4.新技術説明会について(実施後フォローアップ、来年度の実施) 【産連展開部(産学連携支援G)】 新技術説明会 平成29年1月31日 科学技術振興機構 周囲環境の変化に影響を受けない 光無線通信システム 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門 大洗研究開発センター 照射試験炉センター 研究副主幹 武内 伴照 1 はじめに 光無線通信について: 以前は天候などの妨害により効率が悪いとされていたが。 ところが近年、 ・技術進歩でギガビット毎秒程度の通信速度が可能。 ・電波無線通信の需要増により電波資源が逼迫。 等の観点から有力な近距離通信手段として注目されている。 また、電波法に言う電波でないため、無線局免許が不要。 2 新技術の開発経緯 -目的と適用対象- 軽水炉の過酷事故時における監視システムの要素技術開発の一環として 使用済燃料プール等における計測情報の無線伝送を検討 使用済燃料貯蔵プール等 (信号線) 計器 受信機 無線通信 発信機 センサ 無線伝送技術(水中)の適用対象 水中でも高い信頼性で信号を伝送できる無線システムの高 度化に向けた要素技術の整備に着手 3 新技術の開発経緯 方式 項目 通信距離 利点 欠点 水中での使用例 -水中無線伝送技術の比較- 電波 光 音波 数メートル 数十メートル 数百メートル ・汎用部品が多い。 ・伝送速度が速い。 ・電磁ノイズを受けない。 ・通信距離が長い。 ・可視光は水中での減衰が 小さい。 ・伝送速度が速い。 ・消費電力が大きい。 ・外乱光ノイズの懸念あり。 ・伝達速度が遅い。 ・低周波数帯のみ使用 ・光の散乱が大きい。 ・発信器が大きい。 可能。 水中トランシーバ※1 ダイバー用通信器※2 水中トランシーバ※3 ※1 http://www.wfs-tech.com/、※2 http://www.naka-lab.jp/product/uvlc.html、※3 http://www.fuji-us.co.jp/products/sea/index.html 可視光は水中での減衰が小さく比較的速い伝送速度を有する ことから水中における無線伝送方式に選定 4 新技術の開発経緯 -送受信機の設計- 発信側及び受信側素子としてそれぞれLEDとフォトダイオードを選定して 水中5mの無線通信が可能であることを確認 発信側 受信側 発光素子(LED) フォトダイオード ・データ量⇒大 ・伝送方式⇒高度化 発光素子(LED) 2次元マトリックス ・光軸⇒余裕度大 ・LEDアレイを撮像、 データ処理可能 2次元イメージセンサ (カメラ) 発信側・受信側ともに素子の2次元マトリックス化を検討。 (受信側は2次元イメージセンサを備えたカメラシステムを採用) 5 従来技術とその問題点 ①2次元LEDの発光色を変じて伝送するもので環境適合でない。 ②カメラ視野角の外側寄りの受信条件が厳しい場合も2次元符号 が見える分解能にした伝送であり、2次元符号が判読できないと きは伝送できない。 ③環境適合型であるが、受信側から受信状態を送信側に知らせ て、送信側の2次元符号の並列度を変化させて対応するもの で、自己環境適合ではない。 ④発信器と受信器間の位置関係が変わることや障害物の存在 による機器IDの取り違えの可能性がある。 LED2次元マトリックスとカメラを用いた既存の無線伝送技術は、 いずれも予測不能な環境に対する環境適合性等に問題がある 6 新技術の特徴 ①従来:2次元LEDの発光色を変じて伝送するもので環境適合でな い。 ②従来:2次元符号が判読できないときは伝送できない。 新技術→単色光を用いてパターン信号による高密度情報送信を行うととも に、周囲環境の変化に備えてLEDマトリックス全体の点滅信号に よる低密度情報に変換して重畳して同時送信。 ③従来:受信側から受信状態を送信側に知らせるもので自己環境適合では ない。 新技術→低密度情報に高い環境適合性を付与した双方向通信を行わない 自己環境適合型の単方向通信で周囲環境の変化に依存しない 情報伝送を実現。 ④従来:発信器と受信器間の位置関係の変化等による機器IDの取り違えの可能性があ る。 新技術→機器IDをカメラ画像の物理的空間情報と直接的に関連付けること によって取り違いを防止。このため、時間分割多重は不要で情報 転送時間を短縮。 新技術により従来技術の問題点の克服が可能 7 新技術を用いた無線通信システム構成例 水中における無線通信方式として新技術を用いたシステムを設計 LEDパターン信号 受信画像をリアルタイムに解析 してセンサ計測値に変換 送信信号をカメラ で受信 パターン1 パターン2 各LEDの点灯・消灯させるパターン を変化させてセンサ計測値を発信。 LED点滅信号 多数のLEDを配置 温度計等の 各種センサ 点灯 消灯 配置したLED全体が点滅する時間間隔 や回数等によりセンサ計測値を発信。 8 新技術を用いた試作システムの基本設計 新技術の有効性を検証するため水中における無線通信システムを試作 LEDマトリックスサイズとカメラ画像領域 LEDマトリックス CMOSセンサカメラ LED数量:14個×14個 有効画素数:2048×1536画素 サイズ:11cm×11cm フレームレート:15fps LEDマトリックス読取領域の認識方式 ①LEDマトリックス画像領域を平行四辺形として歪 み量から発光点を補正して情報を抽出。 (L1) (X4,Y4) ②周縁40個のLEDをマトリックス枠の歪み算出に使 用し内側の12×12個のLEDを情報転送に使用。 (X3,Y3) (L2) ③識別するパラメータはLEDパターンの中心座標 (X0、Y0)、転回角度(Φ)、二つの辺の長さ (L1、L2)と、一つの対角距離(L3)の5つ。 ④5つのパラメータより余弦定理と三角関数変換を 使用してマトリックス内の各々のLED座標を取得。 (X0,Y0) (L3) (X1,Y1) LED 点灯 (X2,Y2) LED 消灯 情報 LED 9 新技術の有効性検証試験 水中における環境変化として気泡が生じた場合を再現した試験を実施 映像データ処理PC カメラ(受信機) 受信した映像をPCで復号化処理 水・気泡導入バルブ 可変長パイプ(2~6m) 縦置き1m+横置き5m LEDマトリックス(送信機) 10 新技術の有効性検証結果 LEDによるパターン信号及び点滅信号を同時送信するよう設計した通信 システムについて水中環境の変化に対する伝送信頼性検証試験を実施 1.0 気泡無し 気泡 14個/min 伝送エラー率 0.8 パターン信号 点滅信号 0.6 0.4 伝送エラー率を 大幅に低減 0.2 0.0 気泡 84個/min 気泡 156個/min 気泡の個数による受信側 カメラ画像の違い 気泡個数/min LED2次元マトリックスが読取不能な状況でも自己環境適合的に 時間軸に多重した点滅信号は十分に通信可能なことを実証 11 想定される用途 ○ 原子力プラント状態の遠隔監視 ○ 災害現場における無線通信による情報取得 ○ 水中における高速無線通信 その他、電波法による無線局免許を要していた 通信の代替的利用など 12 企業への期待 ○ 適用可能用途の提案や要望(原子力分野以外 のニーズへの対応も想定) ○ 通信分野に強い企業との共同研究 ○ 利用相談等を通じた技術の改良や産業分野 への展開 本技術の利用の可能性についてご検討・ご提案 いただけますと幸いです。 13 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 • 出願番号 • 公開番号 • 出願人 • 発明者 :光無線通信装置、光無線通信方法 および光無線通信システム :特願2014-195743 :特開2016-66957 :国立研究開発法人日本原子力研究 開発機構、池上通信機株式会社 :武内伴照、上野俊二、柴田裕司、 柴垣太郎、野沢省吾 14 お問い合わせ先 国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 研究連携成果展開部 TEL :029-282-6934 e-mail :[email protected] 15
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