(利用者一人ひとりの願う “自立”を叶える伴走型自立支援)を目指

私たちは、自己実現介護(利用者一人ひとりの願う
“自立”を叶える伴走型自立支援)を目指します!
要介護度を自立支援における唯一の尺度とする
「介護報酬削減」に、強く反対します。
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
― 介護保険における自立支援の在り方について、いまこそ議論すべきです。
(1) 自立支援に係る介護の位置づけと経緯
➣介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして“単に介護を要
する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援する”
ことを基本理念としています。
○介護保険法 第一条(目的)
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、
排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等に
ついて、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる
よう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念
に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保
健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
➣同時に、
“利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを
総合的に受けられる制度”として、これまでケアマネジメントに基づいた利用者本
位のサービス提供の視点は、普遍的なものとして息づいています。
➣一方、介護保険制度の利用者数の増加や財源確保の観点から、制度の持続可能性が
問われる中で、予防重視型システムへの転換や費用負担のあり方の見直しを背景に、
介護保険制度全般において重度化予防・改善の取り組みにシフトしています。
※介護報酬上の評価は、専門職や医療等との多職種連携、本人・家族への綿密な説
明と同意の上で提供される専門性の高さに対してなされているものです。
➣全国老施協では、科学的根拠に基づいた個別ケアを目指して、利用者一人ひとりの
状態像や課題に応じたアセスメントによる目標の設定と実践を積み重ね、
「口腔ケア」
「認知症ケア」
「機能訓練」
「看取り」等、専門性向上と標準化に挑戦してきました。
※介護保険制度において実践されてきた「自立支援介護」は、利用者一人ひとりの
生き方に寄り添うかたちで無数に存在します。それだけに、サービス提供の過程
における個々の取り組みのプロセス評価がされなければなりません。
寝たきりの方にとって、座位保持やポジショニングを行うことも…
車いすの方にとって、ベッドから自分で車いすに移乗することも…
胃ろうの方にとって、咀嚼訓練することも…それぞれの自立支援です。
利用者本人が願う家族との外出や、お墓参りを実現すること、夏祭りで踊りを披露
すること等も、自立支援につながります。
利用者本人の望む将来像と状態像の数だけ、自立支援介護は存在し得るものです。
➣これらの成果は多職種連携のチームケアにより、介護報酬上の加算要件として推進
されています。
※加算要件を満たす高品質なサービスが実践されていても、必ずしも要介護度改善
につながる評価指標とはなっていません。
(2) 「いわゆる“自立支援介護”」について
※政府の未来投資会議(平成 28 年 11 月 10 日)において一部有識者から提案され
た「いわゆる“自立支援介護”」は、要介護度の判定結果のみを自立支援における
唯一の評価尺度に置き、報酬上の評価(加算のみならず、ディスインセンティブ
=減算)に紐づけることで、介護報酬の削減に結び付けようとするものです。
➣この提案では、重度の要介護者を減らすことで給付抑制に繋げることを目的に、
「要
介護度の改善」に報酬上のインセンティブを付与し、成果が見込めない場合にはデ
ィスインセンティブ(減算やペナルティー)を課すこととしています。
➣これにより、一人ひとりの望む将来像と状態像に基づく「自己実現」を叶えるため
これまで現場が培ってきた取り組みが、
「QOLの向上を伴わないADL回復の義務
化」を促進させる大きなリスクを生むことになります。
本人が望まない、または適性のない入所者に対して要介護度改善を義務化すること
は事実上の虐待です。
自立支援に向けたこれまでの尊厳を支えるケアが、要介護度に特化した限定的な価
値観に矮小化されようとしています。
(3) 伴走型の自立支援による「自己実現介護」
➣高齢者介護において、個々の状態像に応じた適切な重度化予防の取り組みが行われ
ていることは大前提です。
➢要介護高齢者の「自立」とは身体機能のみならず、社会生活、尊厳の保持も含めた
状態改善を指し、そのための支援はより全人的なものでなければなりません。
➣加齢(経年)に伴う健康状態の変化や要介護状態の進行は自然の摂理であり、
「いま
出来ることを、1日でも長く出来るままでいてもらう」こと、やがて「出来ること
が限られていく中にも、できるだけその人が望む生活を送れる環境をつくる」こと
こそが、自立支援の本質であると考えます。
➣介護の視点のみならず、幅広く福祉の観点から本人(生活)主体の「自己実現」に
立った「自立」を目指すことは、残存機能を活かし伸ばすための有効な手法です。
➢利用者一人ひとりが望む将来像と状態像に基づき、願う“自立”を叶えるため、生
活に伴走した支援が求められています。
全国老施協の掲げる「自己実現介護」とは…
利用者一人ひとりの望む将来像・状態像に基づき、それぞれが
願う“自立”を叶えるための伴走型自立支援介護です。
平成 29 年1月 24 日
自己実現介護(利用者一人ひとりの願う“自立”を叶える伴走型
自立支援) 具体化に 向け て … 厚労省と 意見交換(H29.1.6)
全国老施協は平成 29 年1月6日、厚生労働省老健局への年賀訪問とともに、「いわゆる“自立支
援介護”」について意見交換を行った。
厚生労働省からは佐藤守孝高齢者支援課長、三浦明振興課長ほか。全国老施協からは石川憲会長、
熊谷和正副会長、瀬戸雅嗣副会長、阿比留志郎副会長が出席した。
「いわゆる“自立支援介護”
」とは、内閣府にて開催されている未来投資会議において一部有識者
から提案されたもので、要介護度改善を尺度とし、介護報酬(特にディスインセンティブ=報酬ダ
ウン)に紐づけて利用者の状態像を問わず事実上義務化することにより、介護給付費の抑制を図ろ
うとするもの。
意見交換では、利用者一人ひとりの望む将来像・状態像に基づき、それぞれが願う“自立”を叶
えるために伴走型で自立を支援する「自己実現介護」の具体化を急ぐこと、あるべき自立に向けた
方程式が極めて複雑であることを踏まえた上で、全国老施協としてプロセス評価できるようなケア
の実践によって現場力を底上げしていくこと、長期的な改善の過程を可視化していくこと等の必要
性について議論を行った上で、24 時間一人ひとりのアセスメントに基づくアプローチをしっかりと
実現していけるよう、データの蓄積と分析を行っていくこと等を確認した。
全国老施協では、平成 28 年 12 月 14 日に開催した第 24 回総会において、この自立支援を謳った
介護報酬引き下げの動きに対して現場の声をもって意見していく旨を総意として決議している。
一部新聞報道では、
「いわゆる“自立支援介護”」をもって優良事業所とし、海外人材の受入れに
あたって優先して紹介するなど支援を行うとしている。全国老施協では、こうした取り組みが現場
実態から乖離した机上の空論とならないよう、引き続き厚生労働省と連携を密にし、臨場感のある
制度づくりに力を尽くしていく。
2017.01.11 発行
No.28-03
全国老施協ニュース
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