菌類を使ったスギ花粉飛散防止液の 地上散布方法の開発 静岡県農林

菌 類 を使 った スギ 花粉 飛 散防 止 液の
実用化に向けた取組
量でも雄花花序数(雄花の房の枝数)
農林水産業・食品産業科学技術研究
が 100 本未満の枝であれば、80%近い
推進事業において「菌類を活用したス
枯死 率を 示し ま した が、 雄 花花 序数
静岡県農林技術研究所森林・林業研究
ギ花粉飛散防止液の高度化と実用的な
100 本以上の枝では感染率は 50%台と
センター森林育成科
施用技術の開発」という課題が平成 26
なりました。原因として雄花量が多い
年度から3年間の計画でスタートしま
と散布液が物理的に付着しなくなるこ
した。この課題は国立研究開発法人森
とが考えられました。
地上散布方法の開発
はじめに
林総合研究所を中心に、民間企業、富
平成 27 年度は、確実に散布液を付着
林野庁は森林・林業面からの花粉症
山県森林研究所と当センターで共同体
させるための実証試験を動力噴霧機と
対策 とし て、 少 花粉 スギ 品 種等 の開
を作り、本菌類を使ったスギ花粉飛散
染色液を用いて実施しました。その結
発・普及や人工林の広葉樹林化等を通
防止液の実用化を図るものです。
果、使用した動力噴霧機と超遠距離鉄
じて「花粉の少ない森林への転換事業」
本課題の最終目標は次の2つです。
砲ノズルであれば、雄花花序数 100 本
に取り組んでいます。しかし、花粉発
①散布液の保存条件等を明らかにし、
以上の枝に対して霧状でも水滴状の散
生源のスギを伐採して少花粉スギを植
薬効及び保存性に優れた防止剤を開発
布でも 9 割以上の雄花へ染色液を付着
林し、花粉の少ない森林を育成するに
する。②地上及び空中散布によって、
させることができました。
は膨大な年月と労力を必要とします。
80%以上の成熟雄花を枯死させる散布
このような中、福島県西会津町のスギ
施用技術を開発する。これらの目標を
林において、スギの雄花だけに特異的
達成し散布方法のマニュアルを作成し
に寄生する子のう菌類が発見され、シ
ます。
ドウイア・ジャポニカと同定されまし
た。
地上散布法の開発
当センターの担当課題は「スギ花粉
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
霧状 n=3
非着色
飛散防止液の施用技術の開発」の一部
です。この課題では、地上散布方法の
水滴状 n=6
着色
動力噴霧器を用いた染色液散布試験
開発、空中散布方法の開発などを実施
します。当センターでは、無人ヘリコ
おわりに
プターでは散布できない人家に近いス
平成 28 年度は当センター内にある
ギを対象とした地上散布法を開発して
スギ単木での実証試験を実施していま
います。単木から公園、学校林や社寺
す。また、8 割以上の雄花を枯死させ
林等の比較的小規模に植栽されたスギ
る散布条件を決定し、決定した条件を
その後、国立研究開発法人森林総合研
に対しては、動力噴霧器を用いた人力
もとに散布マニュアルを作成しました
究所内のスギ実験林において、本菌の
による地上からの散布が効率的です。
(次頁
胞子懸濁液に大豆油等を混合した乳剤
これまでの一連の研究によって、防止
本技術はスギの雄花に一度散布する
をスギ雄花にスプレーで1回散布する
液が雄花に付着しさえすれば雄花は容
のみであることから、簡便であり即効
ことによって、短期間(2~3ヶ月)
易に枯死することから、いかに、確実
性のある方法です。また、翌年以降も
で 80%以上の成熟雄花を枯死させ、花
に付着させるかを検討しています。具
菌の繁殖能力によっては、新たにでき
粉の飛散を抑えることに成功しました。
体的には、単木から数本のスギ林に対
た雄花に二次感染することも期待でき
また、これまでの研究によって、本菌
し、
「散布量及び散布液の形状(霧状か
ます。本課題の終了後、遅くとも 2022
はスギの雄花だけを枯らし、スギ枝葉
水滴状かなど)」に関して実証試験を行
年(平成 34 年)までには本菌を微生物
や他の植物にはまったく影響を与えな
い、散布効果として 80%以上の雄花を
農薬として登録を行い早急の実用化を
いことを確認し、さらに、本菌類は過
枯死させる実用可能な地上散布法を開
目指しています。
去にスギ林に被害を与えた記録もない
発することです。
シドウイア・ジャポニカに感染した雄花
なお、本研究は以下のプロジェクト
で遂行されました。
ことから、本菌類をスギ花粉飛散防止
液として活用することが期待されてい
資料1)。
地上散布の結果
ます。即効性のある本菌類を首都圏等
平成 26 年度は、予備試験として散布
への花粉飛散発生源と推定されるスギ
量決定のため手動式噴霧器による散布
推進事業
林に散布することによって、スギ林を
試験を実施しました。成熟雄花が形成
活用したスギ花粉飛散防止液の高度化
伐採することなく、短期間で花粉の飛
されるのは 10 月頃なので、その後の
と実用的な施用技術の開発」(H26~28
散を防止することが可能となります。
11 月に散布液 50ml/枝と 100ml/枝を散
年)
布しました。その結果、いずれの散布
農林水産業・食品産業科学技術研究
実用開発ステージ「菌類を
SDP-258
1124500
4m
4m
107
cc + 5
+1.6
50 100cc
8
100cc
A
A
B
B
C
C
50