The Japanese Journal of Psychology 2003, Vol. 74, No. 1, 27-35 不確 実性低 減戦略 と しての社会 的学 習 -適 応 論 的 ア プ ロー チ北 海 道 大 学 中 西 大 輔1,2・亀 田達 也 ・品 田 瑞 穂 Social learning as an uncertainty-reduction strategy: An adaptationist approach DaisukeNakanishi, Tatsuya Kameda, and Mizuho Shinada (Department of Behavioral Science, Faculty of Letters, Hokkaido University, Kita-ku, Sapporo, 060-0810) Social learning is an effective mechanism to reduce uncertainty about environmental knowledge, helping individ uals adopt an adaptive behavior in the environment at small cost. Although this is evident for learning about temporally stable targets (e.g., acquiring avoidance of toxic foods culturally), the functional value of social learning in a temporally unstable environment is less clear; knowledge acquired by social learning may be outdated. This paper addressed adaptive values of social learning in a non-stationary environment empirically. When individual l earning about the non-stationary environment is costly, a hawk-dove-game-like equilibrium is expected to emerge in the population, where members who engage in costly individual learning and members who skip the information search and free-ride on other members' search efforts coexist at a stable ratio. Such a "producer-scrounger" structure should qualify effectiveness of social/cultural learning severely, especially "conformity bias" when using social information (Boyd & Richerson, 1985). We tested these predictions by an experiment implementing a non stationary uncertain environment in a laboratory. The results supported our thesis. Implications of these findings and some future directions were discussed. Key words: social learning, cultural transmission, 近 年,人 conformity, 間 行 動 を環 境 へ の適 応 と い う側 面 か ら組 織 的 に と ら え 直 す 進 化 心 理 学 や 適 応 論(Tooby Cosmides, 1992)の ア プ ロー チ が,社 の境 界 線 を超 え,急 & 会 諸科 学 の既 存 速 に 展 開 し て い る(e. g.,長 谷 川 ・ producer-scrounger equilibrium. の 樹 立 を通 じ,資 源 供 給 の 安 定 性 を確 保 す る社 会 的 仕 組 み だ と言 え る.本 研 究 は,不 確 実 性 低 減 の観 点 を, 資 源 の 安 定 供 給 か ら情 報 の安 定 供 給 を め ぐる 問 題 に拡 張 す る.本 論 文 の 目 的 は,“ 他 者 か ら 学 ぶ ” とい う社 長 谷 川, 2000;亀 田 ・村 田, 2000).こ う した ア プ ロ ー チ の 核 と な るの は ,あ る行 動 や 心 理 特 性 が,い か な 会 的 学 習 の 仕 組 み が,情 る 環 境 に お い て,ま 論 考 し,そ で 有 効 な の か,と た,ど の よ う な 問 題 を解 決 す る上 間 の 生 存 上,最 題 の 一 つ と考 え られ て き た の が,不 重要 の適 応課 確実 性 の低減 で あ る.人 間 が 生 活 す る 自 然 環 境 や 社 会 環 境 に は,多 不 確 実 性(e. g.,気 候 変 動,知 源 獲 得 の 不 安 定 性)が 様な 不 確 実 性 低 減 戦 略 と して の 社 会 的 学 習:人 社 会 的 学 習 に つ い て は,心 学 等,様 性 を もつ 他 者 の 存 在,資 含 まれ て い る.人 間 は,に の 含 意 を心 理 学 実 験 に よ りテ ス トす る こ と に あ る. い う適 応 課 題 の 同 定 で あ る. こ れ ま で の研 究 で,人 報 の 安 定 供 給 を め ぐ る不 確 実 性 問 題 を ど の よ う に解 決 す る の か,適 応 論 の 立 場 か ら うし て い る.心 理 学 に お い て は, Bandura た 不 確 実 性 を 処 理 す るた め の さ ま ざ ま な 仕 組 み を作 り 出 して きた.例 わ れ る か を 問 うTomasello 関 係(Axelrod, 1984)や,重 配 す る社 会 規 範(Kameda, Kameda, Takezawa, Hill, 1985)等 は,い 要 な稀 少 資 源 を共 同 分 Takezavva, & Hastie, 2003; Tindale, & Smith, 2002; Kaplan & ず れ も,他 者 との 安 定 し た 関 係 物 行 動 学,人 る.に り最 近 で は,模 (1977)の 一連 倣 や文化 伝達 が いか に行 (2001)の う した 心 理 学 的 論 考 で は,人 研 究 な どが あ 間 の社 会 的 学 習 を 支 え て い る認 知 メ カ ニ ズ ム の モ デ ル 化,適 を 使 え ば,“ 至 近 因 ”(proximal 1997)の 類 々 な 分 野 に ま た が っ て 多 彩 な 研 究 が 進 め られ の研 究 や,よ え ば,社 会 的 交 換 場 面 に お け る 互 恵 的 理 学,動 類 学 の視点 記 述 ・説 明 が 行 わ れ る.に 応論 の言葉 cause: cf., Pinker, れ に 対 し,本 論 文 で 問 題 と した い の は,社 会 的 学 習 が ど の よ うな 機 能 を 1 本 論 文 の 執 筆 に あ た っ て,北 属:奈 良 大 学),寺 海 道 大 学 の 大 坪 庸 介(現 井 滋 両 氏 か ら貴 重 な コ メ ン トを 受 けた.こ に 謝 意 を表 した い. 2 日本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 .現 所 属:広 部. 所 に 果 た す の か に 関 す る “究 極 因 ”(ultimate 討 で あ る.そ す 役 割(適 島修 道大学 人文 学 応 的 機 能)が 究 極 因 的 接 近 は,こ た.唯 cause)の 検 こ で は,社 会 的 学 習 が 人 間 の生 存 に 果 た 焦 点 と な る.社 会 的 学 習 へ の れ ま で ほ と ん ど行 わ れ て こな か っ 一 の例 外 が 人 類 学 に お け る “文 化 的 学 習 ” の モ デ ル 化 で あ る.人 類 学 で は,世 代 を超 え て伝 達 さ れ る 間 の 適 応 環 境 に お け る不 確 実 性 が,に の 文 化 的 知 識 の 有 効 性 が どの よ う に保 証 され る の か,知 レ ベ ル の 不 確 実 性 に 尽 き る と す る 理 由 は な い.例 え 識 を伝 え る文 化 的 学 習 が 人 間 の 適 応 に ど の よ うな 機 能 ば,人 を果 た す の か'な どの 問 い が 重 要 な 理 論 的 問 題 と な tionary Adaptedness: る.以 下 で はBoyd & Richerson 中心 に展 開 は,気 候 変 動 が 極 め て 頻 繁 で あ っ た(Richerson され て き た 文 化 的 学 習 に 関 す る 人 類 学 モ デ ル を,社 会 Boyd, 2000).社 心 理 学 の視 点 か ら批 判 的 に 吟 味 し た い. 有 効 に機 能 す る の か,そ (1985)を 文 化 的 学 習 に関 す る 人 類 学 モ デ ル の ア イ デ ア を 例 示 す る た め,簡 単 な例 を 考 え る.山 毒 性 に つ い て,判 で採集 したキ ノ コの 断 で き な い と し よ う.に こで,試 錯 誤 を 通 した 個 人 的 学 習 は極 め て 危 険 で あ る.こ き,他 行 の と し か し,人 が 示 す よ う に,同 (文 化 的 学 習)は の例 一 文 化 内で の 他者 を参 照 す る行 動 環境 知 識 の不 確 実性 を低減 す る上 で 非 常 に有 効 で あ る. Boyd & Richerson (1985)は,適 EEA)と of Evolu- され る更新 世 にお いて & 会 的学 習 が にの よ うな変 動 環 境 下 で の 答 え は 全 く 自明 で な い.親 や コ ミュ ニ テ ィ 内 の 年 長 者 を 参 照 す る こ とで 得 られ る 情 報 は,変 動 環 境 の も とで は,既 が あ る.こ に時 代 遅 れ の 可 能 性 の こ と は キ ノ コ問 題 との 決 定 的 な 違 い で あ る. 者 の 行 動 を観 察 した り,年 長 者 の 意 見 を求 め る に とで 個 人 的 学 習 に 伴 う リス ク を 低 減 で き る.こ 間 の 進 化 的 適 応 環 境(Environment Henrich & (1985)の Boyd (1998)は, Boyd & Riderson モ デ ル を 拡 張 し,時 間 的 に 変 動 す る 環 境 で も他 者 の行 動 を模 倣 す る社 会 的 学 習 行 動 が 有 効 か,生 物 進 化 を模 し た 進 化 シ ミュ レ ー シ ョ ン と呼 ぼ れ る 技 法 を 用 い て 検 討 し て い る.以 下 で は,気 候 と農 耕 技 術 と 応 の 観 点 か ら文 化 的 学 習 の 有 効 性 を数 理 的 に検 討 して の 関 係 を例 に と っ て 彼 ら の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 概 要 を い る.彼 説 明 し よ う. ら の 検 討 か ら,個 人 が 不 確 実 に しか 環 境 情 報 を獲 得 で き な い 状 況 で は他 者 の 行 動 を模 倣 す る 文 化 的 学 習'特 に コ ミュ ニ テ ィ 内 に 高 い頻 度 で 見 られ る行 動 例 え ぼ,あ る 地 域 に一 期 作 と二 期 作 とい う 農 耕 法 が 存 在 す る と し よ う3.雨 季 が1年 (多数 派 の 示 す 行 動)を そ の ま ま模 倣 す る 同 調 バ イ ア 期 作 が, ス(conformity 高 い 適 応 価 を もつ こ とが 示 さ の 方 法 が 良 い か は,自 然 環 境(雨 bias)が れ て い る. の地 域 で は二 ちら 季 の 回 数)に 依存 す 期 作 と二 期 作 の う ち,ど ち らが る. こ うした人類 学 モ デル に よる定式 化 は心理 学 の議論 と も対 応 す る.例 え ば,Bandura 習 理 論 やFestinger (1954)の ば,人 に2回 1回 の地 域 で は 一 期 作 が 適 し て い る.ど 間 は,情 (1977)の 社会 的学 社会的比較理論 によれ 報 の 不 確 実 性 を低 減 す る た め に,社 会 個 人(農 民)は,一 妥 当 か を 知 る た め に,将 ら な い.将 来 の 気 候 を予 測 し な け れ ぼ な 来 の 気 候 を 予 測 す る に あ た り,個 人 は,前 世 代 に 属 す る “文 化 的 親 た ち ”(コ ミュ ニ テ ィ 内 で の 的 な 情 報 獲 得 手 段 を利 用 す る.上 記 の 例 で キ ノ コ の 毒 参 照 対 象)が 性 を見 極 め る 際 に参 照 す る 他 者 はBandura と,気 温 の 年 次 変 化 や 植 生 の 変 化 な ど将 来 の 気 候 変 動 (1977)の 採 っ て い た 農 耕 法 を知 る社 会 的 学 習 機 会 言 う模 倣 対 象 で あ り,個 人 的 学 習 の 行 え な い状 況 で 他 と関 係 す る様 々 な 手 が か り を 自 ら探 索 す る個 人 的 学 習 者 の 意 見 を 参 考 に す る 行 動 はFestinger 機 会,の う社 会 的 比 較 に 他 な ら な い.に (1954)の の 意 味 で,人 言 類学 モデ ル の 扱 う文 化 的 学 習 と本 論 文 の 問 題 とす る 社 会 的 学 習 二 つ を利 用 で き る.個 人 は 二 つ の ソー ス か ら 得 ら れ る情 報 を統 合 して,一 期作 か 二期 作か の意 思決 定 を行 う. は概 念 的 に類 似 し て い る. 環 境 は世 代 間 で 変 動 し う る(ご 変 動 環 境 下 に お け る社 会 的 学 習 の 有 効 性1人 類 学モ デ ルの展 開 回 数 が 変 動 す る)の で,社 く低 い確 率 で 雨 季 の 会 的 学 習 に よ っ て得 られ る 情 報 は 時 代 遅 れ の 可 能 性 が あ る.一 方,個 人 的学 習 は 最 新 の 環 境 情 報 を獲 得 で き る 機 会 を与 え るが,誤 上 述 の “キ ノ コ 問 題 ” に 例 示 さ れ る よ う に,社 会的 含 む 単 独 観 察 の た め,社 差 を 会 的 学 習 と比 較 して 統 計 的 精 学 習 は あ る場 合 に は極 め て 有 効 に働 く こ とが 容 易 に理 度 に 劣 る(社 会 的 学 習 で は複 数 の “文 化 的 親 た ち ” の 解 で き る.し 行 動 を観 察 で き る の で,統 計 学で 言 う大数 の法則 が働 く).こ な る2種 か し,キ ノ コ 問 題 は,不 確 実 環 境 の 特 徴 を 十 分 に表 現 し て い る だ ろ う か.キ 限 界 は,適 ノコ問題 の重 大 な 応 対 象 の 性 質 が 不 変 で あ り,時 間 的 な 変 動 に 伴 う不 確 実 性 が 含 ま れ て い な い とい う 点 で あ る.キ こ で の 問 題 は,異 益-コ ス ト関 係 を 考 慮 し,両 類 の学 習 機 会 の利 者 の 最 適 な 重 み づ け を考 え る に とで あ る. ノ コ の 毒 性 が 人 類 史 を 通 じ て 不 変 で あ っ た 以 上,文 Henrich & Boyd (1998)は, 2種 類 の 学 習 機 会 か ら 化 ・コ ミュ ニ テ ィ 内 に い っ た ん正 し い 知 識 が 獲 得 され 得 られ る情 報 を どの よ う に 組 み 合 わ せ て 判 断 を下 す の れ ば(例 が 最 も有 効 か,パ え ば500年 し た な ら),そ さ れ る.こ 前 に 誰 か が そ の キ ノ コで 命 を落 と の 意 味 で,キ 実 性 とは,誰 ラ メ ー タ を組 織 的 に変 動 さ せ た コ ン の 知 識 の 妥 当 性 は い つ の 時 代 に も保 証 ノ コ 問 題 に お け る環 境 の 不 確 か が 亘回 直 接 学 習 す れ ば 文 化 的 に 消 去 で き る 程 度 の不 確 実 性 と言 え る. 3 以 下 は,あ く まで も議 論 を助 け る た め の 仮 想 例 で あ り,農 耕 が 人 間 の進 化 的 適 応 環 境 に 含 ま れ て い た と主 張 す る も の で は 全 くな い. ピ ュ ー タ ・シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を行 う に と で 検 討 し た. 会 的 学 習 へ の 依 存 傾 向 を 強 め る 可 能 性 が 高 い.に す で に述 べ た よ う に,時 間 的 変 動 の 存 在 す る 環 境 で は社 会 的 学 習 に よ っ て 得 ら れ る情 報 の 有 効 性 は 自 明 で は な い.タ イ ム ラ グ の た め に社 会 的 学 習 へ の 依 存 は む し ろ時 代 遅 れ の 行 動 を導 くよ う に も見 え る.し か し, に,学 に 習 機 会 の 利 用 に 関 す る “フ リー ラ イ ダ ー 問 題 ” が 発 生 す る. こ う し た フ リー ラ イ ダ ー 問 題 は,以 下 の よ う な 興 味 深 い パ ラ ドク ス を も た らす.個 人 的学習 機会 をス キ ッ 彼 ら は こ の よ うな 直 感 に 反 し,環 境 変 動 の 存 在 す る状 プ し,社 会 情 報 の み に 依 存 す る フ リー ラ イ ダ ー が 社 会 況 で も社 会 的 学 習 が 有 効 で あ る こ とを 示 した.す に 蔓 延 す れ ば,模 ち,個 人 的 な情 報 探 索(個 人 的 学 習)か なわ ら得 られ る情 報 が あ い まい な 場 合 に “文 化 的 親 た ち ” の 間 で 最 も高 倣 対 象 の 行 動 自体 も社 会 的 学 習 に よ っ て 獲 得 され た 行 動 で あ る 可 能 性 が 高 い.他 者 を真似 た 者 を さ ら に 自分 が 真 似 る とい う二 次 的 模 倣 が 生 じ や い頻 度 で 見 ら れ る行 動 を そ の ま ま模 倣 す る “同 調 バ イ す い.先 述 の キ ノ コ 問題 に 代 表 さ れ る 時 間 変 動 の な い ァ ス ”(conformity 環 境 で は,二 bias)4を もつ こ と が,変 動 す る不 次 的 模 倣 は有 効 で あ る.直 接学 習 に よっ 確 実 環 境 下 で 適 応 的 な 行 動 を 導 く に とが 示 さ れ た の で て い っ た ん 文 化 内 に蓄 積 さ れ た 知 識 は い つ の 時 代 に も あ る. 普 遍 的 に 正 しい か ら で あ る.し 学 習 コ ス トの 非 対 称 性 と フ リー ラ イ ダ ー 問 題 Henrich & Boyd (1998)の て も社 会 的 学 習(と い る状 況 で は,文 知 見 は変 動 環 境 下 に お い くに 同 調 型 の 意 思 決 定)が か し,変 動 環 境 の も と で は こ う した 関 係 は成 立 し な い.皆 有効 な が 皆 の模 倣 を し て 化 内 に流 通 して い る知 識 は環 境 が 変 動 し た と き に 一 挙 に妥 当 性 を失 う.従 っ て,集 フ リー ラ イ ダ ー が 蔓 延 す る 状 況 で は,た 場 合 が あ る こ と を数 理 的 に 明 ら か に した 点 で 極 め て 重 支 払 っ て も個 人 的 学 習 行 動 を 開 始 した 方 が,今 要 で あ る.し 適 応 上 有 利 とな る. か し,社 会 心 理 学 の 視 点 か らす る と,彼 らの モ デ ル が 見 落 して い た 重 要 な 理 論 的 問 題 が 存 在 す い て は,個 人 的 学 習(個 ダ ー 問 題 ”(Kameda (社会 的 情 報 探 索)の 岸, 1990)で あ (1998)の モ る. 在 す る.つ す で に述 べ た よ う に, Henrich &Boyd デ ル は 個 人 が 二 つ の 学 習 ソ ー ス(個 人 的 学 習,社 学 習)か 会的 ら得 られ る情 報 を認 知 的 に 最 適 な 形 で 統 合 す る と考 え た,に 機 会)を の に とは,二 つ の 学 習 機 会(情 報 獲得 す べ て の個 人 が 利 用 す る こ と を 前 提 と す る. 度 は' 以 上 の 議 論 を ま とめ る と,変 動 す る不 確 実 環 境 に お る.学 習 コ ス トの 非 対 称 性 か ら生 ま れ る “フ リー ラ イ et al., 2003;山 団 内に とえコス トを 人 的 情 報 探 索)と 社 会 的学 習 間 に循 環 的 な相 互依 存 関 係 が存 ま り,皆 が 個 人 的 学 習 行 動 に誠 実 に 従 事 し て い る状 況 で は 集 団 内 に 流 通 す る 知 識 の 質 が 高 い の で,自 ら は コ ス トの か か る個 人 的 情 報 探 索 を ス キ ッ プ し,他 者 の 探 索 努 力 に た だ 乗 りす る者 が 有 利 とな る. 従 っ て,社 会 的 学 習 しか 行 わ な い フ リー ラ イ ダ ー が 次 第 に 集 団 内 に 増 え て い く.し か し,フ リー ラ イ ダ ー が 個 人 が 二 つ の情 報 を認 知 的 に統 合 す るた め に は そ れ ぞ 増 加 す る と,変 動 環 境 の も とで は社 会 に流 通 す る知 識 れ の 学 習 機 会 を ま ず 利 用 し な け れ ば な ら な い.し の 妥 当 性 が 保 証 し き れ な く な る.従 し,学 習 機 会 の 利 用 に 関 す る,こ か の 前 提 は妥 当 だ ろ う か. ダ ー の 蔓 延 が,コ っ て,フ リー ラ イ ス トを掛 け て も最 新 の 環 境 情 報 を 直 接 探 索 す る個 人 的 学 習 行 動 の 適 応 価 を増 大 させ る.つ に こで “学 習 コ ス トの 非 対 称 性 ” が 重 要 な 問 題 と な る.多 くの 場 合 に,自 ら の 試 行 錯 誤 を通 じ て 情 報 を探 索 す る個 人 的 学 習 は,他 者 の 行 動 を 観 察 ・模 倣 す る だ け の社 会 的 学 習 よ り も コ ス トが か か る.と ま り,二 つ の 学 習 モ ー ドの 問 に は “自 ら の増 殖 が 自 分 に不 利 な 環 境 を生 み 出 し他 方 の 増 殖 を 促 す ” とい う循 環 的 な 相 互 依 存 関 係 が 存 在 す る. こ う し た 循 環 的 関 係 は,生 物 学 者Maynard す れ ば,学 習 機 会 の利 用 に あ た っ て 個 人 に 損 得 計 算 が 働 くの は 当 (1982)の 然 で あ ろ う.こ て い る.タ の 意 味 で,す べ て の 個 人 が コ ス トの か Smith 論 じ た タ カ ハ トゲ ー ム と類 似 の 構 造 を も っ カ ハ トゲ ー ム は 資 源 を め ぐ っ て 二 つ の 個 体 か る個 人 的 学 習 行 動 に 従 事 す る と い う仮 定 は 無 条 件 に が 争 う状 況 を モ デ ル 化 す る.に は成 立 し得 な い.言 に 闘 い を 挑 ん で 資 源 を 奪 取 し よ う とす る 闘 争 的 戦 略 い 替 え る と,二 つ の 学 習 モ ー ド問 に コ ス トの 非 対 称 性 が 存 在 す る と き,多 くの 個 人 は コ ス トの か か る 個 人 的 学 習 機 会 を ス キ ッ プ し,安 価 な社 4 例 え ば, 5人 の “文 化 的 親 た ち ” の 間 で3人 人 が 行 動Bを 採 っ て い る状 況 を 考 え る.こ バ イ ア ス を も つ個 人 は 確 率1,00で 行 動Aを 調 バ イ ア ス を全 く もた な い 個 人 は,比 動Aを 採 用 し な い.後 さ れ ず,頭 者 で は,多 が 行 動Aを, 2 の と き,完 全 な 同 調 採 用 す る.一 方,同 例 的 に 確 率0.60で しか行 数 派 に何 ら特 別 の 影 響 が付 与 手 い を挑 まれれ ば逃 げ るが それ以 外 は粘 る持 久 的 戦 略(ハ ト戦 略)の2種 う した 状 況 で,闘 争 的 個 体(タ ト)が 得 る利 得 は,集 数分 の 社会 的影 響 しか起 きない 点 に留意 され たい (Davis, 1973) (タ カ 戦 略),闘 の と き,個 体 は,相 度 に 依 存 す る.つ 類 を利 用 で き る.こ カ)と 持 久 的 個 体(ハ 団 に お け る そ れ ぞ れ の 戦 略 の頻 ま り,集 団 にタカ個 体が 多 けれ ば タ カ 同 士 が 闘 争 に よ っ て つ ぶ しあ うの で 闘 争 コ ス トを 負 わ な い ハ ト個 体 が 有 利 と な る.一 方,ハ トが 多 け れ ば,今 度 は,無 抵 抗 の ハ トを 搾 取 で き る タ カ が 有 利 と な る. Maynard れ ば,こ Smith (1982)の 進化 ゲ ーム分 析 に よ う した 利 得 の 頻 度 依 存 性 は,集 団内 で タカ と ハ トが一 定 の比 で安定 して均衡 す る とい う帰 結 を もた 被 験 者 は,社 らす.二 つ の戦略 が集 団 内で安 定 して共 存 す る とい う 結 果 で あ る.以 上 の類 推 か ら,仮 説1が 導 き出 さ れ た. 最 新 の 統 計 的 情 報 を 得 る.た 仮 説1 変 動 す る不 確 実環 境 で は,コ ス トを支 払 っ て情 報探 索 を行 う者 と,探 索 を行 わず社 会 的情報 のみ 社 会 的 学 習 機 会 に 加 え,個 人 的 学 習 機 会 も,全 被 験 者 に依存 す るフ リー ライ ダーが,集 団内 に一定 比 で均衡 す る5. また,個 人 的学 習 に ほ とん どコス トが伴 わ ない状況 で は多 くの者 が個 人 的情報 探索 に従 事 す るた め,集 団 内 に流通 す る知識 の精 度 は平均 的 に高 い.反 対 に,個 人 的 学習 にコス トが伴 う状 況 で はフ リー ライ ダーが増 加 す るた め,集 団内 に流通 す る知識 の平 均 的精度 が低 い.従 っ て,集 団 内 の多 数 派 の意 見 を重 視 す る傾 向 (多数派 同 調バ イア ス)の 適 応価 は個 人 的学 習 コス ト の有 無 に依存 す る.人 が それ ぞれ の状況 で ふ さわ しい 学習 戦略 を採 る とい う適応 論 の観 点か ら,以 下 の仮 説 が導 か れ る. 仮 説2 多 数派 同調 バ イ アス の強 さは個 人 的学 習 コ ス トの有 無 に依存 し,コ ス トのか か る状 況 下で は多 数 派 同調バ イア スが相対 的 に弱 まる. 方 れ らの被 験 者 差 し引 か れ る6.こ れ に対 し て,コ ス トな し条 件 で は, が 無 条 件 で 利 用 で き る. 各 被 験 者 は,い ず れ か の 条 件 の 下 で 判 断 課 題 を複 数 試 行 繰 り返 し行 っ た.そ の 際,累 フ ィー ドバ ッ ク に よ っ て,ど 積 報 酬額 の定 期的 な の よ う に 情 報 を獲 得 す る の が 有 効 か を経 験 に よ っ て 学 ぶ こ と の で き る状 況 に 置 か れ た. 被験 者 北 海 道 大 学 の 学 生216名(男 性123名,女 性93 名). 実験 条件 個 人 的 学 習 コ ス トあ り/な し の2条 件(被 験者間要 因). 実 験 課 題: “ウ サ ギ 当 て ゲ ー ム ” 者 ら の 開 発 し た “ウ サ ギ 当 て ゲ ー ム ” とい う コ ン ピ ュ ー タ ゲ ー ム を 課 題 と して 用 い た. 被 験 者 は6人 グ ル ー プ で 実 験 に 参 加 し,LANで 接続 さ れ た コ ン ピ ュ ータ が 設 置 して あ る個 室 に 入 っ て課 題 本 実験 は,変 動 す る不確 実 環境 に置 か れた個 人 が ど の ように情報 を獲 得 し,判 断 を下 す のか を検 討 す る に とを 目的 にす る.被 験 者 は変 動す る不 確実 環境 で一 連 の判 断 を下 す にとを求 め られた.被 験 者 に は,累 積 正 解数 に応 じて実験 報 酬 を支払 う と教示 した. 被 験者 が判 断 を下 す た めの情 報 を獲 得 す る機 会 に以 下 の2種 類 を設 けた.一 つ は,同 時 に参加 してい る他 の参 加者 が 下 した前 試行 の判 断 を知 る社会 的学 習機 会 (タ イム ラ グの伴 う情報)で あ り,こ れ はす べ て の被 験者 が 無条件 で利 用 で き る.も う一 つ は,現 試 行 の環 境 に関 す る最新 の統 計 的情報 を獲 得 で き る個人 的学 習 機会 で あ る. 本 実 験 で は個 人 的学習 に伴 うコス トの有 無 を操作 し た.コ ス トあ り条件 で は,個 人 的学習 機会 を利 用 す る か ど うか は被験 者 の 自由 に任 され る.コ ス トを支払 わ ない被験 者 はデ フ ォル トで与 え られ る社会 的情 報 の み で判断 を下 さな けれ ばな らな いが,コ ス トを支 払 った を60試 ッ シ ュ均 衡 を構 成 す る社 会 行 行 っ た(た だ し,被 験 者 に は に の ゲ ー ム を 何 回 行 うか の 説 明 は あ らか じ め 与 え な か っ た).各 験 者 は ゲ ー ム を60試 行 完 了 し た 後,実 被 験 の 内容 につ い て の 自 己 報 告 尺 度 を含 む事 後 質 問 紙 に 回 答 した. “ウ サ ギ 当 て ゲ ー ム ” と は ,画 面 上 に 提 示 さ れ る 二 つ の 巣 穴 の う ち,ど ち ら に ウサ ギ が 隠 れ て い る か を い く つ か の 情 報 を 用 い て 推 測 す る 課 題 で あ る.被 験者 は,ウ の報 サ ギ が い る巣 穴 を1回 当 て る ご と に30円 酬 が 与 え られ る と教 示 され て い る.ゲ ー ム の シ ナ リオ で は,何 日 間 か 継 続 して 二 つ の 巣 穴(以 穴 と呼 ぶ)を 下, A穴, こ こ で の ウ サ ギ は基 本 的 に は前 日(前 試 行)と 同 じ巣 々 小 さ な 確 率 で 巣 穴 か ら巣 穴 へ と移 動 す る性 質 を も つ.に 環 境(=ウ B 観 察 す る と い う状 況 が 設 定 され て い た. 穴 に住 み続 け るが,日 の こ と は,判 サ ギ の 居 場 所)の 断対 象 であ る 時 間 的 定 常 性 が 保 証 され な い こ と を意 味 し て い る. ウ サ ギ がA, 6 “均 衡 ” とは ,ゲ ー ム 理 論 に お け る ナ ッ シ ュ 均 衡 と同 義 で あ る. p. 32で 詳 し く述 べ る よ う に,ナ だ し,こ は,統 計 的 情 報 の 対 価 と し て,実 験 報 酬 か ら コ ス ト を 本 実 験 で は,筆 法 実験 の概 要 5 会 的 情報 に加 え て 現 試 行 の 環 境 に 関 す る Bの ど ち ら の 巣 穴 に い るか を推 測 す る す で に論 じた よ う に ,本 研 究 の 仮 説 は,個 人 的 学 習 に は社 会 的 学 習 よ り も コ ス トが 掛 か る とい う前 提 に立 脚 す る.こ 本 質 的 な の は,二 こで つ の 学 習 モ ー ド間 の “相 対 的 な コ ス トの ち が 状 態 に は多 型 均 衡 と混 合 戦 略 均 衡 の 二 つ の可 能 性 が 存 在 す る. い ” で あ り,そ れ ぞ れ の 学 習 モ ー ドに お け る コ ス ト量 自 体 が 問 い ず れ に して も,均 衡 と は安 定 化 の 過 程 で あ り,そ 題 な の で は な い.コ にで は 行 動 の分 散 が 減 少 す る とい う デ ー タ が 経 験 的 に 得 ら れ る.均 衡 に 関 あ る一 方,社 す る 理 論 的 分 析 の 詳 細 に つ い て は, Kameda 与 え ら れ る の は,に (2002)を 参 照 さ れ た い. & Nakanishl て い る. ス トあ り条 件 で,個 人 的 学習機 会が 有料 で 会 的 学 習 機 会 が 全 被 験 者 に デ フ ォ ル ト(無 料)で の ぎ “ 相 対 的 コ ス ト差 ” とい う前 提 を 反 映 し た め の情 報 は,社 会 的学 習機 会 と個人 的学 習機 会 とい う二 つ の学 習機 会 に よって獲 得 す る に とがで きる. 社 会 的学 習機会 各試行 の は じめに,他 の 実験参 加 者 が前 試行 に どの よ うな決定 を下 したか の情報 が提 示 され る.に の情 報 は同時 に参 加 して い る6名 の実験 参 加者 の中か ら,被 験 者 自身 の判 断 を除 く3名 の判 断 を ラ ンダム にサ ンプ リング した もので あ り,す べ ての被 験者 に無 条件 で与 え られ る.に にで は被験 者 ご とに ラ ンダ ム に サ ン プ リ ング した他 者3名 中, A穴 を選 ん 成 績 の フ ィ ー ドバ ッ ク 本 実 験 で は,変 応 学 習 す るか を検 討 す る.以 上 の 目的 か ら,各 被 験 者 が 自 ら の情 報 獲 得 方 略 の 有 効 性 を知 る こ とが で き る状 況 を設 定 した.本 実 験 で は,被 参 加 し て い る6人 の 中で各 人 が どの程度 の成 績 をあげ て い るか,と い う情 報 を5試 30円 ×正 解 試 行 数-15円 実 な情報 しか獲得 で きない.ま た,に う した物 理 的な 不確 実性 に加 え,コ ス トあ り条件 で の “ウサ ギ当 てゲ ー ム” は社会 的不 確 実性 を も内包 してい る.本 実験 で 行 サ ギ の 正 確 な所 在 を に の情 報 か ら知 る に と は で き な い).具 表 示 した. 上 述 の よ うに社会 的 情報 は, 3人 の判 断 で あ り,エ ラー を低 減 す る上 で1人 だ けの判 断 よ りも統計 的 に優 れ た情 報 で あ る(大 数 の法 則).し か し,に れ らの他 機 を利用 で きた. 社 会 的 不 確 実 性 の 存 在 上 述 の よ う に,本 実験 で は,被 験 者 は二 つ の学 習機 会 の いずれ におい て も不 確 時 に実験 に 行 ご と に 与 え た(5試 そ の 試 行 まで の 累 積 報 酬 額(=コ 能性 が あ る. 個 人 的学 習機会 各 被験 者 は,社 会 的学 習機 会 に加 え,ウ サ ギ の所 在 に関 す る統計 的手 が か りを与 え る “ウサ ギ発見 機” を個 人 的 に利 用 で き る .“ ウサギ発 見 機” とは,二 つ の巣穴 それ ぞれ につ いて,ウ サギ の隠 れ て い る可能 性 を数 値 で 表示 す る装 置 で あ る.“ ウサ ギ発 見機 ” は,ウ サ ギ の所 在 に つい て最新 の手 が か り 情報 を提供 す る.一 方,“ ウサ ギ発 見 機 ” に よる個 人 的学 習 は,集 約情 報 を与 える社 会 的学 習 よ りも統計 的 精 度 に 劣 る.コ ス トあ り条 件 で は,ウ サ ギ 発 見 機 は 15円 の コス トを支 払 った被 験 者 しか 利 用 で きな い. 一 方,コ ス トな し条件 で は,全 被験 者 が無 条件 に発 見 験 者 に,同 ご との 集 約 フ ィ ー ドバ ッ ク の た め,ウ だ人 数, B穴 を選 んだ人 数 に関す る集 約情 報 を画面 に 者 の判 断 は前 試行 の もので あ り,小 さい確 率 で ウサギ が試 行 ご とに巣穴 を移 動 す る変動 環境 で は既 に古 い可 動 す る不 確 実 環 境 に 置 か れ た 個 人 が どの よ う に 情 報 獲 得 方 略 を適 体 的 に は, ス トあ り条 件 で は, × ウ サ ギ 発 見 機 使 用 試 行 数) を メ ンバ ー 全 員 分 フ ィ ー ドバ ッ ク した.に の フ ィー ド バ ッ ク 情 報 に よ っ て,各 被 験 者 は 自 ら の 学 習 戦 略 が 相 対 的 に どの 程 度 有 効 か を知 り,学 習 戦 略 の 修 正 を行 う こ とが で きた. 結 以 下 で は,二 仮 説1の つ の 仮 説 に即 して 結 果 を 報 告 す る. 検 証:学 ま ず,個 果 習戦 略の均 衡 人 的 情 報 探 索 と フ リー ラ イ ダ ー とい う2種 類 の 戦 略 が,試 行 の 経 過 に 伴 い,一 に 安 定 し て 均 衡 す る とい う仮 説1を 定 の比率 で集 団 内 検 討 す る. こ こで の 個 人 的 情 報 探 索 戦 略 と は あ る試 行 で コス ト を 支 払 っ て “ウ サ ギ 発 見 機 ” を利 用 す る に と,フ リー ラ イ ダ ー と は そ の 試 行 で “ウ サ ギ 発 見 機 ” を 利 用 せ ず,社 会 的 情 報 の み に依 存 す る 戦 略 を意 味 して い る. 従 っ て,に にで は'二 つ の 戦 略 を弁 別 で き る コ ス トあ り条 件 の み が 分 析 対 象 と な る(コ ス トな し条 件 で は, 個 人 的 学 習 機 会 を す べ て の被 験 者 が デ フ ォ ル トで 利 用 で き た の で,上 Figure 1に,コ 記 の2戦 略 は そ も そ も弁 別 で き な い). ス トあ り条 件 に お け る 情 報 探 索 者 と フ リー ラ イ ダ ー の 平 均 集 団 内比 率 の 推 移 を 示 した. “平 均 集 団 内 比 率 ” とは ,各 グ ル ー プ で の “ウ サ ギ 発 は,社 会 情報 として与 え られ る3人 の他者 の判 断 の中 か ら,個 人 的学 習 に従 事 した者 を,従 事 しな か った者 か ら弁別 す る こ とは不 可能 で あ る.社 会 情 報が 集約 的 に与 え られ る以上,コ ス トを支払 っ て ウサ ギ発 見機 を 利 用 した者 の判 断だ けを選 択 的 に参 照 す る に とは不 可 能 で ある. ま とめ る と,被 験者 はいず れ の学習機 会 を用 い て も 不確 実 な情報 しか獲得 で きない.す なわ ち,社 会的 学 習機 会 で得 られ る情報 は'タ イム ラグのた め に既 に古 い可 能性 が あ り,個 人 的学 習機 会 で得 られ る情 報 は統 計的精 度 に劣 る.本 実 験 で想定 した環境 に は,こ うし た物 理的 な不 確実 性 に加 え,他 者 が どの よ うな手段 で 判 断 を下 してい るか知 り得 ない とい う社 会 的 な不確 実 性 も存在 す る.に の ように,二 重 の不確 実 性 のあ る変 動環境 下 で,被 験 者 は繰 り返 し “ウサ ギ 当て ゲー ム” に取 り組 ん だ. Figure 1 .個 人 的 情報 探 索 者 とフ リー ライ ダ ー の平 均 集 団内 比 率 の時 系 列 変化(コ ス トあ り条 件). 見 機 ” 利 用 者,非 加 し た 全20グ 利 用 者 の 比 率 を コ ス トあ り条 件 に 参 ル ー プ を 通 じ て 試 行 ご と に平 均 した も の で あ る. 仮 説1と 一 貫 し て,試 行 経 過 に 伴 い,二 つ の戦 略の どの よ う な 形 で 生 じ る の だ ろ うか.本 説 導 出 の 背 景 と な っ た 進 化 ゲ ー ム 理 論 に よ れ ば,均 衡 を 形 成 す る 社 会 状 態 に “多 型(polymorphism)” と “ 混 合 戦 略( mixed strategy)” の 二 つ の 可 能 性 を 考 え 比 率 が 次 第 に均 衡 して い く様 子 が 示 さ れ て い る.以 下 得 る(Maynard で は'こ と戦 略Bが う し た 均 衡 が 生 じ て い く こ との 証 拠 を,情 探 索 者 数 の 分 散 の 時 系 列 的 推 移 を 手 が か り に,二 方 法 か ら示 す(フ 報 つの リー ラ イ ダ ー の 比 率 は,情 報 探 索 者 型),す 確 率1-pで グ ル ー プ 間 で の,情 で あ る.も ば,異 し,情 ス ト あ り条 件 に 参 加 し た 全20 報 探 索 者 数 の 分 散 を検 討 す る 方 法 報 探 索 者 数 が 均 衡 に 近 づ く とす れ な る グ ル ー プ 間 に お け る情 報 探 索 者 数 の 分 散 は 試 行 経 過 に 伴 っ て 低 下 す る は ず で あ る.つ ま り,実 験 1982).あ る 母 集 団 で 戦 略A 均 衡 し て い た と し よ う. 採 る個 体 と常 に 戦 略Bを 採 る個体 が こ れ ら の 均 衡 比 率 で母 集 団 に 存 在 し て い た と して も(多 十 分 で あ る). や り 方 は,コ Smith, 比 率pと1-pで 常 に 戦 略Aを の 比 率 の 補 数 で あ る か ら,情 報 探 索 者 数 の み の 分 析 で 第1の 研 究 に お け る仮 べ て の 個 体 が 戦 略Aを 確 率pで,戦 略Bを 使 い 分 け て い た と し て も(混 合 戦 略), こ の均 衡 は成 立 す る.い ず れ の 過 程 で も,そ プ に お け るA戦 略 個 体 の 平 均 比 率 はp, の 平 均 比 率 は1-pに のグル ー B戦 略 個 体 な る. 以 下 で は,情 報 探 索 戦 略 とフ リー ラ イ ダ ー 戦 略 の均 衡 が 多 型 に よ っ て 成 立 し て い る の か,そ れ と も混 合 戦 後 半 に は どの グ ル ー プ で も同 程 度 の情 報 探 索 者 数 に落 略 に よ っ て 成 立 し て い る の か を 検 討 す る. Figure ち 着 く と い う デ ー タ が 得 られ れ ば よ い.こ に コ ス トあ り条 件 の 被 験 者 が ど の程 度 ウ サ ギ 発 見 機 を 検 討 す る た め,試 行 を独 立 変 数,試 の可能性 を 行 ごとの情報 探索 者 数 の グ ル ー プ 問 分 散 を従 属 変 数 と し た 単 回 帰 分 析 を 行 っ た と こ ろ'有 意 な負 の 回 帰係 数 が得 られ た (β=-35,p<.01).こ の 結 果 は,試 グ ル ー プ 間 の 差 異 が 減 少 し,情 行 経 過 に伴 っ て 報 探 索 者 一フ リ ー ラ イ ダ ー の 比 率 が ど の グ ル ー プ で も一 定 の 比 率 に 近 づ く と い う事 実 を 示 し て い る. 第2の ク に 分 け て 示 し た. で,そ 験 前 期,中 期,後 1ブ ロ ッ ク は20試 期 の3ブ ロッ 行 か ら成 る の れぞ れの ブ ロ ックにお け るウサ ギ発 見機 の利 用 頻 度 は0(完 全 な フ リー ラ イ ダ ー)か 情 報 探 索 者)ま Figure ら, 20(完 全な で 分 布 し得 る. 2よ り,実 験 の 進 行 に 伴 っ て 完 全 な フ リ ー ラ イ ダ ー の 頻 度 が 急 激 に 高 くな る こ とが 分 か る.に 検 討 方 法 は,同 一 グ ル ー プ 内 の 分 散 に注 目 す る 方 法 で あ る.も 利 用 し て い た か を,実 し二 つ の 学 習 戦 略 が 時 間 経 過 と と も に 均 衡 に近 づ く とす れ ば,各 グ ル ー プ に お け る情 報 探 2 の に と は,被 験 者 の 戦 略 が 次 第 に 特 化 す る多 型 に よ る 均 衡 の 成 立 を示 唆 し て い る.に す る た め,に の 解 釈 を よ り厳 密 に検 討 にで は連 続 す る ブ ロ ッ ク 間 で 各 被 験 者 が 索 者 数 の ば らつ き は,次 第 に小 さ くな る は ず で あ る. つ ま り,同 じ グ ル ー プ で あ っ て も,実 験 前 半 で は 試 行 ウ サ ギ発 見 機 を ど の程 度 一 貫 し て利 用 し た か を 検 討 す ご とに 情 報 探 索 者 数 が ば らつ く も の の,実 し た 被 験 者 が, 3ブ ロ ッ ク 目 で もn回 近 づ く に つ れ,試 い.こ 験 が終 盤 に 行 間 で の ぼ らつ き が 低 減 す れ ば よ の 可 能 性 を 検 討 す る た め,そ れ ぞれ の グルー プ る.例 え ば, 2ブ ロ ッ ク 目で ウ サ ギ 発 見 機 をn回 第2,第3ブ ロ ッ ク 間 で,そ の被 験 者 の とる情報 獲 得 戦 略 は厳 密 に一 致 して い た こ と に な る.試 行経 過 に伴 に つ い て個 人 的 学 習 者 数 の 試 行 間 の 分 散 を,実 験 前 期 っ て 多 型 に よ る 均 衡 が 生 じ て い る と す れ ば,ブ (第1試 行-第20試 行),中 間 で の 一 致 率 は,前 行)'後 期(第41試 行-第60試 期(第21試 行)の 行 一 第40試 三つのプ ロツ 均 分 散 は,実 間経 過 と ともに一貫 して減 機利 用頻 度 が一 致 す る被 験者 の比 率 をグルー プ ご とに 少 す るパ タ ー ン が 得 られ た.こ も 支 持 さ れ て い る.個 数,ブ る. 上記 の可 能性 を検 討 す るた め,前 期 ・中期 ・後期 の ブ ロ ック間(前 期→ 中期,中 期 →後期)で ウサ ギ発 見 験 初 期 で は138,中 1.12,後 期 で は1.03と,時 ロ ック 半 よ り も後 半 で 高 くな る は ず で あ 期 で は ク ご と に 算 出 し た 。 これ を全 グ ル ー プ にっ い て 平 均 し た 結 果,平 利用 利 用 した 場 合, の パ タ ー ン は統 計 的 に 人 的 学 習者 数 の分 散 を従 属 変 ロ ッ ク を独 立 変 数 と した 一 要 因 の 分 散 分 析 を 行 っ た と こ ろ,予 測 どお り,ブ ロ ックの主効 果が 有意 で あ っ,た(F(2,38)=3.73,p<.05). 以 上 の 二 つ の分 析 か ら,試 行 経 過 に 伴 っ て 二 つ の 学 習 戦 略 が 集 団 内 で 一 定 比 率 に 均 衡 し て い く こ とが 確 認 さ れ た.こ れ らの 結 果 は,仮 説1を 明確 に支持 してい る. 多 型 か 混 合 戦 略 か:均 そ れ で は,こ 衡 の成 立パ ター ン う した 均 衡 状 態 の 実 現 は,具 体 的 に は Figure 2. 個 人 的 学 習 頻 度 の 分 布(コ ス ト あ り 条 件). 算 出 した.こ の 一 致 率 を,コ ス トあ り条 件 に 参 加 し た 全 グ ル ー プ で 平 均 した と こ ろ,平 均 一 致 率 は 前 期 → 中 期 で0.13,中 期 → 後 期 で0.33と な っ た.両 者 の差 は 統 計 的 に も有 意 で あ っ た(t(19)=4.66,p<.001). 以 上 か ら,時 間 進 行 と と も に,被 の パ タ ー ン は,仮 説1で 予 測 され た 均 衡 が 多 型 均 衡 と して 成 立 す る に と を示 し て い る. 仮 説2の 検 証1コ 次 に仮 説2を ず,全 検 討 す る 。 個 人 的 学 習 に コ ス トが 伴 わ 員が 個人 的学 習 に従事 す る状況 で は多 数派 の判 断 は変 動環 境 に つ いて の 信頼 で きる情 報 を提 供 し得 る.し か し,個 人 的 学 習 に コ ス トが 伴 う状 況 で は,実 定 して 存 在 す る た め,多 も保 証 さ れ な い.に リー ラ イ ダ ー が 集 団 内 に 安 数派 の意 見 の正 しさは必 ず し の よ う に'多 数 派 の 提 供 す る情 報 の 正 し さ は個 人 的 学 習 に伴 う コ ス トの 有 無 に依 存 す る と理 論 的 に予 測 で き る.従 学 習 戦 略 の 有 効 性(適 っ て,被 応 的 価 値)に ス トあ り条 件, 比 べ,コ 予 測 どお り多 数 ス トな し 条 件(M=.72)と ス トあ り条 件(M=55)で 有 意 に低 くな っ た(t(147)=5.70,p<.001). さ ら に,ウ サ ギ の 所 在 に つ い て 正 しい 判 断 を 行 っ た 正 解 者 数 の 時 系 列 変 化 か ら も,仮 説2を ス トと多 数 派 同 調 バ イ ア ス の 適 応 性 験 で 確 認 さ れ た よ うに,フ 以 上 の よ う に 定 義 し た 合 致 率 を,コ な し条 件 で比 較 し た と に ろ,仮 説2の 派 判 断 と の 合 致 率 は,コ 験 者 は個 人 的 情 報 探 索 者 とフ リー ラ イ ダ ー の 二 派 に 分 か れ て い く に とが うか が わ れ る.こ か りを 用 い る の に コ ス トが 掛 か る点 の み で あ る. が 得 ら れ て い る. Figure 条 件 に お い て,グ 3に,コ 支 持 す る証 拠 ス トあ り,な に ど の よ う に 推 移 し た か を 示 し た. Figure 環 境 変 動 の 起 に っ た 試 行(全 Figure 3よ り,特 境 変 動 の 直 後(ウ に コ ス トあ り条 件 に お い て'環 サ ギ が 巣 穴 を 移 動 し た 直 後)に,正 と は,特 に コ ス トあ り条 件 に お い て,環 境 変 動 直 後 に “誤 っ た 多 数 派 ” が 生 じ る に と を意 味 す る.し か し, Figure 条 件 で も,そ 3か ら 明 らか な よ う に,に れ 以 降 の 試 行 で,着 う し た コ ス トあ り 実 に正 解 者 が グ ル ー 人 的 学 習 に コ ス トが 伴 う状 況 で は 多 数 派 を 重 視 す る 程 プ 内 に 復 活 ・増 加 す る.復 度(“ 同 調 バ イ ア ス ”)が 低 下 す る は ず で あ る(仮 あ り, V字 型 の パ タ ー ンが 認 め られ る.に パ タ ー ン は,多 以 上 の仮 説 を検 討 す る た め,選 択 に あ た っ て 多 数 派 の 判 断 を 重 視 す る 程 度 を被 験 者 ご と に 算 出 した.に で は,前 はB穴 試 行 に お い て 他 者3名 を選 択 し て い た 場 合,今 が 一 致 し てA穴 に また 試 行 の判 断 で前 試行 矢 解 者 数 が 著 し く落 ち 込 ん で い る に とが 分 か る.に の こ 敏 感 で あ れ ば,個 2). 3で は, 実 験 を通 じ て 同 一)が 印 で 示 さ れ て い る. 験 者 が 自 らの 採 る 説 し の2 ル ー プ内で の平 均正 解者 数が 時間 的 活 の様 子 は し ば しぼ 急 激 で う し た復 活 くの 者 が 多 数 派 同 調 バ イ ア ス を強 く も つ な ら ば絶 対 に 起 に り得 な い 現 象 で あ る こ とに 留 意 さ れ た い.も し 同 調 バ イ ア ス が 作 動 す る な ら ば,正 解 者 数 は,環 境 変 動 の 後 に さ ら に 落 ち 込 む は ず で あ る.以 上 の パ タ ー ン は 仮 説2の 予 測 す る よ う に,コ ス トあ り の 他 者 判 断 と合 致 し た 選 択 を 行 う か 否 か を 問 題 に し 条件 にお いて多 数派 同調 バ イア スの働 きが低下 す るに た.被 と を示 し て い る. 験 者 ご と に 上 記 の ケ ー ス に該 当 す る試 行 を す べ て 抽 出 し,そ な お,コ れ らの 試 行 に お け る合 致 率 を算 出 した. 考 ス トあ り条 件 と コ ス トな し条 件 の 比 較 可 能 性 を保 証 す る た め,コ ス トあ り条 件 で は 被 験 者 が 今 回 本 論 文 で は,不 察 確 実 性 を伴 う情 報 を 処 理 す る 上 で 社 の 判 断 を下 す 上 で コ ス トを か け て ウ サ ギ 発 見 機 を 利 用 会 的 学 習 の果 た す 役 割 に つ い て 適 応 論 の 観 点(cf.,亀 した 試 行 の み を 用 い て 多 数 派 との 合 致 率 を算 出 した. 田.村 言 い 替 え る と,に しの で 例 示 さ れ る よ う に,社 会 的 学 習 は時 間 的 変 動 の な い 験 者 の 使 え る手 が か りは 全 く 環 境 に お い て 情 報 の不 確 実 性 を安 価 か つ 効 果 的 に低 減 う し た 試 行 で は コ ス トあ り,な 条 件 差 に か か わ ら ず,被 同 一 で あ る(社 会 情 報+ウ サ ギ 発 見 機 に よ る情 報). 異 な る の は,コ ス トあ り条 件 で は ウ サ ギ発 見 機 の 手 が 田, 2000)か す る.し ら検 討 を 加 え た.“ キ ノ コ 問 題 ” か し,環 境 が 時 間 的 に 変 動 す る場 合,に のに と は 自明 で は な く な っ て し ま う. 環 境 変 動 の 存 在 す る 状 況 下 で も,も (情 報 探 索)に Henrich & Boyd 的 学 習(特 し個 人 的 学 習 か か る コ ス ト が 低 い の で あ れ ば, (1998)の モ デ ル が 示 す よ う に,社 会 に 多 数 派 の 意 見 を重 視 す る 同 調 バ イ ア ス) は 情 報 の 不 確 実 性 を低 減 す る 上 で 有 効 に 働 く.し か し,個 人 的 学 習 の コ ス トが 無 視 で き な い ほ ど高 け れ ば'情 報 の安 定供給 に関す るフ リー ライダ ー問題 が生 じ,供 給 者 た る情 報 探 索 者(個 人 的 学 習 者)と,社 会 に 流 通 す る情 報 を 消 費 す る だ け の フ リー ラ イ ダ ー の 間 で タ カ ハ ト型 の 均 衡 が 生 じ る に とが 理 論 的 に 予 測 で き る.本 研 究 は,進 化 ゲ ー ム 理 論 に基 づ く以 上 の 予 測 の Figure 3. 集 団 内 の 正 解 者 数 平 均 の 時 系 列 変 化 . 正 し さ を実 験 に よ っ て 確 認 した. 以 下 で は,本 研 究 の もつ 理 論 的 含 意 を,社 会 心 理 学 題 ” と して 動 的 な相 互 依 存 構 造 の も とに 拡 張 し た も の に お い て 蓄 積 され て き た 知 見 との 関 係 か ら論 じ る. と言 え る だ ろ う. 理 論 的 含 意(1) 社 会 的 学 習 の 動 的 側 面 理 論 的 含 意(2) 少 数 派 影 響 過 程 と の リ ン ク 本 研 究 は,変 動 す る不 確 実 環 境 の も とで,フ リー ラ 上 述 の よ う に,社 会 的 学 習 の 有 効 性 は 集 団 内 の 他 者 イ ダ ー と情 報 探 索 者 が 集 団 内 に安 定 し て 共 存 す る に と の 行 動 に 本 質 的 に依 存 す る.多 を 実 験 に よ っ て 示 した.こ の み に 依 存 す る フ リ ー ラ イ ダ ー で あ る場 合,環 の 知 見 は,す で に述 べ た よ くの 他 者 が 社 会 的 情 報 境 変動 う に,人 類 学 に お け る文 化 的 学 習 や 文 化 的 伝 達 の有 効 時 に 多 数 派 に 同 調 し て 判 断 を下 す に と は サ ク ラ の 誤 答 性 へ の 関 心(e. g., Boyd に 同 調 し たAsch Boyd, 1998)と & Richerson, 1985; Henrich 直 接 的 に 関 連 す る一 方,社 & 会 心理学 に 対 し て も重 要 な 理 論 的 含 意 を も つ. 社 会 心 理 学 で は,信 念.態 て, Festinger (1954)に あ る. Festinger 被 験 者 と同 じ運 命 をた ど し か し,本 実 験 の コ ス トあ り条 件 の 被 験 者 はAsch 度形 成 の古典 的論 考 とし よ る社 会 的 比 較 過 程 の 理 論 が (1954)に (1951)の る こ と に な る. よれ ぼ,人 は自 らの信念 を 評 価 した い と い う基 本 動 機 を も っ て お り,も し,自 ら (1951)の 被 験 者 と は 異 な り,多 数 派 同 調 か ら相 対 的 に 解 き放 た れ る 傾 向 を 示 し た. Figure に,環 境 が 変 動 した 直 後,多 断 に 陥 る.し か し, Figure 3が 示 す よ う 数 派 は 一 時 的 に誤 っ た 判 3が 同 時 に 示 し て い る の の信 念 の 妥 当 性 を客 観 的 な手 段 に よ っ て 評 価 す る に と は,に が で き な い 場 合 に は 社 会 的 な 情 報 に依 存 す る.ま 況 で 人 々 が 多 数 派 同 調 バ イ ア ス を弱 め,正 Festinger (1950)は,他 た, 者 の 意 見 が 自 己 の 意 見 と一 致 の よ う に多 数 派 同 調 が 一 時 的 に不 利 益 に な る状 す る に とが 自 らの 信 念 の 正 し さ を 増 す とい う “合 意 に 少 数 派 影 響 過 程(Moscovici, よ る妥 当 化 ” の 概 念 も提 出 して い る. 果,再 上 述 のFestinger (1950, 1954)に よ る人 間 の 社 会 的 情 報 行 動 に 関 す る理 論 化 は, Henrich & Boyd の モ デ ル と基 本 的 に よ く類 似 し て い る.す 会 的 比 較 の概 念 自体,信 (1998) しい 少 数 派 の 意 見 を採 り入 れ る とい うプ ロ セ ス で あ る.に 1976)が 度 “正 し い 多 数 派 ” が 自 生 し,多 一時 的 に働 く結 数派 同調 バ イ ア ス が 適 応 的 な 状 況 が 復 活 す る に とが 示 さ れ た.つ り,“ 正 し い 多 数 派 ” が 形 成 さ れ る た め に は,一 な わ ち,社 念 評 価 に お け る,個 人 的 学 習 うした (環境 変 動 時)に が あ る.以 ま 時的 “正 し い 少 数 派 ” の 影 響 が 働 く必 要 上 の 知 見 は,多 数 派 影 響 過 程 と少 数 派 影 響 と社 会 的 学 習 の 相 補 的 な 役 割 関 係 に つ い て 論 じた 概 念 過 程 とい う一 見 対 立 す る二 つ の 影 響 過 程 を,相 補 的 な と言 い 換 え る に とが で き る.“ 合 意 に よ る 妥 当 化 ” の 社 会 プ ロ セ ス と し て 理 論 的 に統 合 し う る 可 能 性 を 示 す 概 念 もHenrich もの と言 え る. & Boyd (1998)の “多 数 派 同 調 バ イ ア ス ” の定 式 化 と ほ ぼ 同 義 で あ る.に 与 と す れ ば, Festinger (1950, うした類似 性 を所 1954)の 設 定 した 問 い を,適 応 論 の 観 点 か ら以 下 の よ う に と ら え な お す こ と が 可 能 で は な い か. 適 応 論 を通 じた 学 際 研 究 の 可 能 性 本 研 究 の 結 果 は,従 来 心 理 学 にお い て蓄 積 され て き た様 々 な 知 見 が,人 多 く の 現 実 場 面 で,個 人 的 学 習 機 会(“ 客 観 的 な 信 念 評 価 手 段 ”)を め ぐ っ て 焦 点 と な る の は,そ の機 類学 にお いて蓄積 され て きた文化 伝 達 に 関 す る理 論 的 成 果 と有 機 的 に 接 合 可 能 で あ る こ と を示 唆 す る.従 来,心 理 学 に お け る社 会 的 学 習 の 研 会 ・手 段 が 物 理 的 に存 在 す る か 否 か とい う “事 実 の 問 究 は,人 類 学 に お け る文 化 伝 達 の 理 論 的 研 究 と ほ ぼ 独 題 ” で は な い.ほ 立 に進 め られ て き た.し とん どの 場 合,個 人 的学 習機 会 は物 か し,適 応 論 とい うメ タ 理 論 理 的 に存 在 し,一 定 の 対 価 を 払 え ば利 用 可 能 で あ る. を 通 して 一 連 の 問 題 群 を 眺 め る と き,そ 従 っ て,重 の 不 確 実 性 の 集 合 的 低 減 とい う共 通 点 が 見 え て く る. 要 な の は,個 分 な 対 価(努 力)を 人 が そ れ を入 手 す る た め に 十 払 うか 否 か とい う “選 択 の 問 題 ” で あ る. こ に は,情 報 メ タ 理 論 を も つ に と に よ っ て 統 合 的 な 視 座 で様 々 な 問 題 を演 繹 的 か つ 経 験 的 に 検 討 す る道 を拓 く こ とが で き 客“ 観 的 な信 念 評 価 手 段 ” の 利 用 が “選 択 の 問 題 ” る.本 研 究 の 最 大 の 貢 献 は,に うした適 応的視 点 の も な ら ば,本 研 究 が 示 した よ う に個 人 的 学 習 機 会 を利 用 っ 豊 富 な 可 能 性 を例 示 した 点 に あ る と言 え る か も しれ す る者 と,意 な い. 図 的 に利 用 し な い フ リー ラ イ ダ ー の 問 に タ カ ハ トゲ ー ム 型 の 均 衡 が 生 じ る.つ ま り,不 確 実 性 を低 減 す る 手 段 と して の 社 会 的 比 較 の 有 効 性 は,メ ン バ ー 間 の タ カ ハ トゲ ー ム 型 の相 互 依 存 関 係 に本 質 的 に 依 存 す る.に の よ う に見 る と, Festinger の定 式 化 は,社 (1950, 1954) 会 的 比 較 の 問題 を “事 実 の 問 題 ” と と ら え た 結 果,“ 選 択 の 問 題 ” と し て の 側 面 を 見 落 し た と 言 え る か も し れ な い.こ Festinger (1950, 1954)の の 意 味 で,本 研 究 は, 設 定 し た 問 題 を,“ 選 択 の 問 引 用 文 献 Asch, S. 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