涙液分泌機能解析へのマイクロダイアリシスの応用 中村 滋 慶應義塾大学 医学部 眼科学教室 涙液分泌は、中枢からの自律神経及び末梢からの角膜、鼻粘膜を介する知覚 刺激により制御されている。今回、マウスにおいて、中枢セロトニン濃度と涙 液分泌能との関係を、マイクロダイアリシスを用い検討した。実験動物として C57BL/6 系雌性マウスを使用した。中枢セロトニン濃度の低下を、セロトニン合 成阻害薬 P-クロロフェニルアラニン(pCPA、100 mg/kg )腹腔内投与により惹 起した。pCPA 投与後の涙液分泌能は、眼瞼に綿糸を留置することによる綿糸法 にて経時的に測定した。中枢(縫線核)セロトニン濃度変動は、マイクロダイ アリシス法にて透析液を回収し、HPLC と電気化学検出器により測定、モニタリ ングを行った。両測定は非麻酔科で行った。 pCPA の腹腔内投与後、涙液分泌量は約 30%に減少し、その減少は 6 時間後ま で持続した。中枢(縫線核)セロトニン濃度においても約 50%に減少した。中 枢(線条体)セロトニン濃度変動が、涙液分泌能に関与することが示唆された。 また、マイクロダイアリシス法により生体局所の内因性因子と涙液分泌量の経 時的動向を捉えることが可能となり、本法は涙液分泌機構の解析に有用である。
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