次世代硬度処理装置を搭載した RO装置の検討 JA愛知厚生連 海南病院 臨床工学技術科 ○中野浩志、西垣明彦、有竹大地 目 的 個人用RO装置では軟水器を搭載して いないため、Caスケールによる膜詰まり が原因で早期にRO膜の寿命を迎えET 値や細菌数の上昇を経験する。そこで 個人用RO装置の前処理としてレスコ社 の次世代硬度処理装置MTF-NS Hard Water Conditioner(以下MTF-NS)を搭 載させたので報告する。 MTF-NS Hard Water Conditionerについて MTF-NS プレフィルター MTF-NSでは、Ca・Mgを除去やイオン交換するのでは 無く、小さな水晶マイクロ粒子に変換、スケール形成や 他の物質との電子癒着、酸化・反応等ができない形態 の硬度分として供給している。 NTF-NSポリマーについて NTF-NSポリマー NTF-NSポリマーは再生が不要であり、交換周期は3 年とされている。 硬度処理装置と個人用RO装置 • レスコ社の次世代硬度処理装置MTFC11NSを選定した。 • 東 レ 社 の 個 人 用 RO 装 置 TW-36P に て ROモジュールを10ヶ月間使用したもの にMTF-C11NSを搭載した。 • 東レ社の個人用RO装置TW-72Pにて新 品 の RO モ ジ ュ ー ル に 交 換 し た も の に MTF-C11NSを搭載した。 水質調査の方法 MTF-NS前後にRO膜片と100メッシュ片 (線径0.1mm、1インチのメッシュ数100)を 2ヶ月間投入してCa付着量を計測した。 また、 8ヶ月間使用したMTF-NS前後の 水を採取してpH、導電率、硬度を測定し た。RO水では導電率、TOC、ET値、細菌 数を8ヶ月間観察した。 カルシウム呈色試験 カルシウム呈色試薬(カルシウムEテストワコー:メチルキシレノールブルー:MXB試 薬)調整液0.5mlを各メッシュ及びRO膜片に5分間接触させた。経過後、接触させた 試験液を液滴として未処理の試験液と並べて呈色を確認した。既知の呈色度合いと カルシウム濃度の検量線より、概算のカルシウム溶解濃度を算出した。 100メッシュ RO膜 ブランク NTF-NSの性能試験結果 試験結果 試験項目 採 取 水 メ ッ シ ュ 片 R O 膜 片 TW-72P TW-36P NTF-NS前 NTF-NS後 NTF-NS前 NTF-NS後 pH 7.41 7.25 7.31 6.79 導電率(μ S/cm) 106.4 110.1 115.8 116.5 硬度 (CaCo3mg/L) 16.0 16.3 16.8 18.4 ICP発光分析 (元素分析) 検出元素として Ca,K,Mg,Na,Li,Si,B,P 検出元素として Ca,K,Mg,Na,Li,Si,B,P 検出元素として Ca,K,Mg,Na,Li,Si,B,P 検出元素として Ca,K,Mg,Na,Li,Si,B,P EDX蛍光分析 (元素分析) 検出元素として Fe,Cr,Niなど 検出元素として Fe,Cr,Niなど 検出元素として Fe,Cr,Niなど 検出元素として Fe,Cr,Niなど カルシウム呈色 (MXB試薬) 僅かに呈色 (Ca 0.1μ g/メッシュ) 僅かに呈色 (Ca 0.1μ g/メッシュ) 僅かに呈色 (Ca 0.5μ g/メッシュ) 極僅かに呈色 (Ca 0.25μ g/メッシュ) 顕微鏡観察 僅かに付着物あり 特に異物を認めず 僅かに付着物あり 特に異物を認めず EDX蛍光分析 (元素分析) 検出元素として S,Ti,Pなど 検出元素として S,Tiなど 検出元素として S,Tiなど 検出元素として S,Ba など カルシウム呈色 (MXB試薬) 僅かに呈色 (Ca 0.5μ g/膜) 僅かに呈色 (Ca 0.5μ g/膜) 僅かに呈色 (Ca 0.5μ g/膜) 極僅かに呈色 (Ca 0.5μ g/膜) 顕微鏡観察 特に異物を認めず 特に異物を認めず 特に異物を認めず 特に異物を認めず RO水の水質平均値(8ヶ月間) TOC(ppb) 導電率(μ S/cm) ET(EU/mL) 細菌数(CFU/mL) TW-36P 55.2±18.8 2.47±0.59 0.015±0.026 0.56±0.73 TW-72P 46.6±19.57 1.67±0.22 0.01±0.009 0.43±0.79 TW-72Pは、透析用水化学物質管理基準値(22項目)未満であった。 結 果 MTF-NS前後のCa吸着量では通過後 に減少した試験片もあったが、全体の評 価としては有意差は無かった。試験法の 検討も必要と思われた。 MTF-NS前後 の水質では、通過後にPHの低下が観ら れRO膜表面でのCaの堆積に有意差が 出るのではないかと思われた。今後も継 続して観察が必要と考えられる。 考 察 Ca吸着試験では、試験片の電荷や膜の透過も視 野に入れるべきであった。また、原水の硬度が低 かったので長期の観察が必要であった。 有意差を 確認出来なかったが、軟水器が不搭載の個人用RO 装置では、MTF-NSの搭載がCaスケール付着の防 止として有効であろう?今後は、従来型軟水器の代 替製品となりうるのか(再生不要・塩タンク不要)を 検討予定である。また、RO水の停滞時間を減らし、 モジュール洗浄の実施回数の検討によりET値、細 菌数のfree化を目指したいと考えている。 結 論 MTF-NS搭載が8ヶ月、ROモジュール 使用が18ヶ月(TW-36P)と8ヶ月(TW72P)であるが、導電率、TOC、ET値、細 菌数の上昇は観察されていない。MTFNSによりCaスケールによる膜劣化が回 避され、有効的な個人用RO装置の前処 理であるのか?今後も観察を続けたい。 日本HDF研究会 COI開示 筆頭発表者名:中野浩志 演題発表に関連し開示すべきCOI関係にあ る企業などはありません。
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