小型FPGAスパコンの 勘どころ

◆ 計算力時代到来…スパコン技術研究コーナ ◆
多ビット浮動小数点演算 CPU の 100 倍も可能!
ご購入はこちら
小型 FPGA スパコンの
勘どころ
中里 直人,台坂 博,石川 正
高性能計算を実現するには,いろいろな方法が考え
られます.FPGA は,任意の論理回路を実装できるた
め,計算対象のアプリケーションに最適化した演算方
法を実装できます.
ここでアプリケーションとして考えるのは,理学や工
学で必要な数値計算です.筆者らは素粒子物理用に最
適化して高精度な浮動小数点演算を行える計算システ
ム「G9MPX」を FPGA によって構築しました(写真 1)
.
FPGA の特徴を生かして多倍長精度浮動小数点演算を
直接実行することにより,CPU でのエミュレーション
性能を 100 倍以上上回る高性能演算を実現しました.
今回紹介する
超多ビット浮動小数点計算用スパコン
G9MPX システムは,現在,高エネルギー加速器研
究 機 構 に て 数 値 積 分 の 演 算 に 利 用 さ れ て い ま す.
GRAPE-MPX と呼ばれるアーキテクチャにより設計
構築した計算機システムです.
1 ノード分
● ハードウェア
システム全体は,1 台のファイル・サーバ(NFS/
NIS/GW),6 台の FPGA 計算ノード(インテル Xeon
E5-2687w v3 × 2,128G バイト・メモリ)の他,評価
用の GPU 計算ノードで構成されています(図 1).
FPGA 計算ノードのうち 4 台のホストには,それぞ
(a)システム・ラック
れに 8 枚の Arria V ボードを搭載しています.システ
ム全体では,32 枚の FPGA ボードが利用できること
になります.
ホスト計算機のメイン・ボードには,PCI Express
スロットが多い SuperMicro 社の X10DR を選びまし
た.PCI Express x8 ス ロ ッ ト を 11 本(Gen3 × 10,
Gen2 × 1)搭載しているものです.
浮動小数点フォーマットは,以下の 3 種類を想定し
ています(符号 1 ビットは共通).
・MP4:指数部 15 ビット,仮数部 112 ビット
・MP6:指数部 15 ビット,仮数部 176 ビット
・MP8:指数部 15 ビット,仮数部 240 ビット
本システムの理論的性能を表 1 に示します.
2017 年 3 月号
(b)計算ノード(1 ノード分)
写真 1 独自フォーマットの浮動小数点演算を CPU よりも 100 倍
高速にできる FPGA スパコン
4.5U のスペースに 1 ノードを設置している
139