更新日:2017/1/16 調査部:野神 隆之 原油市場他

更新日:2017/1/16
調査部:野神 隆之
原油市場他:OPEC 及び主要非OPEC 産油国による原油生産調整実施に対する期待感により、WTI で 1
バレル当たり 50 ドル台前半で推移する原油価格
(IEA、OPEC、米国 DOE/EIA 他)
① 米国では秋場のメンテナンス作業を終了し製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理が進んだ
こと等で原油在庫が減少する場面も見られたが、平年を上回る状態は維持されている。他方、ガソリ
ンについては、クリスマス休暇を控え需要が盛り上がったこともあり、また、留出油については、米国
北東部での気温低下により暖房向け需要が堅調になったこともあり、各々の在庫は 12 月上旬から下
旬にかけ減少傾向となったが、クリスマスの休暇に突入した 12 月下旬以降両製品とも出荷が鈍化し
たこともあり、在庫が大幅に増加したことから、12 月上旬から 1 月上旬にかけての期間を見ると、在庫
は増加しており、ガソリン及び留出油在庫は平年幅を超過する量となっている。
② 2016 年12 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、秋場の
製油所メンテナンス作業が終了しつつあった米国、欧州、そして日本において比較的高水準の製油
所の稼働のもと、原油精製処理が進んだことにより、それぞれの地域で在庫は減少となったため、
OECD 諸国全体として原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している。他
方、製品在庫については、欧州では、製油所の稼働上昇に伴う石油製品生産活動の活発化に伴い
当該在庫が増加した。しかしながら、米国ではプロパンやプロピレン等の在庫が前月比で大幅に減
少していることから、同国の石油製品全体の在庫は減少している。また、日本でも冬場の暖房需要期
到来に伴う灯油需要の増加に伴い当該製品在庫が減少したことから、同国の石油製品全体の在庫も
減少となった。この結果、OECD 諸国全体としての石油製品在庫は減少となり、平年幅の上方付近に
位置する量となっている。
③ 2016 年 12 月中旬から 2017 年 1 月中旬にかけての原油市場においては、サウジアラビアやクウェー
ト等が 11 月 30 日の OPEC 総会で合意した減産策を遵守する意向を示したこと等により、この先の世
界石油需給の引き締まりに対する市場の期待感が強まったことなどもあり、2017 年1 月3 日早朝の時
間外取引時には原油価格は WTI で 1 バレル当たり 55 ドルを超過する場面も見られた他、全体を通
じ 50 ドル台前半で推移するなど総じて底堅い動きを示した。
④ 地政学的リスク要因面では、ナイジェリアでの武装勢力の動きや米国の対イラン政策が原油相場に
影響する可能性がある。他方、米国等経済指標類等は原油相場を変動させうるものの、米ドルが継
続的に下落するとは考えにくいことから、原油相場が持続的に上昇する場面が発生する可能性はそ
う高くないと考えられる。一方で、2017 年 1 月の OPEC 産油国やロシア等の原油生産削減遵守状況
によって、原油相場に上方もしくは下方圧力が加わることになろう。ただ、原油生産削減がある程度
遵守されていることにより価格に上方圧力が加わりやすい状態であっても、1 月後半頃からは季節的
な石油需給の緩和感が市場で広がりやすいことに加え、米国で石油坑井掘削装置の稼働数が増加
しつつあるところからすると、この面で原油相場の上昇傾向は少なくともある程度は抑制される可能
性があるものと考えられる。
–1–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等
2016 年 10 月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で 1.6%程度減少の日量 910 万バレルとなり
(図 1 参照)、速報値(前年同月比で 1.6%程度減少の日量 910 万バレル)から僅かながら下方修正され
た。同月の同国ガソリン小売価格が 1 ガロン当たり 2.359 ドルと前年同月比で 0.028 ドルの下落と 2014
年 8 月(この時は同 0.027 ドルの上昇)以来の小幅な下落となったこともあり、自動車運転距離数が前年
同月比で1.6%の伸びにとどまったことが、同月のガソリン需要の減少につながったものと考えられる。他
方、2016 年 12 月の同国ガソリン需要(速報値)は日量 893 万バレル、前年同月比で 2.4%程度の減少と
速報値ベースではあるが 10 月及び 11 月に続き前年割れとなっている。12 月のガソリン小売価格が 1 ガ
ロン当たり 2.366 ドルと前年同月を 0.222 ドル上回っていることが、ガソリン需要を抑制した一因であるも
のと考えられる。他方、米国では製油所での秋場のメンテナンス作業が終了に向かうとともに稼働を上昇、
原油精製処理量も増加傾向となり(図 2 参照)、ガソリンを含む石油製品の生産活動が活発化した(最終
製品の生産量は図 3 参照)。また、米国でのクリスマスの休暇時期前には当該休暇時期における自動車
旅行等に備えガソリン需要(出荷)が堅調になったことに伴い、12 月下旬前半まではガソリン在庫は減少
傾向を示したが、休暇シーズン突入後は需要(出荷)が落ち着いたこともあり、ガソリン在庫量は 12 月 30
日の週は前週比で 831 万バレルの増加と、2016 年 1 月 8 日の週(この時は同 844 万バレル増加)以来
の大幅な増加となった他、2017 年 1 月 6 日の週についても前週比で 502 万バレルの増加となった。この
結果、2017 年 1 月上旬の当該在庫は 12 月上旬に比べれば増加となったうえ、平年を超過する水準も維
持されている(図 4 参照)。
–2–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 10 月の同国留出油需要(確定値)は日量 402 万バレルと前年同月比で 0.3%程度の増加とな
ったが、速報値である日量 406 万バレル(前年同月比 1.2%程度の増加)からは下方修正されている(図
5 参照)。10 月の米国の鉱工業生産は前年同月比で 1.3%の減少、物流活動は同0.2%程度の低下であ
–3–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
った。ただ、物流活動は依然前年割れをしているものの、9 月(同 1.1%程度の減少)から比べると減少幅
が縮小したこともあり、10 月の当該需要は前年同月比で微減となったものとみられる。他方、12 月の留出
油需要(速報値)は日量 379 万バレルと、前年同月比で 1.1%程度の減少となっている。暖房用石油製品
需要の中心地である米国東海岸では 12 月は総じて平年を下回る気温となったため、暖房用石油製品需
要は前年比で増加した(2015 年 12 月は 2016 年 12 月に比べれば温暖であった)一方で、それ以外(つ
まり物流部門)の需要が不振であったことが示唆される。しかしながら、11 月の物流活動は前年同月比で
2.0%程度増加しており、加えて、12 月の米国の景況感は同国の経済が改善している方向に向かいつ
つあることを示しているものがそれなりの数見られることからすると、12 月の留出油需要は速報値から確
定値に移行する段階で上方修正されるか、もしくは 2017 年 1 月の当該需要に反動の恰好で影響が現れ
ることもありうる。また、米国北東部では 11 月後半に気温が平年以下に低下したこともあり、暖房油と原油
との価格差が拡大したことにより、製油所での稼働の上昇とともに留出油生産も旺盛となった(図 6 参照)
ものの、気温の低下に伴う需要が比較的堅調であったこともあり、12 月上旬から下旬にかけては、当該
在庫は減少傾向となっていた。しかしながら、12月中旬以降はしばしば平年を上回る気温となってきたこ
とで需要が影響を受け始めたと見られるうえ、12 月下旬のクリスマスの休暇シーズン到来に伴い需要(出
荷)が低下したことから、12 月 30 日の週の留出油在庫は、前週比で 1,005 万バレルの増加と、2015 年 1
月 2 日の週(この時は同 1,121 万バレルの増加)以来の大幅な増加となった他、2017 年 1 月 6 日の週に
ついても前週比で 836 万バレルの増加となったこともあり、1 月上旬時点の留出油在庫は 12 月上旬に比
べ増加となっており、平年幅上限を超過する量となっている(図 7 参照)。
–4–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 10 月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で 0.6%程度増加の日量 1,962 万バレルとな
った(図8 参照)。ガソリン及び留出油需要が前年同月比で減少したことが米国石油需要の伸びが抑制さ
れた一因であると考えらえる。また、留出油、プロパン/プロピレン、重油、及びその他の石油製品の需
要が速報値から確定値に移行する段階で下方修正されたこともあり、速報値の日量 2,018 万バレル(同
3.5%程度の増加)からは日量 56 万バレルの下方修正となっている。また、2016 年 12 月の米国石油需
要(速報値)は、日量1,951 万バレルと前年同月比で 0.4%程度の減少となっている。ガソリン及び留出油
需要が前年割れとなったことが影響しているものと考えられる。他方、米国では、製油所での秋場のメン
テナンス作業が終わりつつあったことにより製油所での原油精製処理が進んだことに加え、12 月26 日か
ら 12 月 28 日にかけ米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)に
おいて濃霧が発生したことにより当該運河での原油積載タンカーの通行が停止させられたことから、当
該地域の原油輸入が影響を受けた。また、米国のテキサス州やルイジアナ州では年末の石油在庫評価
–5–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
額に対して固定資産税等が課税されることから課税額を低減させるために精製業者等は必要以上の在
庫を保有することを敬遠した可能性もある。このようなこともあり、原油在庫はメキシコ湾岸地域を中心とし
て 12 月上旬から同月末にかけ減少傾向を示した。しかしながら、2017 年1 月 6 日の週は、前週までの
反動(つまり、ヒューストン運河のタンカー通航再開に加え、1 月に入ったことによる、年末の課税対策に
伴う製油所等の在庫削減行動の必要性の低下)があったものと見られ、原油在庫は前週比で増加した。
その結果 2017 年 1 月上旬の米国原油在庫は 2016 年 12 月上旬の原油在庫とほぼ同水準となっており
(図 9 参照)、平年幅を超過する状態も維持されている。そして、原油、ガソリン及び留出油の在庫量が平
年幅を超過していることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計し
た在庫は、いずれも平年幅を超過する状態となっている(図 10 及び 11 参照)。
–6–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 12 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、秋場の
製油所メンテナンス作業が終了しつつあった米国、欧州、そして日本において比較的高水準の製油所
の稼働のもと原油精製処理が進んだことにより、それぞれの地域で在庫は減少となったため、OECD 諸
国全体として原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図 12 参照)。他
方、製品在庫については、欧州では、製油所の稼働上昇に伴う石油製品生産活動の活発化に伴い当該
在庫が増加した。しかしながら、米国でガソリンや留出油の在庫は増加したものの、プロパンやプロピレ
ン等の在庫が前月比で大幅に減少していることから、同国の石油製品全体の在庫は減少している。プロ
パン及びプロピレンの在庫減少は、同国での天然ガス生産に付随して生産される NGL(天然ガス液)の
生産量が、天然ガス価格の下落に伴い天然ガス生産とともに伸び悩みとなる一方で、冬場の暖房用需
要が国内外で盛り上がったことから、国内での出荷及び海外への輸出が増加したことが背景にあると考
えられる。また、日本でも冬場の暖房需要期到来に伴う灯油需要の増加に伴い、当該製品在庫が減少し
–7–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
たことから、12 月の同国の石油製品全体の在庫も減少となった。この結果、欧州での在庫増加が米国及
び日本での在庫減少で相殺されて余りある状態となったことから、OECD 諸国全体としての石油製品在
庫は減少となり平年幅の上限付近に位置する量となっている(図 13 参照)。そして、原油在庫が平年幅
上限を超過している一方、石油製品在庫が平年幅上限付近に位置する量となっていることから、原油と
石油製品を合計した在庫は平年幅上限を超過する状態となっている(図 14 参照)。なお、2016 年 12 月
末時点での OECD 諸国推定石油在庫日数は 64.0 日と 11 月末の推定在庫日数(64.4 日)から低下して
いる。
–8–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 12 月 14 日に 1,200 万バレル弱の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在庫
量は、12 月 21 日も 1,200 万バレル弱の量であったが、12 月 28 日から 2017 年 1 月 4 日は 1,200 万バレ
ル台前半、1 月11 日には 1,200 万バレル台後半へと、当該在庫は若干ながら増加した。アジア諸国の製
油所が秋場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、石油製品生産活動を活発化させ始めており、軽質
留分在庫も増加傾向となっているが、その度合いは緩やかなものとなっており、上昇したとはいえ依然と
して比較的安価なガソリン小売価格が一因となって需要が堅調であることが示唆される。他方、中国政府
から 2017 年第一四半期の石油会社に与えたガソリン輸出枠が 365 万トン(日量約34 万バレル)と前年同
期(463 万トン、日量約 43 万バレル)から引き下げられた(輸出枠は 12 月 23 日に中国商務部及び税関
総署より PetroChina、Sinopec、CNOOC、Sinochem の 4 社に通告されたが、それ以外のいわゆる中小石
油会社には輸出枠は設定されていないとされる)ことが、アジア地域でのガソリン需給引き締まり感を醸
成した格好となった。このため、12 月中旬から 1 月中旬にかけては、原油価格の上昇に伴い一時的にガ
ソリンと原油の価格差(この場合ガソリンの価格が原油のそれを上回っている)が縮小する場面も見られ
たが、当該価格差は概ね一定水準を保っている。ナフサについては、冬場の暖房シーズン接近による
LPG 需要の増加と価格の上昇に伴い、石油化学産業において LPG と原料で競合するナフサの需要が
強まったことから 12 月中旬 1 月上旬にかけてはナフサの価格が支持されたものの、2017 年 2 月以降に
実施されるアジア地域での複数のナフサ分解装置のメンテナンス作業の実施に伴うナフサ処理と受け
入れの不活発化の観測が市場で発生したことが価格を抑制したこともあり、ナフサ価格が原油のそれを
上回ったり下回ったりしていた。しかしながら、1 月 11 日にロシアで国営石油会社 Rosneft が操業する
Tuapse 製油所(原油精製処理能力日量 24 万バレル)の減圧蒸留装置(VDU:Vacuum Distillation Unit)
及び UAE でアブダビ国営石油会社 ADNOC の操業する Ruwais 製油所(原油精製処理能力日量 84 万
–9–
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
バレル)のナフサ処理装置(処理能力日量3.4万バレル)で火災が発生したため、ナフサの生産と供給に
影響が発生するのではないかとの懸念が市場で発生したこと等もあり、1 月中旬にはナフサ価格が原油
のそれを上回る度合いは拡大している。
12 月 14 日には 1,200 万バレル台弱の量であったシンガポールの中間留分在庫は、12 月 21 日には
1,000 万バレル台後半、28 日には 1,000 万バレル半ば程度、そして 2017 年 1 月 4 日には 1,000 万バレ
ル台前半、さらに 1 月 11 日には 900 万バレル台後半へと減少傾向となった。秋場のメンテナンス作業を
終了するとともに製油所での石油製品活動も活発化したものの、欧州で冬の到来とともに暖房用の軽油
需要が増加してきたため、アジア地域から欧州方面へ軽油が流出したと見られるうえ、11 月 8 日にインド
で原則使用が禁止された高額紙幣について、12 月 2 日までは石油製品購入に対する利用は認められ
たことから、この面で一時的であれ同国での軽油需要が盛り上がったことが、中間留分在庫の減少に影
響している可能性がある。そしてこのような中間留分在庫の減少に加え、中国で 2017 年 1 月 1 日に国 5
基準(硫黄分 10ppm、Euro V 基準に相当)の軽油とガソリンの使用が義務付けられることに伴い、製油所
の高度化作業が行われた結果、石油製品の生産が影響を受けたことにより、11 月末の同国の軽油在庫
が595万トン(約4,439万バレル)と記録的な低水準にまで低下したことから、アジア市場において軽油需
給の引き締まり感が発生した。また、前述の通り 1 月中旬にはロシアと UAE での製油所の火災に伴う石
油製品供給上の懸念も市場で発生した。このようなことから、原油価格の上昇により一時的に縮小する場
面は見られたものの、軽油と原油の価格差(この場合軽油価格が原油のそれを上回っている)は総じて
下支えされる格好で推移した。
シンガポールの重油在庫は、12 月14 日には 2,000 万バレル台後半の量であったが、12 月 21 日には
2,300 万バレル強へと増加した。ただ、その後は 12 月 28 日には 2,200 万バレル台前半、2017 年 1 月 4
日には 1,800 万バレル台半ばの量へと減少した。それでも、1 月 11 日の当該在庫は 2,200 万バレル弱
の水準へと回復している。1 月 4 日の在庫は前週比で大幅な減少となったが、これは、中国の旧正月(春
節(1 月 28 日)、1 月27 日~2 月2 日が休日となる)に備えて需要が増加したことによると見る向きもある。
このため、アジア市場での重油と原油との価格差(この場合原油価格が重油のそれを上回っている)は
一時縮小傾向を示した。ただ、1 月11日には重油在庫が回復したうえ、秋場の欧州及びアジア地域の製
油所のメンテナンス作業実施で重油供給が低下したことにより相対的に重油需要が旺盛なアジア市場と
欧州市場との間で重油の価格差が拡大した結果、これからの時期アジア市場の欧州方面からの重油の
受け入れが堅調になるとの観測が市場で発生したこともあり、アジア市場での重油と原油との価格差は
– 10 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
縮小傾向を示している。
2. 2016 年 12 月中旬から 2017 年 1 月中旬にかけての原油市場等の状況
2016 年 12 月中旬から 2017 年 1 月中旬にかけての原油市場においては、サウジアラビアやクウェート
等が 11 月 30 日の OPEC 総会において合意した減産策を遵守する意向である旨明らかになったことや
2017 年 1 月に OPEC 及び非 OPEC 産油国による原油生産削減遵守状況につき協議するための監視委
員会を開催する旨示唆する情報が流れたことにより、この先の世界石油需給の引き締まりに対する市場
の期待感が強まったことに加え、2016 年 7~9 月期の米国国内総生産が上昇修正されたこと等米国経済
が回復しつつあることを示す経済指標類が発表されたことなどもあり、2017 年 1 月 3 日早朝の時間外取
引時には原油価格は WTI で 1 バレル当たり 55 ドルを超過する場面も見られた他、全体を通じ 50 ドル台
前半で推移するなど総じて底堅い動きを示した(図 15 参照)。
12 月 19 日には、警備兵による封鎖解除により間もなく原油の生産が再開されると見られていたリビア
の Sharara 油田(推定原油生産能力 37 万バレル)及び El Feel 油田(同 7.5 万バレル)につき、警備兵の
施設封鎖が継続していることにより生産が再開されていない旨 12 月 19 日に報じられたことで、同国の原
油生産増加に対する期待が市場で後退したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当
たり 0.22 ドル上昇し、終値は 52.12 ドルとなった。また、12 月 20 日も翌 21 日に米国エネルギー省(EIA)
から発表される予定である同国石油統計(12 月 16 日の週分)で原油在庫が減少している旨判明するとの
観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 52.23 ドルと前日終値比で
– 11 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
0.11 ドル上昇した(なお、NYMEX の 2017 年 1 月渡し WTI 原油先物契約取引はこの日を以て終了した
が、2 月渡し契約のこの日の終値は 1 バレル当り 53.30 ドル(前日終値比 0.24 ドル上昇)であった)。12
月21日の原油価格の終値は1バレル当たり52.49ドルと前日終値比で0.26ドルの上昇であったが、2017
年 2 月渡し WTI 原油先物契約同士では同 0.81 ドルの下落であった。これは、12 月 21 日に EIA から発
表された同国石油統計で原油在庫が前週比で 226 万バレルの増加と市場の事前予想(前週比 200~
250 万バレル程度の減少)に反し増加していた旨判明したことによる。ただ、12 月 22 日には、この日イラ
クのルアイビ石油相が同国内で活動する大部分の石油会社はクルド自治区を含め OPEC 総会での合意
に合わせ減産に合意している旨発言したことで、イラクの減産遵守に対する期待が市場で増大したこと
に加え、12 月 22 日に米国商務省から発表された 2016 年 7~9 月期国内総生産(GDP)(確報値)が年率
前期比 3.5%の増加と 11 月 29 日に発表された改定値である同 3.2%の増加から上方修正されたうえ、
同日米国商務省から発表された航空機を除く非国防資本財(コア資本財)受注が前月比で 0.9%の増加
と市場の事前予想(同 0.3~0.4%程度の増加)を上回ったことにより、この日の原油価格は前日終値比で
1 バレル当たり 0.46 ドル上昇し、終値は 52.95 ドルとなった。また、12 月 23 日には、米国クリスマスの連
休(12 月 24~26 日)を前にして持ち高調整が市場で発生したことにより、この日の原油価格の終値は 1
バレル当たり 53.02 ドルと前日終値比で 0.07 ドルの上昇にとどまった。
12 月26 日は、米国でのクリスマスの休日に伴い、NYMEX での原油先物取引は実施されなかったが、
12 月27 日には、OPEC 及び一部非OPEC 産油国による原油生産量に関する監視委員会の第一回会合
を 1 月 13 日にアブダビ(UAE)で開催する旨この日報じられた(しかしながら 12 月 28 日には当該監視委
員会は 1 月 21~22 日にオーストリアのウィーンで開催される旨クウェートのマールゾウク(Marzouq)石油
相が明らかにしている)ことで、OPEC 及び一部非 OPEC 産油国による減産遵守に対する期待が市場で
増大したことに加え、ロシアのガスプロムネフチが 2017 年の原油生産の増加率を前年比で 4.5~5.0%と
OPEC 産油国による原油生産調整方策合意以前の予定よりも引き下げる旨 12 月 27 日に明らかにしたこ
とで、この日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 0.46 ドル上昇し、終値は 52.95 ドルとなった。
また、12 月 28 日も、12 月 29 日に EIA から発表される予定である同国石油統計(12 月 23 日の週分)で
原油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したことに加え、12 月 28 日に、イラクのルアイビ石油相
が同国は2017年1月1日より原油供給量を日量20~21万バレル削減する旨明らかにしたことで、OPEC
産油国による減産遵守に対する期待が市場で増大したこともあり、この日の原油価格の終値は 1 バレル
当たり 54.06 ドルと前日終値比で 0.16 ドル上昇した。この結果原油価格は 12 月 27~28 日の 2 日間で合
– 12 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
計 1 バレル当たり 1.04 ドル上昇した。ただ、12 月 29 日には、この日 EIA から発表された同国石油統計
で原油在庫が前週比で 61 万バレルの増加と市場の予想(同 150~210 万バレル程度の減少)に反し増
加している旨判明したことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.29 ドル下落し、終値
は 53.77 ドルとなった。また、12 月 30 日には、12 月 31 日~2017 年 1 月 2 日の新年の連休を控えて持
ち高調整が市場で発生したことにより、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 53.72 ドルと前日終値
比で 0.05 ドルの下落にとどまった。
2017 年 1 月 2 日は米国での新年の休日に伴い NYMEX では原油先物取引は実施されなかった。た
だ、1 月 3 日早朝の時間外取引時には一時 WTI で 1 バレル当たり 55.24 ドルと 2015 年 7 月 6 日以来の
55 ドル超の価格水準に到達したことで利益確定の動きが市場で発生したことに加え、2017 年1 月3 日に
米国供給管理協会(ISM)から発表された 2016 年 12 月の同国製造業景況感指数(50 が当該部門拡大及
び縮小の分岐点)が 54.7 と 4 ヶ月連続で上昇、2014 年 12 月(この時は 54.9)以来の高水準に到達したう
え市場の事前予想(53.5~53.8)を上回ったことから、米ドルが上昇したことにより、この日の原油価格は
前週末終値比で 1 バレル当たり 1.39 ドル下落し、終値は 52.33 ドルとなった。しかしながら、1 月 4 日に
は、翌 5 日に EIA から発表される予定である同国石油統計(12 月 30 日の週分)で原油在庫が減少して
いる旨判明するとの観測が市場で発生したことに加え、同日クウェート国営石油会社(Kuwait Petroleum
Corporation)が 2017 年 1 月から第一四半期にかけ顧客に対し供給量の削減を実施すると通告した旨の
声明を発表したことで、この先の石油需給の引き締まり感を市場が意識したこと、1 月 4 日に米国調査会
社オートデータが発表した 2016 年 12 月の米国自動車販売台数が 1,755 万台と過去最高を記録した旨
判明したことから米国株式相場が上昇したこと、1 月 4 日に欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)から発
表された 2016 年 12 月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)(速報値)が前年同月比で 1.1%の上昇と市場
の事前予想(同0.9~1.0%程度の上昇)を上回っていたことで、ユーロが上昇した反面米ドルが下落した
ことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり53.26ドルと前日終値比で0.93ドル上昇した。また、
1 月 5 日も、サウジアラビアが自国の原油生産量を少なくとも日量 48.6 万バレル削減し、2017 年 1 月は
日量1,005.8 万バレルとし、11 月 30 日の OPEC 総会での合意を完全遵守する方針である旨同国の石油
政策に近い筋が明らかにした他、サウジアラムコが 2 月のアジア向け原油価格及び同月の米国向け軽
質原油価格を引き上げることを明らかに旨 1 月 5 日に報じられたことで、石油市場の引き締まり感を市場
が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.50 ドル上昇し、終値は 53.76 ド
ルとなった。また、1 月6 日も、この日米国労働省から発表された 2016 年12 月の同国雇用統計で時間当
– 13 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
たり平均賃金が前年同月比で 2.9%の増加と 11 月の同 2.5%の増加から拡大、2009 年 6 月(この時は同
2.9%の増加)以来の大幅増加となっている旨判明したことで、この先の同国石油需要の増加に対する期
待が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり53.99ドルと前日終値比で0.23
ドル上昇した。この結果原油価格は 1 月 4~6 日の 3 日間合計で 1 バレル当たり 1.66 ドル上昇した。
1 月 9 日には、この日イラクのルアイビ石油相が 2016 年 12 月の同国南部バスラ港からの原油輸出が
日量351 万バレルの史上最高水準に到達した旨発表したことで、同国、そして他の OPEC 産油国等の原
油生産調整方策遵守に対して疑問視する向きが市場で発生したことにより、この日の原油価格は前週末
終値比で 1 バレル当たり 2.03 ドル下落し、終値は 51.96 ドルとなった。また、1 月 10 日も、イラクのバスラ
港からの 2 月の原油輸出計画量が日量 364.1 万バレルと 2016 年 12 月の史上最高水準を更新する可能
性がある旨 1 月 10 日に報じられたことに加え、1 月 11 日に EIA から発表される予定である同国石油統
計(1 月6 日の週分)で原油在庫が増加している旨判明するとの観測が市場で発生したこと、1 月 10 日に
EIA から発表された短期エネルギー見通し(STEO:Short-term Energy Outlook)で、EIA が 2017 年の米
国原油生産量を日量 900 万バレル(前年比同 12 万バレル程度の増加)と 12 月 6 日発表時の同 878 万
バレル(同8 万バレル程度の減少)から上方修正した旨判明したことで、この日の原油価格の終値は 1 バ
レル当たり 50.82 ドルと前日終値比で 1.14 ドル下落した。この結果原油価格は 1 月 9~10 日の 2 日間で
合計 1 バレル当たり 3.17 ドル下落した。しかしながら、1 月 11 日には、サウジアラムコが中国、インド及
びマレーシアの顧客に対し 2 月の原油供給量を削減した旨関係筋が明らかにしたとこの日報じられたこ
とで、石油需給の引き締まり感を市場が意識したことに加え、1 月 11 日に EIA から発表された同国石油
統計でオクラホマ州クッシング(Cushing)の原油在庫が減少していた他、同国の原油精製処理量が 1982
年後半以降の週間統計史上最高水準に到達している旨判明したことで足元の原油需要の強さを市場が
意識したこと、1月11日に行われたトランプ次期米国大統領による記者会見においてトランプ氏から米国
経済成長促進のための具体策に関する発言がなかったことから市場で失望感が発生したことにより米ド
ルが下落したこともあり、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.43 ドル上昇し、終値は
52.25 ドルとなった。また、1 月 12 日も、この日中国国営石油会社 CNPC が 2017 年の同国の原油需要が
前年比で 3.4%増加し 5.94 億トン(推定で日量 1,191 万バレル)の記録的水準に到達する旨明らかにし
たことに加え、1 月12 日にサウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が、同国の原油生産量
が日量 1,000 万バレルを若干割り込むなど OPEC 総会で合意した減産幅以上の減産を実施しており、2
月はさらに減産を行う計画である旨発言したことで、OPEC 産油国の原油生産調整方策遵守に対する期
– 14 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
待感が市場で増大したこと、1 月11 日に行われたトランプ次期米国大統領による記者会見に対する市場
の失望感発生の流れを引き継いだことにより米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は 1 バ
レル当たり 53.01 ドルと前日終値比で 0.76 ドル上昇した。この結果原油価格は 1 月 11~12 日の 2 日間
で合計 1 バレル当たり 2.19 ドル上昇した。ただ、1 月 13 日には、この日中国税関総署から発表された
2016 年 12 月の同国の輸出が前年同月比で 6.1%の減少と市場の事前予想(同 3.5~4.0%の減少)を上
回って減少していたことで、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.64 ドル下落し終値は
52.37 ドルとなっている。
3. 今後の見通し等
イラクでは、イスラム国(IS)が支配するモスルに東側地域から進撃していたイラク軍が 2017 年 1 月 8
日に同市中央部のチグリス川に到達した。ただ、当初イラク政府は 2016 年末までにモスルを IS から奪還
する予定であったが、アバディ首相は当該地域から IS を排除するのにもう 3 ヶ月程度を要する旨 12 月
27 日に明らかにしている。他方、12 月 31 日、1 月 2 日、及び 1 月 8 日にバグダッド、1 月 1 日に中部の
ナジャフで、それぞれ爆弾テロが発生している(少なくとも一部は IS の犯行と見られている)。
イランについては、米国共和党のコーカー上院外交委員長が 1 月 6 日に実施した講演で、ウラン濃縮
問題に絡む対イラン制裁を解除した西側諸国等との合意につき、直ちに破棄することはないであろう旨
明らかにした。また、12 月 15 日に成立した米国の対イラン制裁法の 2017 年 1 月 1 日からの 10 年間の
延長につき、2016 年 1 月 1 日のウラン濃縮問題に伴う対イラン制裁解除に影響を与えないと 1 月 10 日
に米国が保証したことで、西側諸国等とイランとの間での引き続き制裁解除を実施していく旨確認したと
欧州連合(EU)が 1 月 10 日に声明を発表した。一方で 1 月 8 日には、イランの保守穏健派の要人である
ラフサンジャニ元大統領(最高評議会議長)が死去した。このため、これまでラフサンジャニ師が後ろ盾と
なっていたロウハニ大統領を巡る政治情勢に変化が生じる可能性がある。他方、ホルムズ海峡では、1
月 8 日にイラン革命防衛隊の船舶が米国海軍の駆逐艦に異常接近したことで米軍側は警告射撃を実施
している。
リビアでは、東部政府(暫定政府)に忠誠を誓う軍が中央砂漠地帯で敵対する勢力の軍に対して 12 月
26 日に空爆を実施したと伝えられる。他方、同国の Zawiya石油ターミナル(原油出荷能力日量23 万バレ
ル)が出荷準備中であり、これで国内主要 9 石油ターミナル全ての操業が再開されることになると 1 月 4
日に同国国営石油会社NOCが発表した他、Sharara油田の原油生産量が能力限界に向け回復中である
– 15 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
旨 NOC が明らかにしたと 1 月 5 日に伝えられる。そして、NOC は 12 月 26 日に同国の原油生産量が日
量 62.2 万バレルである旨発表した他、1 月 13 日時点では日量 75 万バレルに到達した旨統一政府のマ
イテーグ(Maiteeg)副首相が明らかにした(因みに 2016 年 8 月の同国の原油生産量は日量 28 万バレル
であった)。NOC は、2017 年の早い段階で日量90 万バレル、2017 年末までには日量120 万バレルにま
で増産する計画である旨 12 月 21 日に明らかにしている。
シリアのアレッポでは反体制派の戦闘員や一般市民の市外への移送作業が完了した旨 12 月 22 日夜
赤十字国際委員会が発表、12 月29 日にはロシアのプーチン大統領が、ロシアとトルコの仲介によりアサ
ド政権と反体制派が 12 月 30 日午前 0 時からのシリア全土での停戦で合意した旨明らかにしている。ま
た 12 月 31 日には、国連安全保障理事会が当該停戦を支持する決議案を全会一致で採択した。停戦が
遵守されれば、1 月 23 日にカザフスタンのアスタナで和平協議が実施される予定である。現時点では同
国の一部地域でアサド政権軍と反体制派との交戦が継続していると伝えられるが、アレッポとする大部分
の地域では概ね停戦が維持されている。そして、ロシア軍がシリアで展開していた軍隊の規模縮小を開
始した旨ロシア軍が 1 月6 日に明らかにしている。他方、同国北部のバーブにおいて 12 月22~23 日に
トルコ軍が対 IS 作戦と見られる空爆を実施した結果 88 名が死亡した一方で、1 月 5 日には、同国北西部
のジャブラで自動車爆弾テロが発生、民間人等 15 名が死亡したと伝えられる(IS の関与が疑われてい
る)他、同国北部のアザーズで 1 月7 日に自爆攻撃が発生し 43 人が犠牲となっていると伝えられる(これ
も IS による可能性があると見る向きもある)。また、1 月 12 日には首都ダマスカスの政府幹部居住区で爆
発があり、政権軍関係者 10 名が殺害されたとされる。
そして、ナイジェリアでは、1 月 6 日に Niger Delra Avengers(NDA)がナイジェリア当局に武装勢力との
対話の用意が見られないことから、戦闘員に戦闘準備を行うよう指示した旨発言している。
全体としては、地政学的リスク要因面では、イラクでモスル奪還作戦が実施中である他、リビアでも一
部勢力が敵対する勢力に対して空爆を実施するなどしている。ただ、イラクでは原油輸出量は堅調であ
る他リビアでも原油生産が増加する傾向にある。また、シリアで停戦が発効しており、この面では中東情
勢の不透明感は一時に比べれば低下している。このように細かい変化はあるものの、総じて、情勢は以
前に比べれば相対的に安定化する方向に向かっており、このような状況が継続すれば、これらの面にお
いては原油相場への影響は限定的なものになると考えられる。ただ、ナイジェリアでは NDA が同国の石
油関連施設への攻撃を再開する方針である旨明らかになっており、攻撃により再び同国の原油生産が
影響を受けるようだと、石油需給の引き締まり感が発生することにより、原油価格を下支えする可能性が
– 16 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ある。また、以前と比べ市場での石油需給の緩和感が低減する方向に向かいつつあることもあり、1 月20
日に米国でトランプ次期大統領が就任した後に対イラン政策もしくは方針が明らかにされ、それが、今後
のイランと米国の対立を激化させる可能性が高まることを通じて市場の石油供給途絶懸念を増長させる
ようだと、原油相場にそのような懸念が織り込まれやすくなる(つまり原油価格に上方圧力を加える場面
が増加する)と考えられる。
米国では 1 月 31 日~2 月 1 日に連邦公開市場委員会(FOMC)の開催が予定されている。2016 年 12
月 13~14 日に開催された前回の FOMC の際には、2017 年に 0.25%の金利引き上げが 3 回実施される
旨の関係者の予想が明らかになったが、既に前回の FOMC 開催時に金利を 0.25%引き上げているとこ
ろからすると、次回の FOMC での金利引き上げ実施の確率は相対的に低いと見られる。それでも、今後
発表される予定である経済指標類等の内容によっては、(次回とはいかないまでの次々回 FOMC 開催
時での)金利引き上げに対する市場の期待が高まる結果、米ドルが押し上げられるとともに、原油相場の
上昇が抑制されるといった可能性もありうる。このようなことから、米国等経済指標類等の面では、米ドル
等が変動するとともに原油相場にもその影響が及ぶと見られるが、米国での金利引き上げ方針が撤回さ
れるということでなければ、米ドルは下落傾向となりにくいことから、この面で原油相場を継続的に上昇す
るといった展開となる可能性はそれほど高くないと考えられる。他方、1 月 20 日に就任する予定であるト
ランプ次期米国大統領が明らかにする経済政策によっては、米国経済成長に対する期待が高まるととも
に、株式相場が上昇、それが原油相場に織り込まれることになろう。しかしながら、その場合米ドルも上
昇することにより、原油相場に下方圧力を加えることで、原油相場が乱高下することもありうる。また、既に
米国等主要企業の 2016 年第四四半期の業績発表シーズンが開始されていることから、それらの業績に
より米国株式相場が変動するとともに原油相場がその影響を受ける場面が見られることも想定される。
石油需給面では、OPEC 産油国及びロシア等一部非 OPEC 産油国の原油生産量が市場の注目する
ところとなろう。現在のところ、OPEC 産油国及び OPEC 産油国と原油生産調整で合意したロシア等一部
非 OPEC 産油国については、サウジアラビアをはじめとして顧客に対し原油供給の削減を通告している
等報じられる(表 1 及び 2 参照)。この先も OPEC 産油国及びロシア等の断片的な原油生産及び輸出に
関する情報によって原油相場が変動する可能性もあるが、現時点での情報では OPEC 産油国等の減産
が全体としてどうなっているのか、そして減産が継続的に実施されているのか、ということ等の状況を把
握することは困難である。そして、1 月下旬から 2 月中旬にかけ、各報道機関及び石油市場関係機関
(EIA、IEA、OPEC等)の発表する2017年1月の原油生産統計がOPEC及びロシアを含む一部非OPEC
– 17 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
産油国の原油生産調整方策実施後初めての原油生産統計となるので、この数値が実質的な原油生産
量の削減を示しているかどうかで、石油市場関係者の心理が左右されることになると考えられる。ここに
おいて、原油生産がある程度削減されている旨判明すれば、石油需給の引き締まり感が市場で発生す
ることにより、原油相場を下支えすることになる。反対に、原油生産削減状態が芳しくないようだと、市場
関係者の失望を誘うとともに原油相場に下方圧力が加わることになろう。他方、1 月後半頃以降も冬場の
暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は最終消費段階ではなお続く(暖房シーズンは概ね 11 月 1
日から 3 月 31 日までである)。しかしながら、製油所の段階では、既にある程度暖房用石油製品の生産
が進んでおり、むしろ間もなくメンテナンス作業時期に突入することで、その時期に向け製油所は稼働を
引き下げ始めるとともに、原油の購入を不活発にしてくる。このため、原油に対する需要がこの先低下す
るとの観測を含め、季節的な石油需給の緩和感が市場で醸成されやすくなることから、この面で原油相
場に下方圧力を加わる可能性がある。ただ、暖房用石油製品需要の中心地である米国北東部において
平年を割り込む気温が継続したり、また平年を割り込む気温予報が発表されたりすると、一時的であれ、
市場での暖房油需給の引き締まり感の醸成から、暖房油価格、そして原油価格が上昇する場面が見ら
れることもありうる。また、1 月19 日には国際通貨基金(IMF)から世界経済見通し(WEO:World Economic
Outlook)が発表される予定である。そこにおいて世界経済成長に関して修正等が施されている旨判明
すれば、その後発行される予定の IEA、EIA 及び OPEC の石油市場報告の類において世界石油需要が
修正されるとの観測が市場で発生することにより、原油相場が変動することも想定される。他方、米国で
は石油坑井掘削装置稼働数が増加傾向となっていることから、この先の米国原油生産増加観測も市場
で強まっていると見られ、この面では原油相場の上昇を抑える格好で作用するものと考えられる。
全体としては、地政学的リスク要因面では、ナイジェリアでの武装勢力の動きや米国の対イラン政策が
原油相場に影響する可能性がある。また、米国等経済指標類等は原油相場を変動させうるものの、米ド
ルが継続的に下落するとは考えにくいことから原油相場が継続的に上昇する場面が発生する可能性は
そう高くないと考えられる。一方で、2017 年1 月の OPEC 産油国やロシア等一部非OPEC 産油国の原油
生産削減遵守状況によって、原油相場に上方もしくは下方圧力が加わることになろう。ただ、原油生産削
減がある程度遵守されていることにより価格に上方圧力が加わりやすい状態であっても、1 月後半頃から
は季節的な石油需給の緩和感が市場で広がりやすいことに加え、米国で石油坑井掘削装置の稼働数
が増加しつつあるところからすると、原油相場の上昇傾向は少なくともある程度は抑制される可能性があ
るものと考えられる。
– 18 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表1 OPEC産油国の原油生産調整を巡る主な動き(単位:特に記載のない場合は日量千バレル)
産油国
減産後
減産前
基準原油生産量 原油生産量 減産幅
日付
内容
アルジェリア
1,089
1,039
50 2017年1月12日 ブテルファ エネルギー相が1月は日量6万バレルの減産を行う予定であり、これは、合意した同5万
バレルを超過する旨発言。
アンゴラ
1,751
1,673
78
エクアドル
ガボン
イラン
548
202
3,707
522
193
3,797
イラク
4,561
4,351
2017年1月7日 国営石油会社Sonangolが原油供給量を日量7.8万バレル引き下げ、2017年1月1日より日量167.3
万バレルとした旨の声明を発表。
26
9 2016年12月16日 日量9,000バレルの減産を実施することを約束する旨表明。
-90 2017年1月10日 イランの原油生産量が日量400万バレル前後に到達した旨国営石油会社NIOC幹部が発言した旨
報じられる。
210 2016年12月9日 欧米の顧客に関して原油供給削減を通知した旨関係筋が明らかにしたと報じられる。
2016年12月9日 精製業者3社が国営石油販売会社SOMOから, バスラ原油を契約数量通り供給する旨の通告を受
領した旨報じられる。
2017年1月9日 2016年12月の南部バスラ港からの原油輸出が日量351万バレルと11月の同341万バレルから増
加し史上最高になった旨ルアイビ石油相が発表した旨報じられる。
2017年1月9日 欧州及びアジアの3精製業者に対してバスラ原油を契約数量通り供給する旨関係筋が明らかに。
2017年1月10日 ルアイビ石油相が2017年1月1日より日量16万バレルの減産を実施する旨発表。
2017年1月10日 2017年2月のSOMOによるバスラ港からの原油輸出計画量が日量364万バレルと2016年12月の原
油輸出量よりも増加している旨報じられる。
クウェート
2,838
2,707
2017年1月12日 原油輸出量が1月12日時点で日量17万バレル減少、そして週末までにさらに日量4万バレル削減
する旨ルアイビ石油相が発言。
131 2016年12月13日 国営石油会社Kuwait Petroleum Corporationが2017年1月より契約上の原油供給を削減する旨
公式に顧客に通告した旨表明。
2017年1月4日 国営石油会社Kuwait Petroleum Corporationが顧客に2017年1月から同年第一四半期にかけ原
油供給量を削減する旨通告したとの声明を発表。
リビア
ナイジェリア
カタール
サウジアラビア
-
-
-
648
10,544
618
10,058
30
486
UAE
3,013
2,874
ベネズエラ
2,067
1,972
2017年1月7日 クウェート石油産業幹部が、原油生産量を削減し2017年1月より日量270.7万バレル前後の原油生
産量となった旨発言。
2017年1月13日 同国の原油生産量が日量75万バレルに到達した旨統一政府のMaiteeg副首相が明らかに。
2017年1月6日 武装勢力Niger Delra Avengersが戦闘員に(産油地域であるNiger Deltaでの)戦闘を準備するよう
指示した旨明らかに。
2016年12月13日 国営石油会社QPが1月1日より原油供給を削減する旨顧客に通知したとの声明を発表。
2016年12月9日 欧米の顧客に対して2017年1月より供給削減を通告した旨サウジアラビアの石油政策に近い筋が
明らかに。
2016年12月9日 精製業者8社がサウジアラムコから1月は原油を契約通りに供給する他、3社については要求した
追加供給分についても出荷も実施される旨明らかに。また1社はアラブ・エクストラ・ライト原油につ
き2017年1月は契約数量以上の量を供給することで合意。
2016年12月16日 サウジアラムコがアジアの顧客に対し2017年1月以降さらなる通告があるまで原油の柔軟な引き取
り条項の適用を中断すると通告した旨報じられる。
2017年1月5日 1月の原油生産量を少なくとも日量48.6万バレル削減し、日量1,005.8万バレルとする旨サウジアラ
ビアの石油生産に近い筋が明らかに。
2017年1月5日 サウジアラムコが世界中の顧客に対して2月の原油供給量を最高で7%削減するための協議を開
始した、と関係筋が明らかに。
2017年1月11日 サウジアラムコが中国の石油会社に加え、Reliance Industries、Hindastan Mittal Energy、
Petronas等に対し2月の原油供給量を削減した旨関係筋が明らかする一方で、日本及び韓国の精
製業者少なくとも8社は2月の原油供給量については契約数量通りである旨明らかに。
139 2016年12月13日 国営石油会社ADNOCが輸出向けの原油であるMurban及びUpper Zakum原油を5%、Das原油を
3%、それぞれ供給を削減する旨発表。
95 2016年12月27日 2017年1月1日から国営石油会社PDVSA及びその子会社が日量9.5万バレルの減産を実施する旨
石油鉱業省が発表。
出所:各種資料をもとに作成
– 19 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表2 非OPEC産油国の原油生産調整を巡る主な動き(単位:特に記載のない場合は日量千バレル)
産油国
ロシア
減産前
原油生産量
11,247
減産後
原油生産量 減産幅
10,947
日付
内容
300 2016年12月10日 2017年3月までに日量20万バレル減産したうえ、4~5月に日量30万バレルへと減産幅を拡大する
方針である旨ノバク エネルギー相が表明。
2016年12月20日 国営石油輸送会社Transneftが2017年1~3月の旧ソ連外への原油輸出を50.98mt(日量417万バ
レル)と2016年第四四半期(51.36mt)(日量416万バレル)比で0.7%削減する旨発言。
2017年1月9日 ロシアの2017年1月1~8日の原油生産量が前月比で日量10万バレル減少した旨関係筋が明らか
に。
2017年1月11日 1月10日のロシアの原油生産量が日量1,102.6万バレルと1月1~8日の同1,111.4万バレルから減
少、とエネルギー省のデータで明らかに。
メキシコ
オマーン
NA
NA
NA
NA
アゼルバイジャン
カザフスタン
マレーシア
赤道ギニア
バーレーン
南スーダン
スーダン
ブルネイ
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
100
45 2016年12月13日 石油・ガス省が石油会社に日量4.5万バレルの産出量削減を通告。
2017年1月12日 石油・ガス省が個別石油会社向けの原油生産量を設定した旨明らかに。Petroleum Development
Oman:日量652,000バレル、Occidental Oman:日量218,585バレル、Daleel Petroleum:日量
48,000バレル、CC Energy:日量41,000バレル、その他:日量10,509バレル、合計日量970,094バ
レル。
35 2017年1月10日 減産を開始した旨エネルギー省が明らかにしたと報じられる。
20 2017年1月12日 既に日量2万バレルの減産を実施した旨エネルギー省が明らかに。
20 2016年12月13日 国営石油会社PetronasがOPEC及び一部非OPEC産油国間での合意に従い減産する旨表明。
12
10
8
4
4
出所:各種資料をもとに作成
4. 米国原油輸出解禁を巡る原油市場状況
2015 年 12 月 18 日に、米国からの原油輸出が事実上解禁された。2006 年第一四半期以前は恒常的
に WTI の価格はブレントのそれを 1 バレル当たり 2~4 ドル程度上回っていたが、その後、クッシングへ
原油を流入させるパイプラインの整備や国内でのシェールオイル増産、カナダからの原油輸入の増加
の一方で、クッシングから原油を流出させるパイプラインが限られていたことや米国からの原油輸出が事
実上禁止されていたことが一因となり、例えば軽質低硫黄原油である WTI の価格が相対的に品質の劣
るブレント原油に比べて割安になっていた。そして、米国議会等で原油輸出解禁に向けた動きが出てき
た 2015 年 12 月 14 日以降、それまでブレントを 1 バレルあたり 2~4 ドル程度下回っていた WTI は価格
差を縮小し、両原油の価格は一時期ほぼ同水準になった。しかしながら、その後は WTI 価格が持続的
にブレントのそれを上回るまでには至っておらず、WTI の価格はブレントのそれを概ね 1~3 ドル弱程度
下回る状況となっている。
前述の通り、米国では、中西部でシェールオイルの開発が進んだこともあり、原油生産が増加する一
– 20 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
方で、カナダからのオイルサンド由来の合成原油の生産が活発化するとともに、生産された合成原油等
が米国中西部に流入してきた(図 16 参照)。中西部の製油所はカナダからの合成原油(これは基本的に
重質原油である)流入増加に備えて製油所を高度化するとともに精製能力も増強してきたものの、シェー
ルオイル(これは基本的に軽質原油である)のいわば急激な増産までは予想していなかったこともあり、
余剰気味となったシェールオイルの相当量がオクラホマ州のクッシングにある貯蔵施設等へと向かった
と見られる。このため、クッシングの原油在庫が高水準となり(図 17 参照)、この地点で受け渡しされる
WTI の価格がブレントのそれを一時 1 バレル当たり 20 数ドル下回る場面も見られた。
2012 年から 2014 年にかけては、クッシングから原油を流出させる、もしくはクッシングを迂回させるパ
– 21 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
イプラインが整備された(表 3 参照)ため、WTI のブレントに対する割安感も縮小する方向に向かった。し
かしながら、後にクッシングに原油を流入させるパイプラインも整備された(表 4 参照)。また、クッシング
から原油を流出させるパイプラインの輸送先が内陸地である場合も多く、原油を海外へと仕向けることの
できるメキシコ湾岸地域へ原油を輸送する主なパイプラインは Seaway パイプライン(日量 85 万バレル)
及び Gulfcoast パイプライン(同 70 万バレル)に限られるなど、クッシングから原油を流出させる体制は柔
軟性に欠ける状態となっている。併せて米国中西部ではシェールオイルの生産拡大とともに原油生産量
が増加しており、少なくともその一部がクッシングに輸送されてきたと見られる。このため、クッシングでは
引き続き原油が貯蔵されやすい状態となっている。
表3 2012年以降に完成したクッシングから原油を流出させるパイプライン(輸送能力:日量万バレル)
パイプライン名
開通年月
Seaway Pipeline
2012年5月
Longhorn Pipeline
2013年4月
Gulfcoast Pipeline
2014年1月
輸送能力 起点
85 Cushing, Oklahoma
27.5 Midland, Texas
70 Cushing, Oklahoma
終点
Freeport, Texas
Houston, Texas
Houston/Port Arthur, Texas
出所:各種資料をもとに作成
表4 2014年以降に完成したクッシングへ原油を流入させるパイプライン(輸送能力:日量万バレル)
パイプライン名
White Cliffs Pipeline
開通年月
輸送能力 起点
終点
2014年8月
21.5 Platteville, Colorado
Cushing, Oklahoma
Pony Express Pipeline
2014年11月
23 Guernsey, Wyoming
Cushing, Oklahoma
Flanagan South Pipeline
2014年12月
60 Pontiac, Illiois
Cushing, Oklahoma
出所:各種資料をもとに作成
他方、米国の東部海岸の製油所では、ブレント原油価格に連動した国外からの原油輸入が主流であ
ったが、中西部からも製油所には鉄道で原油が輸送されている。中西部から米国東部海岸には原油を
輸送するパイプライン能力が極めて限られている(中西部から東部海岸への原油のパイプライン輸送は
日量 1 万バレル未満である)。これは、中西部と米国東部海岸の間にアパラチア山脈があるため、高低
差のある経路での原油パイプライン建設にはポンプ施設等の費用が嵩む他、環境問題に敏感な東部海
岸での住民の説得に期間や費用を要する可能性があったことから、初期費用が抑制される鉄道が指向
されたことが背景にあると考えられる。しかしながら、鉄道輸送施設整備の初期費用はパイプラインに比
べ安価ではあるものの、輸送コスト自体は条件にもよるが 1 バレル当たり 10 ドル程度を要した(パイプラ
イン輸送は鉄道輸送の 3 分の 1 程度と見る向きもある)。このため、クッシング周辺の原油流出入バランス
が改善されるとともに、ブレントとの価格差が数ドル程度にまで縮小したことから、米国東海岸の製油所
– 22 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
にとってみれば、米国内陸産原油を鉄道で東海岸に輸送することとは割高となってきた。このため、米国
東海岸の製油所において中西部から鉄道で輸送される原油の受け入れが低下した(但し時間差を以て
低下しており、この部分は鉄道輸送契約期間が関係していると見られる、図 18 参照)。
そして、米国で原油輸出が解禁されたことにより、WTI とブレントの価格差はさらに縮小した。これによ
り、米国東海岸においては、ブレント等海外の軽質原油の割安感が増したことから、軽質を中心として原
油輸入が増加するようになった。ただ、米国東海岸地域における原油輸入増加傾向の中でも、原油輸入
量には限界的な変動が見られる。ブレントと WTI の原油価格差が 1 バレル当たり 2 ドルを割り込むようで
あると、ブレントの割安感が感じられ、少し遅れて当該地域での軽質原油の輸入量が増加し、反面原油
価格差が 2 ドルを超過するようであると、ブレント原油の割高感が感じられ当該地域での原油輸入量が
減少する傾向が見られる。また、輸出面をみると、ブレントと WTI の原油価格差が 1 バレル当たり 2 ドル
を割り込むようであると、WTI の割高感が感じられ、米国からの原油輸出量が低下する反面、原油価格差
が2ドルを超過するようであると、WTIの割安感が感じられ、米国からの原油輸出量が増加する傾向が見
られる(図 19 参照)。
– 23 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
2016 年 11 月 30 日の OPEC 総会における原油生産削減方策に関する合意、そして、2016 年 12 月 10
日の OPEC 及び一部非 OPEC 産油国による閣僚級会合での非 OPEC 産油国による減産表明で、ブレ
ントやドバイの価格が WTI に比べ堅調となった。協調減産が実現すれば、相当程度の減産を実施すると
予想される中東湾岸 OPEC 産油国やロシアに近い、つまり減産の影響を受けやすい、中東や欧州市場
の原油価格(代表的なものはドバイであり、ブレントである)が相対的に上昇しやすい反面、国内生産が
豊富であり、かつ中東やロシアの原油輸入が限定的であることから、欧州等に比べ協調減産の影響を受
けにくい米国産原油(代表的なものは WTI である)の価格が相対的に下落しやすくなる。このため、ブレ
ントと WTI の月間平均価格差は 11 月の 1 バレル当たり 1.21 ドルから 12 月は 2.75 ドルへと拡大した。
そして、これにより、この先米国からの原油輸出が増加することが予想される。
2006 年時点ではまだ、シカゴからクッシングへと原油を輸送するパイプラインが未整備であったことか
ら、クッシングの原油在庫もそれほど高水準ではなく、その結果、WTI の原油価格がブレントに対して割
高であった(その代わりシカゴ地域の原油価格はWTIを10ドル程度下回っていた場合もあったとされる)
が、現状では、比較的高水準の中西部での原油生産とカナダからの原油の流入、クッシングを巡るパイ
プラインの原油流出入状況、そして、東海岸への原油輸送パイプラインの欠如と高水準の鉄道原油輸送
コストといった諸条件からすると、引き続きクッシングの原油在庫は高水準となりやすく、その結果、WTI
価格がブレントのそれを上回る状況が再び出現する可能性は低いものと考えられる。WTI の価格がブレ
ントのそれを上回るようになるには、少なくともクッシングからメキシコ湾岸方向へ原油を輸送するパイプ
ラインがさらに整備されることにより、クッシングの原油在庫が相当程度減少することが必要であろう。
– 24 –
Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま
れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの
投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責
任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。