雑誌記事 - 原子力発電環境整備機構

心に全国を回って説 明しておられま
重要性が強調されたこともあり、熱
E 2015年5月に最 終処分法に
基づく基本方針が改定され、対話の
囲んで対話する取組みに力を入れる
も得て、参 会の皆さまとテーブルを
と、私どもの職員が、専門 家の支 援
る意見 交換 会」というタイトルのも
ミナー」
、秋からは「地層処分に関す
2016年の夏からは「地層 処 分セ
ることが大事であると考えるに至り、
きる「 良 き 隣 人 」と思っていただけ
況 を見て、どの会 場でも感 謝の気 持
る方 も 出てきています。そ ういう 状
考 えよう と議論をリードしてくださ
そして若い人や主婦の中には、一緒に
さり、鋭い質問が投げかけられます。
ます。そ う すると熱 心に聞いてく だ
ていくことを対 話 を通じて伝 えてい
実 施 段 階では地 域の一員 として生き
重に進めようとしていること、そして、
◆全国行脚で
言っていること
すが、手応えは如何ですか。
ものに変更しました。
現を目指すには、皆さまに私どもの
き ました。その結 果、この事 業の実
つ「地層処分シンポジウム」を行って
関して説明し、質疑応答の時間を持
姿、処分場の立地に至る手続き等に
その安全確保の考 え方、処分 事業の
廃 棄 物の地層 処 分 実 現の重要 性 と
も加 え、全国 各 地で高レベル放 射 性
2015年からは国と共 催するもの
はその取 組みの担い手として力を尽
とは現世代の責 任であり、自分たち
ですが、この取 組みを前 進させるこ
の目が向けられる社会的雰囲気の中
原子力に関係する多くのことに懐疑
が 唯一の 動 き で す。 福 島 事 故 以 来、
洋町から文 献調査に応募があったの
始して以来、2007年に高 知 県 東
献調査の受け入れ自治体の公募を開
MOが設 立され、2002年から文
2000年に最終処分法が制定さ
れ、処分 事 業の実 施 主体としてNU
ご質 問、それから廃 棄 物の性 質や輸
ができるのかという 安 全性に関 する
が若い日本 列 島で、安 全な地層 処分
震が頻 発し、欧 州 大 陸と比べて地質
なのか という ご質 問、また 火 山、地
本のガラス固化 体を処分する処分場
うして今なのか、一箇所なのか、4万
きなのにどうして地層処分なのか、ど
近 藤 大 別すれば、危 険なものなら
地上の目の届 く ところで管 理 するべ
E 参 加 者 からは、どんなことを言
われますか。
ちで一杯になります。
人 となり を 知っていただき、地 域の
くす 覚悟であることを対話を通じて
送方法、地層処分場の規模、処分方法、
近藤 原子力発電環境整備機構(N
U M O )は、 2 0 1 4 年 は 単 独 で、
発展に気配りする、技術的に信頼で
国民の皆さまに伝 え、またご要 望を
地下の坑 道における湧 水の問 題、閉
鎖後のモニタリングなど、処分場その
手 応 え は? とい う ご 質 問 で す が、
今は、専門家の協力を得ながら最新
セスに関 するご質 問 となり ます。さ
含む、私どもが予定している立地プロ
ものについてのご質問、そして、海外
の知 見を踏まえて取 組みをしている
らには日本 学 術 会 議の提 案に「総量
規 制」という 言 葉があったことを受
とっては倫理面からも合理的な処分
電の利 益を享 受してきている世代に
を行 う という 計 画 書、これ、次の段
の範囲で物理探 査やボーリング調 査
判 断できたら、その辺りの
ています。
寄り をお考 えいただけたらとも思っ
察の計 画にこう したところへの立ち
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1
2017 No.
伺いなさい、誠 意は必ず 伝わります
と職員 を激 励して、これまでに全国
箇所で行なってきました。
こと、様々な可能性を考 えながら慎
れますから、その一環として、海外視
けてか、核のゴミをこれ以上出さない
法 ということで、世界 各 国で推 進さ
階である「概要調 査」の計画書にな
ではどう しているかという ご質 問 を
㎢
ことをまずは決めるべきではないか、
れています」と申し上げています。
り ますが、そのよう なものに調 査結
も う一つは、行 政 サ イドには、文
献調査受け入れのお願いの書類を送
〜
という原子力政策に関するご意見も
果 をまとめ、次にこういう 調 査をや
られただけで、都 市 計画の観 点から
あります。
E 地下には天然の放射性物質が含
まれていて、それが発 する自 然 放 射
らせていただきたいとお願いすること
中身をきちんと学習しないで調査を
線による人の被曝は年間0.
33
にしています。
このことも 踏 ま え、この頃は冒 頭
挨拶で、
「NUMOは原子力発電で発
と聞いています が、地層 処 分 とはそ
が、処分場の地上から地下1000
受け入れたら、何がなんだかわから
生する放射性廃棄物のうち、発熱性
とですね。
怖いという 声 をよく 聞 きます。
う い う 性 質 の 地 下 が 有 す る 物 質 を、
近 藤 ええ、ですから火山や活断層
の近傍 を避けて、処 分 場に適した地
そして、 万年も管理するなん
及び半 減 期が長いものの地層処分を
自然現象や人間活動の影響が及びま
下環境のある場所に処分場を設置し
て「人間のおごり」という人も
ないうちに処分場を押し付けられる
せん。そこで、こう した性 質 が長 期
たいので、そのための調査を行いたい
多く、おっしゃった自然に委ね
E ただ、
なかなか「調べてもいいよ」
とは言ってくれません。何故でしょう
間、安定に維持される岩盤を選んで、
のです。でも、たとえ文 献 資 料 を集
るのだという共通理解が成立し
閉じ込める特性に放射性物質を委ね
物を金属 容器に入れ、周りを粘土で
めて机 上で調 査をするにしても、他
ていません。
使命にしています。地下深いところは
囲って埋設するのが地層処分です。
人の土地のことを勝 手に調べるわけ
のではという 心配や、原子 力 問 題は
この廃棄物の放射能は当初は大変
高いのですが、時間とともに減衰し、
にはいかないので、自治体に「私たち
ただ、この処分に向けての取
組 みの 必 要 性 は 多 くの 方 に ご
か。
岩 盤の種 類にもよりますが、2万 年
の地下を調べてもいいですよ」と言っ
認識いただいていますので、ス
ることなんです ね。そ う すると肝 心
位経ちますと、そのほとんどは粘土の
て も らいたいのです。その許 可 を も
ウェーデンやフィンランドで処
一般に物質の移動が大変遅く、地上の
ところに止まっていると予測されます
らったら、晴 れて「 文 献 調 査 」 とい
分場を受け入れた自治体の皆さ
どうしても人々を駆り 立てやすいか
までの岩 盤に含 まれている天然 放 射
う 段階に入ります。ただ“ 文 献 ”だ
まは、これをどういうものと考
なことは、安 定した地盤を見 出すこ
性物質の総放射能より低くなります。
け で は 本 当 の 地 下 のこ と は 分 か り ま
えているのか、聞いていただけ
近 藤 一つには、放 射 性 廃 棄 物に 対
する不安感です。特に福島事故
ですから、この地層 処 分に今から取
せんから、学 術 文 献でこの辺は火山
たらと思って、そうした取組み
の後ですから、処分場の事故が
り 組んで実現させます と、原子 力 発
からも遠く、地下には活 断層 もなさ
も行ってきています。今、各自
より深いところにこの廃棄
電にエネルギーを依 存 しなく なった
そ う だし、地 形から見て深いところ
300
将 来の人々にこの廃 棄 物の管理の負
治体は地域創生に取組んでおら
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1
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の 地 下 水の 流 れ も 速 く な さ そ う だ と
m
2017 No.
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~ 近藤駿介理事長 (原子力発電環境整備機構)に聞く ~
担 を残 しません。そこで、原 子 力 発
▲「みんなで考えよう!」のスタンスで行われている地層処分問題意見交換会
m
Sv
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地層処分問題解決の
エッセンス
m
ら、そもそも検 討 対 象にすることす
います。
心配にはおよびませんと申し上げて
にダメだと言われたら止めますので、
調 査に入り ませんでした。このよう
誕生して応募が取り下げられたため、
分け基準の整備を進めてきましたが、
のきっか け に なれ ばと、国 はその 色
加 えるかどうか検 討するための調 査
の選択 肢にこの処分 場の受け入れを
計画を考 えるときに、地域発展 手 段
に色分けして公表し、自 治 体が都 市
施設の設計にあたっては、
その上で、
想定外のことが起きても破局的な結
業をするように最善の努力をします。
くまで調べて見つからないところで事
い、活 断 層 と思われるものが地下深
用いて周辺一帯の地下の断層調査を行
することにしています。これが 福 島
今は最終段階です。
E その基準って、具体的にはどうい
うものでしょうか。
安 全最 優 先の観 点からここが一番い
も、いろいろな調査を突き合わせて、
分場を受け入れますよ」と言われて
を行い、その途中で地域社会から「処
ばいけ ませんから、何 箇 所かで調 査
E 鳥 取 西部 地震のように、活 断層
があるとは知 られていない場 所でも
が良いといったことです。
点からは、海 岸からの距 離が短い方
こと、また、
「輸送時の安全性」の観
な地盤や火砕流の影 響範囲を避ける
業 時の安 全性」の観 点からは、軟 弱
断層の近傍を避けること、
「建設・操
の最 大の課題は、そんな可 能 性があ
終 段階と申し上げ ましたが、そこで
も あ り ます。このマップの準 備の最
ないと結 論しなくてはならない場 合
様 子 を調 査したら、ここは適してい
もう一つは、マップで適性があると
された地域であっても、実際に地下の
伝えるように言っています。
えず 研 鑽 を積み、その成果を人々に
事 故の最も重要な反省ですから、設
計チームには、この分 析に関して絶
果には至らないことを“ what”
ifシ
ナリオの解析 等を通じて慎重に確認
それから全国に1700自治体が
ある中で、どうして自分たちが手を
挙 げなくてはいけないのかという 感
覚 もあると思います。他 方で、私ど
もとしても、科 学 的、技 術的に安心
近藤 「処分後の長期の安全性」の観
点からは、火山から半 径 ㎞内や活
いという ところ以外には「 残 念なが
地震が起きますよね。そういう 想 定
るのに適地といって、国民から参考に
して事業ができる場所を決めなけれ
らできません」と言わなくてはいけ
外というか、未知の問題についてはど
なったと言ってもらえるのか、誤解さ
ないということもお伝えしています。
のように答えておられるのですか。
れないかについての見極めと聞いてい
◆科学的有望地に関する
マップ
ます。
近 藤 大 事な点です。まず、活 断層
については、地表に割れ目が出ている
分できる処 分 場 を作ることにしたの
あ まり 変 わらないので、これ以上処
いきますが、4万本 を超 えるとも う
本 あたりの処分 費用が小さくなって
処 分 場の規 模 を大 き くしていく と一
場の概略設計で費用を試算した際に、
ていることを申し上げています。処分
しましたが、その後 反 対 派の町 長が
応 募 をいただき、調 査の準 備 を開 始
東 洋町で当時の町長から文 献調査の
るだけ 協 力しますし、かつて高 知 県
のでしょう。私どもは、学習にはでき
用できないから、担当者を代えろとい
れ となじり、時には、お 前 はも う 信
ると、何たることか、しっかりしてく
す。だからこそ、失 敗や不 祥 事 があ
社会は成立しないことも認識していま
業務に従事する者を信用しなければ、
います。他方、人々は、こうした公共
くの人々が持っていただけると思って
より調査する意味がある土地の3色
ない土地、調査する意味のある土地、
近藤 そうです。海外の事例も参考
にしながら、日本地図を調 査に適さ
しますね。
とされていますから、それを行 う と
り地層 処分によるのが合理的である
の最 終 処 分 は、国 際 常 識では、やは
が仕 事です。他 方で、使用済み燃 料
工場で発生した廃棄物を処分するの
近 藤 それは誤 解です。私どもは高
レベル放 射 性 廃 棄 物、つまり 再 処 理
ります。
になるのではないか」という心配があ
概要調査段階で様々な物理探査法を
こで、原子力発電所の立地と同様に、
は見えていないことが多いのです。そ
地震を引き起こすもので、もっと小さ
のか、あるいは港 湾から処 分 場 まで
回ほどならいいかと言っていただける
から、地 形にもより ます が、月に2
迷 惑が生じることは確かです。です
時的に占 有しますから、市民生活に
ただ、施設への廃棄物の搬入で一般
道 路 を使 用 するとすれば、道 路 を一
しています。
みを応 援していただけることを希 望
には迷惑 施設 と決めつけないで取 組
分事業の総費用は3.7兆円と想定し
ル廃 棄 物の処分 を行 うこと、その処
近 藤 あり ますよ。私どもは、4万
本のガラス固 化 体と長 半 減 期 低レベ
以上の
です。 当 時の予 測では、高レベル放
う、それは当然のことでしょう。
すれば、私たちが苦 労しているよう
専用道路を作るかは地元の皆さまと
活断層は、マグニチュード
射性廃棄物の発生量が4万本に到達
な取 組みをきちんと行なって適地を
相談して決めたいと思っています。
E そこは、これから国 が示 す「 科
学 的有 望地に関するマップ」に関係
するのは2030年 代 と予 想された
ですから、私たちは、人々との対話
を通じて、様々なオプションや曖昧な
見つけなければならないのです。
ら面 倒、したく ないとの考 え もある
と記 憶していますが、現 在のように
点 を 協 議し、事 業 を設 計し、これに
E 最 終 処 分のコストについて聞 か
れることはありませんか。
原 子 力 発 電 規 模 が 収 縮した状 態 が 続
対 する目配り、気 配り をこれでもか
おっしゃる 方 もいま す。これに 対 し
「今の電力会社に
そう説明すると、
4兆 円 も 払 えないのではないか」と
と先になるでしょうね。
織だと言っていただけるよう、努力し
研 鑽に研 鑽 を重ねて、信 頼に足る組
義務があるのです。対話の輪を広げ、
から信 頼していただけるようにする
と徹底し、それをよく説明して、人々
性審査のこの順番は正しいのです。
も意味があり ませんので、基準 適合
ないことには、再処理工場が稼働して
使う原子力発電所がきちんと稼働し
間を要しているからです。その製品を
域がその周 辺 も 含 めて、ハイテクが
各国からの来訪者の増 加 等から、地
資による雇用や生活インフラの充実、
処分場の受け入れは処分事業者の投
行われた経済社会影 響調査で、地層
先日、来日されたスウェーデンのエ
ストハンメル市の市長は、早い段階に
な地震を引き起こす 活断層は地上で
けば、そうした発電量になるのはもっ
六ヶ所再処理工場がまだ稼働しな
いのは、新規制基準に対応するのに時
ては、2000年にこの処 分 を実 施
ているところです。
銭程度と試算し、お
み燃 料の搬 出が叶わず、サイト内 貯
E 原 子 力 発 電の現 場では、六ヶ所
再処理工場が稼 働しないから使用済
域の持続的発展に役立つ施設にした
まと相 談しながら、知 恵と工夫で地
私どもは私どもの施設を地域の皆さ
たら、私どもとしては悲しいですね。
惑 施設とのお考 えがそこにあるとし
国 民の信 頼の源 泉ではないかと、絶
は、事 業 者に対 する地域の、そして
地域が誇りに思 えるものにすること
施設である以上、それを美しいもの、
が生まれています。国 民の生活 必需
国内でも、最近の廃棄物処分場に
は経営 者の美意識が感じられるもの
集積する工業地帯になるという展望
を持っていると強調していました。
す る ための 費 用 を 原 子 力 発 電 量 1
あたり
そのようにおっしゃるのが、約束を
違える者と見ての不信の故なら当 事
蔵の余裕がなくなってきていることか
い、そ うできなくては受 け 入れられ
えず考えています。
者間の問題ですが、最 終処分場は迷
ら、早 く 中 間 貯 蔵 をやり たいという
ることはないと、職 員 を叱 咤 激 励し
E ありがとうございました。
相当分を私どもの事 業のために拠出
切迫した理由があるわけです。でも、
ていま す。です から、国 民の皆 さ ま
◆ 迷 惑 施 設の イメー ジ 払 拭
は我々の責務
近藤 原子力発電の恩恵を享 受した
世代の責任として、この事業に今から
地元には「なし崩し的に最 終 処分 場
E 国や機 構への信 頼問題を言 う 人
はいませんか。
ています。
る金額 を積み立てています と説 明し
いただいており、既に1兆 円 を 超 え
取 組むことは重要 だとの認 識は、多
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▲段階的調査によって、慎重に処分地は選定される
支払いいただいた電気料金の中から、
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