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13.5 無向の閉弦
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13.5 無向の閉弦
この問題は,問題 12.12 の閉弦版にあたる.σ ∈ [0, 2π] の閉弦 X µ (τ, σ) において τ を指定すると,時空におけるパ
ラメーター付けされた閉曲線が与えられる.弦の向きとは,この曲線において σ が増加する向きを意味する.
(a) 上述と同じ τ の下で,閉弦 X µ (τ, 2π − σ) を考える.この第 2 の弦は,元の第 1 の弦とどのように関係づけら
れるか? それぞれの向きはどうなるか?荒くスケッチを描き,元の弦を実線で,第 2 の弦を破線で示せ.
■解答 σ=0
σ ′ = 2π − σ
=0
図 13.1 互いに逆向きの閉弦
ここで,弦座標演算子に対して次のような変換作用を持つ反転演算子 Ω を導入する.
ΩX I (τ, σ)Ω−1 = X I (τ, 2π − σ)
(1)
そして更に,次のように宣言する.
−1
Ωx−
= x−
0Ω
0,
Ωp+ Ω−1 = p+
(2)
(b) 閉弦の振動子展開 (13.24) を用いて,以下を計算せよ.
ΩxI0 Ω−1 ,
Ωα0I Ω−1 ,
ΩαnI Ω−1 ,
ΩαIn Ω−1 ,
■解答 µ
X (τ, σ) =
xµ0
+
√
√
2α′ α0µ τ
+i
)
α′ ∑ e−inτ ( µ inσ
+ αµn e−inσ ,
αn e
2
n
(13.24)
n̸=0
であり,ΩX I (τ, σ)Ω−1 = X I (τ, 2π − σ) であるので,この両辺の成分を式 (13.24) を使って比較すると,
左辺 =ΩX I (τ, σ)Ω−1
=ΩxI0 Ω−1
+
√
2α′ Ωα0I Ω−1 τ
√
+i
)
α′ ∑ e−inτ ( I −1 inσ
Ωαn Ω e
+ ΩαIn Ω−1 e−inσ ,
2
n
n̸=0
2
であり,右辺は,
右辺
=xI0
+
=xI0 +
√
√
√
2α′ α0I τ
+i
√
2α′ α0I τ + i
)
α′ ∑ e−inτ ( I in(2π−σ)
αn e
+ αIn e−in(2π−σ)
2
n
n̸=0
)
α′ ∑ e−inτ ( I inσ
αn e
+ αnI e−inσ
2
n
n̸=0
となるので,両辺を比較すると,
ΩxI0 Ω−1 = xI0
Ωα0I Ω−1 = α0I
ΩαnI Ω−1 = αIn
ΩαIn Ω−1 = αnI
が得られる.
(c) ΩX − (τ, σ)Ω−1 = X − (τ, 2π − σ) を示せ.ΩX + (τ, σ)Ω−1 = X + (τ, 2π − σ) なので,式 (1) は実際には,すべ
ての弦座標に関して成立する.閉弦のハミルトニアン H は,向きの反転の下で不変すなわち ΩHΩ−1 = H な
ので,向きの反転は閉弦理論が持つ対称変換である.これが本当であることを説明せよ.
■解答 まず,閉弦のすべての座標について同じ形の制約条件が成り立つことより,+ 成分も − 成分も I 成分と同じ形
をしているので,
−
X (τ, σ) =
x−
0
+
√
√
2α′ α0− τ
+i
)
α′ ∑ e−inτ ( − inσ
−inσ
,
αn e
+ α−
ne
2
n
n̸=0
が成り立つ.これより,
−
ΩX (τ, σ)Ω
−1
=
−1
Ωx−
0Ω
+
√
√
2α′ Ωα0− Ω−1 τ
+i
)
α′ ∑ e−inτ ( − −1 inσ
−1 −inσ
e
Ωαn Ω e
+ Ωα−
nΩ
2
n
n̸=0
が成り立つわけであるが,いま,
√
であるので,Ω
2α′ α−
n =
√
2 ⊥
L ,
p+ n
2α′ αn− =
2 ⊥
L
p+ n
(13.40)
1 −1
⊥
−1
Ω ,ΩLn Ω−1 および Ω L⊥
を計算すると,まず,
nΩ
+
p
(
)−1 ( + )−1
1
1
−1
= (p+ )−1 = (Ωp+ Ω−1 )−1 = Ω−1
p
(Ω) = Ω−1 + Ω−1
+
p
p
より,
Ω−1
1 −1
1
Ω = +
p+
p
が成り立つ.次に,

⊥
ΩLn Ω−1

∑
1
1∑
1∑ I I
= Ω
αIp αIn−p  Ω−1 =
ΩαIp Ω−1 ΩαIn−p Ω−1 =
αp αn−p = L⊥
n
2
2
2
p∈Z
より,
p∈Z
⊥
ΩLn Ω−1 = L⊥
n
p∈Z
13.5 無向の閉弦
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が成り立つ.すると,対称性より,
⊥
−1
ΩL⊥
= Ln
nΩ
も成り立つ.これより,
ΩX − (τ, σ)Ω−1
√
)
α′ ∑ e−inτ ( − −1 inσ
−1 −inσ
Ωαn Ω e
+ Ωα−
e
nΩ
2
n
n̸=0
( √
)
√
′
′
∑ e−inτ
√
α
α
′ − −1 τ + i
Ω
α− Ω−1 einσ + Ω
α− Ω−1 e−inσ
=x−
0 + Ω 2α α0 Ω
n
2 n
2 n
n̸=0
)
∑ e−inτ ( 1
2
1 ⊥ −1 −inσ
−
⊥ −1
⊥ −1 inσ
=x0 + Ω + L0 Ω τ + i
Ω + Ln Ω e
+ Ω + Ln Ω e
p
n
p
p
n̸=0
(
)
∑ e−inτ
2 −1 ⊥ −1
1 −1 ⊥ −1 inσ
1 −1 ⊥ −1 −inσ
=x−
+
Ω
Ω
ΩL
Ω
τ
+
i
Ω
Ω
ΩL
Ω
e
+
Ω
Ω
ΩL
Ω
e
n
0
n
0
p+
n
p+
p+
n̸=0
)
∑ e−inτ ( 1 ⊥
1 ⊥ −inσ
2 ⊥
−
inσ
L e
+ + Ln e
=x0 + + L0 τ + i
p
n
p+ n
p
n̸=0
(√
)
√
′
′
∑ e−inτ
√
α
α
−
−
−
inσ
−
−inσ
α e
+
α e
=x0 + 2α′ α0 τ + i
n
2 n
2 n
n̸=0
√
)
√
α′ ∑ e−inτ ( − −in(2π−σ)
−
−
=x0 + 2α′ α0 τ + i
αn e
+ αn− ein(2π−σ)
2
n
n̸=0
√
)
√
α′ ∑ e−inτ ( − in(2π−σ)
− −in(2π−σ)
′ α− τ + i
2α
α
e
+
α
e
=x−
+
n
n
0
0
2
n
−1
=Ωx−
0Ω
+
√
2α′ Ωα0− Ω−1 τ
+i
n̸=0
−
=X (τ, 2π − σ)
なので,
ΩX − (τ, σ)Ω−1 = X − (τ, 2π − σ)
が示せた.
また,X + (τ, σ) = α′ p+ τ であるので,
ΩX + (τ, σ)Ω−1 = α′ Ωp+ Ω−1 τ = α′ p+ τ = X + (τ, σ) = X + (τ, 2π − σ)
が成り立つ.
いま,閉弦のハミルトニアンは式 (13.49) より,
⊥
H = L⊥
0 + L0 − 2
なので,
⊥
⊥
−1
ΩHΩ−1 = ΩL⊥
+ ΩL0 Ω−1 − 2 = L0 + L⊥
0 −2=H
0Ω
が成り立つので,向きの反転で不変である.
(d) 基底状態が反転不変であると仮定せよ.N ⊥ ≤ 2 の閉弦状態のリストを書き,それらの反転固有値を与えよ.も
しあなたが “無向の” 閉弦の理論を構築する使命を受けたとすると,どの状態を棄てる必要があるか? 無向の
閉弦理論における質量のない場は何か?
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■解答 N ⊥ ≤ 2 の閉弦状態のリストは,
N⊥ = 0
|p+ , p⃗T ⟩
†
†
†
†
N⊥ = 1
aI1 aJ1 |p+ , p⃗T ⟩
N⊥ = 2
aI2 aJ2 |p+ , p⃗T ⟩
†
†
†
†
+
⃗T ⟩
aI2 aJ1 aK
1 |p , p
†
†
†
+
⃗T ⟩
aI1 aJ1 aK
2 |p , p
†
†
†
L
+
⃗T ⟩
aI1 aJ1 aK
1 a1 |p , p
である.ここで,基底状態が反転不変であるとする.すなわち,
Ω|p+ , p⃗T ⟩ = Ω−1 |p+ , p⃗T ⟩ = |p+ , p⃗T ⟩
とする.定義より,N ⊥ = 0 のときは基底状態で,|p+ , p
⃗T ⟩ の反転固有値は 1 である.また,N ⊥ = n のときは,
†
†
†
†
ΩaIn aJn |p+ , p⃗T ⟩ =ΩaIn ΩΩ−1 aJn ΩΩ−1 |p+ , p⃗T ⟩
1 I
1
=Ω √ α−n
Ω−1 Ω √ αJ−n Ω−1 Ω|p+ , p⃗T ⟩
n
n
1 I 1 J
= √ α−n √ α−n |p+ , p⃗T ⟩
n
n
†
†
†
†
=aIn aJn |p+ , p⃗T ⟩
=aJn aIn |p+ , p⃗T ⟩
†
†
より,I = J のとき,aIn aJn |p+ , p
⃗T ⟩ の反転固有値は 1 になり,それ以外の場合は固有状態ではない.これで
n = 1 とすれば N ⊥ = 1 の場合がすべて分かったことになる.
次に,
†
†
†
†
†
†
+
−1
ΩaI2 aJ1 aK
⃗T ⟩ =ΩaI2 Ω−1 ΩaJ1 Ω−1 ΩaK
Ω|p+ , p⃗T ⟩
1 |p , p
1 Ω
1 I −1 J −1 K −1
Ω Ωα−1 Ω Ωα−1 Ω Ω|p+ , p⃗T ⟩
=Ω α−2
2
1
J
K
= αI−2 α−1
α−1
|p+ , p⃗T ⟩
2
†
†
†
+
=aI2 aJ1 aK
⃗T ⟩
1 |p , p
†
であるが,元の状態に含まれる生成演算子 aI2 は最後の状態のどこにも表れないので,この状態は固有状態では
†
†
†
+
ない.対称性より,aI1 aJ1 aK
⃗T ⟩ も固有状態ではない.
2 |p , p
最後に,
†
†
†
†
†
†
†
†
L
+
−1
−1
ΩaI1 aJ1 aK
⃗T ⟩ =ΩaI1 Ω−1 ΩaJ1 Ω−1 ΩaK
ΩaL
Ω|p+ , p⃗T ⟩
1 a1 |p , p
1 Ω
1 Ω
I
J
−1
−1
=Ωα−1
Ω−1 Ωα−1
Ω−1 ΩαK
ΩαL
Ω|p+ , p⃗T ⟩
−1 Ω
−1 Ω
K L
=αI−1 αJ−1 α−1
α−1 |p+ , p⃗T ⟩
L +
=aI1 aJ1 aK
⃗T ⟩
1 a1 |p , p
I J +
=a1K aL
⃗T ⟩
1 a1 a1 |p , p
より,{I, J} = {K, L} のときに限り反転固有値を持ち,かつ,それが 1 となる.以上より,無向の閉弦の理論を
†
†
†
†
†
†
†
†
+
+
⃗T ⟩, aI1 aJ1 aK
⃗T ⟩ および,aIn aJn |p+ , p⃗T ⟩
作るために捨てる必要がある “基本” 状態は,aI2 aJ1 aK
1 |p , p
2 |p , p
†
†
†
†
L
+
⃗T ⟩ のうち,{I, J} ̸= {K, L} のものである.
のうち,I ̸= J のものと,aI1 aJ1 aK
1 a1 |p , p