Gard Alert 非常設備用の適切な燃料を使用していますか こちらは、英文記事「Is the fuel in your emergency equipment fit for the purpose?」(2016 年 5 月 4 日付)の 和訳です。 次の様な状況を想像してみてください。「真冬の北 大西洋、凍えるほどの寒さの荒波の中、あるタンカ ーで緊急事態が発生し、本船を放棄する必要に迫ら れた。船員らが乗り込んだ救命艇が船舶から離れよ うとしたその瞬間、救命艇のエンジンが突然停止し てしまった」 幸いこれはフィクションですが、実際に起こっても全くおかしくはありません。ほとんどの運航者や船 舶は、燃料の品質を管理・検査するための手順を備えていますが、非常用発電機、非常用消火ポンプ、 救命設備などの非常設備専用の燃料については、その対象から外れてしまっていることがよくありま す。また、船舶による大気汚染に関する規制要件が厳格化されたことも、船上での燃料管理プロセスを さらに複雑なものにする一因となっています。 船舶の非常設備には定期検査が義務付けられおり、実際、ほとんどの船舶はそのための手順とシステム を備えています。しかし、Gard の経験上、非常設備の検査手順は順守されていても、その燃料にはあま り注意が払われていない(あるいは、全く払われていない)ケースがあります。また、燃料試験会社に よると、非常設備の燃料貯蔵タンクから採取されたサンプルが提出されること自体が極めて少なく、そ の少ないサンプルを対象とした試験の結果も、本来の用途に合っていない不適切な燃料が使用されてい ることを示すことが多いようです。 非常設備の燃料油等級 排出規制海域(ECA)と域内港に加えて、世界的にも(MARPOL 条約附属書 VI 等)舶用燃料に対する規制 要件が厳格化されたことで、石油精製業界の需要動向も変化しています。精製過程で変更が必要になっ たことと、添加剤や燃料改良剤の使用が増加したことで、留出燃料油の低温流動性、長期保存性という 非常設備の安全稼動に不可欠な 2 つの要素に悪影響が出る可能性があります。 ISO 8217 等の国際的な燃料規格は、船舶で使用される留出燃料油の等級を規定していますが、非常設備 用の燃料については国際的に義務化された規格がありません。Marine Gas Oil(DMA 等級)は船舶にお いて様々な用途で使用されており、非常設備の貯蔵タンクの充填用にも使用される場合があります。し かし、この DMA 等級には、非常設備用燃料として重要な特性である長期保存性と低温流動性に関係する 仕様が定められていません。そうした特性の一つに曇り点(ワックス等の固形物質が燃料から分離し始 める温度)があります。分離した固形物質がフィルターや燃料配管の目詰まりを引き起こし、それが燃 料の欠乏やエンジン停止に至る可能性があるのです。 ISO 8217 の燃料規格では、DMX 等級も定められていますが、この等級の燃料は、主に非常設備、船外や 厳寒条件下で稼動する発電機に使用するためのものです。DMX 等級の留出燃料油は、流動点(燃料の持 続的に流動可能な最低温度)が特に低く、長期保存に適しており、ISO 8217 規格の中で曇り点の仕様が 定められている唯一の等級です。 推奨事項 実際の緊急事態において非常設備の機能が停止することがないように、以下の予防措置を講じられるこ とを強く推奨いたします。 購入担当者は運航のシーズンと運航パターンを慎重に検討すること。また、購入の際は、適切な低 温流動性を備えた燃料を指定すること。DMX 等級の燃料を強くお勧めします。 非常設備用の燃料は、給油時と定期間隔(最低年 2 回)でサンプルの採取・検査を行うこと。 ほとんどの留出燃料油(DMX 等級以外)は経年劣化するため、運航者は、非常設備用燃料を管理 (燃料の使用期限も管理項目に含める)するためのシステムを備えること。 長時間の負荷試運転を定期的に実施すること。また、貯蔵タンク内の非常設備用燃料の交換間隔に ついても検討すること。 関係する船員や燃料購入担当者に対して、意識向上を図り、燃料管理訓練を実施する必要があるか 検討すること。 本情報は一般的な情報提供のみを目的としています。発行時において提供する情報の正確性および品質の保証には細心の注意を払っていますが、Gard は本情報に依拠することによ って生じるいかなる種類の損失または損害に対して一切の責任を負いません。 本情報は日本のメンバー、クライアントおよびその他の利害関係者に対するサービスの一環として、ガードジャパン株式会社により英文から和文に翻訳されております。翻訳の正確 性については十分な注意をしておりますが、翻訳された和文は参考上のものであり、すべての点において原文である英文の完全な翻訳であることを証するものではありません。した がって、ガードジャパン株式会社は、原文との内容の不一致については、一切責任を負いません。翻訳文についてご不明な点などありましたらガードジャパン株式会社までご連絡く ださい。 © Gard AS Page 2 of 2
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