不在者投票制度について

不在者投票制度について
質問
下記の理由により、住所があるA市から離れて暮らしているため、選挙の当日、投票所へ行くこ
とができない場合にどのような投票方法がありますか。
1 職務や業務に従事中の場合
2 入院加療中の場合
※質問者はA市の選挙権を有しており、選挙人名簿に登録されています。
回答
初めに制度についてご説明します。滞在先で投票をする方法として、不在者投票という制度が
あります。
一般的な不在者投票をすることができる者は、公職選挙法施行令(以下「令」という。)第 50 条
第 1 項において、選挙の当日、公職選挙法(以下「法」という。)第 48 条の2第1項各号に掲げる一
定の事由に該当すると見込まれる選挙人で、その登録されている選挙人名簿の属する市区町村
以外の市区町村において投票しようとする者又は船舶、病院、老人ホーム、原子爆弾被爆者養
護ホーム、国立保養所、身体障がい者支援施設、保護施設、刑事施設、労役場、監置場、留置施
設、少年院、少年鑑別所若しくは婦人補導院において投票をしようとする者です。
「一定の事由」とは、法 48 条の2第1項第1号から第6号までに掲げる以下の事由をいい、この
いずれかに該当すると見込まれるときは、不在者投票を行うことができます。(なお、同項第3号
及び第6号の規定は、「公職選挙法及び最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律」
(平成 28 年法律第 94 号)によって改正されており、以下では、改正後の規定を記載しています。)
第1号事由
「職務若しくは業務又は総務省令で定める用務に従事すること。」
「総務省令で定める用務」とは、「葬式の喪主等冠婚葬祭の主宰をする者、その者の親族そ
の他社会通念上これらの者に類する地位にあると認められる者が当該冠婚葬祭において行
うべき用務」とされており、この用務についても、従事する場所に関わらず、不在者投票がで
きます。
第2号事由
「用務(前号の総務省令で定めるものを除く。)又は事故のためその属する投票区の区域外に
旅行又は滞在をすること。」
選挙の当日何らかの用事があって投票区の区域外に旅行又は滞在をすることが見込まれる
場合には、不在者投票ができます。
第3号事由
じょく
「疾病、負傷、妊娠、老衰、若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難で
あること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院、少年鑑別所若しくは婦人補導院に収容さ
れていること。」
第4号事由
「交通至難の島その他の地で総務省令で定める地域に居住していること又は当該地域に滞
在すること。」
※本号の該当地域は大阪府内にはありません。
第5号事由
「その属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していること。」
第6号事由
「天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であること。」
以上のいずれかの事由に該当すると見込まれる場合には、以下の方法により不在者投票がで
きます。(なお、ここで紹介する一般的な不在者投票のほかに、郵便等による不在者投票、国外に
おける不在者投票、洋上投票、南極投票があります。)
では、具体的に一般的な不在者投票の投票方法について、説明していきます。
1 職務や業務に従事中の場合
質問者(選挙人)は、A市の選挙人名簿に登録されているが、B市に滞在している場合を想
定して回答します。
この場合、先に述べた第1号事由により、不在者投票ができます。以下、不在者投票の方
法について説明します。
(1)投票用紙及び投票用封筒の請求
選挙人は、選挙期日の前日までにA市の選挙管理委員会の委員長に対して直接に、又は
郵便等をもって請求します。なお、選挙期日の告示(公示)日前においても投票用紙等の請
求をすることができます。
請求にあたっては、選挙の当日自らが該当すると見込まれる事由を申し立てるとともに、そ
の申立てが真正であることを誓う旨の宣誓書と請求書が必要です。
A市の選挙管理委員会が選挙人名簿との対照及び提出書類の審査を終えた後、投票用紙、
投票用封筒(内封筒・外封筒)及び不在者投票証明書が交付されます。
(2)投票するときの手続き
交付された書類を持ってB市の選挙管理委員会へ行き、不在者投票を行います。具体的に
は、選挙人は、不在者投票管理者に対して、交付を受けた投票用紙、投票用封筒(内封筒・
外封筒)及び不在者投票証明書を提出します。不在者投票管理者は、これらを点検後、投票
用紙等を返付しますので、選挙人は所定の記載場所で投票用紙に候補者氏名等を記載しま
す。その後選挙人は、記載した投票用紙を、まず投票用内封筒に入れて封をし、さらに投票
用外封筒に入れて封をしたうえで、投票用外封筒の表面に署名します。そして、不在者投票
管理者に提出します。この際、不在者投票証明書の入った封筒を選挙人自ら開封したり、選
挙人の自宅等で投票用紙にあらかじめ候補者の氏名等を記載すると投票ができなくなりま
すので、注意が必要です。
不在者投票ができる期間は、選挙期日の告示(公示)日の翌日から選挙期日の前日まで
です。なお、投票が可能な時間は、B市が選挙期間中の場合は、午前 8 時 30 分から午後 8
時まで(ただし、B市の選挙管理委員会が開始時刻又は終了時刻を変更している場合には、
その時刻)、B市が選挙期間中でない場合は、B市の執務時間中となります。
B市では、不在者投票管理者が投票用外封筒に、投票年月日及び投票場所を記載すると
ともに、不在者投票管理者の欄に職名及び氏名を記入し、立会人は、署名(又は記名押印)
をします。不在者投票管理者は、手続きが終わった投票用外封筒を他の適当な封筒に入れ、
不在者投票証明書とともに、直ちにA市の選挙管理委員会の委員長に送付します。
2 入院加療中の場合
質問者(選挙人)は、A市の選挙人名簿に登録されているが、C施設に入院中の場合を想
定して回答します。
この場合、先に述べた第2号又は第3号事由により不在者投票ができます。都道府県選
挙管理委員会が指定している施設で入院又は入所していれば、施設内にて投票することが
できます。以下、不在者投票施設(※1)での不在者投票の方法について説明します。
(1)投票用紙及び投票用封筒の請求
請求は、上記1(1)と同様に選挙人自らがA市の選挙管理委員会に請求することも可能で
すが、C施設の長が選挙人に代わって請求する方法が一般的です。その場合、選挙人は代
理請求をしたい旨を不在者投票管理者(※2)(一般的には施設の長)に依頼し、不在者投票
管理者は選挙人に代わってA市の選挙管理委員会に対して請求します。
(2)投票するときの手続き
選挙人は、C施設において、不在者投票管理者の管理下で告示(公示)日の翌日から選挙
期日の前日(土、日、祝日を含む。)午前 8 時 30 分から午後 5 時までの間で投票することが
できます。選挙人は投票用紙等の点検を受けた後、所定の記載場所で投票用紙に候補者氏
名等を記載します。その後、選挙人は、記載した投票用紙を、まず投票用内封筒に入れて封
をし、さらに投票用外封筒に入れて封をしたうえで、投票用外封筒の表面に署名します。そし
て、不在者投票管理者に提出します。このとき、不在者投票管理者は、投票用外封筒に投票
年月日及び投票場所を記載するとともに、不在者投票管理者の欄に職名及び氏名を記入し、
立会人は、署名をします。不在者投票管理者は、手続きが終わった投票用外封筒等を他の
適当な封筒に入れ、直ちにA市の選挙管理委員会の委員長に送付します。
参考
※1 不在者投票施設の指定について
都道府県選挙管理委員会の指定する不在者投票施設でなければ、当該施設内で投票を
することはできません。主な指定施設としては、令 50 条の病院にあっては病院又は介護老人
保健施設、老人ホームにあっては、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホ
ーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム、身体障がい者支援施設にあっては障がい者支
援施設のうち、専ら身体障がい者を入所させるもの又は福祉ホームのうち、専ら身体障がい
者を入所させるもの、保護施設にあっては救護施設又は更生施設があります。
※2 病院等の不在者投票施設における不在者投票管理者
不在者投票施設における不在者投票は、その指定施設の施設長(病院にあっては、院長)
が不在者投票管理者となります。ただし、候補者となった施設長や外国籍の施設長は、不在
者投票管理者となることはできません。
※3 期日前投票と不在者投票との比較
不在者投票(※)
期日前投票
名簿登録地で
投票する不在者投票
名簿登録地以外で
投票する不在者投票
選挙期日に仕事や
選挙期日までに18歳にな
レジャーなどの用
旅行・出張等で遠隔地
に滞在している方
17歳の方
行けない方
主な対象者 事があり、投票に るが、投票日においては
不在者投票施設で
投票する不在者投票
郵便等で
投票する不在者投票
病院等に
入院加療中の方
一定の要件に
該当する方
公職選挙法第48条の2第1項第1号から第6号までに該当すると見込まれる者
例えば
○仕事や親族の冠婚葬祭などの予定がある方
○レジャーや買物などの私用で、投票日に投票区(投票所の区域)の外に外出される方
○病気やケガ、妊娠などの理由で歩けない方
○引っ越しなどをして、他の市町村に住んでいる方
など
要件
投票期間
選挙期日の公示日(又は告示日)の翌日から選挙期日の前日までの間
名簿登録地の
各市区町村に
設けられる
期日前投票所
投票場所
基本的な手続き
は、選挙期日の
投票手続き
投票所における
投票と同じ。
選挙権
認定
の時期
○身体障がい者手帳
や戦傷病者手帳を持っ
ている方のうち一定の
要件に該当する方
○介護保険の被保険
者証を持っている方で
要介護5の方
選挙権の有無
は、期日前投票を
行う日に認定され
る。
市区町村選挙管理委
員会が設置する
不在者投票記載場所
滞在地の市区町村選 指定を受けた病院や老
挙管理委員会
人ホームなど
1.名簿登録地の市区
町村選挙管理委員会
1.名簿登録地の市区 に、直接又は郵便等で
町村選挙管理委員会 投票用紙等を請求す
に、直接投票用紙等を る。
請求する。
2.交付された投票用
2.交付された投票用 紙等を持参して、滞在
紙等で投票を行う。
地の市区町村選挙管
理委員会で投票を行
う。
自宅等選挙人
がいる場所
1.名簿登録地の市区
町村選挙管理委員会
投票用紙等を選挙人 に投票用紙等を請求す
自ら又は施設長等を通 る。
じて請求し、投票は、 2.交付された投票用
施設長等の管理する 紙に記載し、これを郵
場所で行う。
便等によって名簿登録
地の市区町村選挙管
理委員会に送付する。
選挙権の有無は、選挙期日に認定される。
※不在者投票には、この他に、国外における不在者投票、洋上投票、南極投票があります。
[参考文献]
選挙管理研究会編 「期日前投票及び不在者投票事務ノート」((一財)地方財務協会 平成 28 年)