当院での排尿ケアチームの活動と理学療法士の関わり

特 集
排尿自立指導料 の 実際
1
2
3
○よい例
排尿環境が整い排尿できるようになると,大
に伝わり,末梢神経を介して膀胱筋の収縮と内・
外尿道括約筋の弛緩が起こり,尿が排出されま
陰部神経
(体性運動神経)
300∼
500 mL
最大尿意
骨盤神経
(副交感神経)
す。残尿がある場合は腹圧によって排出されます
(図 1
5)
。
横隔膜
神経の活動性が低下し,排尿が困難になると低
内臓
活動性神経因性膀胱となることがあり,症状とし
(ー)
内尿道括約筋
外尿道括約筋
(+)
(+)
(+)
(+)
(+)
(+)
排尿反射により
排尿筋収縮,
内尿道括約筋が
弛緩しようとする
(ー)
(+)
(+)
残尿は腹圧によって
排泄する
排尿期
正常な排尿のメカニズム
B 骨盤底筋訓練の姿勢
速く締める運動
身体の力を抜いてリラックスする
肛門,腟のまわりの筋肉を締める
四つんばい
身体の力を抜いてリラックスする
肛門,腟のまわりの筋肉を
ゆっくりと締めつけ,
約 5 秒間保持する
机を支えにして
あおむけで
ゆっくり
速く締める運動,ゆっくり締める運動をそれぞれ 5 回繰り返すことを 1 セットと
して,1 日 10 セットおこなうことを目標にする
図2
84 骨盤底筋訓練(文献 3)を参考に作成)
2017/1 Vol.5 No.1
これらの症状に対して,快適に排尿をおこなう
には安定した座位(
図3
尿道
)が必要です。 1 膀胱に
図3
(ー)
(ー)
身体構造と排尿姿勢の関係性
間位になることが,より適しています。 1 と 2 を
意識することで自然な腹圧がかかり,膀胱の収縮
腹圧を利用して排尿を促すことにつながります。
が弱くなっていても無理にいきむことなく尿を排
意欲も,良姿勢の保持に大きく関わるといわれて
出できます。また,上部体幹を伸展させることで
おり,排尿に対する意欲を高めることも大切です。
横隔膜が上方に広がりやすく,腹膜で連結されて
また,膀胱は精神的作用を受けやすい臓器といわ
いる内臓も上方へ引き上げられます。それにより,
れているため,環境の設定により安心感を提供す
膀胱が押し潰され尿漏れが起きることを防ぎます。
ることも介入の 1 つです。自己導尿を速やかにお
座位姿勢が保ちにくい場合は,排尿時に前方に支
こなえるように座位保持能力や手指巧緻性の向上
持物を置き,体幹を伸展位に保つだけでも重力と
を促すことも必要です。
当院での排尿ケアチームの活動と理学療法士の関わり
はやく
ゆっくり締める運動
膀胱
の重みを尿排出に活かせるように骨盤は前後傾中
膀胱壁収縮
A 骨盤底筋訓練の基本動作
内臓
ては排尿困難・尿閉・溢流性尿失禁があります。
対して尿道がストレートになること, 2 上部体幹
5
蓄尿期
図1
× わるい例
脳からの排尿命令刺激が脊髄を通って排尿中枢
排尿反射抑制
により蓄尿継続
蓄尿継続
下腹神経
(交感神経)
尿排出のメカニズムとアプローチ方法
4
抑制シグナル
150∼250 mL
初発尿意
陰部神経
(体性知覚神経)
排尿ケアチームの理学療法士として-実態と苦悩-
10
座位で
排尿ケアチームを設置する前は,泌尿器科医と
おこなっていますが,担当の看護師,理学療法
皮膚・排泄ケア認定看護師が,個別に排尿障害患
士,作業療法士が参加することもあります。回診
者に対応していました。排尿ケアチームを立ち上
後はミーティングを開き,回診中に挙がった課題
げてからは,月に 2 回の回診をおこなっています。
について議論したり,尿道カテーテル留置関連の
回診では,尿道カテーテル留置中・抜去後の患者
インシデントについて対策を練ったりしています
について情報を共有し,下部尿路機能障害の改善
(
図4
)
。また,病院スタッフを対象としたウロ
に向けた具体的なアプローチ方法を検討していま
バッグの扱い方などの勉強会も定期的に開催して
す。基本的に回診は排尿ケアチームのメンバーで
います(
図5
)
。
2017/1 Vol.5 No.1 85