千葉銀行上海駐在員事務所

平成29年1月号
中国の電力政策について
千葉銀行上海駐在員事務所
1.はじめに
電力分野は、国民の生活に大きな影響を与える公益性が高い分野であり、かつ、
国のエネルギー政策とも密接にかかわるものです。日本では、電力小売りの自由化等
の規制緩和が行われているほか、原子力発電政策の今後などにも注目が集まっています。
中国では、電力事業の効率化を目的に電力事業改革が行われてきたほか、昨年 11 月
には、環境問題にもフォーカスした政策として『電力発展 5 ヵ年計画』が発表されて
います。
今月は、中国の電力政策について、みてまいります。
2.中国の電力事業について
(1)発電・送電態勢
中国の電力事業はもともと、中国国務院(中央政府)の電気事業運営部門が一括
して管轄していました。
1997 年の行政改革により電力事業は政府から分離され、発送電を行う国有企業の
「中国国家電力公司」が設立されました。また 2002 年、同社を分社化し、発電事業
を行う国有企業 5 社(中国華能集団公司・中国大唐集団公司・中国華電集団公司・
中国国電集団公司・中国電力投資集団公司)と、送配電業務を行う国有企業 2 社
(中国国家電網公司・中国南方電網公司)という現在の態勢となりました。
(2)電力料金制度
電力価格については政府が管理しています。但し、管理の対象は主に販売価格で
あり、コストの把握が十分になされていないことが、問題視されていました。
中国国家発展改革委員会(国内経済の研究や調整などを行う機関、以下「発革委」)
は 2015 年、電力価格の透明性を高めるため、事業者に対し事業コストの申告を義務
付けるとともに、企業・消費者などの消費者が電力価格の交渉をするためのプラット
フォームを設立しました。政府の発表によると、この改革の実施により、昨年上半期
(1~6 月)の企業向け電気料金の引き下げ額が、合計 470 億元(約 8,000 億円)とな
るなど、一定の効果が表れています。
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3.電力発展 5 カ年計画について
発革委は昨年 11 月、電力事業発展に向けたロードマップである「電力発展 5 カ年
計画」を発表しました。
【電力発展 5 カ年計画(主な内容)】
施
策
目
標
等
発電能力の向上
・ 発電能力を 20 億 kW へ引き上げる。
西部(電力が豊富にある地
域)と、東部(電力消費量
の多い地域)間での電力の
有効活用
・ 西部と東部間を結ぶ「西電東送ルート」上に、新たに
1 億 3,000 万 kW 分の送電網を建設する。
再生可能エネルギー
の活用
・ 再生可能エネルギーによる発電能力を 7 億 7,000 kW
前後、発電源全体に占める比率を 40%へ引き上げる。
火力発電施設への制限
・ 新 設 す る 火 力 発 電 施 設 で の 石 炭 消 費 量 を 1kWh (※ )
あたり 300g以下へ引き下げる。
・ 既 存 火 力 発 電 施 設 で の 石 炭 消 費 量 を 1kWh あ た り
310g 以下へ引き下げる。
(※)1kWh は、1kW(1000W)の機器を 1 時間運転したときの消費電力量
なお、中国の電力計画は、エネルギー政策の一部であるほか、環境対策上の中心的
な要素にもなっています。ここ数年、大気汚染警報のうち最も深刻な「赤色警報」が
首都北京市で頻発されるなど、大気汚染問題は中国政府にとって喫緊の課題です。
発革委は昨年 6 月、大気汚染対策として汚染物質排出量の削減策(2020 年までの削
減目標:煙・ちり▲30 万トン、二酸化硫黄▲210 万トン、窒素酸化物▲70 万トン)等
を示しています。電力に関連する数値目標としては、家庭や企業で最終的に消費
されるエネルギーに占める電力の割合を現在の 25%から 27%まで増加させる(石油や
石炭など汚染物質を排出するエネルギーからの転換を意味し、電気自動車の導入等が
その例)としており、「電力発展 5 ヵ年計画」は、こうした環境対策にも則した内容
です。
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4.おわりに
電力事業の改革は中国では、国有企業改革の側面も持っています。中国は社会主義
国を目指して誕生(1949 年建国)したため、電力を含めた主要産業のほとんどで国家
(もしくは国有企業)が独占的な地位を有しています。中国の黎明期は、こうした
国有企業が経済発展を支え、雇用創出など重要な役割を担ってきましたが、近年では、
その非効率性が問題となっています。
与党である中国共産党は昨年 12 月に行われた定例会議において、2017 年の重点政策
の 1 つとして国有企業改革の強化を挙げ、国有企業に民間資本を導入する「混合所有
制」を促進していく方針を示しました。電力分野でも民間資本を積極的に活用すると
しており、効率化へ向けた取組と外資企業へのビジネスチャンスの拡大が期待され
ます。今後も中国の電力政策には、さらなる注目が集まるでしょう。
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検討されているお客様は、最寄りの取引店を通じ、お気軽にご相談下さい。
以
上
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