III-13 単独冠動脈バイパス手術で心機能が著明に改善した超低心機能の2症例 東野 旭紘、大野 貴之、長内 亨、楠原 隆義、三浦 純男、竹谷 剛、福田 幸人、高本 眞 一 三井記念病院 【はじめに】虚血性心筋症に対しては冠動脈バイパス術に加えて、補助人工心臓、左室形成術、僧房弁手術な ど種々の治療戦略が混在する。【症例 1】68 歳男性。両側下腿浮腫を契機に 3 枝病変を指摘された。On-pump beating CABGx5 施行。術前 EF=15%、LVDd/Ds=61mm/50mm であったが、術後 18 ヶ月後に EF=63%、 LVDd/Ds=44mm/28mm まで改善した。【症例 2】62 歳男性。呼吸困難を主訴に受診し、精査の結果 3 枝病変を指摘された。On-pump beating CABGx5 施行。術前 EF=18%、LVDd/Ds=58mm/52mm から術後 8 か月後に EF=56%、LVDd/Ds=47mm/34mm ま で改善した。【結論】超低心機能(EF25%以下)の虚血性心筋症に対して単独冠動脈バイパス術だけで著明に心 機能が改善した症例を 2 例経験した。 III-14 冠動脈バイパス術後の左内胸動脈に出血を来した血管炎の一例 三根 かおり、萩谷 郎、井上 健一、樋口 完起、高見澤 雅俊、吉川 勉、高山 格、関 守正、梅村 亮介、田中 敦、谷崎 純、友池 悌史、長友 剛平、鈴木 仁暢、内藤 祐司、歌野原 誠、桃原 祐子、馬原 哲也、井口 和寛、高梨 啓太 信雄、長山 秀一郎 榊原記念病院 冠動脈瘤と腎動脈瘤を指摘された 43 歳女性。労作性狭心症に対し冠動脈造影を施行した。石灰化を伴う冠動 脈瘤と#1 75%、#4PD・AV 100%、#6 90%狭窄を認めたが、好酸球増多を伴う血管炎が疑われたため LITA-LAD のみバイパス術を施行した。HLA 検査等の精査で結節性多発動脈炎と診断された。術後血性胸水を認めドレナ ージ術を施行するも改善せず、原因検索したところ LITA からの出血を認めた。再手術で LITA の分枝をクリッ ピングし出血のコントロールがついたが、原因は血管炎によるものと考え現在ステロイドパルス療法を施行し ている。本症例のような血管炎を有する患者に冠動脈バイパス術を行う場合は、グラフトの選択や血管炎の治 療を先行して行うべきか等の十分な術前検討が重要と考えられた。 III-15 大動脈 4 尖弁による AR に対する AVR 術後 16 年にて大動脈基部拡大を認めた 1 例 篠原 大佑、嶋田 松下 訓、土肥 晶江、山本 静之、森田 平、中村 照正、桑木 順天堂大学医学部附属順天堂医院 博、大野 俊哉、中西 賢次、川崎 啓介、横山 志保理、天野 泰孝、梶本 完、 篤 心臓血管外科 症例は 59 歳男性。43 歳時に 4 尖弁の AR に対して 27mm の ATS 機械弁にて AVR を施行された。徐々に大動脈基 部の拡大を認めたため再手術の方針となった。術前の心エコー検査で人工弁の弁座は安定し可動性は良好であ ったが、バルサルバ洞径 45mm、大動脈基部径 56mm と拡大を認めた。術中所見では、大動脈基部を観察すると 前回手術の縫合部位は拡大し変色していた。内腔を観察すると仮性内膜が低形成であり大動脈壁の菲薄化を認 めた。また、弁下には流出路にパンヌス形成を認めた。手術は 3mmValsalva グラフトと 2mmCEP Magana Ease 弁の Composite グラフトを用いて大動脈基部置換術を施行した。大動脈壁の病理学的結果を踏まえて若干の文 献的考察を加えて報告する。 III-16 HIT 抗体陽性のためアルガトロバンで維持透析をされていた AS 患者に対して弁置換術を行った 1例 鶴田 亮 1)、山本 平 3)、岡安 1) 心臓血管外科、2)鎌ヶ谷総合病院 鎌ヶ谷総合病院 智道 2)、唐原 悟 2)、西森 健雄 2)、梶本 完 3)、天野 篤 3) 循環器科、3)順天堂大学医学部附属順天堂 医院 心臓血管外科 序論】HIT 抗体陽性の既往がある患者が開心術を受ける際の抗凝固療法は確立されていない。HIT 抗体陽性の 既往がある CRF 患者の重症 AS に対して AVR 行ったので報告する。症例】76 才女性。9 年前に CRF のため透析 導入する際、血小板減少を認め、HIT 抗体陽性であった。以後、アルガトロバンを抗凝固薬として維持透析を されていた。2014 年 2 月まで HIT 抗体をフォローしたが陽性のままであった。2016 年 2 月頃から労作時息切 れが出現。UCG で重症 AS を認め同年 6 月当科受診。術前 HIT 抗体は陰性であった。人工心肺時の抗凝固薬は AT3 製剤投与後、通常投与量の半量のヘパリンをボーラス投与。その後は ACT を基準にナファタットを持続投 与して、ACT500 秒以上を維持しながら AVR を行った。イベントなく第 28 病日に退院。術後の HIT 抗体は陰性 のままであった。 III-17 Type Ic 病変に対する external suture annuloplasty の有用性 松濱 稔、関 志、澤田 雅浩、佐々木 健一、国原 孝、仙波 宏章、上嶋 徳久、矢嶋 純二、山下 武 準 心臓血管研究所付属病院 心臓血管外科 【目的】当院で経験した Type Ic±Ia 病変による大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対し、弁尖に対し手術操作を加 えず external suture annuloplasty (ESA)±上行大動脈置換術のみで AR のコントロールが可能であった 6 症 例に対し検討を加えた。【方法】6 症例の内訳は 66±10 歳、男性 3 例、全例三尖弁、併施手術は僧帽弁形成 術+三尖弁輪形成術 4 例、24mm 人工血管による上行大動脈置換術 3 例(うち急性解離 1 例)であった。術前 AR 2.3±1.0 度、術前弁輪径 25.2±2.4mm、CV-0 を用いて 20.3±0.8mm に ESA 施行し、弁尖に対し全く手術操作 を加えなかった。【成績】在院死亡なし。人工心肺時間 139±52 分、大動脈遮断時間 106±43 分、術後弁輪径 は全例 20mm、術後 AR は 0.5±0.3 度であった。【結論】ESA は Type Ic±Ia 病変に対し AR をコントロールす る簡便で有効な方法である。 III-18 急性僧帽弁後尖逸脱、腱索断裂、肺水腫に対して準緊急僧帽弁形成術が有効であった 1 例 河田 光弘、伊藤 卓也、西村 東京都健康長寿医療センター 隆、許 俊鋭 心臓外科 83 歳、女性。突然の呼吸苦、微熱で当院紹介受診。心エコーで severe MR,PML の prolapse,慢性心房細動を認 め、急性心不全、肺水腫の診断で当科 consult。CRP 21、BNP 576。IE も念頭に置いて各種感染症検索に続い て抗生剤治療開始。準緊急 MVP(MAP+人工腱索)+LAA closure 施行。術後経過良好、最終的に各種培養結果 negative、7POD 術後評価心エコーで MR(-)、心機能良好にて、リハビリの後 25POD 独歩退院。 III-19 高齢者の急性心筋梗塞後の乳頭筋断裂に対し、僧帽弁置換術を施行した 1 例 町田 洋一郎 1)、大野 1) 峻哉 1)、大石 順天堂大学医学部附属浦安病院 淳実 1)、稲葉 博隆 1)、天野 心臓血管外科、2)順天堂大学 篤 2) 医学部 附属順天堂医院 心臓 血管外科 81 歳、女性、生来健康。意識レベル低下を主訴に家族が救急要請し、当院救急外来へ搬送された。心電図変 化あり、心エコーで下壁の壁運動低下を認めた。急性冠症候群が疑われ、緊急で CAG を行い、RCA#2 に完全閉 塞を認め、同部位に PCI を施行した。PCI 後、術前にはなかった心雑音を認め、心エコーで severe MR を認め た。急性心筋梗塞後の乳頭筋断裂が疑われ、手術目的に当科コンサルトとなった。同日、僧帽弁置換術を施行 (人工弁 Epic 27mm)。循環動態が安定した第 4 病日に IABP を離脱し、第 6 病日に抜管した。第 11 病日に一 般病棟へ転床した。その後、嚥下訓練、リハビリテーション目的に第 44 病日に転院となった。高齢者の急性 心筋梗塞後の乳頭筋断裂に対し、僧帽弁置換術を施行し、救命した 1 例を経験したため、文献的考察を加え報 告する。
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