月刊 CDCガイドラインニュース <170> これまでノロウイルスの流 行 は Ⅱ が 主 流 で あ っ た。 し か し、 新 規 遺 伝 子 型 Ⅱ の流行がみられるようになり、 ノロウイルス胃腸炎の大流行 が心配されている。それゆえ、 手指衛生が大変重要な感染対 策 と な る が、 現 在 は ノ ロ ウ イ ルス対策としては石けんと流 水による手洗いが推奨されて い る。 こ れ は ア ル コ ー ル が ノ ロウイルスに効果がないから と い う こ と で は な い。 ア ル コ ールがヒトノロウイルスに効 果があるかどうかが分からな い か ら、 念 の た め に 石 け ん と 流水で洗い流そうというので あ る。 ヒ ト ノ ロ ウ イ ル ス の 培 養システムが確立されていな い か ら、 ア ル コ ー ル の 有 効 性 を確かめることができないの で あ る。 培 養 可 能 な マ ウ ス ノ ロウイルスはエタノールに感 受性があることは分かってい る の で、 ヒ ト ノ ロ ウ イ ル ス が 培 養 に 成 功 す れ ば、 ア ル コ ー ルがノロウイルス対策として .4 G .17 第一七〇回 ノロウイルスの培養 ムにおいては組織血液型抗原 リセプターが重要であること を 示 し て い る。 つ 目 は、 エ ス テ ス ら の 研 究 室 が 最 近、 ヒ ト腸管上皮細胞の感染性モデ ル を 開 発 し た こ と で あ る。 そ れは研究室内では再現に成功 し た と の こ と で あ っ た。 こ の システムの詳細はまだ公開さ れ て い な い が、 別 の 研 究 室 に お い て も、 こ れ ら の 結 果 を 再 現できるかが研究途中である。 確固たる細胞培養システム は 数 多 く の 進 歩 を 可 能 す る。 そ れ に よ っ て、 診 断 的 お よ び 感 染 性 ア ッ セ イ が 向 上 し、 防 御についての現在の情報の相 互 関 連 性 が 確 証 さ れ、 ワ ク チ ンの発達が促進されるであろ う。 ●今月の矢野編集長 先日、ある研究会の世話人会で老眼鏡の話 に花が咲いてしまった。10ヵ月ごとに眼鏡を 買い替えている著名な先生がいた。 強く推奨される日が来るのか も し れ な い。 そ れ で は、 ヒ ト ノロウイルスの培養システム はどの程度進歩してきている のであろうか? これについて、 「ノロウイルスの世界的な負荷 およびワクチン開発の展望」 1 B や条件などを用いてノロウイ ル ス の 培 養 を 試 み て き た が、 不 成 功 に 終 わ っ た。 過 去 に は 三 次 元 細 胞 培 養 シ ス テ ム( プ レート上で細胞を単層培養す る 二 次 元 培 養 に 対 し て、 縦 方 向の厚みを持たせて細胞を培 養する手法を三次元培養とい う)が成功したという報告も あ っ た が、 ほ か の 研 究 室 で 再 現 で き な い こ と か ら、 そ の 報 告には懐疑的な空気が漂って いる。 そ の よ う な こ と か ら、 細 胞 培養システムにおける つの グループの研究での最近の進 展が熱狂的な状況となってき た。 つ 目 は、 ジ ョ ー ン ズ ら が特定のヒト 細胞株で Ⅱ シ ド ニ ー・ ウ イ ル ス の 複 製 に 成 功 し た こ と で あ る。 興 味 深 い こ と に、 0.22 μ のフィ ルタで濾過したウイルスが組 織血液型抗原を発現した加熱 殺菌した腸内細菌を加えるこ と に よ っ て、 複 製 能 が 復 活 し た。 こ の こ と は、 こ の シ ス テ G 編 集 長 / 矢 野 邦 夫 [ http://www.cdc.gov/norovirus/downloads/global-bur]の「ヒトノロ den-report.pdf ウイルスの細胞培養システム の進歩」に記載があったので 紹介 す る 。 ヒトノロウイルスでの確固 たる細胞培養システムが存在 し な い こ と が、 多 く の 分 野 の 研究の基盤的技術の発展を阻 ん で き た。 そ の 分 野 に は 自 然 免疫もしくはワクチン誘導免 疫によって得られる防御的中 和抗体の測定のためのアッセ イ の 発 展、 お よ び、 消 毒 薬 や 洗浄剤の有効性を測定するた めの感染性の評価の発展が含 ま れ る。 最 近 の 数 十 年 以 上 に わ た っ て、 数 多 く の 研 究 室 が 異 な る 種 類 の 細 胞 株、 培 養 法 プロフィール 2 m 2 やの・くにお 浜松医療センター 副院長 兼 感染症内科長 「ねころんで読める CDC ガイドライン ( メ デ ィ カ 出 版 )」 シリーズ等、CDC 関連の編・訳書多数。 2月号 .4 C D C ガ イ ド ラ イ ン の 最 新 情 報 を ど こ よ り も 早 く お 届 け し ま す ! G INFECTION CONTROL 2016 vol.25 no.2(169)67
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