月刊CDCガイドラインニュース25巻4号

月刊 CDCガイドラインニュース <172>
編集長/矢野邦夫
第一七二回
妊婦のための
ジカウイルス感染症
ガイドライン
@メディカ出版
8(310)INFECTION CONTROL 2016 vol.25 no.4
CDCガイドラインの最新情報をどこよりも早くお届けします!
い。したがって、早期(妊娠
週以内)の羊水穿刺は推奨
されない。羊水での RT-PCR
の陽性結果は子宮内感染を示
唆している。
[ジカウイルス感染症と診断さ
れた妊婦の治療]
ジカウイルス感染症に有効
な抗ウイルス治療はない。治
療は補助療法であり、それに
は休息、水分、鎮痛剤および
解熱剤が含まれる。発熱はア
セトアミノフェンで治療す
る。通常、妊婦にはアスピリ
ンおよび非ステロイド系抗炎
症薬は使用しないが、これら
の薬剤はデングが除外される
までは、出血の危険性を減ら
す た め に 避 け る 必 要 が あ る。
血清もしくは羊水の検査で ジ
カウイルス感染の疑いのある
妊 婦 に は、 超 音 波 検 査 を ~
週間ごとに実施する。
3
●今月の矢野編集長
とうとう、
「ねころんで読める抗菌薬」第 3
弾が出版された。とにかく、一度、手に取っ
てみてほしい! とても不思議な本だから!
14
プロフィール
4
やの・くにお
浜松医療センター
副院長 兼
感染症内科長
「ねころんで読める
CDC ガイドライン
( メ デ ィ カ 出 版 )」
シリーズ等、CDC
関連の編・訳書多数。
4月号
[妊婦とジカウイルス]
ーのある部屋の利用」がある。
中南米を中心に、ジカウイ
ブ ラ ジ ル で の 現 在 の ア ウ ト [流行地域への旅行歴のある妊婦]
ルス感染症による小頭症が多
ブ レ イ ク で、 小 頭 症 を 合 併 し
数報告されている。ほとんど
医療従事者はすべての妊婦
て出産した新生児の数が著明
に最近の旅行歴について質問
の人は無症状であり、症状が
に増加している。ジカウイル
すべきである。妊娠中に流行
あっても軽度であるが、妊婦
スは妊娠のどの時期であって
地域に旅行した女性はジカウ
が感染すると胎児の小頭症を
も感染し、母子感染が妊娠期
イルス感染について評価する。
引き起こすことがある。ここ
が 2016
年 月に公
間 を 通 じ て 確 認 さ れ て い る。 ジカ、デング、チクングニア
で は CDC
開した「ジカウイルスのアウ
実際、小頭症の新生児でジカ
の地理学的分布および臨床症
トブレイク期間における妊婦
ウ イ ル ス が 確 認 さ れ て い る。 状は似ているので、ジカウイ
が死亡胎
の た め の 暫 定 ガ イ ド ラ イ ン 」 ジ カ ウ イ ル ス RNA
ルス感染症に一致した症状の
[ h t t p : / / w w w . c d c . g o v / 児の病理検体で検出されてい
ある患者はデングウイルスお
よびチクングニアウイルスに
mmwr/volumes/65/wr/pdfs/ るが、ジカウイルスが胎児死
]を解説する。
亡を引き起こしたかどうかは
ついても評価する。
mm6502.pdf
[ジカウイルス]
[妊婦の検査]
不明である。
[妊婦の流行地域への旅行]
ジカウイルスは蚊媒介のフ
ジカウイルスの検査は、症
妊婦はジカウイルスの流行
ラビウイルスであり、主にネ
状 の あ る 妊 婦 に 実 施 す る が、
地域に旅行することを延期す
ッタイシマカによって伝播す
発症 週間以内であれば RTる の が 望 ま し い。 も し、旅 行
、発症から 日以上経過
る。この蚊はデングウイルス
PCR
および中和抗体
す る な ら ば、蚊 に 刺 さ れ ない
す れ ば IgM
およびチクングニアウイルス
を検査する。胎児の小頭症も
よ う に 厳 重 な 対 応 を す る。ジ
も伝播できる。ジカウイルス
しくは脳内石灰化がなけれ
カウイルスを伝播する蚊は室
に感染した人の約 %が無症
ば、無症状の妊婦の検査は推
内 お よ び 屋 外 でヒト を 刺 す。
状である。症状がある場合で
奨されない。
多 く は 昼 間 に 刺 す が、全 日 を
も一般的に軽度であり、突然
は羊水で実施でき
の発熱、斑点状丘疹、関節痛、 通じて蚊に刺されないように
RT-PCR
る。羊水穿刺は妊娠 週以内
することが大切である。その
膿のない結膜炎が特徴であ
%の胎児死
に 実 施 す る と 0.1
対 策 としては
「 長 そ でのシャ
る。症状は通常数日から 週
亡の危険性がある。妊娠 週
ツやパンツ」
「防虫剤」
「ペル
間続く。入院を必要とする重
メ ト リ ン 処 理 の 衣 類 や 服 装 」 以後での羊水穿刺は妊娠早期
症化は通常はみられず、死亡
での穿刺よりも合併症が少な
「蚊帳かエアーコンディショナ
はまれである。
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