阪大消化器外科を担う諸君へ:世界へアピールしよう!

阪大消化器外科を担う諸君へ:世界へアピールしよう!
森 正樹
阪大消化器外科学講座が臨床、研究、そして教育の点で年々発展しているのを感じており、頼も
しく思っています。土岐教授と私が担当するようになり、平成24年3月で4年が経過し、4月からは
5年目に入ります。今回はこの4年を振り返り、今後のために教室の皆さんに特に留意してもらい
たい点を記します。
最近、全国のいくつかの大学で外科教授の選考がありました。北海道大学第一外科には平成2
年九州大学卒業の方、九州大学別府病院外科には平成3年大分医大卒業の方、長崎大学第二
外科には平成4年長崎大学卒業の方が選任されました。この年代、あるいはその前後の年代の
スタッフが多い阪大消化器外科としては、うかうかしてはおれません。今後のことを見据えて全員
に一層の努力を求めたいと思います。
教授選考は教授選考委員会での討議を経て教授会で行われるのが通常です。外科の教授選考
の場合、手術が上手か、人柄が良いか、など評価基準が明確でない点が含まれるのは事実で
す。ただ、外科手術手技の向上、患者管理技術の向上に努力することは、外科医にとって当然の
ことで、これらの優れた点をアピールするには学会発表を活用することが重要です。他方、臨床経
験や研究成果を英語の原著論文でしっかりと世界に情報発信しているか、という点は、基準が明
確・客観的であり、候補者の優劣が一目瞭然となります。したがって、この客観的指標で優位に立
つことは極めて肝要です。そこで今回は具体的に英語論文を書く際の注意点を記します。また、
英語論文と並んで最近重視されてきたのが科研費の取得です。そこでこれについても私見を記載
します。参考にしてください。
論文作成には以下の点に留意してください。
1)論文構成(各パートの割合)は A4 用紙に換算して以下を目安にしてください:表紙1、abstract
1、introduction1-2、materials & methods 3、Results 2-3, Discussion 2-3、References 2030 編程度、図、表は合わせて数枚程度(多くは6枚以内)にする。
2)目的と結論を明確にする。結論は目的にかなっているか、しっかりとチェックする。目的と結論
が乖離しているものをしばしば見るが、これはすぐに reject される。
2)Introduction は「この研究に至る背景と目的を明確に書く」。Introduction の最後には本研究か
ら得られた結論を一つの文章で端的にまとめると良い。「本研究により・・・が明らかになったので
報告する。」という一文があると査読者も読者も理解しやすい。
3)Materials & methods: 必要なことのみ端的に書く。冗長にならないように。
4)Results: Materials & methods に対応するように端的に書く。しばしば M&M と Results が乖離
している論文をみるが、これは分かりにくく reject されやすい。結論を導くのに必要十分なデータ
を載せる。
5)Discussion: しばしば introduction と重複する内容を書く人を見かける。これは絶対にだめ。重
複しないように注意。
・書き方は、まず内容を大きく 5 段落くらいに分ける。1 段落めから、5段落めまでのそれぞれの段
落で何を書くか決める。そして 1 段落から 5 段落にわたり流れができるようにする。1段落目は
introduction と重複する傾向にあるため、要注意。
・次に各段は数個の文章から構成させる。それぞれ前後の文章間で話があっちにいったりこっち
にいったりしないようにして、一本の流れを意識する。
6)文献は必要十分なだけ。しっかり吟味して必要なもののみを引用すること。
7)図、表は多くなり過ぎないこと。分かりやすいをモットーに。図や表は執筆者のセンスが最もよく
現れる。極論すれば図・表だけで論文内容が把握できるようにするのがコツ。
 最初に論文の趣旨となる図と表を揃え、それを基に、Materials & methods, Results を書いて
いくのも有効。
 英語論文を書く場合、最初から英語で書く者と、和文にしたうえで、英文に直す者がいるが、
これは自分にあった方法で良い。ただし、初心者は cut & paste を頻用する傾向にあるため、
ひとつずつの文章は立派だが、前後の文章間で脈絡が不明になることをしばしば経験する。
そのため、まずは簡潔明瞭な和文をしたためることが良いと思う。二度手間に見えるが、「急
がば回れ」である。
 指導者は論文チェックに時間をかけ過ぎないように注意する。一両日中には返却するように。
忙しいを理由にしてはいけない。
科研費については以下の点に留意してください:
科研費の審査方法は格段に良くなっている。すなわち従来よりも客観性が増し、公平になってい
る。そのため、科研費を取得できるということは、その研究と研究者が客観的に観て良いと判断さ
れたということであり、この点で評価の指標としての価値が高まっている。
1)タイトルは魅力的にすること;その研究の概要が一目で把握できるように、なおかつ魅力的に
なるように。
2)研究分担者は所属グループの人を単純に並べるようなことはしない。グループ長に相談して決
める。(グループ長は人事異動も考慮し、研究代表者が異動した場合、代表が分担者に代われる
ように考えて決める。)
3)内容は簡潔にする。文章を長々と連ねるのは良くない。審査委員は忙しい人が多く、文章だけ
の申請書は疲れるため、良い評価がされない。文章は簡潔にして図と表を上手に使うこと。ただ
し、使う図・表は自分で作成したものを使用すること、論文や教科書からのカット&ペーストはむし
ろ審査委員の気分を害する。
4)阪大消化器外科のように多くの人が申請すると、研究のおおまかな内容が似る場合も少なか
らずある。審査は同じ審査委員に回る可能性が高く、同じような記述が見られれば、当然相当に
不利になる。このため、必ず自分の言葉で、そして自分で作成した図・表で記すことが重要。
 科研費を取得するには、申請書が大切であるが、その中に業績を記すページが必ずある(一
部、萌芽研究は例外であるが)。審査委員は申請書の中でもここを一番重視するので、やは
り英語論文をしっかりと発表しておくことが、何より重要である。
以上、私見ですが、参考にしてがんばってもらえれば幸いです。皆さんの飛躍、発展を心から期
待しています。