第百九十三回国会におけ る石原内閣府特 命担当大臣(経済財政政策)の経済演説 平成二十九年一月二十日 一.はじめに 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として 、我が国経済の課題と政策運営の基本的考え方につ いて 所 信 を 申 し 述 べ ま す 。 二.経済財政運 営 の基本的考え方 (基本的考え方) 第二次安倍内閣発足後、我が国の名目GDPは四十四兆円 、実質GDPは二十五兆円増加し、デフレで はないと いう状況を創り出しました。雇用者 数は 二百万人近く増加 、失業率は 四パーセ ント程度から三パ ーセント 程度まで 低下しました。また、賃上げについても三年連続で 二パーセント以上となるなど、国民 生活にと って 最も 大切な雇用・所 得環境は 大きく 改善し、景気は緩や か な回復基調が 続いて います。 ただし、海外経済の不確実性や 、金融資本市場の変動の影響等への注意を 怠ってはなりません。また、 アベノミクスの効果を、地域の隅々まで、中小企業・小規模事業者の方々まで波及させていく必要があり ます。このようなリスクや諸課題に的確に対応していくためにも、生まれ始めた好循環を腰折れさせるこ 一 となく、成長と 分配の好循環につなげて まいります。 (当面の経済財政運営と今後の経済見通し) 当 面 の 経 済 財 政 運 営 に 当 た っ て は 、引 き 続 き 、 「 経 済 再 生 な く し て 財 政 健 全 化 な し 」を 基 本 と し 、名 目 G DP六百兆円経済の実現と 二〇二〇年度の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指します。 まずは、 「 未 来 へ の 投 資 を 実 現 す る 経 済 対 策 」を 円 滑 か つ 着 実 に 実 施 し 、内 需 を 下 支 え す る と と も に 、民 需主導の持続的な経済成長と一億総活躍社会の着実な実現につなげて いかなければなりません。 名目GDP六 百兆円経済 の実現に向けて は 、働き 方 改 革、地方創生、国土強 靭化、女 性の活躍も含め、 あらゆる政策を総動員するとともに、科学技術イノベーション等を通じて潜在成長率を向上させることに より 、デフレ 脱却を確実なものとしつつ、経済の好循環を より確かなものと してまいります。 日 本 銀 行 には 、 経 済 ・ 物 価 情 勢 を 踏 ま え つ つ 、 二 パ ーセ ン ト の 物価 安 定 目標を 実 現す る こ と を 引 き 続き 期待します。 こ れ ら を 踏 ま え 、 本 日 閣 議 決 定 し た 政 府 経 済 見 通 し で は 、 来 年 度 の 日 本 経 済 に つ いて 、 雇 用 ・ 所 得 環境 が 引 き 続き 改 善 し 、経 済 の 好 循 環 が 進 展 す る 中で 、 民 需を 中 心 と し た 景 気 回 復 が 見 込 ま れ 、経 済 成 長 率 は 二 実質で一・五パーセント 程度、名目で二・五パーセント程度になると見込んで います。 また、景気判断や経済構造の把握等の基盤となる経済統計について、経済財政諮問会議で取りまとめた 「 統 計 改 革 の 基 本 方 針 」 に 基づ き 、 政 府 一 体 と な っ て 改革 し て いき ま す 。 (成長戦略の実行・実現) 世界的に技術革新がかつて ない速 さで進 んで いる中で 成長戦 略を更に加速させて いく 必要があります。 そのためのカギは二つあります。一つ目は、人工知能、IoT、ビッグデータ、ロボットといった分野 で新しい付加価値を産み出すイノベーション。二つ目は、それ を企業や個々 人が活用して その恩恵を享受 す る と と も に 、 社 会 問 題 の 解 決 に 大 いに 活 用 す る こ と 、いわ ゆ る社 会 実 装で す 。 こ の 二 つ を 更 に 強 力 に 実 行 し 、あ ら ゆ る 場 面 で 快 適 で 豊 か に 生 活 で き る 超 ス マ ー ト 社 会 、 「 0 . 5 y t e i c o S 」を 実 現 し て い く 。こ の た め 、 成 長 戦 略 の 司 令 塔 で あ る「 未 来 投 資 会 議 」に お い て 、人 材 不 足 を 解 消 す る た め の 建 設 現 場 で の 生 産 性 革 命 、 健康寿命を延ばすための予防・健康管理と自立支援に軸足を置いた医療・介護システムの本格稼働、新た な有望市場を創出するた めの国や 自治体の有するイン フラ ・データの民間開放などについて議論していま す。 三 今 後 も 、構 造 改 革 の 総 ざ ら いを 行 う と と も に 、「 民 間 部 門 の 活 動 の 本 格 化 に は 何 が 足 り て い な い の か 」、「 イ ノベーションの社会実装にとって何が障害か」について、徹底的に議論し、その成果を年央に公表する成 長戦 略で 具体的にお示ししたいと 思います。 健康・医療戦略の観点からは、日本医療研究開発機構による研究支援などに加え、新しい医療・介護シ ステムの基盤整備や健康・医療・介護産業の国際展開についても、官民一体となって 取り組んでまいりま す。 空港 等 の成長 分 野や 上下 水道等 の 生活関連 分 野に おけ る公 共施 設を 整 備 ・運 営 す るに 当た って は 、コン セッション方式を始めとするPPP/PFIを着実に推進し、公的負担の抑制を図りつつ、民間投資や ビ ジネス機会の拡大を図ります。 世界的 に 保護 主義 の台 頭へ の危 機感 が高 ま る 中で 、 保護 主義 のまん延 を 食 い止 めるた めに 、自 由 貿 易の 下で 経済成長を遂げた我が国こ そが、先 の国会で 御承認いただいたTPP協定の発効、そして 自 由で公 正 な共通 ルールに 基づく自 由貿易を 主導して いかなけれ ばな りません。こ のた め、政府と して今 後も 様々 な 機会を通じて 、各国に対して自由貿易の重要性に対する共通の土台の構築、経済連携の推進などに向けて 粘り強く取り組んでまいります。 四 (経済・財政再生計画の推進) 経 済 再 生 な く し て 財 政 健 全 化 な し 。引き 続 き 経 済 再 生 と の 両 立 を 図 り な が ら 、 「 経 済・財 政 再 生 計 画 」及 び「経済・財 政再生アクション・プログラム二〇一六」に のっとって 、歳出全般にわ たり聖域なく徹底し た 見 直 し を 推 進 し て い き ま す 。改 革 の 二 年 目 に あ た る 二 〇 一 七 年 度 に お いて も 、 「 見 え る 化 」を 徹 底・拡 大 し、改革の具体化や改革工程表に沿った 取組を引き 続き着実に進めます。また、改革 の点検・評価、政策 効果 の分析を 強 化 し、取組のPD C Aサ イク ルを し っ かりと 定 着させて いき ます。 (社会保障と税の一体改革の推進) 少子高齢化が進展する中で 、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時に達成する観点から 、引き続 き、社会保障と 税の一体 改革に取り組みます。世界に誇るべき社会保障制度を 次世代に引き渡して いく 責 任を果たすため、社会保障の充実・安定化に取り組むなど、改革を推進してまいります。さらに、医療・ 介護情報の「見える化」を進め、各地域の状況を比較した結果も踏まえて支出の効率化・適正化を図りま す。 五 三.むすび こ の四年間の取組により、雇用・所得環境が大幅に改善し、デフレではないという状況を創り出すこと ができました。昨年後半から、世界経済は全体と して 上向きつつあり、日本経済について も、先月、二十 一か月ぶりに政府の景気判断を 引き 上げました。 日本経済をデフレから脱却させ、持続的に力強く成長させるためには、賃金の上昇を 可処分所得の向上 に、そして消費の拡大に結び付け、企業の投資を喚起して いくことが不可欠です。経済の成長が賃金の上 昇などを通じて所得として 分配され 、それが更なる成長を促し、更なる分配の原資にもなって いくという 成長と 分配の好循環を 力強く回して いくため、全 力を 尽くして まいります。 国 民 の 皆 様 と 議 員各 位 の 御 理 解 と 御 協 力 を よろ し く お願 い 申 し 上 げ ま す 。 六
© Copyright 2024 ExpyDoc