第29回日本老年麻酔学会 特別講演2 日時 平成29年2月11日(土) 18:10~19:10 場所 アストプラザ「アストホール」 三重県津市羽所町700番地 アスト津4階 テーマ 高齢者と骨の痛み 座長:奥田 泰久 先生 獨協医科大学越谷病院 麻酔科 教授 演者:川股 知之 先生 和歌山県立医科大学 麻酔科学教室 教授 我が国の社会の高齢化は急速に進み、2014年では総人口に占める65歳以上の割合は 26%、75歳以上の割合は12.5%となっている。2060年には65歳以上の割合は39.9%、75 歳以上の割合は26.9%に達すると予想されている。加齢に伴い、がん罹患率や痛みを伴う 運動器の退行変性疾患罹患率が上昇し、緩和ケアやペインクリニックを受診する高齢者の 割合がますます増加することが予想される。年々増加している運動器疼痛疾患の1つとし て骨粗鬆症が挙げられる。患者数は、1300万人以上と推測されている。骨粗鬆症は女性 の病気と考えられることが多いが、男性の有病率も増加している。加齢による生理的なホル モン機能の低下に加え、糖尿病などの生活習慣病、ステロイド長期内服、前立腺がん・乳 がんに対するホルモン療法などが骨粗鬆症の原因となる。また、オピオイド鎮痛薬の長期使 用も骨粗鬆症を引き起こすことが報告されている。骨粗鬆症は、椎体・前腕骨・大腿近位 部などの骨折を合併することが多く、痛みがADLを著しく制限することから、QOL的にも大き な問題であり、骨折とその痛みは医療のみならず社会的にも重要な課題である。また、骨 粗鬆症患者は、骨折の痛みだけでなく、骨折がなくとも腰背部痛が出現する“骨自体の痛 み”も訴える。また、皮膚の痛覚過敏も存在することが示唆されている。したがって、骨粗鬆 症の痛みの機序として、単純な組織損傷(骨折)だけではなく、骨内の病的変化や神経系 の機能変調が関与していることが推測される。本発表では、骨粗鬆症の痛みのメカニズム について解説し、さらに痛み治療法とその問題点について概説したい。 共催:第29回日本老年麻酔学会 / 丸石製薬株式会社
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