Page 1 論 文 内 容 の 要 旨 博士論文題目 結晶配向強誘電体薄膜材料

論
博 士論文題 目
文
内
容
の
要
旨
結晶配 向強誘電体薄膜材料 の作製 と
焦電 ・圧電デバイス- の応用 に関す る研 究
氏
名
藤井
覚
(
論文 内容 の要 旨)
鉛 系ベ ロブスカイト化合物 は、その優 れた強誘 電性 、焦電性 、圧電性から、不揮発
性メモリ、センサ、アクチュエータなど幅広い電子部 品に応 用されている。PbTi
O。など
は C軸方 向に大きな 自発分極を持っているため 、C軸方 向に配 向制御 した薄膜を作製
することにより、高性能なデバイスが実現できると考えられる また、Siウエハ上 に配 向
。
制御 した薄膜材料 を形成することにより、半導体プロセス技術 を応 用して従来 にない
超小型なデバイスを実現できると期待される。
以上の考えのもと、本論文では、鉛 系ベ ロブスカイト薄膜材料 の分極軸方 向に配 向
制御 させる技術 と、この配 向膜 を用いて、超小型 、高性 能な薄膜デバイスを量産 、実
用化することを 目的としている。
第 1章では、まず 、強誘 電体薄膜材料 に関する既往 の研 究 、およびこれをふまえた
上で配 向性 強誘 電体薄膜 とデバイス応用 に関する意義 と課題 についての議論を行い、
本論文の 目的を示した。
第 2章では、デバイス応用を目的 に、S
iを初 め種 々の低コスト基板上 に分極軸方 向
の C 軸 に配 向した Pbl_X
La
x
Tl_Ⅹ
/
4
03
(
PLT)薄膜を RF-マグネトロンスパッタ法 により作製
するため、Na
Cl結 晶構造のバッファ層 の導入 と、成膜過程後 の冷却過程で発 生する
熱応 力の効果 による配 向制御 を検討 している。その結果 、C 軸配 向率はバッファ層 の
導入 および、基板 の熱膨 張係 数 の増加 に従って向上し、ステンレス基板では、C軸 に
配 向した膜が形成 できることを示した。また、焦電特性も基板の熱膨 張係数 の増加 とと
もに向上することを示した。特 に、熱膨 張係 数の大きなステンレス基板上 において、単
結 晶 MgO 基板上 に作製したエピタキシャル膜 に匹敵する焦電係数を実現し、デバイ
ス応用-の可能性 を示した。
第 3章では、優れた圧 電特性 が報告されている Pb(
Zr
,
Ti
)
03
(
PZT)
において、分極軸
方 向であるC軸 に高配 向した膜の作製を検討している。まず 、単結 晶 MgO 基板上に C
軸配 向した PZT 薄膜を形成し、PZT 薄膜のみで構成された片持ち梁構造デバイスを
作製し、d。1定数および膜の機械特性 の評価を行った結果 、分極処理なしで、バルクと
同等の圧電定数であることを示し、圧 電薄膜デバイスの可能性を示した さらに、種 々
。
の基板上にバッファ層を形成して C軸配 向 PZT薄膜を作製し、電気および圧電特性 と
基板の熱膨 張係数の関係 を明らかにした。この結果 、圧電特性 は基板 の熱膨 張係数
の増加 とともに減少し、熱応力 に影響されることを明らかにした。
第 4章では、圧電薄膜アクチュエ-タ-の応用のために、PZT よりも圧電 d31定数が
高 い 薄 膜 材 料 の 開 発 を 目的 に 、PZT に複 合 ベ ロブ スカイトで ある PMN:Pb
(
Mgl/。
Nb2/3)03を固溶させた PMN-PZT 薄膜材料の作製を、
RF
マグネトロンスパッタ
法により検討している。その結果 、Si上に C 軸配 向した PMN-PZT 薄膜が作製可能で
あり、分極処理無しで PZT薄膜よりも50%も高い圧電 d31定数が得られることを示してい
る。この結果から、PMN-PZT 薄膜 は、インクジェット-ツドなどの薄膜アクチュエ-タの応用 に適した材料であることを明らかにしている。
001
)
配 向し、自発分極した PLT薄膜を焦電マイクロデバイスに
第 5章では、高度 に(
応用し、8×64画素の2次元熱情報を得る焦電薄膜型熱画像センサシステムを開発し、
001
)
エアコンの快適空 間制御 -実用化した結果 について述べている。また、高度 に(
配 向し、自発分極した PZT 薄膜を圧電マイクロデバイスとして、主にカーナビゲーショ
ンシステムや手プレ防止用途の音叉振動型角速度センサと、400ノズルを持つ-ツド
を30-ツド配置した産業用インクジェットライン-ツドのアクチュエータの実用化 につい
ても述べ 、自発分極した薄膜材料 により、小型 ・
高性能なデバイスが実現できることを
示している。
第 6章では、本論文で得られたこのような結晶配 向性強誘電体薄膜材料および
これを応用した焦電 ・
圧電デバイスに関する知見の総括を行い、今後の課題 につい
て提示を行っている。
以上の よ うに、本論文 では、高度 に結 晶配 向制御 した強誘 電体薄膜材料 の
種 々の作製制御技術 を開発 し、その焦電 ・圧電デバイス-の応用 について実際
に実用化 された例 を引用 して述べてお り、焦電 ・圧電デバイスの さらなる高性
能化が求 め られ る中、その開発指針 を示す ものであ り、大変有意義 な知見であ
る と言 える。
氏
名
藤井
覚
(
論文審査結果の要 旨)
鉛 系ベ ロブスカイト化合物 は、その優れた強誘電性 、焦電性 、・
圧 電性から、不揮発性メモリ、セ
ンサ、アクチュエータなど幅広 い電子部 品に応用されている。P
b
Ti
03
などは C軸方 向に大きな 自発
分極を持っているため 、C 軸方 向に配 向制御 した薄膜 を作製することにより、高性 能なデバイスが
実現できる。また、
S
i
ウエハ上 に配 向制御 した薄膜材料を形成することにより、半導体プロセス技術
を応用 して従来 にない超小型なデバイスを実現できると期待 される。
以上の考えのもと、本論文では、鉛 系ベ ロブスカイト薄膜材料の分極軸方 向に配 向制御 させる技
術 と、この配 向膜 を用 いて、超 小型 、高性 能 な薄膜 デバイスを量産 、実用化することを 目的として
いる。
本論 文では、まず 、強誘電体材料を分極軸方 向に配 向させることの意義 について論 じた後 、
s
i
な
b
l
_
x
La
x
Tl
_
x
/
4
03
(
P
LT)
薄膜 を R
Fマグネトロン
どの低コスト基板 上 に分極軸方 向の C軸 に配 向した P
スパッタ法 により作製を行っている。その結果 、C軸配 向率はバッファ層の導入 および、基板の熱膨
張係 数の増加 に従って向上し、特 に熱膨 張係 数 の大きいステンレス基板ではC軸 に配 向した膜 が
形成 できることを示 した。また、焦電特性も基板 の熱膨 張係 数 の増加 とともに向上し、特 に熱膨 張
係数の大きなステンレス基板 上 において、単結 晶 Mg
O基板 上 に作製 したエピタキシャル膜 に匹敵
する焦電係数を実現している。
次 に、優れた圧電特性 が報告されているP
b
(
Z
r
,
Ti
)
03
(
P
Z
T)
において、
Mg
O基板上 に分極軸方 向
であるC軸 に高配 向した膜の作製を実現し、分極処理なしで、バルクと同等の圧電 d3
1
定数であるこ
とを示し、圧 電薄膜デバイスの可能性を示 した。さらに、種 々の基板 上 にバッファ層を形成 して C 軸
配向
P
Z
T薄膜を作製 し、圧電特性 は基板 の熱膨 張係数 の増加 とともに減少 し、熱応力 に大きく影
響されることを明らかにしている。
次 に、
RFマグネトロンスパッタ法を用 いて P
ZTに複合ベ ロブスカイトであるP
MN:
P
b(
Mg
l
/
3
Nb
2
/
3
)
03
を固溶 させた P
MNP
ZT薄膜材料の作製を検討 し、S
i上 において C 軸配 向した P
MNP
Z
T薄
膜 が作製 可能であり、分極処理無しで P
Z
T薄膜よりも 50%も高い圧 電 d
3
1
定数が得 られることを示 し
ている。
次 に、高度 に(
001
)
配 向し自発分極 した
p
L
T 薄膜を焦電マイクロデバイスに応用 し、エアコンの
快適空 間制御 -実用化 した結果および 、
P
ZT薄膜 を音叉振動型角速度センサや産業用インクジ
ェットライン-ツドの圧電マイクロデバイス-の応用 について述 べ 、自発分極 した薄膜材 料 により、
小型 ・
高性能なデバイスが実現できることを示 している。
以上 の よ うに、本論 文 では、高度 に結 晶配 向制御 した強誘 電体薄膜材料 の作製制御技
術 の開発 とその焦電 ・圧 電デバイ ス- の応用 について、実際 に実用化 され た例 を引用 して
述べてお り、焦電 ・圧電デバイスの さらなる高性能化が求 め られ る中、大変有意義な知見
を得てい る。よって審査委員一同は本論文が博士 (
工学)の学位論文 として価値 あるもの と
認 めた。