Ⅳ-22 進行性に左室機能低下を来した重症大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI) が奏功した一例 西浦 美穂 1)、島田 恵 1)、林田 健太郎 2)、田中 誠 2)、石田 三和 1)、水谷 知泰 1)、猪又 孝 元 1) 1) 北里大学北里研究所病院 循環器内科、2)慶應義塾大学 循環器内科 87 歳男性。2015 年に低流量低圧較差の重症大動脈弁狭窄症(最高血流速度 3.7m/s、平均圧較差 32mmHg、弁口 面積 0.56cm2、左室駆出率(EF)51%)を指摘され経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の適応となった。しかし 心不全症状・心機能低下・frailty・腎障害は進行性に増悪し STS スコアも 35%と極めて高かった。また術前 造影 CT で心不全急性増悪を来し、EF20%台まで急激に低下した。EF 低下は左冠動脈主幹部狭窄に起因すると 判断し経皮的冠動脈形成術も施行した。しかし全身状態急速悪化したため TAVI を施行した。その後 EF は 40% まで回復、ADL も改善し軽快退院した。今後 TAVI は比較的低リスクの症例にも広がる可能性があるが、本例 のような極めてハイリスクな患者にこそよりその有効性を発揮できる治療と考えられ、示唆に富む症例として 報告する。 Ⅳ-23 狭小弁輪かつ高度弁尖石灰化を伴う重症 AS に対して TAVI を施行したエホバの証人の1例 吉崎 徹、長沼 亨、堀越 健生、多田 美帆、中嶋 昭浩、天野 辰哉、大西 宏和、藪下 寛 祐介、石黒 久 人、割澤 高行、渡邉 雄介、松本 貴宏、田中 健太郎、佐藤 倫彦、藤野 晶、田原 聰子、栗田 直幸、朴澤 耕治、中村 勝太郎、中村 淳 新東京病院 心臓内科 症例は 69 歳、エホバの証人の女性。肝硬変による汎血球減少、食道静脈瘤、脳梗塞、胃癌の既往あり。他院 で重症 AS と診断され、輸血不可能で合併症も多く、TAVI 目的に当院へ紹介。CT、エコーでは狭小弁輪かつ無 冠尖を中心に非対称性高度石灰化を認め、弁輪破裂のハイリスク症例であった。鉄剤およびエリスロポエチン 製剤を投与し、術前 Hb 値 12g/dl 台にコントロールした。経大腿動脈アプロ―チ、穿刺法で 20mm Edwards SAPIEN3 弁を植え込み、Cell savorR にて 200ml 返血した。特に周術期合併症を認めず、アスピリン単剤内服 にて 10 日目に退院した。TAVI は外科的手術に比べ低侵襲かつ輸血施行率が低いと報告されており、本症例の 様に輸血不可能な症例に対して検討すべき選択肢となり得る可能性が示唆された。 Ⅳ-24 TAVI 後合併症:人工弁周囲逆流及び左室流出路狭窄の合併に難渋した一例 南 圭祐、出雲 昌樹、佐藤 如雄、上嶋 亮、茶谷 健一、田邊 康宏、原田 智雄、明石 嘉 浩 聖マリアンナ医科大学 循環器内科 76 歳女性、症候性重症大動脈弁狭窄症で、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の方針となる。術前 CT 検査 では、右冠尖周囲から突出する石灰化を認めていた。経大腿動脈アプローチにて TAVI を施行し、前拡張時の 同時造影を参考に Sapien XT 23mm を-2ml ダウンで留置。留置後高度弁周囲逆流(PVL)を認めた為、後拡張 を追加。後拡張後 PVL は中等度へと改善認めていたが、術後 3 日目より最大流速 6m/s と高度左室流出路狭窄 を認め、βブロッカーなどの薬物加療を開始。術後 7 日目に怒責を契機に急性肺水腫及び心原性ショックとな った。弁周囲逆流がその病態の主座であると診断し、一時的ペースメーカー留置のうえ急性期加療を行い独歩 退院できた。今回我々は TAVI 後の PVL と左室流出路狭窄の治療に難渋した症例を経験したので文献的考察を 加えて報告する。 Ⅳ-25 左室流出路狭窄に対するシベンゾリンの圧較差軽減効果を侵襲的方法で評価し得た一例 金子 光伸、豊田 東京警察病院 康豪、丹下 徹彦、島村 元章、新田 宗也、笠尾 昌史、白井 徹郎 循環器科 症例は 65 歳、男性。2010 年に大動脈弁閉鎖不全症(AR)を指摘され、その後心不全症状の進行のため 2013 年に生体弁置換術(CEP2mm)を施行した。術前心エコーで LVDd/Ds69/40mm であったものが、術後 55/39mm へと左室縮小が得られた。しかし術前に認められなかった左室流出路狭窄が出現し、1 年 4 か月後の心エコー では圧較差は 222.8mmHg であった。そこでシベンゾリンによる圧較差軽減効果を評価するため、左室内と上行 大動脈にて圧モニタリングを行いながらシベンゾリン 1mg/kg を静注したところ、直後から心内圧低下が得ら れ効果は持続した。AR への AVR 後に左室縮小により左室流出路狭窄を生じ、シベンゾリンによる圧較差軽減 を侵襲的方法にて評価した貴重な一例を経験したため報告する。 Ⅳ-26 診断に難渋した可動性に富む僧帽弁・三尖弁構造物を認めた一例 小野 泰弘、川本 子、栗田 浩禎、中村 直幸、朴澤 淳、大西 耕治、中村 医療法人社団誠馨会新東京病院 宏和、吉崎 徹、長沼 亨、石黒 久晶、田原 聰 勝太郎 初期研修医 2 年次 症例は 72 歳女性。2014 年に僧帽弁後尖逸脱に伴う閉鎖不全及び三尖弁閉鎖不全に対し、僧帽弁形成(後尖の パッチ形成+人工腱索再建)、三尖弁形成術を施行し、術後経過は良好であった。2016 年 8 月、術後 2 年の 経胸壁心臓超音波にて僧帽弁輪部に 17×8mm の可動性に富む低エコー輝度の構造物、及び、三尖弁輪にも 19 ×5mm の可動性に富む高エコー輝度の構造物を認めた。36 度台後半の発熱が続くも、血液検査では炎症所見は 認めなかった。経食道心臓超音波・術中・病理所見から、僧帽弁の構造物は人工腱索と断裂した乳頭筋、三尖 弁の構造物は人工弁輪から剥離した内膜の一部と診断した。術前に感染性心内膜炎、血栓などとの鑑別が困難 な症例であったが、超音波所見や臨床所見について検討を行い、文献的考察を交えて検討する。
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