは、大会の成功に大きく貢献し、市内の観光・
交通案内を行った「チームロンドンアンバサダー」、大会
運営を行ったボランティアは「ゲームズメーカー」と呼ばれ、
大会後もボランティアへの関心を高め、活動しています。
(2)クィーン・エリザベス・オリンピック・パーク視察
視察の視点! 大会後のスポーツ振興
○経過
オリンピックパーク(約 250 ヘクタール、南北 2.5 キロ、東西 1.0 キロ)は、2007年5月に建設着
工しました。生活圏の形成は20年程続き、現在はマンションやオフィスビルの建設ラッシュです。
公園は、2012年創立のロンドン・レガシー開発公社(LLDC)が所管し、現在4施設がオリンピッ
ク・パラリンピック後も利用されています。
○市民のスポーツ利用
①カッパーボックス(オリンピック…ハンドボール、パラリンピック…ゴールボール)
地域のスポーツセンターとして利用され、平日は主に学校使用し、週末は大会や文化・商業イベ
ントを行っています。
②ベロドローム(オリピック・パラリンピック…自転車トラック競技)
一般向けの自転車教室には、高齢者の姿も多くあり、イギ
リスでは自転車競技の人気が年々増加しています。
③アクアティックセンター(オリピック・パラリンピック…水泳)
市内の学校にはプールのないところが多く、1 か月で4万5
千人もの利用者で賑わっています。大会レガシーとして、
市民に上手く利用されている施設です。
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(3)ロンドン市内のバリアフリー状況
視察の視点! バリアフリー施策
○再開発による整備状況
キングス・クロス駅前でロンドン在住の松任谷愛介氏とお会いし、2008 年からの駅周辺の再開発
の状況についてご案内いただきました。広大な敷地に住宅、オフィス、レストランなどが建設され、
2011 年にはロンドン芸術大学セントラル・セント・マーティンズのキャンパスもできました。しかしなが
ら、新しく整備されたこのエリアに、視覚障害者用誘導ブロックが見当たりませんでした。
○誘導ブロックの違い
視覚障害者用誘導ブロックの考え方や基準が日本と相当異なる
ようです。
日本では警告(止まれ)を表す点状ブロックと、誘導(進め)を表す
線状ブロックがあります。右の写真は、シェイクスピア・グローブ座
前の遊歩道の写真ですが、「障害物(ベンチ)に注意せよ」という
ことでしょうが、誘導(進め)が設置され、その周りを回って塀にぶ
つかることになってしまいそうです。
また、視覚障害者は杖で排水溝を伝って歩くとのことです。視覚
障害者の誘導については制度や考え方に違いがあるようです。
(4)スポーツ施設「SPACe」視察
視察の視点! 障害者スポーツの振興
○施設概要
市北東部に位置し、体育館とトレーニングジムからなる小規模の施設で、倉庫には競技用の車椅
子が30台ほど保管され、障害者が手軽にスポーツに楽しむ環境を整えていました。
○車椅子バスケットボール体験
対応してくださったアミア―氏は、2 歳の時にポリオを患い、下肢に障害があります。我々は車椅子
操作とバスケットボール体験を行いました。そして、ボールを持って車椅子を動かすことが、至難の
業ということを実感しました。お話の中で、「健常者と障害者が交じり合って、車椅子バスケットボー
ルをしようと仲間に持ちかけた時、障害者の方から健常者とは一緒にできない、したくない」との反
応があったそうです。アミアー氏は、「それではだめ。障
害者も心を開いて、一緒に活動していかなければなら
ない」と言い続け、その後も健常者を受け入れるキャン
ペーンを実施したそうです。一方的な押し付けにならな
いように、双方が理解し合うことが大切であると再認識
した瞬間でした。心の障壁や社会の仕組みを変えてい
くには、すべての人が一緒に考え、共に違いを受容でき
ることが重要と強く感じました。
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(5)ロンドン市における障害者施策の事例検証
視察の視点! インクルーシブ・障害者対応
○アクセシブル環境センター (CRA)
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CRA は、2012 ロンドン大会の会場設計のコンサルティング等を行っ
た団体です。ハード面だけでなく、マネジメント等のソフト面にも関わり
さらに心臓障害等多様な人に受け入れられる設計を行っています。
○シェイクスピア・グローブ座
イギリスでは、障害は本人の機能障害よりも社会的障壁によっても
たらされるという「社会モデルの考え方」が広がっており、劇場でも障
壁を取り除く努力が求められているとのことでした。これまで 2 千人
の障害者を受入れ、3 ケ月ごとに、クレームをいただいた利用者か
ら意見を聴くなど、劇場スタッフが情熱ある対応をしています。
○テート・モダン美術館
2000 年のミレニアム事業のひとつとして発電所を建て替え、建築されたテート・モダン美術館を訪
れ、設計に関わった車椅子利用者のアナン氏とともに、バリアフリー検証を行いました。建物を新
設する際には、障害者が関わることが建設許可の条件となっていて、何か所か課題はあるものの
当事者の意見が、きめ細かく反映されていることが理解できました。
(6)マラカナ地区「文化プログラム」視察
視察の視点! パラムーブメント・文化振興
○概要
マラカナ地区のポルト・マラビーリャで、市内最大の文化プログラムを開催され、ライブサイト、パフ
ォーマンス用舞台、展示館などで、バリエーションに富んだプログラムが用意されていました。オリン
ピック・パラリンピックでは、文化プログラムも一体で実施され、そのムーブメントを高めています。
○運営状況
とても開放的な場所で実施され、良い雰囲気ですが、展示館以外は屋根のあるブースはほとんど
なく、雨天対策が必要と感じました。バリアフリーも十分な状況でなく、路面は石畳に近く、車椅子
等では散策が難しいようでした。さらに、ボランティアの配置も多くないとの印象を受けました。総合
案内所は設置されているものの、会場内での案内や
支援をする人は、数えるほどしか見かけませんでした。
しかし、会場内がとてもきれいに保たれていて、目に
ついたのが、清掃のボランティアです。ゴミの散乱や
たばこの吸い殻も全く落ちておらず、素晴らしい対応
には、「おもてなし」のひとつと感じました。
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(7)ウィルチェアーラグビー競技会場運営・会場視察
視察の視点! 大会運営体制・大会気運
○会場
オリンピックパーク内には9つの競技会場があり、イベントも行われ、とても賑わいがありました。ボラ
ンティアが各所に配置され、会場の広さと案内表示の少なさを補っています。我々が声をかけた
方はポルトガル語のみの対応で、言葉の壁を感じましたが、笑顔とボディランゲージが印象的でし
た。また、不安視されていたセキュリティ面では、会場内や周辺に国家治安部隊が配置され、事
前報道のような心配はなく、安全は確保されているようでした。
○大会運営・大会気運
日本対フランス戦の観客席は、7~8割埋まっていました。ブラジル人は自国が出場していない試
合でも大いに盛り上がり、日本の観客席付近では、一緒になって日本の応援をしていました。
また、ハーフタイム時には、声援の音量を計る「バロメーター映像」が大型ビジョンに映し出されるな
ど、会場の盛り上げを工夫している印象です。
日本代表選手が帰国後、インタビューしたところ、「ホームで
試合をしているようだった」と語っていて、東京大会での会
場の盛り上がりやパラリンピックの普及を期待されています。
また、大会進行等運営面については、組織委員会の管理
により、ほぼスケジュールどおりに進行されたと伺いました。
≪日本代表 念願の銅メダル獲得!≫
(8)ジャパンハウス視察
視察の視点! 日本文化・国民性の発信
○概要
東京 2020 大会を紹介するためのジャパンハウスは、オリンピック期間は 8 月 5 日~21 日、パラリ
ンピック期間は 9 月 7 日~18 日、バハ地区の複合文化施設を借りきって、開設されました。内部は
東京 2020 組織委員会、東京都、関係各府省庁、文化体験などの 7 つのエリアに、在リオデジェネ
イロ総領事館連絡室が設置されており、リオ在住者を中心に、約 8 万2千人が来場されました。
○日本文化・国民性の発信
東京都エリアで大会会場や東京のまちを紹介するPVでは、原宿や渋谷のスクランブル交差点な
どが紹介され、リオの市民にも渋谷の知名度はかなり上がったと思われます。日本の食を紹介す
る展示では、和食だけでなく、世界中で評判になっている各種
のラーメンや丼なども紹介され、多くの外国人が注目していまし
た。また、自治体エリアでは、各地域の名所や名産物が紹介さ
れ、日本国内の旅行をしているようで、日本人も楽しめる展示
となっていました。特に、印象的だったのは、各エリアの日本人
スタッフが「おもてなし」の心で、丁寧に接していることでした。
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(9)パラ卓球競技会運営・会場視察
視察の視点! 大会運営体制・大会気運
○会場
バハ地区のリオセントロ・パビリオン3まで、BRTを乗り
継いでの移動となりましたが、案内表示が非常に少な
く、親切な市民に教えていただき、辿り着きました。
○競技会
パラ卓球の対象は車いすや立位の肢体不自由者、知
的障害です。障害の種類や重さに応じて区分けされ、
クラスごとに競技を行います。
観客は4割程度でしたが、学校観戦があり、子ども達が終始大きな声で応援していました。
○ボランティア
ポルトガル語・英語・スペイン語・日本語の4カ国語に対応できる方もいましたが、卓球は中国人観
戦者が多いのですが、中国語対応ができる方はいませんでした。また、障害者対応について伺っ
たところ、障害者向けのスコアボードは1箇所あり、聴覚障害者には手話ボランティア、視覚障害
者には音声ガイドが流れるオーディオ機器を借しているそうです。ボランティアは皆、陽気で明るく
親切で、積極的な印象を受け、ブラジルの国民性を感じました。
(10)リオ交流活動「ジーコサッカーセンター」訪問
視察の視点! 渋谷とリオの子ども達の交流
○経過
渋谷区オリンピック・パラリンピック事業で連携しているNPO法人MERRY PROJECT及び風見
聡氏のご協力により、渋谷区とリオデジャネイロの子ども達との交流機会を持つことができました。
○渋谷からリオへ
東京都「世界ともだちプロジェクト」で学習・交流対象国がブラジルである笹塚小学校と、事前学習
を行った加計塚小学校の児童が作成したメダル、フラッグ、ビデオメッセージを届けました。
○リオから渋谷へ
元サッカー日本代表監督のジーコ氏が主宰するジーコサッカーセンターにて、交流活動が行わ
れ、ジーコ氏(日本滞在中に笹塚在住)からは、区長と渋
谷区の子供たちに、「交流への感謝と、東京大会の成功
を応援します!」と、メッセージをいただきました。
また、メダルづくりを行ったリオの子ども達からは、「友達に
なれればうれしいと思って作りました。」「日本はテクノロジー
が進んでいて、美しい国だと思います。」「いつかは日本の
選手とサッカーをやりたい。」と笑顔で感想をもらいました。
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東京オリンピック・パラリンピックに係る調査団報告書<ダイジェスト版>
平成 28 年 10 月
【記録・編集】東京オリンピック・パラリンピックに係る調査団
オリンピック・パラリンピック担当部長 安蔵邦彦
オリンピック・パラリンピック推進主査 田中豊、主事 小島美華
福祉部障害者福祉課長 早川淳 教育委員会事務局生涯学習・スポーツ振興部スポーツ振興課長 富井一慶
主事 上田理紗
【発 行】渋谷区オリンピック・パラリンピック推進担当
〒150-8010 渋谷区渋谷 1-18-21 渋谷区仮庁舎