山梨大学医学会創立 30 周年,山梨医科学雑誌刊行

31
山梨医科学誌 31(2),31 ∼ 32,2016
記念寄稿
山梨大学医学会創立 30 周年,山梨医科学雑誌刊行
30 周年をお祝いして
前 田 秀一郎
元医学会長,前山梨大学学長
山梨県総合理工学研究機構総長
山梨大学医学会創立 30 周年,並びに山梨医
ます。ところで「地域を活性化する」ことと
科学雑誌刊行 30 周年をお祝いし,一言挨拶申
「特定の分野で世界ないし全国的な教育研究を
し上げます。
推進する」ことは,決して二者択一できること
山梨医科学雑誌(Yamanashi Medical Journal,
ではなく,本学が地域社会の繁栄に寄与する大
YMJ)は,山梨大学医学会を発行母体として,
学であるためには,先ず世界最高水準の研究成
山梨医科大学(現,山梨大学医学部)創設期
果を生み出し,その成果を地域貢献に活用しな
の 1986 年に,山梨大学医師会のご協力,並び
ければなりません。このため医学部においては,
に賛助会員のご支援を戴いて刊行されたという
若い優秀な医学・看護学研究者の養成に努める
来歴をもちます。この年は,山梨医科大学に大
必要があります。幸い,本学には,世界の医学
学院医学研究科博士課程が設置された年でもあ
研究を牽引する優れた研究力をもつ多数の教員
り,新設医科大学の創設期に,より良い教育・
方が在職しておられ,若い優秀な研究者を養成
研究・診療環境の整備に尽力された教職員の皆
する環境は整っています。これら教員方や学
さまのご労苦が偲ばれます。
部・大学院学生諸君の教育・研究情報交換の場
山梨県唯一の国立大学である本学の重要な使
として,YMJ の存在意義は今後益々高まるこ
命の一つは,地域と連携し,地域の抱える課題
とと推察します。このような観点からも,多年
を国際的に高いレベルで探究し,地域のみなら
YMJ 論文の質の向上に尽力され,2014 年には
ず,全国,ひいては世界の課題解決にも応用で
YMJ 電子版ホームページを開設されて,学外
きる優れた研究成果を挙げることによって,社
への情報発信にも努めてこられた,歴代の編集
会の持続的な繁栄に寄与することと思います。
担当の先生方をはじめ関係各位に心から敬意を
今から 30 年前の山梨医科大学の創設期におい
表します。さらに,山梨大学医学会は,YMJ
て,この使命を果たそうという皆さまの強い御
の発行の他にも本学の若手研究者の表彰,山梨
意志が,山梨大学医学会の創設,並びに YMJ
県医師会との協働による山梨県医師会優秀賞に
の刊行に結晶したものと拝察します。
よる研究者の表彰や教授就任講演の実施などの
学校教育法の第八十三条に,
「大学は,その
種々の事業により,本学,並びに山梨県の医学,
目的を実現するための教育研究を行い,その成
医療の進展に貢献して来られました。このよう
果を広く社会に提供することにより,社会の発
な実績を築いてこられた医学会歴代の役員方を
展に寄与するものとする」と記載されているこ
はじめ関係各位に心から御礼申し上げます。
とからも,教育,研究,社会貢献は,全ての大
山梨大学医学会,並びに山梨医科学雑誌が,
学が果たさなければならない使命と認識され
本学医学部の「病める人の苦痛を自らの苦痛と
32
前 田 秀一郎
感じることができ,生涯にわたって医学的知識,
目指します」という「教育目標」の達成,並び
技術の修得に努め,地域社会・国際社会の保健
に山梨県地域医療のさらなる充実,高度化のた
医療・福祉に貢献する人材および疾患の原因解
めに益々貢献されることを心から期待申し上
明や治療法の開発に寄与できる研究者の養成を
げ,簡単ですがお祝いの言葉とさせて戴きます。