月刊CDCガイドラインニュース25巻2号

月刊 CDCガイドラインニュース <170>
これまでノロウイルスの流
行 は Ⅱ が 主 流 で あ っ た。
し か し、 新 規 遺 伝 子 型 Ⅱ
の流行がみられるようになり、
ノロウイルス胃腸炎の大流行
が心配されている。それゆえ、
手指衛生が大変重要な感染対
策 と な る が、 現 在 は ノ ロ ウ イ
ルス対策としては石けんと流
水による手洗いが推奨されて
い る。 こ れ は ア ル コ ー ル が ノ
ロウイルスに効果がないから
と い う こ と で は な い。 ア ル コ
ールがヒトノロウイルスに効
果があるかどうかが分からな
い か ら、 念 の た め に 石 け ん と
流水で洗い流そうというので
あ る。 ヒ ト ノ ロ ウ イ ル ス の 培
養システムが確立されていな
い か ら、 ア ル コ ー ル の 有 効 性
を確かめることができないの
で あ る。 培 養 可 能 な マ ウ ス ノ
ロウイルスはエタノールに感
受性があることは分かってい
る の で、 ヒ ト ノ ロ ウ イ ル ス が
培 養 に 成 功 す れ ば、 ア ル コ ー
ルがノロウイルス対策として
.4
G
.17
第一七〇回
ノロウイルスの培養
ムにおいては組織血液型抗原
リセプターが重要であること
を 示 し て い る。 つ 目 は、 エ
ス テ ス ら の 研 究 室 が 最 近、 ヒ
ト腸管上皮細胞の感染性モデ
ル を 開 発 し た こ と で あ る。 そ
れは研究室内では再現に成功
し た と の こ と で あ っ た。 こ の
システムの詳細はまだ公開さ
れ て い な い が、 別 の 研 究 室 に
お い て も、 こ れ ら の 結 果 を 再
現できるかが研究途中である。
確固たる細胞培養システム
は 数 多 く の 進 歩 を 可 能 す る。
そ れ に よ っ て、 診 断 的 お よ び
感 染 性 ア ッ セ イ が 向 上 し、 防
御についての現在の情報の相
互 関 連 性 が 確 証 さ れ、 ワ ク チ
ンの発達が促進されるであろ
う。
●今月の矢野編集長
先日、ある研究会の世話人会で老眼鏡の話
に花が咲いてしまった。10ヵ月ごとに眼鏡を
買い替えている著名な先生がいた。
強く推奨される日が来るのか
も し れ な い。 そ れ で は、 ヒ ト
ノロウイルスの培養システム
はどの程度進歩してきている
のであろうか? これについて、
「ノロウイルスの世界的な負荷
およびワクチン開発の展望」
1
B
や条件などを用いてノロウイ
ル ス の 培 養 を 試 み て き た が、
不 成 功 に 終 わ っ た。 過 去 に は
三 次 元 細 胞 培 養 シ ス テ ム( プ
レート上で細胞を単層培養す
る 二 次 元 培 養 に 対 し て、 縦 方
向の厚みを持たせて細胞を培
養する手法を三次元培養とい
う)が成功したという報告も
あ っ た が、 ほ か の 研 究 室 で 再
現 で き な い こ と か ら、 そ の 報
告には懐疑的な空気が漂って
いる。
そ の よ う な こ と か ら、 細 胞
培養システムにおける つの
グループの研究での最近の進
展が熱狂的な状況となってき
た。 つ 目 は、 ジ ョ ー ン ズ ら
が特定のヒト 細胞株で Ⅱ
シ ド ニ ー・ ウ イ ル ス の 複 製
に 成 功 し た こ と で あ る。 興 味
深 い こ と に、 0.22
μ のフィ
ルタで濾過したウイルスが組
織血液型抗原を発現した加熱
殺菌した腸内細菌を加えるこ
と に よ っ て、 複 製 能 が 復 活 し
た。 こ の こ と は、 こ の シ ス テ
G
編
集
長
/
矢
野
邦
夫
[ http://www.cdc.gov/norovirus/downloads/global-bur]の「ヒトノロ
den-report.pdf
ウイルスの細胞培養システム
の進歩」に記載があったので
紹介 す る 。
ヒトノロウイルスでの確固
たる細胞培養システムが存在
し な い こ と が、 多 く の 分 野 の
研究の基盤的技術の発展を阻
ん で き た。 そ の 分 野 に は 自 然
免疫もしくはワクチン誘導免
疫によって得られる防御的中
和抗体の測定のためのアッセ
イ の 発 展、 お よ び、 消 毒 薬 や
洗浄剤の有効性を測定するた
めの感染性の評価の発展が含
ま れ る。 最 近 の 数 十 年 以 上 に
わ た っ て、 数 多 く の 研 究 室 が
異 な る 種 類 の 細 胞 株、 培 養 法
プロフィール
2
m
2
やの・くにお
浜松医療センター
副院長 兼
感染症内科長
「ねころんで読める
CDC ガイドライン
( メ デ ィ カ 出 版 )」
シリーズ等、CDC
関連の編・訳書多数。
2月号
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ガ
イ
ド
ラ
イ
ン
の
最
新
情
報
を
ど
こ
よ
り
も
早
く
お
届
け
し
ま
す
!
G
INFECTION CONTROL 2016 vol.25 no.2(169)67