年 頭 所 感 - 関東東北産業保安監督部

年 頭 所 感
経済産業省
関東東北産業保安監督部長
桑山
広司
新年あけましておめでとうございます。
平成29年の年頭にあたりまして、謹んで新春の御挨拶を申し上げます。
皆様におかれましては、平素より産業保安行政並びに産業保安確保に対して格別の御理
解と御協力をいただき、心より御礼申し上げます。
昨年は、4月の熊本地震に始まり、函館、鳥取、福島、茨城と大規模な地震が発生する
とともに、多くの台風が上陸するなど自然災害が激甚化し、加えて、首都圏の大停電や博
多駅前の陥没など、これまでにないインフラ事故も発生いたしました。災害の要因は構造
的に変化しており、防災・減災対策は新たな局面にあると認識しております。
当部管内では、各分野で以下のような状況でありました。
電気関係では、昨年度の管内事故件数は156件であり、そのうち、供給支障を引き起
こす「波及事故」は、115件でした。また、感電・アーク等による死傷事故は19件で
高止まりの傾向にありますが、死亡事故はゼロでした。特に、昨年は、埼玉県新座市にお
いて発生した地中送電ケーブルの火災事故による都内大規模停電など、思わぬところで思
わぬ事象の事故・自然災害が多数発生しました。
都市ガス関係では、昨年1年間の管内事故件数は234件であり、内訳は、消費段階の
事故が127件、供給段階の事故が106件でした。また、事故に伴う死傷者数は9名で
あり、一昨年の15名より減少するとともに、死亡者数もゼロでした。昨年は、幸いにも、
特に大きな事故は発生せず、負傷事故の主な内容はオーブン等の着火時の火傷や導管損傷
による作業員や他工事業者の火傷のみでした。
高圧ガス関係では、昨年1年間の管内事故件数は310件であり、一昨年に比べ12件
増加しました。内訳は、噴出・漏えいが192件、盗難・喪失が98件と多数を占めまし
た。また、事故に伴う死傷者数は10名であり、一昨年に比べ16名減少したものの、残
念ながら、山梨県甲府市の製造工場における酸欠事故や神奈川県横須賀市で発生したガス
充填工場での爆発事故などの死亡事故が発生しました。
火薬類関係では、昨年1年間の管内事故件数は18件であり、内訳は産業火薬が2件、
煙火関係が16件でした。また、事故に伴う重軽傷者は8名であり、一昨年の16名から
半減しましたが、重軽傷者のうち、煙火工場で作業していた1名が1週間後に死亡すると
いう残念な事態となりました。
石油コンビナート関係では、昨年1年間の管内事故件数は111件であり、一昨年に比
べ15件減少しました。内訳は、出火が60件、漏えいが45件と多数を占めました。ま
た、事故に伴う死傷者は10名であり、一昨年に比べ2名増加しましたが、死亡者数ゼロ
でした。特に昨年は、製油所における配管作業中の硫化水素吸引や製鉄所における洗浄作
業中の可燃性洗浄剤の噴霧による火災時の火傷などの重傷事故が発生しました。
液化石油ガス関係では、昨年1年間の管内の事故件数は56件であり、そのうち人的被
害が発生した事故は13件、負傷者数では重傷3名、軽傷(症)17名の計20名となり、
件数、負傷者数ともに昨年よりも増加しましたが、死亡事故はゼロでした。中でも、CO
中毒事故が3件発生(軽症者6名)しており、特に、従来からの課題とされる業務用厨房
での換気不足を主な原因とする事故が3件中2件発生しています。
鉱山災害では、残念ながら、平成25年から4年連続して死亡災害が発生するとともに、
昨年発生した災害により7名の罹災者が生じており、第12次鉱業労働災害防止計画の
「鉱山災害を撲滅する」という目標は達成できませんでした。罹災者数の推移を見ると平
成26年4名、平成27年5名であり、罹災者数が増加している傾向が見受けられます。
発生状況を顧みると「取扱中の器材鉱物等のため」「墜落」といった近年頻発している災
害が複数発生しているとともに、全国的に死亡災害の事由としてあげられることの多い
「運搬装置のため(車両系鉱山機械)」による災害も発生しています。
鉱害防止においては、報告災害が1件発生しました。坑廃水処理施設において逆中和設
備の一部が破損し、pH値の低い処理水が河川に流出したものであり、原因は大雨に起因
していますが、日頃からの点検不足がこの災害を招いています。
これら事故等に対して、原因の究明、再発防止対策の検討・指導などのほか、広く関係
機関や類似施設等への注意喚起や情報提供等を行ってまいりました。今年も事故の未然防
止に向けた取組みをより一層強化し、特に、人命・公衆保安に関わる事案には迅速な対応
に努めてまいります。
また、当部としては、発生が危惧されております首都直下巨大地震への対応強化が喫緊
の課題であると強く認識しており、東日本大震災や熊本地震での教訓を活かし、より迅速
かつ的確に行動が取れるよう、いろいろな事態を想定した訓練を行うとともに、日頃より、
関係自治体や事業者の方々と情報交換等を行い、いざという時にしっかりと連携を取れる
ように、積極的に関係構築を行って参りたいと考えております。
今年は、昨年4月からの電力小売自由化に引き続き、4月からガスの小売自由化が始ま
り、いよいよ総合エネルギー市場が創出されることとなります。また、太陽電池発電、風
力発電等の再生可能エネルギーの導入が一段と拡大することが予想されます。このよう
に、我が国のエネルギー環境は、大きな変革期を迎えており、電力・ガス・火薬・鉱山等
各産業分野における環境の変化に迅速・柔軟かつ効果的、効率的に対応するため、現在、
経済産業省では、第4次産業革命の波に産業保安の面からもしっかりと乗れるように、
IoT、人工知能、ビックデータを活用した「産業保安のスマート化」のための制度的な検
討に取り組んでおります。これによって、自主保安の高度化及び新技術・新市場に円滑に
対応する規制、更には、規制に係るコストの最適化が達成されるのを目指しております。
常日頃から、保安の確保を担う方々は、高い保安意識を維持しつつ、保安技術の普及・
向上、そして保安教育の推進に努められ、率先垂範して事故や災害の防止に地道な努力
を積み重ねておられます。経済産業省といたしましては、永年にわたりそのような活動に
取り組み、保安の確保、災害や事故の防止において卓越した能力と指導力を発揮されてこ
られた方々を表彰させていただいております。昨年は、経済産業大臣より、当管内から個
人30名、14事業者を、私、監督部長より、個人74名、28事業者を表彰させていた
だきました。今年も保安確保に大きな貢献をされた方々を表彰させていただき、家庭、職
場、業界全体で保安に向けたモチベーションを高めていきたいと考えております。
今年は酉年です。「酉」はお酒を醸す麹が壺の中で発酵する様を表した象形文字とのこ
とで、それ故、
「酒」は元より、
「お酌」、
「酔う」、
「醒める」、
「焼酎」等々、お酒に関連す
る漢字に使われているそうです。今年は是非、この「酉」に因んで、いろいろなことが成
熟して果実が得られる年となればと思っております。本年も保安の確保と、皆様方の更な
る御発展、御健勝を祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。