アナリティクスは革新を続け、 ますます身近になる

初 級
なるほど!納得
アナリティクス ポイントのポイント
対象
データ分析を必要とする業務部門
第 9 回[最終回]
アナリティクスは革新を続け、
ますます身近になる
藤沼 貴士
株式会社イグアス
テクニカル&クラウド事業部
テクニカル推進部 部長
私はバスで通勤しています。 私鉄系のバ
機能としては、グラフやダッシュボードなど
てきたことである。とくにデータマイニング
スですが、スマホのアプリから運行状況を見
見える化のためのレポート、 非定型検索、
分野で顕著な動きで、 アルゴリズムの内容
ることができます。朝は時刻表どおりに運行
OLAP、 KPIなどの指標に対するアラート、
など知らなくても分析用データを流し込みさ
されていることもあれば、1台だけ遅れてい
もしこうだったらどうなるかというシミュレー
えすれば自動的にアルゴリズムを選択し、マ
る場合もあり、リアルタイムに状況がわかり
ションの what if 分析などがある。
イニングを実行するという製品である。ユー
ます。
もう1 つは、Business Analytics (BA)。
ザーは結果を見て、もし知りたければそのア
また、 いつも乗車するバス停へのバスの
各種アルゴリズムによるルール・パターンの
ルゴリズムの名称や内容を確認できる。
到着までの時間がわかるので SNS で情報交
発見と、傾向を捉えてグループ分け/セグメ
IBM SPSS Modeler で も、 SPSS が 自
換したり、 次に来るバスが遅延していると絶
ント分けし、 将来予測を行うのが主な使い方
動選出したアルゴリズム候補のなかからユー
対に混み合っているので、それをパスしてそ
である。
「データマイニング」 はこの分野に
ザーが選択できる機能(自動分類ノードなど)
の次に乗ったりしています(すごく空いてい
含まれる。
があるが、 ユーザーの手間を省くのが主目
て座れる確率が高い!)。 つまり、 朝一から
そしてこれまでは、 世の中の製品一般が
的で、 マイニング行為そのものをオートマ
現状のリアルタイムレポートと予測に基づき
BI用とBA用に分かれていた。しかし最近は、
ティックにするものではない。もっとも、 マ
アクションを決めているというわけです。ア
1 つのツールで両方の機能をカバーする製
イニング作業がオートマティックでよいのか
ナリティクスは、このように人々の生活に自
品が登場している。
という疑問はあるが、ユーザーから見てデー
然に入り込み、 利便性をもたらすのが真髄
確かに、BI でレポートを行い、それを見て
タマイニングの敷居を下げることにはなって
です。
アナリティクス製品
(ツール)
の変化 「この後どうする?」 と考えるのは自然な流
いる。
れだろう。こうした意をくんで、 1 つのツー
とはいえ、 自動選択されたアルゴリズム
ルの同一インターフェースでレポートから
によるデータマイニングの結果が、 課題の
データマイニングまでの一貫した分析環境を
解決や目標の達成につながっているか、 業
提供する製品が出てきている。こうしたツー
務に対して有効か実践的かといった確認は、
データの分析は、 大きく2つのタイプに分
ルの変化が、 現実のものとなっている。
どのような場合であれ必要になるだろう。た
類される。
もう1 つの変化は、 データ分析のための
とえば、データマイニングの結果とKKD(勘・
1 つ は、 Business Intelligence (BI)。
アルゴリズムを自動的に選択する製品が増え
経験・度胸)とを照らし合わせてみるのも1
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基 礎を鍛える
初 級
対象
データ分析を必要とする業務部門
つの方法だろうし、 CRISP-DM のサイクル
データの種類(分析するモノ)が急速に増
なっている。たとえば、ゴルフショップでク
でモデルをブラッシュアップしていくことも必
えているのだ。
ラブを購入した顧客がシューズも手に取って
要だろう。
たとえば、センサ・データや画像・動画デー
気にしていたことを映像やセンサ・データで
つまり、ツールの進化によってツールの操
タ。センサやカメラによって捉えられた顧客
確認したら、 会員カード情報との連携によっ
作時間は短縮できるが、データマイニングそ
やスタッフの動きをデータとして蓄積し、 傾
て、シューズのクーポンを送付するというよ
のものの方法やプロセスは変わらない。 利
向を分析し、 対策や施策を実行する「動線
うな取り組みである。マーケティングの観点
便性を高める機能によって作業が効率化して
分析」 や 「動体分析」 が、 大きな効果を
ではすばらしい仕組みだが、 顧客の立場か
も、 人間(分析担当者)の意図や考察の介
生んでいる。
らすると怖い気もする。
在が不可欠ということだ。ツールは便利な
あるスーパーでは、 顧客の動線データを
方向に変化しているが、
「何のためにデータ
もとに、 時間帯ごとにスタッフを配置させる
マイニングを行っているか」を見失わないこ
レジの数や、 どのレジを開けるかを決め、
とが重要である。
顧客満足度を下げずに業務効率を上げてい
アナリティクスはどんどん身近になってい
る。また、 動線が少ない部分にはデジタル
る。
サイネージなどでお勧め商品を表示し、 顧
一昨年、 私のクレジットカード番号が盗ま
環境の変化
分析する
「モノ」
の変化
環境の変化といっても、さまざまある。ツー
ルの変化によって分析に携わる人の層も変化
身近なアナリティクス
客の動きを変えて購買につなげる例もある。
れるということがあった。 ある日クレジット
2020 年の東京オリンピックに向けては、
カード会社から電話があり、 インターネット
監視カメラと連動したセキュリティシステム
の買い物で、 それまでの買い物履歴にない
の研究が進んでいる。 人が 「歩いている」
パターンが発見されたので、 本当に購入し
「しゃがみこんでいる」「止まっている」「倒
たものか確認したい、とのことだった。 そ
ノ」 の変化に触れてみたい。
れた」「何か物を置いた」 などの振る舞い
して、 それはまさに心当たりがない購入で、
分析する「モノ」 は、 本連載でも紹介し
を検知し、 防犯やセキュリティ向上につなげ
「カード番号が盗まれているのは明らか」と
たように、 実績データ、 Web 上にあるSNS
ようという例である。
なってカードの再発行となり、 金額の損失も
のデータ、 Web アクセスログなどである。
また最近は、カメラやセンサは防犯だけで
ない形で一件落着した。アナリティクスは身
これからわかるように、 分析の対象となる
なく、マーケティングにも活用される時代に
近になっているという例である。冒頭のバス
してきているが、ここでは分析対象となる「モ
図表
アナリティクスをめぐる変化
ツールの変化
・統合化
・自動化(アルゴリズムの自動選択)
身近になる
アナリティクス
・ビジネス
分析者・
使い手の変化
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・生活
分析対象の変化
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のシステムもその一例だろう。
アナリティクス ポイントのポイント
さて、 連載タイトルの 「アナリティクス 指針を得る必要がある。 つまり、 課題や目
グの役割であり、
「アナリティクス ポイント
標を見据えながらKKDを客観視し、 スピー
のポイント」 であると思っている。データマ
ドをもって指針を得、 その指針をもとにビジ
イニングを含めてアナリティクスは身近に、
ネスが拡大するためのアイデアや施策を考
我々のビジネスや生活に不可欠になってきて
えることが重要なのである。
おり、 今後も進化していくと確信している。
そういった環境を作るのがデータマイニン
とても楽しみである。
ポイントのポイント」について記してみたい。
今、 企業やその経営者が求めているもの
は、
「これからどうするか?」「こういう場合
は何をすればよいか?」「こうしたらどうなる
か?」といった未来の振る舞いについての指
著者プロフィール
藤沼 貴士 氏 ◉ 1966 年、栃木県栃木市生まれ。1989 年、日本ビジネスコンピューター(現 JBCC)入社。
AS/400 のインフラ SE を担当後、CRM ソリューションのプロモーションを担当し、その際初めてアナリティク
針である。
ス(BI)製品に関わる。2007 年よりイグアス。ISV ソフトウェア、クラウド、アナリティクス製品を担当。特に
未来の振る舞いに関しては、スピーディに
いわゆるオヤジロッカー。年1回開催される
「イグアス芸術祭」
のプロデューサーも務める。
アナリティクス分野を深掘りし、パートナー向けサイトにて月 1 回、コラムを執筆中。趣味はギターとバンド、
http://www.imagazine.co.jp/
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