国際経済 6. 関税政策の基礎分析 名古屋大学経済学部 柳瀬 明彦 1 関税制度の基礎 関税の役割 関税の形態 関税の種類 関税の指標 2 関税の役割 • 貿易政策:政府が貿易量を増加・減少させる政策 • 価格政策-関税 • 数量政策 • 関税:異なる国の居住者間で商品が受け渡しされる時に課される租税 • 最も一般的なもの:輸入に課される輸入税 • 輸出税の例:発展途上国が地下資源や農産物の輸出を抑制するために課税 • 関税の役割: • 政府による歳入の確保 • 国内産業の保護 • 歳入に占める関税収入の割合: • 先進国:小 • 途上国:大 3 関税の形態 • 従量税と従価税 • 従量税:課税標準が数量 輸入量1単位の国際価格:𝑝円 数量1単位あたりの従量税:𝑡円 → 国内価格:𝑝 + 𝑡円 • 従価税:課税標準が価格 輸入量1単位の国際価格:𝑝円 価格1円に対する従価税:100 × 𝜏% → 国内価格: 1 + 𝜏 𝑝円 • 従量税は従価税に換算可能 • 𝑝 + 𝑡 = 1 + 𝑡 𝑝 𝑝 → 𝑡円の従量税は𝑡 𝑝 × 100%の従価税 4 関税の形態(つづき) • 従価税の課税標準:国際価格 → 2つの種類 • FOB(free on board)価格:船積み時点での価格 • CIF(cost, insurance and freight)価格:保険や輸送費まで含めた価格 • 同じ税率を課していても、どちらの国際価格に対して課税するかで税額の大 きさが異なる • FOB価格が課税価額:アメリカ、オーストラリア、韓国など • CIF価格が課税価額:日本、EU、中国、台湾など 5 関税の種類 • 日本の関税の種類: • 日本の法律に基づいて定められている国定税率 • 日本と他国との間で締結した条約に基づく税率 • 国定税率: • 基本税率:関税定率法で定められ、特別な事情がない限り長期的に適用される税率 • 暫定税率:関税暫定措置法により、一定期間、基本税率に代わって適用される税率 • 特恵税率:途上国からの輸入に対して、途上国の支援を目的に適用する低い税率 • 条約に基づく税率: • WTO協定で定められている協定税率 • 経済連携協定(EPA)によって定められている税率 6 関税の種類(つづき) • 輸入財に対する関税率:原則として特恵税率、協定税率、暫定税率、基 本税率の順に適用 • ただし、協定税率が暫定税率や基本税率より高い場合、協定税率は適用されない • EPAに基づく税率が適用でき、かつその税率が最も低い時は、EPAの税率を適用 • 関税定率法:特別な事情がある場合に適用される特殊関税の規定 • 報復関税:WTO協定に基づく自国の利益を守るため、WTO協定の目的を達成する ため、または相手国が自国の船舶、飛行機、貨物に差別的に不利な扱いをしてい る時に、課すことのできる関税 • 相殺関税:相手国政府がその国の輸出品に支出している補助金に対し、それを相 殺するために課す関税 • 不当廉売(アンチダンピング)関税:輸入品に不当廉売(ダンピング)が国内産業に 実質的に損害を与えた場合等に、それを相殺するための関税 • 緊急関税(セーフガード):予想されない事情によって輸入の急増があり、国内産業 に重大な損害がある場合等に課すことのできる関税 7 関税の指標 • 名目関税率:個々の輸入品目に課される関税の大きさ • 一国全体orある産業にとっての関税の負担を見るには、別の指標 が有効(例:関税負担率) • 関税負担率:総輸入額に占める関税収入額の割合 関税収入額 関税負担率= × 100 総輸入額 • 日本の関税負担率(2010年度):1.3% • 同じ名目関税率でも、最終財と中間財とで異なる関税率がかけられ ると、その財を生産する産業に対する保護の大きさも異なる → 有効 保護率 8 関税の指標(つづき) • 有効保護率:ある産業の財への関税賦課によって、その産業の付加 価値がどの程度上昇するかを示す指標 関税賦課後の付加価値−関税賦課前の付加価値 有効保護率= × 100 関税賦課前の付加価値 • 名目関税率が最終財と中間財とで異なる場合、有効保護率は名目関税率 から乖離 • 仮定: 1単位の最終財の生産に1単位の中間財を使用 • • • • 最終財の国際価格:𝑝 最終財の輸入関税:100 × τ% 中間財の国際価格:𝑝𝐼 中間財の輸入関税:100 × τ𝐼 % 9 関税の指標(つづき) • → 最終財1単位当たりの付加価値: • 関税がある時: 1 + τ 𝑝 − 1 + τ𝐼 𝑝𝐼 • 関税がない時:𝑝 − 𝑝𝐼 • → 有効保護率= 1+τ 𝑝− 1+τ𝐼 𝑝𝐼 − 𝑝−𝑝𝐼 𝑝−𝑝𝐼 • 有効保護率と名目関税率: τ − τ𝐼 𝑝𝐼 × 100 ×100 = τ + 𝑝 − 𝑝𝐼 • τ > < τ𝐼 → 最終財の有効保護率>(<)名目関税率 • τ > τ𝐼 のケース:タリフ・エスカレーション • 加工度の低い輸入中間財への関税率< 加工度の高い最終財への関税率 • → 最終財産業は名目関税率よりも強く保護される 10 関税の効果(1):小国のケース 資源配分効果 厚生効果 11 資源配分効果 • 関税の経済効果(小国、部分均衡分析) • 輸入財の国際価格:𝑝∗ • 保険や輸送費はなし • 自由貿易:国内の消費者や生産者は国際価格𝑝∗ で取引 • 国内価格< 𝑝∗ とすると、どの生産者も外国で販売しようとする → この国の 市場では超過需要 • 国内価格> 𝑝∗ とすると、どの生産者もこの市場に供給しようとする → この市 場では超過供給 • → この国内市場で需給が一致するのは、国内価格が𝑝∗ のとき 12 資源配分効果(つづき) • 関税賦課の場合:従量税𝑡を輸入に賦課 → 国内価格:𝑝′ = 𝑝∗ + 𝑡 • 外国の生産者:この市場に財を供給したとき、国内価格から関税分を差し引 いた金額を受け取る • 国内価格< 𝑝′ とすると、国際価格の方がこの国内市場に供給したときの税 引き後の価格よりも高い → 外国の生産者はこの市場に財を供給しない → この国の市場では超過需要 • 国内価格> 𝑝′ とすると、どの生産者もこの市場に供給しようとする → この市 場では超過供給 • → 関税を課した後で需給が一致する国内価格は𝑝′ • 関税賦課によって国内価格は上昇 → 輸入量は減少 • 国内消費量は減少&国内生産量は増加 13 厚生効果 (a) 自由貿易 (b) 関税賦課 価格 S 消費者余剰 a a t p* c d b e g Y* Y' t f 生産者余剰 O 関税賦課 変化分 消費者 余剰 a+b+c+d+ e+f a+b -(c+d+e+f) 生産者 余剰 g c+g c e e a+b+c+e+ g -(d+f) 価格 S p' 自由貿易 D X' X* p' p* c b e d g 関税 収入 f 総余剰 関税収入 数量 O * Y Y' X' X D 数量 a+b+c+d+ e+f+g * 14 厚生効果(つづき) • 関税賦課 → 総余剰は、自由貿易の場合と比べて総余剰は𝑑 + 𝑓だ け減少 • 減少分𝑓:国内消費量の減少(𝑋 ∗ − 𝑋 ′ )から生じる余剰の損失 • 減少分𝑑:外国と比べて非効率な国内生産量の増加(𝑌 ′ − 𝑌 ∗ )によって生じ る余剰の損失 15 関税の効果(2):大国のケース 資源配分効果 厚生効果 関税率と経済厚生の関係 最適関税 外国と世界の経済厚生 16 資源配分効果 • 大国が関税を課す場合、貿易量の変化 → 世界市場の需給に影響 を与え、国際価格が変化 • 自国は財の輸入国、外国は財の輸出国とする • 自由貿易 • 自国の輸入需要曲線と外国の輸出供給曲線の交点で均衡 • 均衡価格:𝑝∗ → 自国の輸入量(外国の輸出量):𝑀∗ • 自国政府による関税賦課(従量税𝑡) • 国際価格:𝑝𝐹 (自国の輸入需要曲線の高さと外国の輸出供給曲線の高さの 差=従量税𝑡) • 外国は𝑝𝐹 に直面 → 外国の輸出量:𝑀 • 自国は𝑝𝐹 + 𝑡に直面 → 自国の輸入量:𝑀 • 世界市場で需給が一致(均衡) 17 資源配分効果(つづき) • 自由貿易と関税賦課のときの均衡価格(図6-2) 価格 S (c) 外国市場 (b) 世界市場 (a) 自国市場 価格 価格 H SF EX F pH t p* pF IM H DH O 数量 O M M * 数量 DF O 数量 18 資源配分効果(つづき) • 自国による関税の賦課により、当該財の国際価格は下落するが、関 税を上乗せした自国の国内価格は上昇 • 自国:消費者や生産者が直面する国内価格は上昇 • 需要量:減少 • 供給量:増加 輸入量:減少 • 外国:消費者や生産者が直面する国際価格は下落 • 需要量:増加 • 供給量:減少 輸出量:減少 19 厚生効果 • 自国の余剰の変化(図6-3、表6-2) 自由 貿易 (b) 関税賦課 (a) 自由貿易 価格 価格 SH 消費者 a+b+c+ d+e+f 余剰 SH 消費者余剰 生産者 余剰 a pH t c p* pF O a g k d b e f 生産者余剰 YH t j i h pH c p* pF g d h b e i 関税 収入 j k 関税収入 XH 数量 YH XH 変化分 a+b -(c+d+e+f) c+g+k c e+i e+i 総余剰 a+b+c+ a+b+c d+e+f+ +e+g+ g+k k+i f DH g+k 関税 賦課 i-(d+f) DH 数量 20 厚生効果(つづき) • 自国の経済厚生の変化:2つの要因 1. 国内価格𝑝𝐻 が国際価格𝑝𝐹 から乖離する(𝑝𝐻 > 𝑝𝐹 )ことによる、消費および 生産の非効率性増大による余剰の減少(消費面:𝑓 + 𝑗、生産面:𝑑 + ℎ)・・・ マイナス要因 2. 自国の輸入財の国際価格が𝑝∗ から𝑃𝐹 まで下落することによる、余剰増加分 ℎ + 𝑖 + 𝑗(交易条件改善効果)・・・プラス要因 • → 総余剰の変化:𝑖 − 𝑑 + 𝑓 • 大国の場合、小国の場合と同様にマイナスの効果が生じる一方、プラ スの交易条件効果が発生するため、関税によって経済厚生が増大す る可能性 21 関税率と経済厚生の関係 • 総余剰の変化:𝑖 − 𝑑 + 𝑓 • 関税𝑡が十分小さい → 𝑖 > 𝑑 + 𝑓 → 関税引き上げによって総余剰は 増加 • 関税𝑡が大きい → 𝑖 > 𝑑 + 𝑓 → 関税 引き上げによって総余剰は減少 • あまりにも𝑡が大きいと、自国の総 余剰は閉鎖経済の水準を下回る → 貿易を止めた方が望ましい • 総余剰が閉鎖経済の状態と同じにな るような関税:禁止的関税 𝑡 • 自由貿易:閉鎖経済に比べて必ず 総余剰は大きい 経済厚生 B 自由貿易下 の経済厚生 A C 閉鎖経済下 の経済厚生 O t op t D 関税率 22 最適関税 • 最適関税:自国の経済厚生を最大 にする関税 𝑡 𝑜𝑝 • 自国の最適関税の従価税率は、外 国の輸出供給の価格弾力性の逆数 に等しい(テキストpp.180-183) • 自国が大国の場合:𝑡 𝑜𝑝 > 0 • 外国の輸出供給曲線が右上がり • 自国が小国の場合:𝑡 𝑜𝑝 = 0 • 自由貿易が最適 • 一定の国際価格の下で外国の生産 者はいくらでも財を輸出(外国の輸出 供給の価格弾力性は無限大) 経済厚生 B 自由貿易下 の経済厚生 A C 閉鎖経済下 の経済厚生 O t op t D 関税率 23 外国と世界の経済厚生 • 自国(輸入国)による関税の賦課が外国(輸出国)の経済厚生に与える影響 • 自国の関税賦課により、外国の消費者や生産者が直面する価格(国際価 格): 𝑝∗ から𝑝𝐹 まで低下 • 外国の消費量(𝑋 𝐹 ):増加 → 消費者余剰:増加 • 外国の生産量(𝑌 𝐹 ):減少 → 生産者余剰:減少 • 生産者余剰の減少分>消費者余剰の増加分 → 外国の総余剰は減少 • 外国の交易条件が悪化するため • 関税は自国の利益のために他国に犠牲を強いる「近隣窮乏化政策」の1つ • 自国による関税の賦課:自国の厚生を高めるかもしれないが、外国の厚生は必ず減少 • 外国政府が、自国の関税賦課に対して報復措置を取る可能性 • 各国が非協力的に行動 → 互いに対抗関税をかけ合う「関税戦争」に陥る可能性 • 自国の経済厚生は関税政策発動前(自由貿易)以下になる可能性 24 外国と世界の経済厚生(つづき) 価格 (a) 自国市場 価格 (b) 外国市場 SH t pH p* pF a b d SF c e DH O 数量 f g DF O 数量 25 自国と外国の経済厚生(つづき) • 世界全体の経済厚生への影響 • 自国の総余剰の変化:𝑑 − 𝑎 + 𝑐 • 外国の総余剰の変化:− 𝑒 + 𝑓 + 𝑔 • → 自国と外国の総余剰の変化の合計:− 𝑎 + 𝑐 + 𝑒 + 𝑔 • 𝑑と𝑓は同じ値 ← 自国の輸入量=外国の輸出量 • 自国の関税:世界全体の経済厚生も減少させる • 世界全体の効率性が低下するため 26 保護政策の厚生効果: 日本のコメの事例 日本のコメ市場のモデル化 コメ市場の部分均衡分析 生産量の変化 消費量の変化 総余剰の変化 27 日本のコメ市場のモデル化 • コメ市場を例にとり、保護政策の撤廃による経済厚生の変化額を推 計 • コメ生産を対象とした主な政策(2011年度): (p186) 1. 需給調整のため、生産数量目標で生産量を抑制 2. 農業者戸別所得補償制度によって、販売価格以上の収入を農家に確保 3. 外国とのコメの貿易を、農林水産省による国家貿易と高関税によって制限 • → これら3つの保護政策が行われなかった場合の日本国民の厚生 の変化を推計 28 日本のコメ市場のモデル化(つづき) • モデルの修正および市場構造の単純化: 1. 加工費用や流通費用により、消費者価格と生産者価格が異なる 2. コメ生産への財政支出は、2010年度実施の米戸別所得補償モデル事業 による交付金支払金額だけを考慮 3. 生産調整が撤廃されても供給曲線はシフトしない 4. コメの銘柄の差異は無視 5. 部分均衡分析 6. 外国産米は国産米と完全代替 7. 日本はコメの国際貿易において小国 29 コメ市場の部分均衡分析 • 分析に用いる価格情報は、2010年産米 の2011年2月時点。 • 2010年産米の需要曲線と供給曲線(図 6-7) • 玄米1トン当たりの消費者価格:35.8万円、 生産者価格:22.8万円(所得補償制度の政 策目標) • 需給が848万トンで一致 • 保護政策が撤廃された場合のシナリオ: • 生産者価格はコメの国際価格まで低下(→ 生産者余剰は𝑐だけ減少) • 消費者価格はコメの国際価格に流通費用 や税金を加えた価格まで低下(→ 消費者余 剰は𝑎+𝑏だけ増加) 価格(玄米1トン 当たり万円) S 35.8 国際価格+ 流通費用 a b 22.8 c D 国際価格 O 84 8 数量 (万トン) 30 コメ市場の部分均衡分析(つづき) • 保護政策が撤廃された場合のシナリオ: • 生産者価格はコメの国際価格まで低下 • 消費者価格はコメの国際価格に流通費用や税金を加えた価格まで低下 • 戸別所得補償モデル事業による交付金支払い3,090億円(2011年2月におけ る農林水産省推計値)が不要となる • 保護政策撤廃後に輸入される外国産米:中国産とアメリカ産 • 中国産:15.4万円(玄米1トン当たり) • アメリカ産:13.7万円 • 保護政策撤廃後の消費者価格と生産者価格の比率:1.7倍(実際のコメの平 均卸売価格との比率より) • →玄米1トン当たりの消費者価格: • 中国産米価格を生産者価格とする場合:26.2万円 • アメリカ産米価格を生産者価格とする場合:23.3万円 31 生産量の変化 • 供給曲線(対数を用いた表記): ln 𝑆 = ln 𝑎 + 𝑒 𝑆 ln 𝑝 𝑆 • • • • 𝑎:定数 𝑝 𝑆 :生産者価格 ln:自然対数を表す記号 𝑒 𝑆 :供給の価格弾力性 • 供給曲線の傾き=供給の価格弾力 性の逆数(1 𝑒 𝑆 ) • 𝑒 𝑆 :0.5と1.0の2種類を想定 • コメ市場を研究した論文の推計値:0.2~ 0.5 • 𝑒 𝑆 = 0.2 :耕作面積が変化しないケース • 𝑒 𝑆 = 0.5 :耕作面積が変化するケース • 𝑒 𝑆 = 1.0:非常に大きい値だが、保護政 策の撤廃による耕地の大幅な減少を危 惧する意見 → 想定値に加えた 生産者価格 (対数値,玄米 1トン当たり万円) 22.8 15.4(中国産) 13.7 (アメリカ産) eS = 1.0 eS = 0.5 509 572 678 710 848 供給量 (対数値,万トン) 32 生産量の変化(つづき) • 中国産米の価格を生産者価格とする ケース:保護政策の撤廃 → 生産者 価格=15.4万円(玄米1トン当たり) • 約32.5%(1-(15.4/22.8) = 0.325)減少 • 𝑒 𝑆 = 0.5のとき:供給は約16.2%減少、 710万トンに • 𝑒 𝑆 = 1.0のとき:供給は約32.5%減少、 572万トンに • アメリカ産米の価格を生産者価格と するケース:保護政策の撤廃 → 生産 者価格=13.7万円 • 約40%(1-(13.7/22.8) = 0.399)減少 • 𝑒 𝑆 = 0.5のとき:供給は約20%減少、678 万トンに • 𝑒 𝑆 = 1.0のとき:供給は約40%減少、509 万トンに 生産者価格 (対数値,玄米 1トン当たり万円) 22.8 15.4(中国産) 13.7 (アメリカ産) eS = 1.0 eS = 0.5 509 572 678 710 848 供給量 (対数値,万トン) 33 消費量の変化 消費者価格 (対数値,玄米 1トン当たり万円) • 需要曲線(対数を用いた表記): ln 𝐷 = ln 𝑏 + 𝑒 𝐷 ln 𝑝𝐷 • 𝑏:定数 • 𝑝𝐷 :消費者価格 • 𝑒 𝐷 :需要の価格弾力性 • 需要曲線の傾き=需要の価格 弾力性の逆数(1 𝑒 𝐷 ) • 𝑒 𝐷 :-0.1と-0.4の2種類を想定 • コメ市場を研究した論文の推計 値:-0.1~-0.4 35.8 26.2(中国産) 23.3 (アメリカ産) eD = - 0.4 eD = - 0.1 848 871 878 940 967 需要量 (対数値,万トン) 34 消費量の変化(つづき) 消費者価格 (対数値,玄米 1トン当たり万円) • 中国産米のケース:消費者価格 =26.2万円(玄米1トン当たり) • 約27%(1-(26.2/35.8) = 0.268)減少 • 𝑒 𝐷 = −0.1のとき:需要は約 3%増加、 871万トンに • 𝑒 𝐷 = −0.4のとき:需要は約11%増 加、940万トンに • アメリカ産米のケース:消費者価 格:23.3万円 • 約35%(1-(23.3/35.8) = 0.349)減少 • 𝑒 𝐷 = −0.1のとき:需要は約3.5%増 加、878万トンに • 𝑒 𝐷 = −0.4のとき:需要は約14%増 加、967万トンに 35.8 26.2(中国産) 23.3 (アメリカ産) eD = - 0.4 eD = - 0.1 848 871 878 940 967 需要量 (対数値,万トン) 35 総余剰の変化 • 国際価格の基準米、供給の価格弾力性、需要の価格弾力性につい てそれぞれ2つのケースを想定 • 中国産米orアメリカ産米 • 𝑒 𝑆 = 0.5 or 𝑒 𝑆 = 1.0 • 𝑒 𝐷 = −0.1 or 𝑒 𝐷 = −0.4 • → 全部で8ケース • それぞれのケースで、保護政策撤廃後の生産者余剰、消費者余剰、 財政支出、総余剰の変化額を推計 36 総余剰の変化(つづき) • 保護政策撤廃による余剰の変化(表6-3): 国際価格の 供給の 需要の 生産者余剰 消費者余剰 財政支出の 基準米 価格弾力性 価格弾力性 の変化額 の変化額 削減額 中国産米 0.5 -0.1 -5,600 8,376 3,090 中国産米 1.0 -0.1 -5,263 8,376 3,090 中国産米 0.5 -0.4 -5,600 9,551 3,090 中国産米 1.0 -0.4 -5,263 9,551 3,090 アメリカ産米 0.5 -0.1 -6,697 11,001 3,090 アメリカ産米 1.0 -0.1 -6,181 11,001 3,090 アメリカ産米 0.5 -0.4 -6,697 13,046 3,090 アメリカ産米 1.0 -0.4 -6,181 13,046 3,090 総余剰の 変化額 5,866 6,203 7,041 7,378 7,394 7,910 9,439 9,955 (注) 変化・削減額の単位は億円。 37 総余剰の変化(つづき) • 生産者余剰:減少 • 減少額が最も小さいケース:減少額=5,263億円 • 供給の価格弾力性が高く(1.0)、中国産米が国際価格の基準米 • 減少額が最も大きいケース:減少額=6,697億円 • 供給の価格弾力性が低く(0.5)、アメリカ産米が国際価格の基準米 • 消費者余剰:増加 • 増加額が最も小さいケース:増加額=8,376億円 • 需要の価格弾力性が低く(-0.1)、中国産米が国際価格の基準米 • 増加額が最も大きいケース:増加額=13,046億円 • 需要の価格弾力性が高く(-0.4)、アメリカ産米が国際価格の基準米 • 政府の財税余剰:増加額=3,090億円(2010年度) • 保護政策の撤廃 → 米戸別所得補償モデル事業による交付金支払いが不要 • プラスの余剰変化として換算 38 総余剰の変化(つづき) • 総余剰の増加額 • 最小値:5,866億円、最大値:9,955億円 • 日本国民1人当たりの総余剰の増加額 • 最小値:4,600円、最大値:7,800円 • 日本全体としては総余剰の増加額は大きいが、国民1人当たりでみる と少額 • 米価の引き下げ・貿易自由化を求める声が大きくない理由の1つ • 生産者が保護政策の撤廃から失う所得:比較的大きい • 米戸別所得補償モデル事業による交付金だけを考えても、これが廃止されると 120万弱の事業加入者が単純平均で1件当たり26万2500円を失う 39
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