パネルディスカッションの開催状況概要

パネルディスカッションの開催状況概要
長谷川副委員長:現在、立川市では、
「障害のある人もない人も共に暮らしやすい立川をつくる
条例(仮称)
」の策定に取り組んでいる。条例策定に当たり、市の内部で検討している
ほか、障害者団体関係者や事業者、学識経験者、弁護士、公募市民などで構成する「条
例策定検討委員会」を設置し、市と検討委員会とがキャッチボールをしながら検討を
進めている。
立川市では、障害者団体から条例制定を求める請願が市議会に提出され、全会一致
で採択された。また、立川市内では障害者のグループホーム建設に対して反対運動が
あり、これまで以上に障害に対する理解を進めなければならないという背景もあった。
そして、そもそも病気や加齢によって誰もが障害のある人となりうることから、障害
のある人がくらしやすいまちはすべての市民にとって暮らしやすいまちにつながる
であろうという思いが、この条例の策定へとつながった。
本日は、18 名の策定検討委員会委員のうち、5名が登壇し、条例策定への思いなど
を話す。
泉 口 氏:知的の障害がある。障害の当事者と共に仕事をしている。情報誌の発行を担当して
作業所へ取材をしたりしていて、当事者視点で記事をまとめている。自宅ではヘルパ
ーを週1回利用している。
石 川 氏:特例子会社で障害者の自立の支援をしている。
野 々 氏:手をつなぐ親の会で活動をしている。障害のある人が学校に行くことができない時
代があった。当事者家族が地域で暮らすことが第一と考えて活動している。
山 本 氏:社会福祉協議会に所属し地域福祉を推進している。重度障害の方の通所施設も社協
のある総合福祉センターの中にある。条例の意義を考え参加している。
1.障害のある人の現状について
泉 口 氏: 立川市の良い所は、楽しいイベントがたくさんある。また、障害者就労の場がた
くさんある。良くない所は、人がたくさん来るようになり治安が悪くなっている気が
する。秋葉原の無差別殺傷事件のようなことが心配。
石 川 氏:ららぽーと立川立飛にいなげやがあり、8名の障害者が就労している。障害者の就
労の定着支援をいかに行うか。
野 々 氏:立川には大勢の障害者が住んでいる。GHの反対運動は他でもある。障害者理解が
進んでいるとは言えない。災害時には懸念がある。聴覚障害者には情報が入らない。
山 本 氏:母が認知症でストマを利用している。要介護4で誰でも障害者になりうる可能性があ
る。認知症 500 万人。軽度認知症 400 万人。日本の人口 14,15 人に 1 人は認知症。
GHの反対運動があるが、自分の親が入るGHだと考えるとどうだろうか。
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2.条例に対する思いや期待していることについて
泉 口 氏:障害者だが、子育てをしている方のことも考えて委員会で発言している。エレベー
ターに乗るのに時間がかかるため、やむを得ずエスカレーターを使う子を連れた親御
さんはとても危険だと感じる。
譲り合うことやエレベーターを増やすことが必要。まだ、子育てのしやすい社会にな
っているとは言いがたい。
障害者目線だけでなく子育てが安心してできる街という視点が大事。
石 川 氏:経営理念と条例の目的が一致していると感じた。いなげやの経営理念は「地域の方
が健やかに暮らしていること」となっている。立川は障害者をサポートする機関が充
実していると感じる。ハローワーク立川・B型事業所など。うまく巻き込みながら条
例を策定していきたい。
野 々 氏:千葉県は策定後に先駆的な取組みをしている。数人の施設職員が虐待を行ったとい
う事件もある。差別解消法ができるからそれで良いという問題ではない。理念実現の
ため自分の住んでいる街で条例があることが大事。
山 本 氏:相模原の殺傷事件について委員会で語りあった。条例の策定に役立てたい。
容疑者は誰しも障害者になりうるということを考えていない。多様性のある社会こそ
が生き残る。一人一人が暮らしやすい社会をつくるために条例を策定していく。
合理的配慮が進むことでみんなが暮らしやすくなっていくのではないかという視点と
差別をなくすという視点が大事。
長谷川副委員長:
「合理的配慮」というのは、本日配布のパンフレットから言葉を借りると「障
害のある人から『社会的障壁を取り除くために何らかの対応が必要』という意思が伝え
られたときに、双方の建設的な対話により、負担が重すぎない範囲で必要かつ合理的な
対応すること」をいうとされている。この合理的配慮は法律や条例の中心となるものと
いえる。
3.合理的配慮について
泉 口 氏:知的障害といっても様々な人がいるので、その人にあった一人一人への対応が必要。
フリガナがあれば分かる人もいれば、言語でのコミュニケ―ションが難しい人もい
る。写真や絵を用いて理解する人もいる。その人に合わせた合理的配慮というものが
必要。
石 川 氏:改正雇用促進法では雇用の分野で合理的配慮の提供が法的義務となった。障害のあ
る人と雇用主との相互理解が一番のポイント。話し合いをしながらできる範囲で合理
的配慮をしていくことになる。お互いが話し合うことでパフォーマンスが向上する。
野 々 氏:合理的配慮が進めば、一人一人の可能性が引き出されていく。みんなが主体となっ
て生きていくことができる。より多くの人に広がっていけばよい。
山 本 氏:人それぞれに特性がある。それを活かすための環境整備が大事。現在の日本社会は、
効率化・スピード化を求めているが一方で高齢化も進んでいる。合理的配慮を考える
ことは、社会のあり方を考えることにつながる。
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長谷川副委員長:合理的配慮というのは、みんなが平等に自由や権利を行使するための配慮。配
慮とありますが、正確には義務です。ただ、個人的には、義務とかどうかという問題よ
りも、やっぱり心の問題が大事なんだと思う。心の問題だけでいえば、障害かどうかな
んて関係ない。そのためには教育が一番大切。
4.策定中の条例について、「特色といえる点、強調できる点」について
泉 口 氏:障害は意識によって生じるもの。障害者とは社会的障壁を感じている人全てを指す。
社会的な障壁を壊すという視点が重要。
石 川 氏:障害者がいる職場はやさしい雰囲気になる。これを広げていく。
野 々 氏:条例には医療、保健分野で家族支援の視点が入っている。障害のある人だけでなく、
高齢者にも広がっていけばよい。共に学び、共に育ち合うことで共感する力が生まれ
る。
山 本 氏:前文の案には、一人一人が多様性を認め合い尊重することが謳われている。条例が
私たちのあり方をかえるきっかけになれば良い。知らないことについては冷たくなっ
てしまう。
「一人一人が大切である」という視点を強調して条例策定の検討がなされて
いる。
5.終わりに
長谷川副委員長:最後に、市民や関係者の皆様に伝えたいことなど、条例策定に向けて一言ず
つお願いしたい。
泉 口 氏: どんな人も安心して暮らせるような立川にしていきたい。
石 川 氏:さまざまな場面で困ったことを聞ける窓口をつくる、総合的な相談窓口について条
例に盛り込んでほしい。一歩踏み込んで企業側が耳を傾ける場をつくる。
野 々 氏: 障害のある人はこれからの社会の水先案内人。条例を実効性のあるものにしてい
きたい。
山 本 氏:他の委員がどのような発言をするのかとても勉強になっている。委員一人一人の側
面が活かせる委員会。これが他の場面にもつながる条例になればよい。障害のある人
が暮らしやすい街は誰でも暮らしやすい街になる。これをきっかけとして、自立とは
何か、皆で考えるきっかけになれば良い。
【長谷川副委員長がまとめる】
立川市の条例策定員会で、もっとも重視しているのは、障害のある人もない人にとっ
てもともに暮らしやすい街にするためにはどうしたらよいか、という視点。私は、こ
の条例を一人一人が自分の問題なんだと考えることが大切だと考える。
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