定価︵本体458円+税 - 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

平成28年10月19日創設 !
65歳超雇用推進助成金
高年齢者の安定した雇用の確保のため、
定年の引上げなどの制度を実施した事業主を助成します。
のご案内
⑴ 助成金制度の概要
平成 28 年10 月19 日以降に労働協約または就業規則により以下の制度を実施した場合に助成します
(1事業主(企業単位)につき1回かぎり)
。
導入する制度
助成額
①
65歳への定年引上げ
100 万円
②
66歳以上への定年引上げ又は定年の定めの廃止
120 万円
③
希望者全員を66∼69歳まで継続雇用する制度の導入
60 万円
④
希望者全員を70歳以上まで継続雇用する制度の導入
80 万円
※①∼④の複数の制度を合わせて導入した場合は最も高い額のみの支給となります。
【主な支給要件】
導入する制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法
第8条・9条1項のいずれの規定にも違反していないこと。
定年の引上げなどの実施に対して、専門家への委託費などの経費の支出があること。
支給申請日の前日において、申請事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇
用保険被保険者(定年の引上げなどを行う労働協約または就業規則の適用を受ける期間の定めのない労
働契約を締結する定年前の労働者または定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者)が1
人以上いること。
定年の引上げなどに関して、過去に高年齢者雇用安定助成金の支給を受けていないこと。
※ほかにも必要な要件がありますので、ホームページ (http://www.jeed.or.jp/) をご確認ください。
⑵ 申請手続き
制度を実施した日の翌日から起算して、2カ月以内に支給申請を行ってください。
(事前の計画の認定は不要です)
お問合せ、ご相談、申請等については、本誌 65 頁にある都道府県支部 高齢・障害者業務課(東京・大
阪は高齢・障害者窓口サービス課)が窓口となります。
申請様式および申請方法については、当機構のホームページでご案内をしています(当機構トップペー
ジ → 高齢者の雇用支援 → 助成金)
。
vol.
272
伝統を継承し
日々進化する中国料理
なんえん
京王プラザホテル「南園」総料理長
り こく ちょう
李国超さん
(64歳)
を支える
前ページ写真のような「国際シティホテルのメイン・ダイニング」ならではの優雅な接客エリアから
は見えない厨房から、中華の名匠・李国超さんの「一流の味」が提供される
「中華の伝統食材だけにこだわらず
フォアグラやトリュフを使ったメニューも工夫。
日々進化、学ぶことは多いです」
ホ テ ル開 業 と と も に 歩 ん だ
「南園」一筋の 年
歩みは、
)年 6 月 に 日
年前のホテル開業とと
ル。李国超さんの料理人としての
新宿区に誕生した京王プラザホテ
本初の超高層ホテルとして東京都
1 9 7 1( 昭 和
45
46
人を超える厨房スタッフを束ね
園」の歴史とともにある。現在は
も に オ ー プ ン し た 中 国 料 理「 南
45
一筋で数々の名料理人とともに腕
1971年の入社以来、「南園」
ました」
がら3年前に亡くなられてしまい
人といえる存在でしたが、残念な
話になりました。大切な恩師の一
ともあり、本当に公私ともにお世
さ ん は『 南 園 』に 所 属 し て い た こ
開業と同時に入社しましたが、周
人でしたし、高校卒業後、ホテル
の憧れでした。周さんの弟とは友
の周富徳さんは子どものときから
しゅうと み と く
中区。横浜中華街出身の広東料理
「私が生まれ育ったのは横浜市
る総料理長である。
40
2
2017.1
( 平 成 7)年 に 料 理 長、 2 0 0 8
を磨いてきた李さんは1995
在だ。
名実ともに中国料理を代表する存
た。総料理長就任の前年、200
若者の進出に期待
中国料理の人気は絶大、
年 に は「 南 園 」総 料 理 長 に 就 任 し
7年には東京都より「東京マイス
社団法人である「日本中国料理協
現在、中国料理業界唯一の公益
に認定され、2011年に厚生労
会」の副会長の要職にある李さん
りするせいで力が必
要 で す か ら。 で も、
それも人によりけり
で す( 笑 )。 中 国 料
理の人気は絶大です
つ
午後の休憩中の厨房にスタッフ
だろ(笑)」
ないか。撮影で緊張しちゃったん
あれっ、点かない? 何やってい
るんだよ、元栓を開けてないじゃ
れ。はい、そこの君、火を点けて。
きみ
「 お ~ い、 ち ょ っ と 手 伝 っ て く
気軽に声をかける。
厨房での撮影でも若いスタッフに
端 々 に 漂 う ユ ー モ ア が 印 象 的 だ。
はし ばし
絶えることのない笑みと話の
え
から、今後は増えるのかな」
丸ごとローストした鶏への
包丁入れを自らやって見せ
る(上)
至高の味を追求、スープに
は特段のこだわりがあると
いう(下)
ター」
(東京都優秀技能者知事賞)
働 省 の「 現 代 の 名 工 」
、2014
しょう
に、最近の若い世代の料理人志望
おうじゅほう
についてうかがってみた。
「パティシエ人気は高いけれど
『 料 理 人 は 大 変 な 修 業 が 必 要 』と
いう印象があるのか、和食、洋食
はともかく中華は多いとはいえな
いかもしれません。中華は食べる
のは大好きだという人は圧倒的に
多いけれど(笑)。
女性の進出ですか? 和食、洋
食では目立ちますが、中華はそれ
ほ ど で は な い か も し れ ま せ ん ね。
重くて大きな鉄鍋を片手で扱った
3 エルダー
年には黄綬褒章を受章し、まさに
名人に師事する若いスタッフの表情は明るく希望にあふれている(上)
焼きそばづくりを指導する李さん。厳しい言葉にも温かさが(下)
を支える
は一変して、内外のお客さまを接
あるフロアは、国際シティホテル
の和やかな笑いが広がった。
伝統食材だけでなく
のメイン・ダイニングならでの優
待するテーブル席や個室、噴水の
日々進化と工夫
雅な雰囲気だ。そのような内装を
背景に李さんは語る。
「この世界は常に勉
強です。例えば中華の
食材だけにこだわらず
フォアグラやトリュフ
を使ったメニューも工
夫し、提供しています。
日々、学ぶことは多い
ですね」
南園の経営母体であ
る京王プラザホテルは
す。料理の世界は厳し
くて、むずかしさもあ
るでしょうが、独立志
向のある人は大いにそ
れを目ざせばいい。後
継者を育てるのも私の
賞をいただいたのも一緒に働くス
役目。黄綬褒章などの
歳定年。その後は1年ごとの契
おり、李さんはシニア社員の代表
継続雇用される制度が整備されて
喜んでいただける味をお届けした
チームワークを大切にお客さまに
進たちから慕われている。
「 い や、 私 の ほ う が 若 い 人 た ち
から勉強させてもらっています
よ。料理の腕はともかく、彼らの
考え方や知識、それは評価できま
(撮影・福田栄夫/取材・吉田孝一)
ht tp :/ / w ww. k e io p la za . c o. j p/
京王プラザホテル
TEL:03(3344)0111(代表)
いと思います」
約更新で、希望者全員が
タッフのおかげです。これからも
本館 2 階の中国料理「南園」入り口への
アプローチには李国超さんの写真が(上)
客室数 1437 室、日本初の超高層ホテル
の威容は新宿副都心のランドマークだ
歳まで
60
的存在で、その人柄と相まって後
65
和やかななかにも、一流の味を
提供する真剣さがみなぎる厨房と
高級食材と四季折々の山海の珍味を駆使したコース
料理だけでなく、下のように伝統の広東料理にトリ
ュフがアレンジされたメニューも(料理は季節によっ
て変わります。詳細はホームページ参照)
写真提供:京王プラザホテル
4
2017.1
1
技を支える vol.272
伝統を継承し日々進化する中国料理
京王プラザホテル「南園」総料理長 李国超さん
6
特 集
高齢者雇用を進めるためのヒント集
解説
身近な工夫や改善が高齢者の活躍の場を広げる
高千穂大学経営学部教授 田口和雄
10
12
14
16
18
20
22
⑴ 多様な勤務制度
24
トピックス
26
⑵ ワークシェアリング
30
34
No.447
●エルダー
(elder)
は、英語の old の比較級で、
年長の人、目上の人、尊敬される人 などの意味
がある。昭和54 年、本誌発刊に際し、(財) 高年
齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏に
より命名された。
⑶ 高齢従業員と若手従業員のペア就労
⑷ 高齢従業員の職務の創出
⑸ 高齢従業員に配慮した労災防止対策
⑹ 継続雇用者のモチベーション対策
⑺ その他の取組み
エイジマネジメント研究会と日本予防医学協会がシンポジウムを開催
江戸から東京へ 第 52 回
作家 童門冬二
起承転々で生きる 貝原益軒
28
2017 January
高齢者に聞く
生涯現役で働くとは
第 33 回
ケアワーク東京 非常勤ヘルパー
名和和敏さん(69歳)
高齢者の現場 北から、南から 第 56 回
栃木県 村田発條株式会社
働く高齢者のための健康・安全相談室[第 33 回]
公益社団法人日本産業衛生学会 エイジマネジメント研究会 編
38
希望者全員65歳雇用 ! 雇用ミックス時代のフレキシブル賃金・評価制度《第16回》
42
高齢者雇用施策を考える[第 9 回]厚生年金基金の興亡
44
日本史にみる長寿食 vol.280 徐福の求めた不老長寿のあわび
45
労務資料 高齢期の就労に関する認識 ─「 高齢社会に関する意識調査結果」から
50
株式会社プライムコンサルタント 代表取締役
菊谷寛之
独立行政法人労働政策研究・研修機構 主席統括研究員 濱口桂一郎
永山久夫
新春特別講演 平成28年度 「高年齢者雇用開発フォーラム」の記念講演から
生涯現役社会を目指した日本的健康経営戦略
∼労働寿命の延伸から健康寿命の延伸へ∼
一般財団法人 日本予防医学協会理事長 神代雅晴
56
BOOKS
58
ニュース ファイル
60
次号予告・編集後記
61
リーダーズトーク
No.21
若い社員に蔓延している閉塞感
高齢社員との対話を定期的に設け
相互理解を深めて組織力を向上へ
64
高橋克徳さん
株式会社ジェイフィール代表取締役社長、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授 さった峠
静岡県静岡市にある、さった峠のさったは
土へんに垂と書くのですがパソコンの辞書
にはない漢字でひらがな表記をしたり、薩
という字を書いたりしています。安藤広重
の東海道 五十三次の「由井」の絵がほぼ同
じ場所からの絵と思われます。
JR東海道線と東名高速道路、国道一号線
が交差して海岸線を走っています。背景に
富士山が見える絶景ポイントです。
水彩画家 鈴木新(すずき・あらた)
● ● ●
高齢者のためのグルメレシピ[第 21 回]
鯛のかぶら鍋
◆表紙の絵:
「スケッチぶらり旅」
「長峰」店主
長島 博
1945 年 兵 庫 県神戸市生まれ。日本やヨー
ロッパ各地でスケッチ旅行をしながら、多
くの作品を発表。現在は作品制作の傍ら、
水彩スケッチ教室の講師としても活躍。日
本美術家連盟会員、水彩連盟準会員
主な受賞作:「秘湯」第 34 回フランス美術展
ラ・セーヌ賞
http://www.arata.ne.jp/
特集
高齢者雇用を
進めるためのヒント集
高齢従業員が働きやすい職場環境を実現するために
は、必ずしも大がかりな設備投資や制度の見直しが求
められるわけではなく、職場における小さな工夫や改
善が起点となって、高齢従業員の活躍の場が広がるこ
とも珍しくありません。
⑴ 多様な勤務制度
今号の特集では、当機構が作成した『エルダー活躍
⑵ ワークシェアリング
先進事例集』をはじめとした、高齢者雇用にかかわる取
⑶ 高齢従業員と若手従業員のペア就労
組みを収録した事例集などに取り上げられた身近な工
⑷ 高齢従業員の職務の創出
夫や改善に着目し、事例を7つのテーマに分けて紹介
⑸ 高齢従業員に配慮した労災防止対策
します。また、解説は高千穂大学経営学部の田口和雄
⑹ 継続雇用者のモチベーション対策
教授に寄稿していただきました。
⑺ その他の取組み
の変化への配慮が必要となる高齢社員にとっ
などの職場環境です。加齢にともなう身体機能
います。それは勤務制度、仕事の進め方、設備
がら、このような動きの一方で問題が発生して
広がっていることを意味しています。しかしな
力 化 が 進 め ら れ、 彼 ら︵ 彼 女 ら ︶の 活 躍 の 場 が
変わりつつある点です。つまり、高齢社員の戦
から、現役社員と同じ責任や役割をもつものに
齢社員の仕事が現役社員を支える補助的なもの
で﹂も見られている光景です。その違いは、高
景は﹁いま﹂に始まったものではなく、
﹁これま
前の光景になりつつあります。しかし、この光
前の従業員︶と一緒に職場で働くことがあたり
少 子 高 齢 化 が 進 む な か、 高 齢 社 員︵ 定 年 後、
継 続 雇 用 な ど で 働 く 高 齢 者 ︶が 現 役 社 員︵ 定 年
1 高齢者雇用を進めるための考え方
田口 和雄
高千穂大学経営学部教授
身近な工夫や改善が
高齢者の活躍の場を
広げる
解説
6
2017.1
特集
高齢者雇用を進めるためのヒント集
図表 改善事例の概要
改善事例の
分野・内容
会社概要
社名
A社
職場のマネジメント
多様な
勤務制度
継続雇用者の
モチベーショ
ン対策
水産缶詰の製造・販売業
A社
活用施策
高齢従業員
と若手従業員
のペア就労
安全衛生
高齢従業員に
配慮した
労災防止対策
その他の
取組み
改善に際しての工夫
・ヒアリング(高齢社員)
・アンケート調査
・トップ主導の取り組み
70人
(24.3%)・社員の高齢化
社会保険・社会福祉・
介護事業
135人
(38.5%)・人手不足の深刻化
・アンケート調査(全社員)
・社内横断的な会議の開催
C社
縫製業
246人
(13.4%)・人材確保の困難化
・高齢社員の就労ニーズの把握
D社
飲食業
324人
(27.1%)・高齢法の改正
・アンケート調査(55歳以上社員)
U社
産業用生産設備部品製造業
54人
( 0.6%)・将来の社員の高齢化への対応
・トップ主導の取り組み
V社
U社
医療、福祉
70人
(12.9%)・人事管理制度の整備・拡充
・普段からの社員間のコミュニケーションの積極的な推進
W社
冠婚業
V社
77人
(14.3%)・高齢社員活用施策の拡充
・研修を通じたトップと社員間のコミュニケーションの推進
X社
クリーニング業
W社
32人
(34.4%)・高齢社員活用施策の拡充
・高齢社員の就労ニーズの把握
259人
(14.3%)・高齢社員活用施策の拡充
・高齢社員の就労ニーズの把握
B社
C社
D社
F社
G企業組合
小売業
X社
情報サービス業
E社
・社員からの改善ニーズ
64人
(12.5%)
・将来の人材確保の困難化
食料品の加工・販売
F 企業組合
35人
(77.1%)・人事管理制度の整備・拡充
・ヒアリング(全社員)
64人
(18.8%)・人材確保の困難化
・職場単位での対話
・所属長を通した意見の集約
・役割の明確化
H会
福祉
G会
I社
H 協同組合
建設業
106人
(25.5%)・技術・技能継承の円滑化
・普段からの社員間のコミュニケーションと意識の統一
J社
食料品製造業
I社
105人
(36.2%)・技術・技能継承の円滑化
・アンケート調査
K社
医療、福祉
J社
114人
(11.4%)・人事管理制度の整備・拡充
・高齢社員の就労状況の把握
L社
運送業
K社
・社員の高齢化
184人
(17.9%)
・高齢社員の就労状況の把握
・技能・ノウハウの継承の円滑化
M社
訪問介護、家事代行、
L社
弁当製造、カフェ営業
・社員の高齢化
224人
(64.7%)
・高齢社員活用施策の拡充
・トップ主導の取り組み
N社
タクシー業
・社員の高齢化
305人
(47.2%)・人材確保の困難化
・高齢社員活用施策の拡充
・高齢社員の就労状況の把握
O社
アパレル製品の製造・
O社
検品・補修・物流・保管
395人
(62.5%)・人事管理制度の整備・拡充
・高齢社員の就労ニーズの把握
P病院
P 病院
医療業
475人
(13.3%)・高齢社員活用施策の拡充
・高齢社員の就労ニーズの把握
Q社
飲食業
Q社
276人
(35.1%)・職場環境の拡充
・普段からの社員間の意識・価値観の共有化
R社
タクシー業
R社
210人
(52.9%)・職場環境の拡充
・普段からの社員間のコミュニケーションの積極的な推進
S社
紙製品加工業
35人
(28.6%)・高齢社員活用施策の拡充
・普段からの社員間の意識・価値観の共有化
T社
金属加工業
47人
(59.6%)・高齢社員活用施策の拡充
・普段からの社員間の意識・価値観の共有化
Y社
農産物卸売業
58人
(37.9%)・人事管理制度の整備・拡充
Z社
鋳造・製缶業
α社
M社
高齢従業員の
職務の創出
背景・課題
B社
E協同組合
ワークシェア
リング
職場環境の改善の実施概要
従業員数
(60歳以上社員比率)
主な事業内容
N社
S社
T社
Y社
・社員の就労ニーズの把握
・普段からのトップと社員間の意識・価値観の共有化
食肉加工業
・高齢社員活用施策の拡充
56人
(44.6%)
・職場環境の拡充
・普段からのトップと社員間の意識・価値観の共有化
造船業
・社員の高齢化
92人
(44.5%)
・技能伝承の円滑化
・社員の意識改革
Z社
α社
β社
・トップ主導の取り組み
121人
(26.4%)・高齢社員活用施策の拡充
β社
(注 1)表の内容は各事例が紹介されている当機構発行の各種資料をもとに作成
(注 2)従業員数、60 歳以上社員比率は調査時の値
て、中核的な仕事をになう現役社員を前提にし
て整備されている職場環境は働きにくい環境と
なっています。今後とも高齢社員の活躍の場を
広げていくには、高齢社員に配慮した職場環境
の整備が求められます。そこで、本特集では身
近な工夫や改善によって高齢社員に配慮した職
場 環 境 を 整 備・ 拡 充 し︵ 以 下﹁ 職 場 環 境 の 改
善﹂
︶
、彼ら︵彼女ら︶の活躍の場を広げて、高齢
28
者雇用を積極的に推進している企業︵以下﹁高
齢者雇用推進企業﹂
︶ 社の事例を紹介します。
本論ではその概要を整理していきます。
2
改善事例の概要∼高齢者の活躍の
場を広げる身近な工夫や改善
28
︵1︶会社概要 ︱業種別・従業員規模別構成︱
本特集で取り上げている 社の高齢者雇用推
進企業の会社概要を業種と従業員数の2つの経
社︶
10
営特性から確認します。その概要を整理した図
表 を み て く だ さ い。 業 種 別 に は 製 造 業︵
と医療・介護・福祉︵6社︶を中心に、運輸業︵3
社︶
、 飲 食 業︵ 3 社 ︶
、 サ ー ビ ス 業︵ 2 社 ︶
、 卸・
小 売 業︵ 2 社 ︶
、 建 設 業︵ 1 社 ︶
、情報サービス
業︵ 1 社 ︶と い っ た 多 様 な 業 種 構 成 と な っ て い
60
人未満﹂
7社、
7 エルダー
人以上100人未満﹂6社、
﹁100人以上﹂
28
ます。次に従業員規模別には、﹁
﹁
社の構成で、今回、紹介する 社の高齢者雇
15 60
%未
も高い比率は 企業組合の ・1 % 、 最 も 低 い
める 歳以上の高齢社員比率を確 認 す る と 、 最
企 業 ﹂︶が 中 心 と な っ て い ま す。 全 従 業 員 に 占
用 推 進 企 業 は 規 模 の 小 さ い 企 業︵ 以 下﹁ 小 規 模
︵3︶職場環境の改善をはじめた背景・課題
ポイントに注目して整理していきます。
課題と取組みに際しての工夫を推進するための
て、ここでは職場環境の改善をはじめた背景・
の改善事例の紹介を参照してもらうことにし
上げられています。それらの内容の詳細は後述
齢社員に配慮した労災防止対策がそれぞれ取り
の仕事の創出の3タイプが、安全衛生では、高
高齢社員と若手社員のペア就労と高齢社員向け
社︶
、所属長を通じた意見集約︵H会︶などの方
てアンケート︵D社、J社ほか︶
、ヒアリング︵A
高齢社員をはじめとする現場の意見・
第1は、
ニーズなどを把握している点です。社員に対し
の3つに整理することができます。
とが共通してみられます。それらは大きく以下
ともなうものにするための工夫を行っているこ
が、その際にこれら企業はこの改善を実効性の
推進企業は職場環境の改善に取り組みました
∼
%未満﹂がそれぞれ
社、﹁
企業はU社の0・6%で、その内訳は﹁
満﹂と﹁
10
∼
20
77
%未満﹂5社、
﹁ %以上﹂3社 の 構 成 と な っ
40
メント、②活用施策、③安全衛生 、 ④ そ の 他 の
改善事例を整理すると、大きく① 職 場 の マ ネ ジ
う に、 そ の 内 容 は 多 岐 に わ た り ま す 。 そ こ で 、
あり、高齢者雇用推進企業の改善 事 例 に み る よ
社員の活躍の場を整備・拡充する こ と が 可 能 で
企業ならではの身近な工夫や改善 に よ っ て 高 齢
かしい状況にあります。しかしな が ら 、 小 規 模
社員の活躍の場の整備・拡充を行 う こ と が む ず
な設備投資や制度の導入・改定な ど に よ る 高 齢
営資源を持つことがむずかしいた め 、 大 が か り
なっています。小規模企業は大企 業 の よ う な 経
先の会社概要で確認したように、今回、紹介
する高齢者雇用推進企業は小規模 企 業 が 中 心 と
協同組合ほか︶
、 職 場 環 境 の 拡 充︵ Q 社、 α 社
業組合、
K社ほか︶
、
高齢社員活用施策の拡充
︵E
た企業です。人事管理制度の整備・拡充︵G企
第2のタイプは、すでに高齢社員の活躍の場
を整備しているものの、さらなる拡充を目ざし
どを背景・課題としてあげています。
技 術・ 技 能 継 承 の 円 滑 化︵ I 社、 β 社 ほ か ︶な
社、H会ほか︶
、社員の高齢化︵A社、N社ほか︶
、
です。人手不足の深刻化・人材確保の困難化
︵B
は、高齢社員の活躍の場の整備を目ざした企業
す。7頁の図表をみてください。第1のタイプ
社員の活躍の場の推進状況によってわかれま
高齢者雇用推進企業が職場環境の改善を始め
た背景・課題は企業ごとで異なりますが、高齢
こうしてみると、高齢者雇用推進企業は職場
環境の改善を実効性のある取組みにするために
協力を引き出しています。
共有化を進め、職場環境の改善に対する社員の
社、α社ほか︶
、社員同士のコミュニケーショ
観を共有している点です。
経営者と社員の間
︵Z
普段から組織内の意思疎通を図り、意識や価値
職場環境の改善に取り組んでいます。第3は、
組みにするために、経営者が自ら先頭に立って
点 で す︵ M 社、 U 社 ほ か ︶
。実効性のある取り
トップ主導で職場環境の改善に取り組んでいる
就労状況・ニーズを把握してい ます。第2は、
かがえます。
ン︵ S 社、 T 社 ほ か ︶を 行 い、 意 識 や 価 値 観 の
法によって、現場の意見・ニーズ、高齢社員の
取組みの4分野にわかれます。各 分 野 の 改 善 事
何らかの形で社員をかかわらせていることがう
こうした背景・課題を解決すべく高齢者雇用
︵4︶職場環境の改善に際しての工夫
ほか︶などを背景・課題としてあげています。
タイプが、活用施策では、ワークシェアリング、
社 員︵ 継 続 雇 用 者 ︶の モ チ ベ ー シ ョ ン 対 策 の 2
例の内容は、制度面では多様な勤 務 制 度 、 高 齢
︵2︶改善事例の特徴 ︱4分野7タイプ
60
40
G
60
20
ています。
60
8
2017.1
3 これから取り組むための心がけ
︵1︶
﹁ 高 齢 者 雇 用 ﹂を 全 社 員 共 通 の 課 題 と し て
認識する
これから職場環境の改善に取り 組 む こ と を 考
える企業はどのような点に心がけ る 必 要 が あ る
︵2︶職 場 の ニ ー ズ を 把 握 し、 自 社 に 合 っ た 改
善に取り組む
ほか︶。小規模企業の特性を活かした利点です。
全社的な取組みを行う際には経営者が自ら先頭
先ほどの図表で紹介しているように、1つの
取組み分野をとっても、多様な業種に属する企
大切に、社内の風通しをよくしておく
︵3︶普段から職場のコミュニケーションを
に立ちますが、大企業の場合、経営者と現場と
業が改善に取り組んでいます。つまり、高齢者
の距離があるため取組みに対する意識を醸成す
理していきたいと思います。
雇用推進企業を目ざして高齢社員の活躍の場の
しかし、ここでも問題があります。取組み意
識が醸成されやすい環境を整えておくには、経
以上のように高齢者雇用を全社員共通の課題
として確認したのち、高齢社員の活躍の場の整
第1は、高齢者雇用を全社員共 通 の 課 題 で あ
ることを確認することです。高齢 者 雇 用 を 高 齢
整備に必要な改善は各企業で異なりますし、後
営者と社員の間や社員同士の意思疎通︵組織内
ることがむずかしい場合があります。小規模企
社員の特有の課題であり、現役社 員 に 関 係 な い
述の高齢者雇用推進企業以外でもさまざまな改
の意思疎通︶が日常的に行われていることが必
備に向けた職場環境の改善に取り組むことにな
と誤解してしまうことが考えられ ま す 。 現 役 社
善が取り組まれています。自社が所属する業界
要となります。こうした組織内の意思疎通が図
業は経営者と現場の距離が近いため、取組み意
員に比べ、高齢社員は加齢による 身 体 機 能 の 変
︵ 産 業 ︶で 取 り 組 ま れ て い る 改 善 事 例 を 実 施 す
られていないままに、改善に取り組もうとする
りますが、自社に必要な改善をみつけなければ
化への配慮が必要であることがそ の 主 な 理 由 で
ればよいというわけにはいきません。﹁職場環
と社員は戸惑ってしまいます。改善事例のなか
識が醸成されやすく、実効性のある改善が可能
す。も ち ろ ん、高 齢 社 員 は 身 体 機 能 の 面 で﹁ 制
境 の 改 善 に 際 し て の 工 夫 ﹂で 紹 介 し た よ う に、
に、 普 段 か ら 経 営 者 が 職 場︵ 社 員 ︶と の コ ミ ュ
なりません。
約﹂を受けることになりますが、現役社員のなか
多くの高齢者雇用推進企業は改善に取り組む前
ニケーション︵Z社、α社︶や、社員間のコミュ
になります。
にも仕事と、育児や介護などの生活の両立に悩
に ア ン ケ ー ト︵ A 社、 D 社 ほ か ︶や ヒ ア リ ン グ
のでしょうか。 社の改善事例か ら こ の 点 を 整
む社員もいます。これも﹁制約﹂を持つ社員であ
事 と 生 活 の 両 立︹ ワ ー ク・ラ イ フ・バ ラ ン ス ︺︶
を把握して自社に合った改善に取り組むこと
ニーズを集めています。つまり、職場のニーズ
普段から組織内の意思疎通を図り、社内の風通
います。実効性のともなう改善にするために、
組織内の意思疎通を図っている企業がみられて
ニ ケ ー シ ョ ン︵ I 社、 R 社 ほ か ︶な ど を 行 い、
が進められています。高齢社員を 制 約 を 持 つ 社
が、第2の心がけです。
企 業 組 合 ほ か ︶な ど を 行 い、 社 員 の 意 見・
員群の1つと考えると、高齢者雇 用 も 全 社 員 共
しをよくしておくことが最後の心がけです。
︵
通の課題として認識する必要があ り ま す 。
り、全社員共通の課題として全社的な取組み︵仕
28
取り組む際には、経営者自ら先頭に立つこと
も大切な点です。改善事例のなかにトップ主導
G
で取り組む企業がみられています︵M社、U社
9 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
多様な勤務制度
❶
日4時間程度の短時間勤務制度を導入
❷6つのパターンの勤務形態を構築
介 護 事 業 な ど︵ 看 護・介 護 サ ー ビ ス の 提 供 ︶/ B 社
介護分野における人手不足が深刻化するなか、長年の経験、
技術、知識などを持つ高齢労働者の退職は大きな痛手となり
︱
魚介類などの缶詰の製造を手がけるA社は昭和 年代に創
業し、現在では、大手水産加工会社のブランド商品を開発・
ます。一方、若手は予定した人員が確保できず、B社が目ざ
製 造 業︵ 食 品 製 造・販 売 ︶/ A 社
製造するとともに、自社ブランド商品も確立。地域経済を牽
している質の高いサービス提供に影響を落としかねない状況
︱
引するとともに、地元の雇用の創出に貢献しています。
つまでも、体力などが衰えても現有能力で就労できる環境を
整えることを目ざして、
﹁生涯現役﹂をスローガンにさまざま
な改善に取り組みました。
こうした取組みと、工場内部の機械化、高齢者の体力・能
力などに個人差があるため、適正に評価し処遇する人事評価
ことで、1日4時間程度の短時間勤務制度を導入しました。
また、定年後もフルタイム勤務を原則としていた高齢労働
者の働き方を見直し、作業の平均化と適正な人員配置を行う
﹁再登録制度﹂では、仕事量によって就労時間を調整したり、
本人の希望する時間帯で働くことが可能です。
去に退職した人を対象とした﹁再登録制度﹂といいます。
制度の創設や職務の創出などを行うことにより、多くの高齢
B社では、当初の雇用契約の就労ができない場合、自発的
に退職する人もいましたが、能力に見合った賃金制度・評価
ンをつくりました。
宅から顧客の元に行きサービスを提供する︶の6つのパター
1週間のうち一定日数勤務︶
、⑥登録型ヘルパー︵訪問介護な
︵4時間∼7時間勤務︶
、④夜勤専門、⑤隔日等勤務︵ カ月・
あり ︶
、②1日8時間勤務︵日勤のみ︶
、③パートタイム勤務
そのひとつが、多様な勤務形態の構築です。高齢労働者の
希望に合致する勤務形態を検討し、①1日8時間勤務︵夜勤
制度の構築などを行い、それ以降、高齢になっても働き続け
者が戦力となり、また、若年労働者と会社とのパイプ役とな
について考えたいとしています。
る従業員が増えており、A社では今後、 歳以降の雇用延長
した。この制度は、定年・継続雇用を終了した従業員と、過
が予測されたことから、B社では、高齢労働者が安心してい
A社にとって、長年つちかった技術や知識を持つ高齢労働
者は欠かせない存在となっています。このため、年齢にかか
歳、
歳以降も一
65
歳まで雇用を継続する独自の制度を整備しま
歳まで再雇用する制度に加えて、
わりなく働き続けられる職場 づくりに取り組み、定年
希望者全員
60
10
1
定条件のもと
65
69
69
り、風通しのよい職場風土が醸成されました。
どの分野で、会社に登録しておき、会社からの指示で直接自
1
1
高齢者雇用を進めるためのヒント集
2017.1 10
❸﹁はりきりコース﹂
と
﹁ゆっくりコース﹂から選択
宿 泊 業 、 飲 食 サ ー ビ ス 業︵ 飲 食 店 ︶/ D 社
❹3つの勤務形態から選択可能に
︱
D社は1946︵昭和 ︶年9月に創業して以来、焼き鳥と
、
﹁弁当
鰻料理をメイン商品とした﹁外食チェーン店の経営﹂
製 造 業︵ 縫 製 ︶/ C 社
シャツ生産を手がけるC社では、企画・裁断・生産・仕上
げを一貫して行っています。
﹁元気で働く意欲があるなら、い
の 製 造 販 売 と ケ ー タ リ ン グ サ ー ビス ﹂
、
﹁ 食 肉 加工品の 卸 売 ﹂
︱
つまでも働いて、充実した生活を送って欲しい﹂との雰囲気
全員を嘱託社員として
を3本柱としています。高齢者雇用は、 歳定年後、希望者
歳まで
を会社全体が持っており、働く人の生涯現役を目ざし、実践
歳の定年後は、希望者全員を
歳まで再雇用し、 歳を超えても健
康状態が良好で勤務に支障がない場合には、パートタイマー
65
嘱託社員として再雇用する制度があります。
している会社です。
60
21
65
として﹁最長 歳まで働ける雇用継続制度﹂を導入しました。
70
定年後の働き方は、従業員の声を聞きながら6つの就業時
間から選択できる制度を導入し、定年前の面談や、その後の
60
個別の相談によって調整を行っています。
D社では、多様な働き方の選択ができる制度が必要と考え、
勤務形態を、①フルタイム勤務︵1日8時間、1週 時間勤
時間 勤 務 ︶
、③
40
時間未満︶の3つのパターンに分
時 間 から
ショートタイム勤務︵1週
務︶
、②ハーフタイム勤務︵1週
選 択 できる 就 業 時 間 は月 150 時 間 の﹁ はり きりコース ﹂
と月100時間の﹁ゆっくりコース﹂となっています。前者
分﹂
、
﹁
30
ることで、賃金と公的給付金との兼ね合いがわかり、不安や
歳のパートタイマーは、通常は1年
契約とするところを、健康状態を考慮するため、6カ月ごと
時∼
20
また、 歳から 歳までのパートタイマーは、ショートタ
イム勤務として、基本的には残業は行わせないこととしてい
20
この制度はおおむね好評で、 歳以降はフルタイムの人も
いれば、短時間勤務の人もいるということが当たり前になり、
時
けました。
時﹂
、
﹁
時∼ 時﹂からの選択となっています。
からの選択、後者は﹁8時∼
30
の契約としています。
歳から
70
30
各 職 場ではローテーションを組んで対 応しています。また、
ます。さらに
65
16
10
16
面談の際、希望者には﹃ 年金・収入計 算ソフト︵CD︶
﹄を配
30
16
10
30
この結果、高年齢社員の意識改革が進み、各人が現状の働
き方を見直すようになり、健康に注意する働き方を自ら工夫
14
は﹁8時 分∼ 時 分﹂
、
﹁8時 分∼ 時﹂
、
﹁9時∼ 時﹂
75
70
15
60
14
疑問が解消され、就業意欲の向上につながりました。
75
する職場づくりができるようになりました。
11 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
ワークシェアリング
❶正規従業員と高齢者がワークシェア
小 売 業︵ ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト ︶/ E 協 同 組 合
情報サービス業︵データ入力・加工など︶/F社
❷業務をわかち合い、自由出勤制度を確立
︱
F社は、ユニバーサル社会の実現に向けチャレンジするこ
とを経営理念として、だれもが働きやすい職場づくりに積極
︱
E協同組合は、1993︵平成5︶年に2つの共同店舗が合
併してできたスー パーマーケットを運営する協同組合です。
雇用契約期間を延長することがあると規定しています。
スが多発することで業績低下にもつながります。このような
欠勤や病欠などで担当者が長期間不在となった場合は業務が
また、健康で意欲のある高齢者を中途採用して正規従業員
とのワークシェアリングを行ったことで、正規従業員の残業
できるだけ無理のない職場へ配属しています。
間は、午前8時
より、社員が会社に束縛されない体制を整えました。勤務時
事態を避けるため、複数の人員で業務の共有化を図り、人員
分までの操業時間内であ
います。それまで夜間の店舗管理は正規従業員の残業に頼る
業務をあて、正規従業員と高齢者がワークシェアリングして
ながりました。具体的には、高齢者の新たな職域として夜間
がら働く社員も持てる能力を十分に発揮して安心して働くこ
す。この制度により、高齢者、障害者、子育てや介護をしな
きます。1日のうちで、出勤と退勤をくり返すことも可能で
れば自由で、出勤時間、退勤時間、休み時間を自由に設定で
分から午後5時
ところが大きく、会社と従業員双方にとって負担が大きかっ
業員の流出を防止することができました。
上がり、高齢者雇用を推進したことで、能力のある優秀な従
とができるようになりました。
30
たのですが、ワークシェアリングによって店舗運営の効率も
30
を増やして業務を分かち合うこと︵ワークシェアリング︶に
を減らして負担を軽減することができ、生産性の向上にもつ
滞 ってしまいます。同時に残業を招き、集中力の低下からミ
歳代の雇用形態は、嘱託従業員、パートタイマー、アル
バイトの3種類です。勤務形態は、従業員の希望を取り入れ、
その前提となったのが、ワークシェアリングによる﹁自由
出勤制度﹂の導入です。業務ごとに担当者を決めてしまうと、
きる﹁エイジフリー制度﹂を導入しています。
意欲のある社員は本人が希望するかぎり働き続けることがで
的に取り組んでいる企業です。同社は定年制を廃止し、働く
歳、希望者全員
2002年、
〝元気な人は本人の希望があればいつまでも働い
てもらいたい〟という方針のもと、定年
65
歳までの継続雇用制度を導入、2008年には、希望者全員
60
歳までの継続雇用制度を導入、 歳に達した従業員につい
70
ても、本人が希望し、会社が業務上特に必要と認めた場合は、
70
60
2
高齢者雇用を進めるためのヒント集
2017.1 12
製 造 業︵ 食 料 品 の 加 工・販 売 ︶/ G 企 業 組 合
❸ 多くの人が少しの時間でも就労できる環境を整備
︱
︶年に合併し、加工・販売を一元管理すること
G企業組合は、農協の婦人部を中心に、地元で採れた旬の
野菜などを活用し、
﹁おふくろの味﹂を伝承するグループが2
001︵平成
歳 以 上の 高 齢 者 が
人で、
にした組織が始まりです。その後、2011年に企業組合と
人の 職 員のうち
社会福祉事業︵特別養護老人ホームなどを運営︶/社会福祉法人H会
❹﹁お互いさま﹂の気持ちで支え合う職場
︱
1998︵平成 ︶年より特別養護老人ホームなどを運営し
ている社会福祉法人H会は、正職員の定年は満 歳、希望者
歳の年度末まで継続雇用が可能で、働き方は個別に相
できる準職員の場合、定年は満
歳で、本人の希望と法人の
談して決めています。また、短時間・短日数勤務などが選択
は満
60
を伝承し、
﹁地域の食文化﹂を後世に残したいと考えています。
時間により正職員、パート職員A∼Cに区分して雇用の改善
全職員に就労可能時間のヒアリング調査を実施し、その就労
が増 加し、それ が高 齢 者の負 担となっていました。そこで、
理には長年の知識などが必要なため、高齢職員の時間外労働
ワークシェアリングに取り組んでいます﹂と施設長。職員の
地域の力を借りる、高齢者の手を貸してもらうという発想で
場づくりに取り組んでいます。高い高齢化率をプラスと考え、
アの方法を活用して勤務シフトを組み、互いに支え合える職
﹁高齢の方には、ご本人の生きがいと健康保持にもなるの
で、できる範囲で働いてほしいと考えており、ワーキングシェ
営業時間は、午前4時から午後6時までであり、高齢職員
が中心となって業務を行っています。しかし食材の加工・調
を図りました。また、隔日勤 務と短日数勤 務制度も設けて、
勤務シフトは、各部署の主任がひと月ごとに組み、部署内で
時
分から
時
分﹂といった
対応がむずかしいときは全体でカバーするなどの努力をして
時﹂
、
﹁
環境を整えました。
14
18
7
30
15
30
者が無理のない働き方で、若い職員と力を合わせて元気に活
勤務時間の高齢者もいますし、看護師などの資格を持つ高齢
時から
います。
﹁
事も勤務形態に合わせてシェアしています。
職員には親子で働いている者もおり、母親 が早朝の勤務、
娘が通常の勤務をこなすことで、仕事のみならず家庭での仕
多くの人たちが時間を有効に活用して、少しでも就労できる
イフ・バランスの実現を目ざす組織づくりをすすめています。
決定により定年後も雇用を継続することが可能です。
なりました。
10
各部署の責任者として活躍しているほか、若手と一緒に勤務
27
することで長年の経験でつちかった知識によって食材の加工
60
人材確保がむずかしいなか、職員それぞれに家庭の事情な
どがあるので、
﹁お互いさま﹂の気持ちで支え合い、ワーク・ラ
65
13
35
65
躍しています。
13 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
高齢従業員と若手従業員のペア就労
❶熟練技能者が専属で新人を指導
❷ 高齢従業員のモチベーションを高めるペア業務
食 料 品 製 造 業︵ 漬 物 製 造 ︶/ J 社
J社は、契約農家と連携した製品づくりで製品をブランド
化し、それを支えるために、人に優しい企業を目標にして、
︱
I社は、主に一般土木工事、のり面工事 を手がける建設会
社です。同社総務部長のAさんは、I社の高齢者雇用の取組
ダイバーシティ経営を実践して高い評価を得ています。
建 設 業︵ 一 般 土 木 工 事 な ど ︶/ I 社
みを次のように説明します。
歳以上の従業員が約 %を占め、今後ますます高齢化が
進展するなか、
﹁高齢従業員が希望すれば元気なうちはいつま
︱
﹁最近、建設業に従事する作業員の平均年齢 が上昇してい
ることが問題として指摘されています。経験に裏打ちされた
でも働いてもらい、彼らの持つ経験と技術を次世代に伝えて
※
熟練者の土木技術を、いま若手に引き継いでおかないと、連
いく﹂ことは同社にとって大事なことと考えています。
︶年
綿と続いてきた日本の伝統的な土木技術が途絶えてしまうこ
とになりかねません。そこで当社では、2005︵平成
歳まで継続
継承者への技術やノウハウの伝承と後輩の指導育成は、O
JTに加えて高齢従業員と若手がペアで業務を行うことで実
36
には、資格取得がゴールではなく、実践を通して作業のコツ
ます。オペレーターになるには資格が必要ですが、指導の際
は、I社の熟練技能者が専属で指導し、技術・技能を継承し
若手作業員の育成は、高齢の熟練者がになっています。例
えば、建設機械のオペレーターになることを希望する新人に
よう努力しています﹂
は上がり、技術継承などを通じた若い層との絆のなかで、組
﹁元気でやる気があれば、 歳までは︵必要によっては 歳
以上でも︶働ける﹂という安心感から高齢者のモチベーション
成制度として計画しています。
るよう﹁社内マイスター制度﹂を導入し、今後の社内の人材育
う役割を任せることで自発的に自分の能力開発にも取り組む
70
70
ようになりました。J社では、計画的な技能伝承が可能とな
をつかみ、センスを磨くことを重視して行っています。それ
織全体の活性化が図られました。
業員から尊敬されています。
らを伝承できる熟練者は重要な存在とされ、次代をになう従
現しました。そして、技術を次の世代に伝承することが高齢
歳の定年年齢に達した従業員を希望者全員
60
雇用する制度を導入し、技術力のある熟練者が現役で活躍で
に
17
従業員のモチベーションを高め、さらに若手の育成担当とい
65
きる環境を整え、その技術の継承が若年者に適切に行われる
60
3
高齢者雇用を進めるためのヒント集
※のり面工事……斜面がくずれないようにするために行う工事
2017.1 14
❸ベテランと若手がペアでクラスを受け持つ
❹会議の事務局担当の若手をフォロー
体力的にきつくなります。体力のある職員と経験豊富なベテ
持ちます。個人差もありますが、高齢になると保育の仕事は
保育園の0、1、2歳児のクラス編成では、まだ経験の少
ない保育士とベテランの保育士がペアとなり、クラスを受け
が注意深く観察し、適材適所への配置を心がけています。
力・瞬発力・判断力について、本人の意識とのずれを管理者
かわるサービスで安全の確保が重要であるため、高齢者の体
求人の年齢制限はありません。しかし、K社の仕事は人にか
幼稚園と保育園の機能を一元化した﹁認定こども園﹂や、小
規模多機能型居宅介護施設の運営などを手 がけるK社には、
高めていく方策が必要であると考えました。
双方のコミュニケーション能力の向上と高齢者の育成能力を
なかうまくいきませんでした。それらを可 能にするために、
高齢者がこれまでつちかった経験に裏打ちされた技能、ノ
ウハウ、人脈を継承していくことは、L社にとって、とても
とを目ざしています。
ことができるように、小さくても存在感のある会社となるこ
L社は、物流会社として地球環境への配慮という社会的責
任を果たすとともに、物流の新時代に対応した役割をになう
一般区域貨物自動車運送業︵物流︶/L社
ラン職員で、それぞれを補い合い、学び合いながら保育を実
そこで、社内に設置する営業戦略会議、安全環境会議、品
質会議、合理化推進会議、総務委員会、ISO推進委員会な
︱
施しています。この取組みは若い保育士にプロとしての自覚
どの 委 員 会 の 事 務 局 の 担 当 に 若 手 を あて、高 齢 者 がこれ を
社会保険・社会福祉・介護事業︵保育事業、介護事業︶
/K社
を深めさせ、自己研鑽に励む者が多くなるといいます。高齢
フォローする組合せとし、双方のコミュニケーション能力の
︱
者の仕事に対する高い知識・責任感・真摯な態度は、利用者
向上と、高齢者が持つ技能やノウハウや人脈の継承がスムー
重要な課題ですが、世代間の考え方の違いなどがあり、なか
だけでなく若い世代の職員への最高のPRになります。
その結果、双方のコミュニケーション能力が高まり、技能
やノウハウの継承が図りやすくなったなどの成果が見られる
ズになるような仕組みを取り入れています。
出してもらう工夫をしています。異なる世代の意見をぶつけ
ようになりました。また、高齢従業員にとっては、能力を発
保育園や介護事業所では、いろいろな行事があります。K
社では、担当をさまざまな年代から集め、いろいろな知恵を
合って、よりよいサービスの提供を目ざしています。
揮する場を持つことが健康の維持・生きがいとなり、会社の
メリットにつながっていると考えています。
15 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
高齢従業員の職務の創出
❶﹁弁当の製造﹂などの新たな職場を創出
❷体力や健康状態に応じた職場を開発
一般乗用旅客自動車運送業︵ハイヤー、タクシー︶/N社
N社は、半世紀を超えてハイヤー・タクシー業を営んでい
ます。傘下には車両整備業、車椅子専用タクシーの介護サー
︱
M社では﹁高齢従業員は、働く能力と意欲があり経験も兼
ね備える、非常に貴重で有益な人材﹂と考えていますが、
﹁加
ビス業などがあり、4事業4社のグループ企業で構成されて
社会福祉・介護事業など︵訪問介護、家事代行、弁当製造など︶/M社
齢にともなう体力・気力などの低下によるサー ビス低下や、
います。N社では、高齢者の働く環境の整備、改善に積極的
︱
注意力低下による事故などが増える危険性がある﹂とも考え
歳まで再雇用する制度
に取り組み、定年
歳、希望者全員
ています。
﹁ 体 力 的に身 体 介 護 が
3つの事業を柱に創出した職場は、
むずかしくなった高齢ヘルパーのための弁当製造﹂
、
﹁身体介
働ける方針としました。
年を設けないなど、高齢であっても元気であれば生涯現役で
新たな職場で若手を採用しつつ、登録ヘルパーについては定
﹁介護﹂
、
﹁食﹂
、
﹁ 家 事 代 行 ﹂の3 事 業 を 柱 に 経 営 を 多 角 化 し、
す。また、長時間の運転が必要なハイヤー・タクシー運転業
しない車輌の配送業務や整備の下回り作業に従事させていま
は、グループ会社に転籍させて、自動車整備士資格を必要と
健 康 状 態 およ び運 転 能 力の面で 安 全 運 転 が 危 惧 される 場 合
と1年ごとの契約更新時に継続雇用を希望する者で、体力・
また、グループ内企業が連携するなかで、高齢者の受け皿
となる職域の拡大に努めています。例えば、 歳定年到達時
す。同時に、従業員の体力・希望や非正規従業員が自分にあっ
どの介護サービスに従事させています。
入もすすめています。
﹁高齢者も元気に働く場をつくることで、従業員が長くこの
会社で働こうと考えるようになり、愛社意識につながる要因
となる﹂と同社ではみています。
を広げていく考えです。
の運転業務にかぎらず、グループ内企業全体で高齢者の職域
た職種・現場・時間帯で兼務して働ける柔軟な勤務形態の導
は、グループ会社に転籍させて、車椅子専用タクシー運転な
60
転籍した高齢者はまだ数人ですが、今後、N社で雇用する
従業員の高齢化が進展する状況の下では、ハイヤー・タクシー
﹁入浴介助など身体介護が苦手な従業員のための家事代行﹂で
務に適さない者で、
﹁介護職員初任者研修﹂の修了者について
を2009︵平成 ︶年に導入しました。
70
護が苦手な若手従業員の職場を増やすためのカフェの営業﹂
、
社員が高齢化し、ホームヘルパー求職者が減少しているな
か、M社では従業員を安定して確保するための取組みとして、
21 60
4
高齢者雇用を進めるためのヒント集
2017.1 16
︵アパレル製品、服飾品の検品補修および物流保管業務︶/O社
❸マニュアルの作成により高齢者の仕事を創出
︱
O社は、1945︵昭和 ︶年に創業して以来、一貫して繊
維にかかわる事業展開を図り、現在は、国内生産 海外生産
医療、社会福祉事業︵病院、介護保険施設︶/P病院
❹長年の経験が生かせる職務に転換
︱
病院と介護保健施設などを展開しているP病院は、定年
歳、希望者全員を 歳まで再雇用し、慣行として、 歳を超
60
界に認知されています。全従業員に占める
・5%と、一般的な企業と比べて高いうえ、現在でも高齢
歳、原則として希望者全員年齢無制限の継続雇用を方
者が続々と入社し、主戦力となって企業を支えています。定
年は
人事担当者と面談し、就業の意思などを確認してその後の働
き方を決めていきます。この面談は毎年行います。
Aさん︵ 歳︶は、 歳以降も看護の現場で活躍し、 歳か
らは看護の現場を離れて、患者さんの送迎に関する業務を中
ることに気づき、業務内容をわかりやすく図解したマニュア
ところが、根気のいる反復作業は高齢者の勤勉性が適してい
らかというと高齢者には向かない業務と考えられていました。
める視力と数をこなせる要領のよさが要求されるため、どち
主な事業である検品業務にも、多くの高齢者が就労してい
ます。しかし、これまでO社では、検品業務は不具合を見極
フロアの患者さんに目を配り、手を貸したりもして、P病院
で患者さんを支えています。病院の入口近くで作業しながら、
ことからで、Aさんはその持ち味を発揮し、いまは送迎業務
経験があり、患者さんや家族のこと、地理に詳しいといった
たのは、往診の看護師としてオートバイで地域を回っていた
心に担当しています。Aさんがこの仕事をになうことになっ
わりなく検品業務に従事するようになりました。
﹁高齢者だから﹂といった意識を脇に置き、
﹁機
O社では、
会 を与 える︵ 挑 戦させる︶こと が必要 ﹂と考 えるようになり、
そのための教育・訓練に参加させることが高齢者の活躍の場
Bさん︵ 歳︶は、定年後は無理せず働くことを希望し、看
護師として現在は採血と血圧測定のみ担当しています。
ルを作成して研修を実施した結果、高齢者の検品技術が飛躍
65
60
にとってなくてはならない存在となっています。
針としています。
もその人に見合った働き方ができるように、定年を迎えると、
えても働ける環境があります。長年勤務した高齢者のスキル
65
の製品の製造検査および規格外品の補修を行う企業として業
・
や経験は﹁ 組 織 に と っ て 必 要 ﹂と考えており、高齢になって
20
歳以上の割合は
65
60
65
的に向上し、作業の効率化を図ることに成功し、年齢にかか
82
62
を広げることにつながると認識しています。
﹁年齢ではなく、働きたいという意欲と感性が大切﹂と、P
病院では今後も適材適所の工夫により、年齢に関係なくやり
73
がいをもって働ける職場を目ざしたいと考えています。
17 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
高齢従業員に配慮した労災防止対策
❶だれもが安全に働ける環境を実現
❷安全運転のために視覚認知トレーニングを実施
構成されています。年齢や職位にかかわらず意欲のある者に
は店長を中心に少数の正社員と多数のパートタイム社員から
Q社は、企業、自治体、学校、病院、介護施設などから構
内食堂の運営を、また仕出し弁当の製造を受託して、各現場
能力開発は、高齢者の目視から認知して行動に移す動作が
低下することを防止するため、2日間の﹁安全運転に活かす
に、能力開発を実施しています。
R社では、高齢乗務員の健康と安全運転に配慮し、健康管
理体制の見直しや継続雇用制度の延長などに取り組むととも
道 路 旅 客 運 送 業︵一般 乗 用 旅 客 自 動 車 運 送 業 ︶/ R 社
は学習の機会を提供し、希望すれば何歳まででも働ける︵実
視覚認知トレーニング﹂を半年間に5回にわたって実施。訓
︱
質的に︶
﹁定年のない職場﹂です。
意識などができ、職場の雰囲気なども明るくなりました。こ
飲食店︵食堂経営、仕出し弁当など︶/Q社
Q社では、従業員の高齢化に対応した作業環境の改善に前
向きに取り組んでおり、特に、新規の事業所を新設する際に
の視覚認知トレーニングは、朝礼時にも実施しています。
︱
は積極的に省力化設備の導入を図っています。一方、調理台
練は2人の乗務員が一組となりゲーム形式で行うため、仲間
の高さを低くし、作業現場の照度を上げるなど、高齢者が働
そのほか、腰痛防止のストレッチ体操の実施と、安全運転
に注力するための﹁自動日報装置 ※﹂を導入しました。 歳以
きやすいように調理現場の改装を行っています。さらに、水
上の高齢乗務員は3年に1回、 歳以上の高齢乗務員は毎年
の頻度で、
︵独︶自動車事故対策機構が行う適性検査を受診さ
者雇用支援機構の健康管理診断システムの診断分析により、
し、作業靴も滑りにくいタイプの靴を使用するなど、転倒災
また、作業現場の安全衛生管理には特に注力し、本部の衛
生部が巡回して指導にあたるほか、社長主催の全体会議を年
自社の健康管理体制に関するよい点、弱い点の把握・見直し
せます。
1回開催してベテラン社員の持つノウハウの交流を図ったり、
を行うことができました。会社の健康管理の配慮姿勢がモチ
害を未然に防止して、だれもが安全に働くことができるよう
本部の管理栄養士が現場を巡回し、教育を兼ねた社員の福利
ベーションアップにつながっています。
す。
厚生を目的とした﹁社員向けの供食と供食管理﹂を行っていま
に努めています。
周りの作業環境の改善では、床が滑らないような床材を導入
65
また、年2回の健康診断の全員受診と、有所見者には医師
による具体的な所見を確認するほか、
︵独︶高齢・障害・求職
75
5
高齢者雇用を進めるためのヒント集
※自動日報装置……利用者の乗車や降車、料金などを自動で記録する装置
2017.1 18
❸高齢者を交えて﹁ヒヤリ・ハット﹂対策を検討
金属加工業︵金属の熱処理および帯鋼の製造︶/T社
❹保健師によるカウンセリングを実施
︱
T社は大正時代にゼンマイの輸入業務で創業し、その後、
金属加工業を営んで、現在は帯鋼 ※に熱処理した高強度の帯
紙製品加工業︵ 紙加工品の製造︶/ S社
1953︵昭和 ︶年に紙加工品の製造を始めたS社は、数
年後には化粧箱の製造に着手したことで製品の使用分野も大
鋼を製造、加工し、販売しています。従業員数は約 人。
︱
きく広がり、業績も順調に拡大し、発展を遂げてきました。
安全面では、毎日の仕事開始前には、責任者が必ず保護具
など着用のチェックを行い、
﹁ヒヤリ・ハット﹂で提出された
軽減が図れました。
る環境に整備したことで、高齢者のみならず若年者にも疲労
調設備を設置し、1年を通して一定の温度で働くことのでき
高齢者の作業姿勢の改善も行いました。そして、工場内に空
高さ調整や座って作業ができる工程を増やすことなどにより
を徹底し、肉体的負担の軽減を図りました。また、作業台の
材料の紙は見た目よりは非常に重いので、フォークリフト
を使って移動させ、その後は必ず台車を使って移動すること
健康管理については保健師による月1回の﹁定期的カウン
セリング制度﹂を導入しました。また、以前から 歳以上の
した。
うになり、予想を超える素晴らしいアイデアもいくつか出ま
合を数回にわたり開催し、徐々に積極的な意見が出されるよ
場労働者全員参加のもと、作業方法などの見直しのための会
に作業補助機械︵簡易リフト︶などを導入しました。また、工
れない﹂との意見が相つぎ、身体に対する負担を減らすため
作業は手作業が中心であり、メインとなる作業機械が老朽
化していることから、高年齢労働者から﹁心身の疲労感が取
の朝会で全員が共有できるように周知徹底を図っています。
案件は、高齢者も交えたミーティングで対策を決定し、翌日
クシート﹂を記載させていましたが、形式化・マンネリ化し
工場労働者に対し、毎週の第一営業日に、
﹁健康セルフチェッ
朝礼時には作業上の注意事項、点検項目について当番を決
め、確認しています。確認することの目的、くり返すことの
に基づくチェックを行うこととしました。
ていたことから、職場の上司による簡単なヒアリングとこれ
﹁安全が第一﹂を心がけています。
高齢者の仕事については、生産性を求めるのではなく、本
人の 能 力 に 応 じた 生 産 量で品 質 や 出 来 栄 え を評 価 するな ど
60
意図についても説明し、意識を高める工夫も欠かせません。
※帯鋼……鋼塊を圧延して帯状にした鋼板
50
28
このような取組みにより、重大な労災事故は1件も発生し
ておらず、無事故記録の更新が続いています。
19 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
継続雇用者のモチベーション対策
製造業︵産業用生産設備の部品の設計・製造︶/U社
❶独自の再雇用規程でモチベーションをアップ
︱
U社は、主に産業用生産設備の部品の設計・製造を手がけ
て成長し、業務を拡大。現在、半導体テスト基板やテスト治
歳以降も基準を設けて、実質的に
医 療 、福 祉︵ 社 会 保 険・社 会 福 祉・介 護 事 業 ︶/ V 社
❷人事評価制度を見直し目標設定を明確に
︱
歳から
介護付有料老人ホーム、デイサービス、児童デイサービス
などの施設を運営するV社では、2012︵平成 ︶年、就業
規則の見直しに取り組み、定年を
歳に引き上げま
歳まで雇用を延長す
した。また、意欲があり継続雇用の希望がある場合には、職
歳まで再雇用し、さらに
同社で最も人数の多い部門は製造部門で、技術を身につけ
た高齢従業員は大切な存在です。定年は 歳、希望者全員
65
この制度を補完するものとして﹁再雇用規程﹂を2015
︵平成 ︶年1月に施行しました。
﹁再雇用規程﹂は、定年後も
70
定年の引き上げ後は﹁ 歳まで雇ってもらえるんですね﹂と
の声が多く聞かれるようになり、 歳前後の職員のモチベー
ることができるようにしました。
あげるとともに、常に最新の技術を提供することに努めて需
具などの開発・設計・製造・修理も行うようになり、実績を
24
務遂行に支障がないかぎり、だれもが
65
要に応えています。
60
65
モチベーションを維持・向上し、安心して働いてもらいたい
うと、雇用延長のための条件をすべてなくしました。本人が
さらに、 歳以上の雇用延長の見直しにあたり、初めは条
件を定めていましたが、やはりだれもが働ける環境をつくろ
喜ばれています。
ションが目に見えて向上し、生活設計が立てやすくなったと
60
60
上限年齢を設けずに再雇用することにしています。
65
との思いから、再雇用後の勤務形態や賃金の決め方などにつ
27
いて明文化したものです。
希望するかぎり働き続けることができる職場を実現したこと
後輩が上司になることもあるため、シートの作成を、再雇用
みも構築、再雇用後は役職を離れたり、これまで部下だった
す。改善後は、個人の目標設定が明確になり、職員のモチベー
望・意欲などの評価項目を加えて、全
同時に、人事評価制度の見直しにも取り組み、以前はあい
さつや掃除などの行動を主に評価していましたが、人柄・人
が、特に定年年齢前後の職員のモチベーションアップにつな
がったと思われます。
者が今後の自らの役割を考える機会にしてほしいとの思いも
ションが上がりました。
項目で評価していま
込めたといいます。この取組みは高齢従業員からも好評です。
4カ月ごとに上司が進捗状況や健康状態を確認していく仕組
また、再雇用希望者には、健康や仕事に関する自己評価と
今後の目標などを記す﹁面接シート﹂の提出を義務づけ、3∼
65
20
6
高齢者雇用を進めるためのヒント集
2017.1 20
冠 婚 業︵ 冠 婚 事 業 ︶/ W 社
❸﹁お客様アンケート﹂による表彰が励みに
︱
クリーニング業︵一般ホームクリーニングなど︶/X社
❹定年延長が意欲を高める
︱
布団宅配クリーニング事業なども展開しています。
X社は、一般ホームクリーニング・絨毯・着物・毛皮・革
製品のクリーニングなど多岐にわたる取 扱いがあり、また、
雇用制度を導入しました。定年を迎える半年前に本人の希望
19
を聞き、1年 ごとの契約で更新しています が、 歳を超えて
65
高齢者の雇用確保は、2003︵平成 ︶年に定年を 歳に
引き上げ、その後、 歳以降も続けて働きたいとの要望が出
ブラ イ ダ ル 事 業 を 手 がけるW 社では、2007︵ 平 成 ︶
年に定年 歳、定年後は希望者全員 歳まで再雇用する継続
60
内容に応じて、毎月の朝礼で表彰しています。さらに、実績
リーワンの結 婚 式 ができた ﹂な どのお 客さまの反 響の件 数、
がよかった ﹂
、
﹁ 庭の手 入れ が 行 き届いて美しかった ﹂
、
﹁ オン
ン維持のために、
﹃お客様アンケート﹄の結果から、
﹁サービス
高齢者は、ブライダル業務、レストラン業務、施設管理業務、
サービス業務の各部門で活躍しています。そのモチベーショ
どを勘案して年齢に上限なく雇用しています。
一方、X社には高齢者の知識・技能をいかに次世代へ継承
していくのか、高齢者のモチベーションの維持をどのように
アップの効果につながりました。
たい﹂との意見であり、定年延長は従業員のモチベーション
ことか熟慮しましたが、従業員の多くは﹁働けるうちは働き
しては体力的にも厳しく、
てきて、定年の延長を検討。
歳定年制を2009年に導入
評価にも﹃お客様アンケート﹄を加味して賞与に反映させてい
また、毎月1回、全社員対象の接客研修を行っていますが、
研 修 内 容はサー ビスに関してのもの が多く、マナー、挨 拶、
大きな効果と考えています。
確保していくのかという問題があり、解決方法として、高齢
65
ます。
﹃お客様アンケート﹄にもとづく評価が従業員の励みに
17
者の経験をOJTで若年者に伝承することとし、以降、高齢
65
もなり、一方、W社にとってはクレームが少なくなったことが、
も、本人が就業を希望すれば、本人の健康状態、業務能力な
65
清掃などについて、ロールプレイング形式を取り入れている
そうです。
歳までの引上げがはたしてよい
しました。検討にあたり、X社では高齢者が就業する環境と
70
高齢者に対する昇給は現在ありませんが、モチベーション
アップのため、勤続年数によって旅行のための功労金を支給
ることとなり、職場全体に活気が出るようになりました。
者の姿勢が前向きになり、若年者にとっても仕事の幅を広げ
70
する制度を設けることにしたそうです。
21 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
その他の取組み
❶作業の負担軽減のためサマータイム制を採用
❷世代ごとの役割を示す3つのステージを設定
鋳 造および製缶業︵普通鋳鉄などの鋳鉄製造・販売及び製缶・機械加工など︶/Z社
大正時代に創業したZ社は、産業用機械部品などの鋳造生
産を主とした鋳造メーカーです。従来の鋳造工場のイメージ
︱
Y社は、全国に旬の味を届けたいと、独自の方式を開発し、
地方農村の農業再生を支援しています。
﹁当社の社員は、みん
にとらわれない技術の開発や環境整備を行うとともに、業務
飲 食 料 品 卸 売 業︵ 農 産 物 の 卸 販 売 ︶/ Y 社
な宝物である﹂がY社社長の考え方です。
認定されています。高齢者雇用では、
サミュエル・ウルマン﹃青
︱
定 年 は 歳、その 後 働 く 意 思 が ある か ぎり 働 ける 職 場 と
なっています。 歳以降の雇用について、以前は規定がなく
春の詩﹄の思想に共感し、年齢の区別をしない雇用を行って
全般にITが活用され、
﹁IT経営実践認定鋳造工場﹂として
︶年、定年後も
おり、 歳の定年後、
希望者全員 歳まで再雇用。 歳以降は、
職場改善として、食堂兼休憩室や個人ごとのロッカーの設置
り入れて、働きやすい職場づくりを目ざしています。さらに、
基準の内容を兼題にして川柳を募集するなど、遊び感覚も取
しに着手しました。例えば、能力開発の制度化、また、行動
を果たす。
﹁若年層﹂は、ベトナムへの海外出張︵指導︶を行い、
を中心に取り組む。
﹁中高年層﹂は、業務の中心となって責任
います。
﹁高年層﹂は誇りと生きがいを持ち、若年層への指導
また、全従業員の生きがい︵希望︶へとつながるような雇用
を目ざし、それぞれの世代に応じたステージの設定を行って
時勤務︶を
夢や成長につなげる、といったものです。
間帯に行うためにサマータイム制︵午前5時∼
みによって、モチベーションの低下が少なくなりました。高
齢従業員も﹁自分たちの姿をみて、若い世代が頑張ってくれ
作業効率向上を図ってきました。
くことにしています。
ている﹂と、仕事にやりがいを感じています。
採用。このような工夫により、
社員たちのやる気の向上を図り、
12
これらの取組みの実施後、社長主催で、会社近くの飲食店
で社内コンパを開催しました。今後2カ月ごとに実施してい
このようなステージを設定することで、それぞれの役割を
十分に発揮できる環境が構築され、各ステージに応じた取組
などを行うほか、夏期には高齢者の多い現場作業を涼しい時
年齢の定めなく勤務延長としています。
就業規則において本人が希望し会社が必要と認めた者は上限
65
運用で対応していましたが、2015︵平成
働く意思があるかぎり継続雇用するという文言を就業規則に
明記しました。
65
65
同時に、人材育成に力を注ぎ、すべての社員にとって、働
きがいのある組織風土に変革していくために、諸制度の見直
64
27
65
7
高齢者雇用を進めるためのヒント集
2017.1 22
❸始業・終業時刻を自由に設定
❹定年制廃止が若手の意識の変化を生む
造 船 業︵ 船 舶 建 造 及 び 修 理 ︶/ β 造 船
β造船は大正時代に創業した会社を前身として発展し、地
域トップクラス級の造船業者として、船舶製 造、船舶 修理、
︱
α社の仕事は、その工程において独特のニオイが衣服や身
体に染みつくことや、立ち仕事が多いことなどもあり、若年
船舶機関の製造などにたずさわってきました。
食 品 加 工 販 売 業︵ 食 肉 加 工 業 ︶/ α 社
労働者の応募が少なく、中高齢者の労働力に頼らざるを得な
︱
いという現状があります。現在、α社では従業員の高齢化が
歳、定年後は希望者全
年程前に定年制を廃止しました。その背景には、①労働
者の平均年齢が高くなる傾向にあるため、高齢者にとって働
進んでおり、就業規則では、定年は
きやすい職場を確保する、②次世代への技能の伝承によって
められる︶
、
﹁仕事中の飲み物可﹂︵体調不良を防止するための
標を達成すればよく、出勤予定日や出勤時間を自分自身で決
産目標を週単位で設定し、串刺し工は自分自身の週の生産目
慮として、
﹁始業時刻・終業時刻の自由設定﹂
︵会社全体の生
するなど、
﹁ほのぼのとした風土﹂があるうえ、高齢者への配
﹁残業ゼロ時間﹂を基本として、意識改革を推進しま
また、
した。残業ゼロを実現することによって、高齢者にとって働
ているからです。
るのではないか﹂と意識面での変化が現れ、いい方向に向かっ
を現場で目の当たりにすることにより、
﹁自分ももっと頑張れ
定年制廃止により高齢労働者の人数が増加しましたが、能
率は向上しています。若年労働者層が高齢労働者の﹁働き方﹂
技能者不足を解消する、という二つの問題点があり、さまざ
水分補給など︶
、
﹁タクシーの合同利用﹂︵串刺し工の4∼5人
きやすい職場となり、ひいては勤務年数も長くなり、高齢者
は、本人から退職の申し出がなく、大きな病気がないかぎり、
は居住地が近隣であるため、毎日タクシーを会社が手配し合
による若年労働者への技能伝承も比較的うまくいくのではな
まな検討の結果、
﹁定年制・労働時間﹂の見直しに焦点をあて
同で利用してもらっている︶などの取組みがあります。
いかと考えたからです。この取組みは、高齢従業員ばかりか
ことだと会社では考えています。
若年従業員にとっても、労災事故防止の観点から意義のある
年間を通じて体調が悪いからと仕事を休む高齢者がほとん
どいないのは、これらの工夫によるところが大きいと考えて
何歳まででも働ける継続雇用制度が根づいています。
歳まで勤務延長することになっています。しかし実際
10
ることにしたためです。
員を
60
その背景には、従業員 が自宅で収穫した農畜産物などを、
職場に持ち寄って分け合ったり、
﹁さん﹂づけで呼び合ったり
65
います。
23 エルダー
高齢者雇用を進めるためのヒント集
特集
トピックス
エイジマネジメント研究会と日本予防医学協会がシンポジウムを開催
職場組織の再構築、あるいは健康
日本の基幹産業である製鉄所に
する〝マインド〟の有無も大きい。
日、
それは例えば、会社から次代に向
月
産業医として勤務している田中氏
︶年
診断に基づく疾病の一次予防とい
2016︵平成
公益社団法人日本産業衛生学会エ
けた技術・経験の伝承などが求め
そして、
じる﹂という。
は、高齢従業員の労働問題に着目し
進み、現場で必要とされる労働力
設 備のオートメーション化などが
ったアプローチが重ねられてきた
今回のシンポジウムは、そうし
イジマネジメント研究会と一般財
た流れのなかで差し迫った問題を
られた場合などの心情などにも通
歳現役時代の
るシンポジウムが都内で開催され
は減っているのが現状﹂とし、その
てきた。田中氏は﹁作業の効率化、
た。 テ ー マ は、
﹁
取り上げたもので、産業医、研究
なかで多能工化やマニュアル化が
経緯が示された。
ソーシャルスキルとは?﹂
。近年、
者、企業の経営層の三者が、それ
進み、知識・経験の伝承などが困難
団法人日本予防医学協会が共催す
働く高齢者に求められている課題
ぞれの立場からシンポジストとし
住 金︵ 株 ︶鹿 島 製 鐵 所 安 全 環 境 防
最初のシンポジストは、新日鐵
な要素として﹃収入を得るため﹄で
ーションが不可欠。もちろん大き
働く人たちには、何らかのモチベ
歳以上の高齢労働者
について、さまざまな視点からの
の際に高齢労働者に対するインタ
また、田中氏は、健康診断など
になってきている点を指摘した。
報告、意見交換が行われた。
☆ ☆
シンポジウムに先立つ一般演題
り巻く産業現場の実情が報告され
災部安全健康室主幹で、同製鐵所
ビ ュ ー を 続 け て き た が、﹁ 長 期 間
た。 そ の う え で、 エ ビ デ ン ス︵ 科
ある点は見逃せないが、仕事に対
では、主催者から高齢労働者を取
学 的 根 拠 ︶に 基 づ い た 作 業 管 理・
の産業医を務める田中完氏。
前提に﹁モチベーション﹂が
て登壇して報告を行った。
15
70
28
70
作業環境の改善、
作業計画の作成、
70
に望まれるスキルとして、①働く
田中 完氏
11
﹁ 歳現役時代のソーシャルスキルとは?﹂を
テーマに議論
TOPICS
2017.1 24
取り込むには、高齢労働者個人の
げた。もとより、それらを現場に
から期待されること。その期待に
を 高 齢 者 の 仕 事 に た と え、﹁ 周 囲
継続する﹂と掲げたうえで、これ
らに期待されていくとよい循環が
割り﹂は、
﹁期待されて実行し、さ
山田氏は冒頭、職場における﹁役
に円滑に仕事を行っている人には、
た ち を 対 象 と し た が、﹁ 再 就 職 後
定年後に再就職した
歳の人
高齢労働者へのインタビューは
を行った結果などを報告した。
ともに、その上司からも聞き取り
働者へのインタビューを試みると
杉山敦氏。田中氏と同様、高齢労
動 車 九 州︵ 株 ︶で 取 締 役 を 務 め る
した。
の保持などが求められている﹂と
康・体力の維持、モチベーション
そのうえで、高齢労働者には、健
基 準 に 則 っ た 仕 事 の 按 分 は 必 要。
ちろん現場では、作業の定量負荷
く 心 構 え に 言 及。 杉 山 氏 は、﹁ も
る﹂と職場で良好な人間関係を築
の功がある人として尊重してい
謝、④こだわらないこと
当機構雇用推進・研究部の浅野浩
美 部 長 が 指 定 発 言 者 と し て 登 壇、
ることができる人になること﹂と
み上げるだけでなく、それを与え
職成功者〟の上司は、
﹁職務上の上
ケースが多いが、そうした〝再就
職場の組織上、上司が年下になる
うことができた。職場には、期待
キルについて、有 用 な 話 を う かが
役の人たちに必要なソーシャルス
を掲
役割り理論を展開した。
健康・体力の維持管理、職場での
応 え る と 応 援 す る 人 が 出 て く る。
﹃ 仕 事 の 使 命 を 考 え る ﹄、
﹃前任者
意欲、②コミュニケーションの方
支援体制の整備などが必要という
また、期待に応えることで、ほか
の話を聴く﹄、あるいは﹃とりあえ
法、③期待されていることへの感
田中氏だが、前述した4つのスキ
の人たちにも役割りを与えたくな
ずやってみよう﹄などといった共
︱
ルは、そのまま﹁高齢者にとって、
るもの﹂と高齢労働者と職場の関
∼
広く一般 社 会のニー ズに合ってい
係性に言及した。
通項があった﹂という。
☆ ☆
3 名 の シ ン ポ ジ ス ト の 報 告 後、
る﹂と結んだ。
山 田 氏 は、﹁ 職 場 で 歓 迎 さ れ る
歳で現
続いて登壇したのは、順天堂大
歳 〟に な る た
する役割をきちんと伝えること
﹁ そ れ ぞ れ の 立 場 か ら、
学スポーツ健康科学部スポーツマ
述 べ、 そ う し た〝
下関係は保ちつつも、高齢者は技
また、高齢者が再就職した場合、
ネジメント学科助教の山田泰行
めには、①後ろ向きな禁句を発し
歳 〟に な る に は、 役 割 り を 積
氏。 自 ら の 職 場 の 上 司 ら 高 齢 の
メント研究会が、毎春、開催して
シンポジウムは、エイジマネジ
た﹂と発言した。
に応える能力が重要と再認識し
が、また、労働者本人には、期待
〝
66
術力や経験を積んだ人であり、年
⑤人の話は聴いてみる、⑥迷った
を立てない、④プライドを捨てる、
ら両方やってみる、⑦やってから
後悔する、などに留意しつつ、
﹁ノ
い る 研 究 集 会 と は 趣 き が 異 な り、
広く一般に向けた情報発信を目的
に開催しているもので、今回で
回目の開
ムは盛況のうちに閉幕した。
催もアナウンスされ、シンポジウ
回目を数える。来秋の
3
ーポリシーで役割りを積み上げて
いくことが重要﹂とした。
良好な人間関係を築く
杉山 敦氏
〝役割り〟の積み上げを
65
ない、② 見 返 り を 求 め ない、③ 腹
70
4
70
続くシンポジストは、トヨタ自
25 エルダー
70
方 々 と の 関 わ り を 例 示 し な が ら、
山田泰行氏
52 回]
[第
からない。人間は悪心を持つ者も
ことが多かった。それがそのまま
惑々しっ放しで、己れを振り返る
い。 四 十 の こ ろ も 不 惑 ど こ ろ か、
だ。ところがわしはそうはいかな
いはずだというのが孔子の教え
まに生きても、決して間違いはな
これだけ年を取れば自分の心のま
ければならない。従心というのは、
ぎたから、従心の心構えを持たな
いった。わしはすでに七十歳を過
知命、六十で耳順、七十で従心と
﹁孔子の教えで、十五歳で志学、
三十で而立、四十で不惑、五十で
訊かれて益軒はこう答えた。
ぜ﹁ 益 軒 ﹂と 改 称 し た の か、 人 に
号していた。七十八歳のときにな
益 軒 は、七 十 八 歳 ま で﹁ 損 軒 ﹂と
江戸時代の学者で、植物学や人
生論でたくさんの本を書いた貝原
め た。 そ れ は、
﹁ や は り、 骨 を 埋
たがって、益軒はこの考え方を改
らである。しかし、加齢するにし
当時有名な学者がたくさんいたか
藩に願って京都に出た。京都には
だけでは満足できずに、しばしば
しかし、かれの学問好きは、福岡
益軒は福岡の生まれで、領主で
あ る 黒 田 家 に 仕 え る 医 者 だ っ た。
と説明した。
その努力をしようと考えたのだ﹂
いう考え方を〝益〟と呼び、わしも
世の中になるはずだ。そこでこう
てもらう。お互いの仏心が交流す
見出し、こちらの仏心を引き出し
めには、自分がまず他人の仏心を
間はもっとよくなる。そうするた
いに発見し合い、交流させれば世
諸国を旅して故郷に戻る
いるが、大方は善心を持っている。
年を取って、いまに至っても自分
める福岡の地に戻って、いままで得
すなわち仏の心だ。この心をお互
の 心 の 思 い の ま ま に 行 動 し た ら、
た学 識 を 活 用 す べ き で は な い か ﹂
れば、世間はもっと温かく優しい
世の中にどれだけ害を与えるかわ
2017.1 26
立 つ よ う な 活 動 を す る こ と こ そ、
た も の を、
﹁地域の人々のお役に
は、それはそれでいい。しかし得
ころから日本国内のかなりの地域
もともと益軒は旅が好きだ。若い
しながら、行動を改めるのである。
﹁ 何 を や っ て も、 自 分 は ま だ ま
だ従心の境地に至らない﹂と反省
なり得る植物の発見﹂である。益
が、
﹁ 国 内に生えている 漢 方 薬 に
だ か ら 彼 の 旅 行 の かなりの部分
し か め る 必 要 が あ る ﹂ と 考 え た。
﹁ 漢 方 薬 に な る よ う な 植 物 が、
日本に生えていないかどうかをた
﹁ 従 心 の 境 地 に 至 る ま で は、 わ
しは起承転々で生きる﹂
と思うのであった。益軒は、
﹁益軒と号を変えた甲斐があった﹂
き回った。益軒はこういう現象を、
老人たちは喜んで益軒と一緒に歩
真の学問の意味があるのではない
まで歩き回っている。それは単な
軒と号を改めてからの彼は、極力、
と 告 げ て い た。 普 通 は 起 承 転
結で、一生を終えようというのが
と思ったからだ。学問の他国修行
か﹂と思い立ったからである。
る 行 楽 で は な い。 彼 は、
﹁ 日 本の
﹁ 体 力 の 関 係 上、 歩 き 回 る 地 域 は
っ放しで生き抜くことになるかも
各 地には、その地域なり の 特 性 が
ち方はいままで以上に深める﹂と
しれない﹂と、密かに心に期して
故郷に戻った彼は、積極的に北
九州の地域を歩き始めた。自然に
行動方法を確定した。それも、﹁一
いたのである。脇から見れば、
常人の考えだ。しかし従心に至れ
人ではやれないことも、多くの人
なるべく家から近いところとす
と協同して行えば可能になる﹂と
﹁ 益 軒 先 生 は、 す で に 十 分 に 従
心の境地に達しておられる。われ
ある。その特性が何であるかを探
い う 視 点 に 立 っ て、 時 間 の あ る
われの指標だ﹂
接することも多かったが、それ以
したがって、その土 地 に 住 む 人
たちの人情や、あるいは生まれ出
人々を誘った。特に彼と同じよう
な い 益 軒 は、﹁ 場 合 に よ っ て は、
る名産品、さらにその土地の持つ
な高齢者に声をかけた。
る ﹂と い う 方 針 を 立 て、﹁ そ の 代
た。神主や住職も、益軒の学識が
金・銀・銅などの鉱物の発見、そ
と見ているのだが、益軒は決し
てそうは考えなかった。
り出すのが楽しみなのだ﹂と考え
深いことを知っているので、関心
し て 特 に 関 心 を 持 っ た の が、﹁ 漢
﹁ わ し と と も に 山 野 を 歩 け ば、
足が丈夫になり健康が保てる。一
﹁ い つ ま で 経 っ て も、 自 分 に 満
足のできない、至らない人間なの
上に神社やお寺を歩いた。
そして、
を持って疑問に答えた。益軒の意
方薬になるような植物の有無﹂で
緒に歩こう﹂
最後まで起承転々すなわち転がり
見によって、寺社の由来が修正さ
ある。江戸時代の医法はほとんど
八 十 五 歳 に な っ て、 益 軒 は 死 ぬ。
わり、その地域に対する関心の持
れ た と こ ろ も あ る。益 軒 の 方 が、
古代中国から伝わったものなの
な ど と い っ て 誘 う の で あ る。
誘われた老人たちも、益軒が高齢
当時としては相当な高齢だ。しか
ていた。
﹁わたしの学習が誤っていた﹂
で、薬もまた中国から輸入してい
でありながら、よく山野を歩き回
し彼は最後まで、
お寺の住職や神主に頼み、
﹁その寺
といって、自説を改めることも
あった。こうして、益軒が訪ねる
た。朝鮮ニンジンなどの効果のあ
っては植物を探し回っていること
社の由来﹂を詳しくたずねた。問
寺社の由来は、それぞれ正しいも
る 植 物 は 非 常 に 高 い も の になる。
を知っていた。それも、
た知識と、少し違うところがあれ
ば、疑問として神主や住職に糺し
損軒を益軒に変える
のに変わっていった。益軒は他人
そのため益軒はかねがね、
答をしていて、自分がいままで得
に 告 げ た と お り、 孔 子のいう﹁従
﹁ 従 心 に 至 ら ぬ た め に、 つ い に
起承転々で終わってしまった﹂
と呟いていたという。
だ ﹂と い う 思 い を 捨 て な か っ た。
心﹂の境 地に近 づきたいと 願って
というので、健康に関心の深い
﹁薬になる草や花を探している﹂
﹁ 漢 方 薬 を 日 本 で 生 産 で き な い
か﹂と思っていた。そのためには、
いた。しかし謙虚な彼は、
27 エルダー
高 齢 者 に 聞く
第
33
回
わ かず とし
な
名和和敏さん
提供する「ケアワーク東京」のヘルパーとして活躍している。67歳で介護福祉士の
資格を取得した名和さんが、飽くなきチャレンジ精神と生涯現役の可能性を語る。
いつもスキルアップを目ざして
父が東京拘置所に勤めていた関係で、私は
都内の官舎で産声を上げました。大学の商学
年近くかかったでしょうか。遅い出
なりましたが、大型のクレーンは一人前にな
るには
発でしたが、クレーン運転士として定年まで
勤めあげることができました。周囲の協力が
名 和 さんが 現 在 働 く﹁ケアワーク 東 京 ﹂は
本 誌 2 0 1 6 年 8 月 号 の﹁ 特 集 ﹂で 紹 介 さ れ
あったからこそだと思っています。
た。そのなかで、三輪加子所長は、 歳で介護
部を卒業後、会計事務所に就職、会計士を目
めて、親戚の運送会社に雇ってもらいました。
ざして5年ほど勤めた後、よりよい収入を求
会計事務所からトラックの運転手へ転職した
福祉士の資格を取得した名和さんのことにも
こ
ことに、自分のなかで迷いはまったくありま
触れている。次々にスキルアップを果たした
か
せんでした。結果的には運送業界で定年を迎
若いころのチャレンジ精神は、いまもなお飽
わ
えるわけですから、人生は不思議です。
くことがない。
歳のとき、大手の運輸関係の会社に転職、
クレーンの部署に配属されました。移動式ク
へ方向転換することにしました。
きいことから、将来のためにクレーン運転士
トラックの仕事はやりがいもありましたが
荷物の積み下ろしを含むため、体の負担も大
気持ちの方が強かったように思います。
たが、自分のスキルアップを図りたいという
まだ﹁ケアワーク東京﹂の事業所が展開され
ワーク弥生﹂の話を聞きました。そのころは
てないと思い、正直迷っていました。そんな
から夜遅くまで働く仕事では両親の役には立
感じていましたし、いままでのように朝早く
ようか﹂と思ったときに一番考えたのは高齢
歳で定年を迎えた後も再雇用で3年間働
か せ て も ら い ま し た。 そ の 後、﹁ さ て ど う し
親孝行が果たせた感謝
み
最初は普通免許で乗れる2トン車に乗って
いましたが、もっと大きな車に乗れるように
大型2種の免許を取得しました。さらに、大
型特殊免許、トレーラーの免許を次々に取り
レーンなど2つの免許を持っていたものの、
ておらず、母体が﹁ケアワーク弥生﹂でした。
ました。収入のことはもちろん頭にありまし
から、先輩から厳しく指導してもらいました。
67
クレーンを運転するのはまったくの初心者です
折、友人の奥さんから訪問介護を行う﹁ケア
の両親のことでした。私は長男なので責任も
60
非常勤ヘルパー
縁あって介護の世界へ転身を遂げた。現在は居宅介護支援・訪問介護サービスを
10
介護の仕事はまったく未知の世界でした
が、高齢の両親のことを思うと、遠からず介護
小型のクレーンは5年ほどでこなすように
40
ケアワーク東京
名和和敏さん(69歳)は、クレーンの運転士として定年を迎えた後、
2017.1 28
高 齢 者 に 聞く
軟な雇用形態ということもあり、母の世話も
イントがわかり、少しは父の役に立てたかな
び、現場で実際に体験したことで、介護のポ
父は4年前に他界しましたが、晩年は脳溢
血で倒れ体が不自由となりました。研修で学
やノウハウは私の原点となっています。
す。
はいまも元気にヘルパーとして働いていま
介で働かせてもらうことになりました。彼女
に一カ月講習に通った後、友人の奥さんの紹
ました。まずヘルパー2級の資格取得のため
の日々が予測され、その道に進むことを決め
うかがい、内容は入浴介助、買い物、食事の
は訪問介護で、1時間ほどご利用者のお宅に
勤務形態は火曜日から土曜日まで。時間に
すれば月に100時間ほどでしょうか。仕事
働きたいという思いも強くなります。
ます。また、私より年上の方もいるので長く
施してくれるので、モチベーションも上がり
私は非常勤ヘルパーですが、会社は常勤・
非常勤を区別することなく計画的な研修を実
らでしょう。
歳を目前にしても、前向きになれるのは
やる気をひき出してくれる職場風土があるか
レンジするつもりです。
実は一昨年ケアマネージャーの試験を受験
しましたが、見事に落ちました。また、チャ
過ぎたときに挑戦して資格を取得しました。
介護福祉士の受験資格ができるので、3年が
週2回は整体に通っています。
クに乗っていた影響なのか腰痛があるので、
健康維持のために心がけているのは食事で
しょうか。早寝早起きして、バランスのよい
です。
方で、できるならば生涯現役を貫きたいもの
すが例えば1日減らしてみる、あるいは1日
ときかなと思っています。今は週5日勤務で
﹁ ケ ア ワ ー ク 弥 生 ﹂時 代 に、 月 回 2 時 間
半ほどの研修を受け、それが4年間続きまし
たが、ここで先輩たちから教わった介護の心
年先を見つめて
高齢者の仕事だと思うものの、まもなく
歳になりますから、仕事の形態を少し考える
の休憩時間を増やすなど、体力に合った働き
の仕事だと思っていました。しかし、ご利用
この仕事を始めて6年が経ちましたが、最
初のころは体力もいることから介護は若い人
の機敏な所作が役に立っているようです。
ことと、若いころ空手をやっていたので、そ
介助が一番多く、年齢のわりには上背がある
用意など多岐にわたります。私の場合は入浴
介護の現場で第二の人生を始めてみませんか。
ば強力な 力になります。高齢者 のみなさん、
介護の現場は本当に人手不足です。若い人
の情熱と、高齢者の人生経験がタッグを組め
勢はこれからも続けていこうと思います。
も先輩として謙虚に学んできました。その姿
者でしたから、たとえ自分よりずっと年下で
朝食をとるようにしています。また、昔トラッ
者と接するなかで、考えが変わってきました。
ご利用者の笑顔に出会えば苦労も吹き飛びま
歳で健在ですが、柔
を積み、トラックに乗り、クレーンをあやつ
ご利用者はみなさん人生経験豊かな人ばかり
す。私はいま、
介護の仕事こそ高齢者の仕事
中。スイッチが入り続けている。
名 和さんの人 生には絶 え ず 転 機 が 訪 れた。
﹁大きな決断をしなければならないときに、
スイッチが入ります﹂とのこと。経営の知識
り、いまは﹁ケアマネージャー﹂の資格に挑戦
ですから、年齢が近いので話もついつい弾み
います。それは、いまと同様、愛用のバイク
年先の自分をイメージして
ます。そういう意味で介護は高齢者に向いて
と思っています。母は
70
を駆ってご利用者のお宅に向かう姿です。
10
ことに感謝の気持ちで一杯です。
10
いる仕事ではないかと。まさに自分の人生経
70
験が生かせる仕事です。
十分にできます。思いがけず親孝行ができた
若いヘルパーと楽しく会話することも元気
の源です。仕事が変わるたび、常に私は初心
1
介護の現場での実務経験が3年以上あると
29 エルダー
93
高 齢 者 の現 場
このコーナーでは、都道府県ごとに、
当機構の高年齢者雇用アドバイザーの協力を得て、
高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、
村田発 條 株式会社
65
であり、
﹁餃子のまち﹂としても名高い宇都宮市
課 長 は、 2 0 1 6︵ 平 成
︶年 度 に 拡
に所在しています。現在注力している取組みに
ついて
今回は栃木県を訪問しました。当機構栃木支
し た 農 業 も 盛 ん で あ り、 日 光、 鬼 怒 川、 塩 原、
た、鬼怒川を代表とする河川の豊かな水を利用
医療関連は全国の核となる集積があります。ま
キシコ、中国にも関連会社や事業を展開し、国
業分野で使用されるばねを製造。アメリカ、メ
を続け、自動車や家電、建設機械など多様な産
設計、製造までを行う専門メーカーとして成長
現 在、 ば ね の 基 礎 研 究 か ら 技 術 開 発、 実 験、
内外の企業から信頼を集めて、特に、自動車エ
那須地域は観光業も盛んです﹂と説明がありま
栃木支部高齢・障害者業務課は、県庁所在地
した。
済 を 牽 引 す る﹃ も の づ く り 県 ﹄で す。 と く に、
部高齢・障害者業務課の 年彦課長に産業の特
創業100周年を迎えた百年超企業です。
高度な技術力を強みにして躍進。2013年に
業 し た﹁ 村 田 金 物 店 ﹂を 前 身 と し、 ば ね 製 造 の
同 社 は 1 9 1 3︵ 大 正 2︶年、 宇 都 宮 市 に 開
場をご紹介します。
が け る﹁ 村 田 発 條 株 式 会 社 ﹂の 高 齢 者 雇 用 の 現
ただき、宇都 宮市で﹁ばねの製造・販 売﹂を手
齢者雇用アドバイザーの山下信さんにご案内い
今回は、栃木支部高齢・障害者業務課の高年
世界トップクラスのメーカー
用をすすめています﹂と語ります。
した事業主を支援するものとして、助成金の活
がいきいきと働ける職場づくりに取り組むこう
問合せなどがあり、﹁意欲と能力がある高齢者
や、定年の引上げなどによる適用要件に関する
る高齢者の健康管理制度の措置に対する問合せ
進をあげ、このところ同支部には製造業におけ
充された﹁高年齢者雇用安定助成金﹂の活用促
28
徴をたずねると、
﹁栃木県は、製造業 が県内経
自動車、航空、産業用などの輸送用機械、医薬・
歳以降は希望にあった働き方で
ベテラン技術者が活躍する職場
そしていきいきと働く高齢者本人の声をご紹介します。
栃木県
﹁高年齢者雇用安定助成金﹂の活用を促進
第 56 回
2017.1 30
スといわれています。ひと口に﹁ばね﹂といっ
ンジン弁のばね製造については世界トップクラ
2010年度、﹁希望者全員
歳まで再雇用す
て、改正高年齢者雇用安定法の施行に先駆けて
技術は大変な価値がありますので、製品開発力
て、﹁長年勤務して身につけた高齢者の技能や
従業員の高齢化が進む同社の今後を見据え
◆相談・助言は無料で行っています。お気軽にお問い合わせください。
住所:宇都宮市若草1- 4 - 23 栃木職業能力開発促進センター内
栃木支部高齢・障害者業務課
電話:028(650)6226
亀田茂執行役員・総務部長
歳。
歳
65
歳以降の
65
別に面談し、本
は1年ごとに個
んが、再雇用後
制度はありませ
雇用についての
す。
度を設けていま
まで雇用する制
職員として
歳で、希望者全員を再雇用し、嘱託
60
65
提供する『企画立案サービス』の実施に結びつけています。
情報提供やアドバイザーが事業所に具体的な改善案を作成して
期待する役割は技術の継承
同社の従業員数は317人。うち正規従業員
が227人。全従業員の半数を超える180人
人、営
人のほか、品質保証、総務、企画経
が製造部門に所属し、技術開発部門に
業部門に
23
理、情報システムなどの部門に数人ずつの構成
20
となっています。平均年齢は
定年は
42
人が希望し、会
31 エルダー
る 制 度 ﹂を 導 入 し て い た こ と を 知 り、﹁ 感 心 し
実現に向けて、
「相談・助言記録票」を精査し、アドバイザーへの
ても、
﹁板ばね﹂
、
﹁線ばね﹂などさまざまな形状
員が協調して活動しているといいます。
の強化と若手﹃人財﹄の育成のため、積極的に
そうしたなか、より専門的な企画立案や就業意識向上研修の
た﹂と振り返ります。そして、﹁同社の経営は、
かり、各担当のサポートのみならず、業務を通してすべての職
や種類、大きさのものがあり、また、ばねの開
しのよい情報共有を会議および業務ミーティングの場などでは
高齢者雇用に取り組むことが業績向上にもつな
日々の業務にあたっては、栁課長の指揮のもと各職員が風通
生産技術力が大きな支えになっています。その
事業所から毎年約 500 事業所を訪問し、高齢者雇用にかかわる相
発により、例えば、自動車部品の省スペース化
談・助言を行っています(2015 年度の相談・助言数は577件)
。
がると考え、提案をしています﹂と同社の高齢
に問題意識をもち、前向きな方です」と評価しています。
基礎をつくってきたのが現在の高齢従業員の
◆栃木支部では7人の高年齢者雇用アドバイザーが県内の約 1,800
や軽量化が図られるなど、小さくとも絶大な力
て、企業の問題解決に向けて対応しています。協調性があり、常
の経営実態や経営者の考え方を理解しながら、相手の立場に立っ
者雇用の取組みを支援。例えば、疲労度が少な
企業診断士としての多くの企業への支援経験を活かし、事業所
方々といえるでしょう。優れた技術力・品質力・
高年齢者雇用アドバイザーです。同支部の栁年彦課長は山下ア
を発揮するばねを開発しています。
ドバイザーについて、
「探究心のある骨太のアドバイザーで、中小
い姿勢でできる作業への配慮を提案し、立ち作
◆山下アドバイザーは、栃木支部高齢・障害者業務課に所属する
経営力を発揮し、ばね専業メーカーとして有力
高齢者雇用の相談・助言活動を行っています
山下アドバイザーは、アドバイザー活動の事
めて取り組んでいます」
業の一部が座り作業に改められました。
勢を常に意識し、実行できるように努
な企業の1つに発展した同社には、今後も高齢
診る、聴く、一緒に考える”という姿
業所訪問で2014年に村田発條を訪問。その
断士として心がけてきた“現場に行く、
者雇用の手本になっていただきたいと思ってい
山下アドバイザーから
とき、同社では技術・技能の継承のためと定年
「アドバイザー活動では、中小企業診
ます﹂と山下アドバイザー。
年齢:68 歳 アドバイザー歴 : 4年
後も働きたいと希望する高齢従業員の声に応え
山下 信アドバイザー
社が必要と判断すれば
歳から
歳以降も雇用していま
す。そのなかには、本人の希望により
65
健康とワーク・ライフ・バランスに配慮
高齢の従業員が無理なく力を発揮できるよう
に、
・
ます。こうした配慮は、高齢従業員に対するも
子育て世代に向けても職場づくりに努めるなど
のだけでなく、子育てと仕事が両立できるよう、
65
∼
歳で、
人、
65 11
歳以降はパート従業員に雇用形態を切り
﹁チャレンジ精神が旺盛で、メキシコで元気
替え、希望に応じて半日単位の勤務を可能とし、
歳
人︵ 全 体 の
に活躍しています﹂と、取材にご対応いただい
∼
歳以上の従業員は
健康やワーク・ライフ・バランスに配慮してい
現 在、
3 %︶
。 年 齢 別 に み る と、
歳以上1人。最高齢者は
23
最年少者は
調達全般を担当し
ています。前職で
は管理業務に長く
たずさわり、資 材
勤める従業員が多く、また、親子三代で勤めて
同社には、学校を卒業して入社し、定年まで
外にかかわらず、円滑に業務をすすめることと、
﹁村田発條での勤務は5年になります。社内
働きやすい環境づくりに力を入れているとお聞
ばねの製造はもとより、自社で扱う機械をつく
いる人もいるそうで、そのような状況からも働
部長は次のように語ります。
る部門もあり、現場では技術、技能に加えて発
どのような業務にもなるべく早く対応すること
調 達 に も か かわっ
想力も必要です。高齢のベテラン従業員にはそ
きやすい職場環境であることがうかがえます。
会社に貢献したい
献することが私の役割と認識しています﹂と話
す山我さん。笑顔の表情がやわらかです。
また、
﹁よりよい人間関係を築くこと﹂、
﹁現場、
現 物、 現 実 と い う 3 つ の﹃ 現 ﹄を 重 視 し て 仕 事
に臨むこと﹂を大事にしているといいます。
長年勤務した会社を定年退職後に再び働いて
いることについては、﹁外に出て働いていると、
いろいろな面で刺激が得られ、チャレンジ精神
歳︶は、自動車メーカーを定
年退職後、NPO法人などを経て、 歳で村田発
も生まれます。現在の仕事は一人で担当してい
山我誠一さん︵
ていたそうで、その経験を活かしています。
の力もあり、また、問題に直面したときなどは
回、他社を定年退職後に村田発條に入社した方
また、
てはならない存在といえます。しかし、それだ
と、勤続
年のベテラン技術者の方から仕事に
けについ頼ってしまい、育成が遅れてしまうこ
必要と考えています﹂
技術の継承は、高齢のベテラン技術者に若い
50
條に入社。生産管理部に所属し、主に副資材の
63
従業員の育成をになってもらうほか、ベテラン
の仕事を撮影して、映像として残す取組みも進
めているといいます。
68
決したり、道を切り開く力をつけていく配慮も
対する思いなどをお話しいただきました。
60
ともありますので、若い従業員が自ら問題を解
引き出しの多さに助けられることもあり、なく
を心がけています。そして、利潤のアップに貢
副資材調達を担当する
山我誠一さん
代の高齢者の採用も行っており、今
きしました。
高齢従業員の存在や期待について、亀田総務
18
﹁期待している役割は、主に技術の継承です。
中で、新工場ではハード面でもだれにとっても
幅広く行っているといいます。また、取材時に
人、
60
在宅で営業を補助する業務を担当しています。
歳
64 37
た村田発條の亀田茂総務部長︵執行役員︶。
と聞きました。
2年間、メキシコ工場に赴任している人もいる
65
73
60
70
は宇都宮市内の工業団地内に新しい工場を建設
13
歳、
製造部門で腕を磨いています。
69
2017.1 32
報が共有しやすいように、データ化、システム
るのですが、ほかの人にも扱うことができ、情
上げと最終点検を担当しています。
を製造するための金型づくりにたずさわり、仕
る卓越した技術をもち、現在、主に自動車部品
今後も人材を核
て い き ま す ﹂と
育成に力を入れ
けているのは、安全とスピードアップです。そ
現在の制度でも
雇 用 に つ い て、
ザーは、
﹁高齢者
山下アドバイ
しています。
長を図りたいと
にして会社の成
化をすすめています。自分にできることに取り
歳まではフルタイムで働き、それ以降は自
ら希望して週3日の勤務としています。
組んで会社に貢献したいと思います﹂と意欲的
に語ります。体力維持のため、最近スポーツジ
﹁働き方の希望を聞いてもらえるので、無理
69
なく続けられています。仕事をするうえで心が
ムの会員になったそうです。
代に技術を伝える
のために、現場と設計者が一体となって取り組
むことを大切にしています﹂と菊地さん。
歳以降も働くことができる﹄といった内
者は
よいので すが、一歩すすめて、﹃会 社が認めた
る役割もにない、取材時には金型のねじの締め
容を就業規則に明記されることを期待していま
代が
人の従業 員がおり、
︵取材・増山美智子︶
今後の取組みにも注目したい事業所です。
きたい﹂と締めくくりました。
り、売上げ、生産性の向上を目標に前進してい
ンも若手も知恵を出し合える職場環境をつく
し て み た い と 思 い ま し た ﹂と 応 え て、﹁ ベ テ ラ
にもプラスとなるものであるとうかがい、検討
てくると思います。高齢者雇用制度が若い世代
くに製造業は人材を確保することが厳しくなっ
ていますが、少子化の時代ですので、今後、と
亀田総務 部長は、﹁毎年新規学卒 者を採用し
65
代、
歳︶
は、村田発條一筋の道を
代の後輩に技術を継承す
加減についてマンツーマンで伝えていました。
す。高齢者雇用制度の拡充は、高齢者だけでな
代と
菊 地 さ ん は、 若 い 従 業 員 か ら﹁ す ご い 技 術 を
く若い世代に対しても明るい展望を与えること
現場では、
100分の5ミ
もった方です﹂と尊敬され、憧れの存在となっ
になり、会社に対する信頼度を向上させます。
歩んできた、勤続
リほどの違いを手
ています。
また、企業価値の増大にもつながるものと考え
代は
59
術者です。
の感触で確認でき
﹁いまこうして働いていることは、自分の生
もうしばらく働き続けて、自分の経験をすべて
後輩に伝えたいと思います﹂と菊地さん。
健康と体力づくりのため、休みの日は早起き
して3㎞ほど歩いているそうです。
歳以降の雇用の制度づくりを提案
人、
50
亀 田 総 務 部 長 は、﹁ ベ テ ラ ン の 力 を 借 り て、
代が
78
これまで中間層の育成にも励み、現在
人、
30
年のベテラン技
村田発條が製造するばね製品
ています﹂と提案しました。
30
きがいになっているように感じます。できれば
20
49
比較的安定した構成となりました。これからも
33 エルダー
65
65
40
50
30
菊地孝夫さん
︵
金型づくりの現場で後輩に
技術を伝える菊地孝夫さん
20
相談室
1.﹁電動ファン付き呼吸用保護具﹂とは
いうマスクを着用することをお勧めします。
にどのような保護具なのかを教えていただけないでしょうか。
ています。同業者からは﹁電動ファン付き呼吸用保護具﹂の使用を勧められましたが、具体的
30
︵ powered
﹁電動ファン付き呼吸用保護具﹂
を略して﹁PAPR﹂
air purifying respirator
と呼ぶことがあります︶は、粉じん、あるいは
有害ガスを吸入しないために着用する﹁ろ過
式呼吸用保護具﹂のひとつです。基本構造は、
起こされる可能性のある職業病︶を予防する
じん肺︵肺に砂、石などの粉じん
を大量に吸い込むことによって引き
働者にとって は、呼吸に負担がかか ります。
の労働者もさることながら、とりわけ高齢労
ろ紙を通して呼吸を行うときには、現役世代
うことが大切です。しかし、
﹁防じんマスク﹂の
﹁ろ過材﹂
︵ あ る い は﹁ 吸 収 缶 ﹂︶、
﹁ 排 気 弁 ﹂、
︵あるいは﹁フード﹂や﹁フェイスシールド﹂
︶
、
んマスク﹂や﹁防毒マスク﹂と同様で、
﹁面体 ﹂
表 的 な﹁ ろ 過 式 呼 吸 用 保 護 具 ﹂で あ る﹁ 防 じ
従来から幅広く作業現場で使われている、代
ためには、粉じんを吸い込まないようにする
このため長時間にわたる作業がむずかしくな
﹁しめひも﹂
︵ 隔 離 式にあってはさらに﹁ 連 結
ために﹁防じんマスク﹂を着用して作業を行
ファンの働きによって、楽に呼吸ができる呼吸用保護具
ができる﹁電動ファン付き呼吸用保護具﹂と
当 社 は 従 業 員 数 人 ほ ど の 主 に 土 木 工 事 を 手 が け る 建 設 会 社 を 営 ん で い ま す。
粉じんが舞うなかで作業を行うこともありますから、防じんマスクの着用を徹底しています
﹁ 防 じ ん マ ス ク ﹂よ り も 呼 吸 を 楽 に 行 う こ と
ることが予想されます。このような場合には、
公益社団法人日本産業衛生学会 エイジマネジメント研究会 編
健 康 ・安 全
]
33 回
第
[
が、 最 近、 高 齢 労 働 者 を 中 心 に 、 作 業 時 の 息 苦 し さ を 訴 え る 労 働 者 が 増 え て い る よ う に 感 じ
1
﹁電動ファン付き呼吸用保護具﹂について教えてほしい
働く
高齢者の
ための
2017.1 34
健康・安全 相談室
﹁型式検定を受けるべき機械等﹂
︵労働安全衛
年
月1日から施行されていま す。 さ ら に、
労働省告示第455号︶が公布され、2014
ま た、 2 0 1 4︵ 平 成 ︶年 月 日 付 で
﹁電動ファン付き呼吸用保護具の規格﹂
︵厚生
め、高い防護性能を持った呼吸用保護具と位
ことで外気の漏れこみが少なく抑えられるた
ができるとともに、面体内が陽圧に保たれる
じんマスク﹂や﹁防毒マスク﹂よりも、楽に呼吸
とによって、自分の肺で空気を吸引する﹁防
ァン﹂が内部に清浄化した空気を送り込むこ
﹁電動ファン﹂がついています。この﹁電動フ
清浄化した空気を面体内部に送り込むための
管﹂
︶で構成されており、そこにもうひとつ、
どの液体粒子が混在
は、オイルミストな
の使い分けについて
が 入ってい る も の ︶
に﹁ L ﹂と い う 文 字
に﹁S﹂という文字が入っているもの︶と、液
の粒子で試験を行ったもの︵種類表記のなか
には必ずこの種類が明記されています。固体
類が区分けされています。個々の製品の仕様
ており、捕集効率に応じて図表1のように種
﹁防じんマスクの規格﹂と同様、固体粒子、
液体粒子それぞれによる試験方法が規定され
︵1︶粒子捕集効率による区分
が流通しています。
している環境下にあ
体の粒子で試験を行ったもの︵種類表記の中
2.主な性能と区分
っては、必ず液体の
能を備えた電動ファン付き呼吸用保護具だけ
おいては、国内では粒子状物質を除去する機
準が示されています。したがって、現時点に
格﹂には、粒子状物質のみを対象に性能の基
前記した﹁電動ファン付き呼吸用保護具の規
御社に高齢労働者が多く在籍しているよう
であれば、電動ファン付き呼吸用保護具の導
といえます。
定の量を送気するタイプよりは耐久性がよい
ーの消 費を抑えることができるため、常に一
無 駄 な 粉じんの堆 積を抑える、またバッテリ
レスレスポンス方式の製品は、フィルタへの
は電動ファンが停止するという機能です。ブ
気し、呼気によって面体内圧が上昇するとき
が低下する吸気時に電動ファンが稼働して送
内部に圧力センサーを内蔵し、面体内の気圧
す。ブレスレスポンス方式とは、例えば面体
もあります︶による付加機能が施されていま
︵
﹁呼吸追随形﹂
、
﹁呼吸連動形﹂と称されること
これらの基本性能のほかに、現在市販され
ている多くの製品にはブレスレスポンス方式
︵3︶ブレスレスポンス方式
種類が明記されています。
漏れ率による区分けは、図表2のようにな
っています。個々の製品の仕様には必ずこの
︵2︶漏れ率による区分
るもの︶となっています。
︵種類表記のなかにLという文字が入ってい
品の多くは、液体の粒子で試験を行ったもの
PL1
95.0%以上
PS2
PL2
99.0%以上
PS3
PL3
99.97%以上
図表2 漏れ率による区分
種類
漏れ率(%)
S級
0.1%以下
A級
1.0%以下
B級
5.0%以下
11
28
※ 1 試験粒子が塩化ナトリウム(固体粒子)の場合
※ 2 試験粒子がフタル酸ジオクチル
(液体粒子)
の場合
26
PS1
14
置づけられています。
生法施行令第 条の2︶にも指定されました。
粒子で試験を行った
︵労働安全・衛生コンサルタント
入を検討してみてはいかがでしょうか。
粒子のみの場合はど
田中通洋︶
ものを選択し、固体
種類
※2
※1
種類
ちらを選択してもよ
いと理解してくださ
い。流通している製
35 エルダー
粒子捕集
効率(%)
12
図表1 粒子捕集効率による区分
皮膚のかゆみを訴える高齢従業員へのアドバイスを教えてほしい
のや、内服薬による有害事象としてかゆみが
生じる場合もあります。
高齢者においては、皮膚の乾燥︵ドライス
キン︶・内臓 異常・薬剤が原因で 生じること
運送会社で衛生管理者を務めています。ここ数年、冬になると、
﹁ 肌 がカ サ カ サ して
かゆくなる﹂と訴える高齢従業員が増えています。なかには医師の診察を受けている者もいて、
が多いとされています。ドライスキンは、秋
から冬にかけて空気の乾燥にともなって生じ
やすく、すねや腰回り、腕などが特にかゆく
なりやすい部位です。かゆみは春ごろまで続
きますが、梅雨ごろになると自然におさまる
もう一つは、炎症の誘発です。異常のある
部位にかゆみを自覚させ、かいて傷つけるこ
かき出すことで排除しようという目的です。
ひとつは、皮膚への侵入物の排除です。あ
る種のダニなど皮膚に直接侵入した有害物を、
また、かゆみをきっかけに生じた﹁かき行為﹂
についても2つの仮説が唱えられています。
を守るために備わった﹂といわれています。
識させ﹁昆虫と昆虫が媒介する感染症から身
る こ と︵ = 蚊 な ど に 刺 さ れ て い る こ と ︶を 認
長い人類の歴史のなかで、かゆみは自己防
衛に寄与していたのではと考えられています。
1.かゆみが何のためにあるのか
など全身疾患にともなうものもあります。ま
皮膚疾患に由来するもの、人工透析中の患者
かゆみの原因にはさまざまなものがありま
す。アトピー性皮膚炎やじんましんといった
3.かゆみの原因について
みを止めることは非常に重要です。
ます。この悪循環を抑制するためにも、かゆ
かゆみは悪化し拡大するという悪循環が生じ
別の場所 のかゆみも誘発しま す。その結果、
ゆみ刺激は脊髄などへ伝わる神経を逆行し、
まってきます。そのような状態が続くと、か
﹁ か き 行 為 ﹂に よ り 皮 膚 表 面 の バ リ ア が 破
壊され皮膚表面に炎症を起こす細胞などが集
2.かゆみは止める必要があるのか
られています。
は、重要な自己防衛手段であったことが考え
かゆみの原因を知り、衣類の選択や清潔の保持などにも気を配る
たタオルを冷蔵庫に入れておいて、かゆい部
どでの冷却で十分とされます。また、冷やし
かゆみには冷却が有効です。冷たい氷や保
冷材は凍傷の危険がありますので、水道水な
4.かゆくなったときの対処方法
対策が重要となります。
高齢者のかゆみ対策では、特にドライスキン
な 刺 激 で 容 易 に か ゆ み が 生 じ て し ま い ま す。
リア機能が低下するため、外部からのわずか
なります。ドライスキンになると、皮膚のバ
乾燥︶にさらされることで、ドライスキンと
態の皮膚が、湿度の低下した環境︵冬などの
また、代謝機能の低下により、皮膚細胞間の
め、 皮 膚 表 面 を 覆 う 油 分 が 減 少しています。
者では、皮脂や汗の分泌量が低下しているた
ドライスキンとは角層の水分含有量が低下
して潤いがなくなった状態をさします。高齢
ことが多いです。
とで、その部位に免疫細胞などを集めて活性
分にあてる のも効果的です。ま たかゆみは、
脂質の合成も低下しています。このような状
化 さ せ る︵ = 炎 症 を 起 こ す ︶と い う 自 己 防 衛
た、虫刺されや疥癬などの昆虫が媒介するも
かゆみを感じることで、その部位に異常があ
のためです。抗生物質などがなかった時代に
ったときの対処方法や、生活での注意点も含めてアドバイスをお願いします。
また、
﹁かくと気持ちがよい﹂と思いますが、やはりかくことはよくないのでしょうか。かゆくな
業務に支障が出ないようにしたいと考えています。そもそもなぜ﹁かゆく﹂なるのでしょうか。
2
2017.1 36
健康・安全 相談室
けでも、かゆみが低減することが多いです。
で通気性をよくして皮膚温度を少し下げるだ
じます。このような場合、衣服の一部を脱い
仕事から帰宅して落ち着いたときなどにも生
ま ず、 湯 は ぬ る め︵ ℃ 程 度 ︶に す る こ と
が重要です。湯の温度が高くなれば、皮膚へ
必ずしも入浴を控える必要はありません。
て有用な側面もあります。方法に注意すれば、
レスを緩和する効果もあり、かゆみ対策とし
︵4︶食品∼かゆみを生じやすい食品があり、
要があります。
めに、使用時には浴室での転倒に注意する必
しかしこれらの商品はややぬめり感があるた
す。特にアトピー性皮膚炎の患者では、会社
︵2︶清潔を保つ∼汗をこまめに拭く
りも木綿や絹のほうが刺激は少ないようです。
る場合もあります。下着の素材は、化学繊維よ
女性では、ブラジャーをシャツの上から着用す
わざと表裏を逆に着用する工夫もあります。
下着は、直接肌に触れる部分の刺激が少ない
ものを選びます。縫目のこすれを防ぐために、
︵1︶衣類∼皮膚への刺激をへらす
5.生活のポイント
状が悪化する可能性もあります。
し、痛みを与える行為は皮膚を破壊し皮膚症
かえってかゆみを生じる可能性があります
いわゆる﹁かゆみ過敏﹂の状態になっており、
にかゆい状態が続いているような場合では、
﹁つねる、たたく﹂などの痛み刺激
さらに、
によってもかゆみが抑えられますが、継続的
受けることも可能ですが、一般の薬局でも多
入浴後には保湿剤の使用をおすすめしま
す。保湿剤は皮膚科などの医療機関で処方を
で洗うのがよいでしょう。
ので、きめの細かなタオルを用いるか、素手
破壊され、結果的にかゆみ が 悪 化 し て し ま う
あ る の で 快 感 も あ り ますが、皮膚のバリアが
ンタオルでの洗浄は、かくことと似た刺激が
持の観点からも十分とされています。ナイロ
陰部、などにかぎる工夫も有効で、清潔の保
鹸の使用部位を汚れやすい場所=くび・わき・
や色素が含まれないものがよいでしょう。石
場合がありますので、石鹸はできるだけ香料
まれる香料や色素などもかゆみの原因となる
の乾燥が生じてしまいます。また、石鹸に含
の油分も取れてしまうために、入浴後に過度
鹸は汚れを落とすことには有用ですが、皮膚
脱衣所や浴室の温度にも注意が必要です。石
す。 温 度 差 によって もかゆ みは 生 じる ため、
の刺激が強くなりかゆみを生じやすくなりま
めに摂取するほうがよいでしょう。
上昇し、かゆみを生じやすくなるので、少な
注意が必要です。飲酒は、皮膚表面の温度が
生シイタケを焼いて摂取するような場合には
なう特殊な皮膚炎を生じさせることがあり、
タケ皮膚炎﹂という非常に強いかゆみをとも
可能性があります。また、シイタケは、
﹁シイ
ます。これらの過度な摂取でかゆみが生じる
卵、イチゴ、チョコレート、香辛料などがあり
ります。またかゆみ物質を誘発する食品には、
ケノコ、ゴボウ、トマト、ナスなど︶などがあ
イカ、タコなど︶
、肉類︵豚肉︶
、野菜︵里芋、タ
かゆみの原因となる物質を含む食品には、
魚 介 類︵サバ、マグロ、イワシ、サケ、サンマ、
のがあります。
体内から遊離させやすい成分を含んでいるも
食品のなかには、かゆみの原因となる物質
を含んでいる、あるいは、そういった物質を
びるなどして皮膚の清潔を保つことが重要で
飛島健康管理科 尾本大輔︶
︵三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所
飲酒も控えめに
での昼休みなどにタオルで汗を拭きとるなど
数販売されており、使い心地のよいものを使
汗などの皮膚の汚れが刺激となる場合もあ
ります。汗をかいたら、さっとシャワーを浴
で症状が緩和することが分かっています。
用するのがよいでしょう。保湿剤の外用が困
売されてお り、一定の効果がある ようです。
難な場合には、保湿剤を含有した入浴剤も販
︵3︶入 浴 ∼ ぬ る め の 温 度 に、 石 鹸 は 使 用 部
位をかぎる、ナイロンタオルは控える
入浴にはかゆみの誘因にもなる精神的スト
37 エルダー
38
雇用ミックス時代の
フレキシブル賃金・
評価制度
菊谷寛之
希望者全員65歳雇用 !
株式会社プライムコンサルタント
代表取締役 パート時給の水準とランク型賃金表の活用方法⑵
第 16 回
この連載では、
「希望者全員が65歳まで働ける社会」を実現するために、正社員・限定正社員・契約社員・
パート・継続雇用者などの複合的な雇用形態・仕事のスタイルに対応するために不可欠となる、フレ
キシブルな仕事・賃金・評価などの処遇のあり方について、解説します。
ランク型賃金表を使った
パート時給の決め方
ン︶は1号700円のみとし、2ランクは2
号708円∼9号771円まで9円刻みの号
号780円から 号850
円刻みの号差⋮⋮というように1ラ
差、3ランクは
円まで
17
表を、これまで解説してきたランク型賃金表
図表9は、前回紹介した洗い替え型による
パート等級P1・P2・P3の熟練度別時給
左側は、1カ月168時間勤務した場合の月
るごとに1・138倍に微調整した。時給の
定している。各ランクの号差は1ランク上が
ランクの最高額
号1637円まで時給を設
に展開した例である︵前回図表6参照︶。
マイルドな昇給が行えるようになるので、そ
このランク型時給表を使えば、熟練度別の
上限額に向けて段階的に時給を改定していく
用になりがちである。
をとって個別に昇給額を調整する裁量的な運
とがむずかしい。仕方なく、適当な間の金額
すぎて、実際にはルール通りに昇給させるこ
前回触れたように、元の洗い替え方の時給
表は、評価による一回の時給の変動額が大き
価DCBASに対応した5つのゾーンに分け
P3の適用ランクとし、それぞれ熟練度の評
等級との対応は、②の通り1∼5ランクを
P1、3∼7ランクをP2、5∼9ランクを
時給表になる。
ば、大きく昇給して短期間に上限に届く早い
差金額を大きくして区切る号俸数を減らせ
がかかる長期決済型の時給表になる。逆に号
切る号俸数を増やせば、それだけ昇給に時間
P1・2・3の各等級の関係は、下位等級
昇給しないルールとした。
ている。ただしDゾーンは対応ランクの最高
のような問題は起きない。
では図表9を順番にみていこう。
① 時 給 表 の 通 り、1 ラ ン ク︵ P 1 級 の D ゾ ー
額︵∼ T の 金 額 ︶の み と し、 D 評 価 の 場 合 は
るかは任意である。号差金額を小さくして区
なお、この例では1ランクにつき8号ずつ
号俸を設定したが、1ランクを何号ずつ区切
︵注︶号差金額は1ランクの8円に1・138の︵n 1︶乗を掛
け算してnランクの号差を設定したが、1円単位で丸めてある
ので、正確に1・138倍にはならない。
額︵参考値︶である。
65
ランク型時給表の基本的な仕組みは、正社
員の基本給表と同じである。
体力を要する熟練労働
P3級⋮専門知識・スキルを要する技能労働や
を要する単純労働
P2級⋮自主的な判断を要する技能労働や体力
P1級⋮軽作業または定型作業などの単純労働
等級の定義は、前回と同じである。
︵1︶ランク型時給表の例
10
ンクにつき8号ずつ時給の号俸を設定し、9
10
2
2017.1 38
希望者全員65歳雇用 !
雇用ミックス時代の
フレキシブル賃金・評価制度
5
6
7
8
9
+3
+4
+5
+6
+7
+8
-1
+1
+2
+3
+4
+5
+6
+7
+8
-1
+0
+1
+2
+3
+4
+5
+6
+7
-2
-1
+1
+2
+3
+4
+5
+6
+7
-2
-1
+0
+1
+2
+3
+4
+5
+6
-3
-2
-1
+1
+2
+3
+4
+5
+6
-3
-2
-1
+0
+1
+2
+3
+4
+5
-4
-3
-2
-1
+1
+2
+3
+4
+5
D
C
C
C
C
C
C
C
C
B
B
B
B
B
B
B
B
A
A
A
A
A
A
A
A
S
S
S
S
S
S
S
S
-4
-3
-2
-1
+0
+1
+2
+3
+4
-5
-4
-3
-2
-1
+1
+2
+3
+4
-5
-4
-3
-2
-1
+0
+1
+2
+3
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+1
+2
+3
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+0
+1
+2
-7
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+1
+2
-7
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+0
+1
-8
-7
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+1
-8
-7
-6
-5
-4
-3
-2
-1
+0
図表10 等級別・熟練度別時給の設定額とランク型時給表の上限額との対応関係
熟練度
D
C
B
A
S
元の額
700
770
860
930
1,050
P1 級
号俸
1
9
17
25
33
時給額
700
771
850
944
1,047
元の額
860
930
1,050
1,160
1,280
P2 級
号俸
17
25
33
41
49
時給額
850
944
1,047
1,165
1,299
元の額
1,050
1,160
1,280
1,460
1,640
P3 級
号俸
33
41
49
57
65
(注)元の額は前回(12 月号)の図表6「等級別・熟練度別時給表の例(3 区分)」を参照。
号俸とその時給額はゾーンDCBAS の上限額。
39 エルダー
時給額
1,047
1,165
1,299
1,456
1,637
11
例えば、一番上のP1の最低時給700円・
1Tランクの場合、横軸からP1の評価レー
4
+2
若 干 の 差 異 は あ る が、 ほ ぼ 近 似 の 金 額 と
なっていることがご理解いただけるであろう。
3
+1
のAは上位等級のC、下位等級のSは上位等
2
+0
級のBと同じランクとする﹁2段階一致﹂と
1
1T
2
2
2
2
2
2
2
2T
3
3
3
3
3
3
3
3T
4
4
4
4
4
4
4
4T
5
5
5
5
5
5
5
5T
6
6
6
6
6
6
6
6T
7
7
7
7
7
7
7
7T
8
8
8
8
8
8
8
8T
9
9
9
9
9
9
9
9T
トはD1点、C2点、B3点、A4点、S5点
評価レート→
︵2︶評価別のモデル昇給号数と時給額の推移
D
C
C
C
C
C
C
C
C
B
B
B
B
B
B
B
B
A
A
A
A
A
A
A
A
S
S
S
S
S
S
S
S
P3
10
なっている。
P2
となり、それぞれ プラス0号、1号、2号、3
D
C
C
C
C
C
C
C
C
B
B
B
B
B
B
B
B
A
A
A
A
A
A
A
A
S
S
S
S
S
S
S
S
8
9
9
9
9
9
9
9
9
10
10
10
10
10
10
10
10
12
12
12
12
12
12
12
12
13
13
13
13
13
13
13
13
15
15
15
15
15
15
15
15
17
17
17
17
17
17
17
17
20
20
20
20
20
20
20
20
23
23
23
23
23
23
23
23
S
号、4号という号俸改定を行う。
P1
700
708
717
726
735
744
753
762
771
780
790
800
810
820
830
840
850
860
872
884
896
908
920
932
944
956
969
982
995
1,008
1,021
1,034
1,047
1,060
1,075
1,090
1,105
1,120
1,135
1,150
1,165
1,180
1,197
1,214
1,231
1,248
1,265
1,282
1,299
1,316
1,336
1,356
1,376
1,396
1,416
1,436
1,456
1,476
1,499
1,522
1,545
1,568
1,591
1,614
1,637
A
S
もう一度図表9に戻ってほしい。時給の改
定は、右側の③評価レートと号俸改定基準を
時給 号差
B
A
図表 は、P1・P2・P3の各等級につ
いて、元の熟練度別時給表の金額︵洗い替え
月額
117,600
118,944
120,456
121,968
123,480
124,992
126,504
128,016
129,528
131,040
132,720
134,400
136,080
137,760
139,440
141,120
142,800
144,480
146,496
148,512
150,528
152,544
154,560
156,576
158,592
160,608
162,792
164,976
167,160
169,344
171,528
173,712
175,896
178,080
180,600
183,120
185,640
188,160
190,680
193,200
195,720
198,240
201,096
203,952
206,808
209,664
212,520
215,376
218,232
221,088
224,448
227,808
231,168
234,528
237,888
241,248
244,608
247,968
251,832
255,696
259,560
263,424
267,288
271,152
275,016
S
用いて行う。縦軸の時給のランク1T∼9T
1T
2
2
2
2
2
2
2
2T
3
3
3
3
3
3
3
3T
4
4
4
4
4
4
4
4T
5
5
5
5
5
5
5
5T
6
6
6
6
6
6
6
6T
7
7
7
7
7
7
7
7T
8
8
8
8
8
8
8
8T
9
9
9
9
9
9
9
9T
A
型︶と、図表9のランク型時給表の最終到達
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
C
B
B
図表 は、この号俸改定基準を読み取って、
P1級の最低時給700円︵1Tランク︶から
号 ランク
D
C
C
と横軸の評価レート1∼9点との交点から、
P1
D
D
額︵∼ T の 金 額 ︶と を、 D C B A S の ゾ ー ン
P3
P2
スタートして、常にD、C、B、A、Sの評価
③ 評価レートと号俸改定基準
毎回の改定号数を読み取る。
② 適用ランク
月額は時給×168 時間で計算した。
別に対比したものである。
図表9 ランク型時給表
①時給表
33
号1047円に到達し、以降は昇
︵3︶P 1・ P 2・ P 3 の モ デ ル 昇 格・ 昇 給
給しなくなる。
で5Tの
時給額の推移を、5つの表にまとめたもので
図表 は、P1からP2、さらにP3に昇
格し、A評価またはB評価で昇給し続けた場
で時給改定を続けたときのモデル昇給号数と
ある。参考に、月の所定労働時間を168時
ただしモデルであるから、実際はB評価や
C評価で頭打ちになっても、次回以降、それ
13
グラフ
間とした場合の月額もあわせて表示した。
号
合のモデル昇給カーブのグラフである。紙幅
2のスタートは、P1のA評価が改定7回目
でP2のDゾーン・3Tランクを超える
よりも高い評 価をとれば、また昇給 できる。
で昇給できる︵後述︶。
860円とし、以降A評価とB評価で昇給す
18
の都合で具体的な金額表は掲載を省くが、P
図表 は横軸を改定の回数とした時給グラ
フである。横ばいが続くD評価以外、いずれ
るモデルを設定した。同様に、P3のスター
回目︵P2では
13
P2・P3に昇格すれば、さらに高い時給ま
ごとに改定する場合は8年、半年ごとに改定
もランクが上がるつど昇給カーブが屈折し、
トは、P2のA評価が改定
33
12
D評価はすでに触れたように最低時給70
0円のまま昇給しない。
する場合は4年︶で上限の2Tランク9号7
評 価 に 対 応 す る ラ ン ク の 上 限 額︵∼ T ︶に 到
14
C評価は1Tランクを1号8円、2ランク
を1号9円ずつ昇給し、8回目の改定︵1年
71円に到達し、以降昇給停止となる。
12
号1047円とした。
回
6回目︶でP3のDゾーン・5Tランクに届
グラフをみると、P2のA評価は改定
く
くなる様子がみてとれよう。
達したら時給が据え置きになる。評価が高い
回目の改定
21
ほど昇給期間が長く、最終的に届く時給も高
号944円に、S評価は
16
同様にB評価は 回目の改定で3Tランク
号850円に、A評価は 回目の改定で4
Tの
25
17
図表11 P1級の評価別モデル昇給号数と時給額の推移
D 評価
改定
0
(注)月額= 168時間
昇給額
月額
0
0
号俸
1
時給額
700
月額
117,600
ランク
1T
昇給
+0
号俸
1
2
3
4
5
6
7
8
9
時給額
700
708
717
726
735
744
753
762
771
月額
117,600
118,944
120,456
121,968
123,480
124,992
126,504
128,016
129,528
ランク
1T
2
2
2
2
2
2
2
2T
昇給
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+0
昇給額
8
9
9
9
9
9
9
9
0
月額
1,344
1,512
1,512
1,512
1,512
1,512
1,512
1,512
0
号俸
1
3
5
7
9
10
11
12
13
14
15
16
17
時給額
700
717
735
753
771
780
790
800
810
820
830
840
850
月額
117,600
120,456
123,480
126,504
129,528
131,040
132,720
134,400
136,080
137,760
139,440
141,120
142,800
ランク
1T
2
2
2
2T
3
3
3
3
3
3
3
3T
昇給
+2
+2
+2
+2
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+0
昇給額
17
18
18
18
9
10
10
10
10
10
10
10
0
月額
2,856
3,024
3,024
3,024
1,512
1,680
1,680
1,680
1,680
1,680
1,680
1,680
0
号俸
1
4
7
10
12
14
16
18
19
20
21
22
23
24
25
時給額
700
726
753
780
800
820
840
860
872
884
896
908
920
932
944
月額
117,600
121,968
126,504
131,040
134,400
137,760
141,120
144,480
146,496
148,512
150,528
152,544
154,560
156,576
158,592
ランク
1T
2
2
3
3
3
3
4
4
4
4
4
4
4
4T
昇給
+3
+3
+3
+2
+2
+2
+2
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+0
昇給額
26
27
27
20
20
20
20
12
12
12
12
12
12
12
0
月額
4,368
4,536
4,536
3,360
3,360
3,360
3,360
2,016
2,016
2,016
2,016
2,016
2,016
2,016
0
号俸
1
5
9
12
15
18
20
22
24
26
27
28
29
30
31
32
33
時給額
700
735
771
800
830
860
884
908
932
956
969
982
995
1008
1021
1034
1047
月額
117,600
123,480
129,528
134,400
139,440
144,480
148,512
152,544
156,576
160,608
162,792
164,976
167,160
169,344
171,528
173,712
175,896
ランク
1T
2
2T
3
3
4
4
4
4
5
5
5
5
5
5
5
5T
昇給
+4
+4
+3
+3
+3
+2
+2
+2
+2
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+1
+0
昇給額
35
36
29
30
30
24
24
24
24
13
13
13
13
13
13
13
0
月額
5,880
6,048
4,872
5,040
5,040
4,032
4,032
4,032
4,032
2,184
2,184
2,184
2,184
2,184
2,184
2,184
0
C 評価
改定
0
1
2
3
4
5
6
7
8
B 評価
改定
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
A 評価
改定
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
S 評価
改定
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
2017.1 40
希望者全員65歳雇用 !
雇用ミックス時代の
フレキシブル賃金・評価制度
C
800
750
P2B
900
P1A
800
P1B
750
1050
950
850
ところで、平成 年4月から施行された改
正パート労働法では、通常の労働者と同視す
パート時給のランク型賃金表を設定した。
今回の説明では、正社員の賃金との整合性
を度外視して、全国的な世間相場に基づいて
れぞれに試みてもらいたい。
ク型時給表を設定することもできるので、そ
これを参照すれば、自社の業界にあったラン
ビス業など、さまざまな業種を集計している。
報通信業、卸売・小売業、宿泊業・飲食サー
図表9のランク型時給表の元になっている
厚生労働省・賃金構造基本統計調査のパート
1000
在の時給から段階的に昇給させることがで
1100
き、急激に時給を上げなくてすむのがランク
1250
号1165円︵168時間換算で月額
B
850
時給額の分布特性値は、建設業や製造業、情
1350
万5720円︶に、P3のA評価は改定
900
型時給表の大きなメリットといえよう。
1150
万4608
1400
目で
1000
27
1500
号1456円︵同月額
時給額 図表13 P1・P2・P3級のモデル昇格・昇給グラフ(時給)
回目で
P2A
1200
円︶にそれぞれ到達する。
ここでは上位等級のDゾーンに
届いたら昇格する﹁遅い昇格モデ
ル﹂を想定したが、実際には上位
等 級 の D ゾ ー ン に 届 か な く て も、
有望な人材を昇格させて上位等級
の 仕 事 を 任 せ る﹁ 早 い 昇 格 ﹂も 可
ただしどこで昇格させても、現
能である。
A
950
S
1050
改定の回数
労務行政研究所、賃金管理研究所を経て1999年株式会
バイザー。主な著書に﹃決定版!シンプル賃金制度のつく
︶
http://www.primec.co.jp/
を設立、代表取締役。成果人事研究会主宰。本誌編集アド
社プライムコンサルタント︵HP
菊谷寛之︵きくや・ひろゆき︶
員の賃金を設定する方法をご紹介する。
次回はこの点を配慮して、正社員の賃金と
の整合性を確保しながらパート時給や契約社
遇︶よう事業主に求めている。
者と均衡のとれた待遇確保に努める︵均衡待
の他のパート労働者については、通常の労働
り 扱 い を 禁 止 す る︵ 均 等 待 遇 ︶と と も に、 そ
べきパート労働者について賃金等の差別的取
27
結果の人材マネジメント方程式﹄
︵労働調査会︶などがある。
り方﹄︵日本法令︶
、
﹃強固な成長企業をつくる原因×集中×
41 エルダー
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
8
7
5
6
4
3
2
1
0
700
P3B
1300
24
改定の回数
D
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
8
7
6
5
4
3
2
1
0
700
P3A
1450
41
57
19
図表12 P1級の評価別モデル昇給グラフ(時給)
時給額
1100
高齢者雇用施策を考える
独立行政法人労働政策研究・研修機構 主席統括研究員 主席統括研究員 濱口桂一郎
応していたのであり、両者それぞれについて
それが機能不全に陥っていたから退職金で対
職手当法を吸収して設けられたはずなのに、
たのです。厚生年金は戦前の退職積立金及退
厚生年金を代替できるようにしたいと要求し
負担に外ならず、それなら既存の企業年金で
老後の生活保障という政策目的に対する二重
を負担している大企業にとっては、労働者の
たのですが、すでに多額の退職金や退職年金
厚生労働省︶は保険料の大幅な引上げを試み
した。給付水準引上げのために、厚生省︵現
ことが大きな問題となってきたことがありま
で、その給付水準が生活保護以下と大変低い
による老齢年金受給者が出現してくるなか
この制度は日経連が強く主張して成立した
ものですが、その背景にはいよいよ 年勤続
して給付する部分を組み合わせたものです。
行する部分と、企業独自の加算部分を上乗せ
公的年金である厚生年金の報酬比例部分を代
設立する特別の公法人である厚生年金基金が
の改正により創設されました。これは企業が
1965︵昭和
︶年6月の厚生年金保険法
ておきたいと思います。厚生年金基金制度は
ら廃止に至る半世紀の歴史を改めて振り返っ
軽く触れた厚生年金基金についてその設立か
本連載の第5回︵2016年9月号︶で﹁退
職金の法政策﹂を取り上げましたが、そこで
が直ちに国会に提出した法改正案はいったん
見を併記する異例の形となりました。厚生省
答申は、公益、事業主、被保険者の各側の意
その結果、1964年4月の社会保険審議会
保障の後退であるとして強く反対したのです。
違いであり、国の責任を持って行うべき社会
公的な厚生年金との間に調整を行うことは筋
管理として実施されている私的な企業年金と
なし崩しにされるおそれがあることや、労務
としての退職一時金がこの調整措置によって
張する事業主側に対し、被保険者側は既得権
の前提条件として企業年金との調整を強く主
この制度の導入にあたっては労使の間で激
しい対立がありました。厚生年金の給付改善
ての性格を併せ持つ形になりました。
分は、公的年金としての性格と企業年金とし
一部を代わって行い、さらに企業独自の年金
企業が年金基金を設立して厚生年金の給付の
せたのが厚 生年金基金制度で す。代行とは、
報酬比例部分を代行という法形式で組み合わ
経営側の要請を趣旨としては受け入れつつ、
を適用除外とすることを提起しました。この
酬比例部分と同等以上の内容を持つ企業年金
整についての試案﹂をまとめ、厚生年金の報
61年
う業種も現れ始めていました。日経連は19
うに、厚生年金から脱退して独自の給付を行
企業が負担しなければならないのはおかしい
廃案となり、同年
20
40
月﹁退職金制度と厚生年金制度の調
という発想です。私立学校職員共済組合のよ
11
給付を上乗せ支給する制度です。この代行部
月に再度提出した法案が、
12
[第 9 回]
「生涯現役社会の実現」に向けた起点ともいえる、
「65歳までの
厚生年金基金の興亡
まな制度や政策が存在する。この連載では、そうした制度や政策
雇用確保措置」の周辺には、高齢者雇用に深くかかわる、さまざ
を取り上げ、その成り立ちや役割、高齢化社会における意義など
を解説していただく。
2017.1 42
高 齢 者 雇 用 施 策 を 考 え る
務﹂とし、その積立不足を母体企業のバラン
将来の退職給付の現価相当額を﹁退職給付債
え て、 当 期 ま で に 発 生 し た︵ と み な さ れ る ︶
り、そこでは退職給付を賃金の後払いととら
付にかかる会計基準が導入されることにな
に基づき、2000年4月から新たな退職給
8︵ 平 成
︶年 6 月 の 企 業 会 計 審 議 会 意 見 書
は返上したいというわけです。さらに199
のはずですが、それが都合が悪くなると今度
もともと経営団体が要求して導入された制度
う求める声が経済界を中心に高まりました。
に感じられるようになり、代行返上できるよ
し、代行部分の存在が母体企業にとって重荷
株価の下落から積立金の運用利回りが低迷
立方式が必須です。バブル崩壊後の 低金利、
必要な原資を退職時までに積み立てる事前積
的年金と異なり賦課方式はとり得ず、給付に
シュが到来しました。ところが企業年金は公
折からのバブル景気もあって基金の設立ラッ
人、1988年には500人に引き下げられ、
厚生年金基金を設立できる人数要件は当初
は1000人でしたが、1985年に700
修正のうえ1965年5月に成立しました。
段階的に縮小・廃止するという方向を打ち出し
に社会保障審議会で審議した末、代行制度を
けて厚生労働省は有識者会議を開催し、さら
していたというスキャンダルです。これを受
J投資顧問︵株︶が、運用資産の大部分を消失
多くの厚生年金基金が運用委託していたAI
で2012年にはAIJ事件が発生しました。
責任準備金を下回ることです。こうしたなか
が基金解散時に厚生年金本体に返すべき最低
うになりました。代行割れとは、基金の積立金
の代行割れといわれる事象に注目が集まるよ
き沈みをくり返し、そのなかで厚生年金基金
2000年代に入ってもITバブル崩壊や
リーマンショックなどで基金の運用環境は浮
事態はそれで終わりではありませんでした。
選択肢が提示されたことになります。しかし、
金基金として活動していく途も含めて、3つの
ります。このとき、代行を返上せずに厚生年
け皿としての基金型確定給付企業年金からな
業年金と、厚生年金基金が代行を返上する受
則廃止する受け皿としての規約型確定給付企
年金法は、適格退職年金を
年間の期限で原
6月に成立に至りました。この確定給付企業
業年金法案が国会に提出され、いずれも同年
物語なのかもしれません。
が結局制度の命取りになってしまったという
とそれがデメリットに転化してしまい、それ
をもたらしてくれた反面、経済が不調になる
ればそのはざまで企業にさまざまなメリット
ぎ合わせて作られた制度が、経済が好調であ
うアクロバティックな法的技法でもってつな
分 配 機 能 で あ る 公 的 年 金 と を、﹁ 代 行 ﹂と い
した企業年金と、マクロ社会的な世代間の再
厚生年金基金の半世紀の歴史は、本来個別
企業の労働条件の一部である退職金から派生
法制度としては廃止されたといえましょう。
うムチがついているため、実際にはほとんどの
ると厚生労働大臣が解散命令を発動するとい
り厳格な積立基準が適用され、満たさなくな
ことが可能とされましたが、5年経過後はよ
されて、健全な厚生年金基金はなお存続する
生年金基金の完全廃止という方針は若干緩和
2012年末に自公政権に復帰したため、厚
れました。もっとも、審議の最終段階であった
年金保険法から厚生年金基金の規定が削除さ
金など他制度に移行させることとされ、厚生
定給付企業年金や確定拠出年金、それに中退
っていました。そのため、米国の401k
制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生
ました。そして、2013年6月の公的年金
者と労働﹄
、
﹃働く女子の運命﹄ほか著書多数。
政策研究大学院大学教授などを歴任。
﹃新しい労働社会﹄
、﹃若
東 京 大学 法 学部 卒 業 後、労 働 省入省。東 京 大学 客員教 授、
はまぐち・けいいちろう
基金が解散するか代行返上することになり、
スシートにおいて負債とみなされることとな
に倣った確定拠出型年金制度の導入が声高に
年金保険法等の一部を改正する法律により、
※
叫ばれるようになりました。
5年間の期限のうちに代行割れ基金を早期解
散させるとともに、代行割れ予備軍基金を確
43 エルダー
10
こうしたなかで2000年3月に確定拠出
年金法案が、2001年2月には確定給付企
※ 401k……米国の内国歳入法にもとづく確定拠出型年金
10
日本史にみる長寿食
F O O D
280
徐福の求めた不老長寿のあわび
食文化史研究家 ●
永山久夫
お正月に欠かせない祝い肴
蓬莱山の涯にある九穴貝
おめでたい行事のときなどの祝い膳に、昔は必
あわびは、古くから不老長寿の妙薬といわれ、
ず「のしあわび」が用いられました。
これを耳にした古代中国の秦 の始皇帝(前 259 -
神饌にも用いられ、結婚式やお正月の祝い肴に
前 210)は、仙薬研究で有名な徐福に、東方の涯
も欠かせませんでした。お正月になると、格式の
にあるという、この貝を探して持参するように命
ある家や商家などでは、三宝にのせて、床の間に
じたと伝えられています。
飾って祝いました。
「始皇帝は徐福を東
事実、
『後 漢 書 倭 伝 』には、
武士の出陣式のときにも総大将が必ず口にしな
海の蓬莱山に仙薬を求めに船出を命じた」とあり
ければならないものがありました。打ちあわび、
ます。
勝ち栗、昆布で、
「敵を打ち、勝って、よろこぶ(昆
徐福が目ざした土地こそ日本であり、熊野の新
布)
」という縁起があります。
宮や佐賀、富士山には徐福伝説がいまも残ってい
庶民がおせち料理をつくって、お正月をお祝い
て、始皇帝が命じた長寿の秘薬こそ、蓬莱山(富
するようになるのは、江戸時代からですが、多少
士山とみられている)のある島国のあわびだった
高くても、ふっくらと煮しめたあわびを添える場
と伝えられています。仙薬となるのは九穴貝と呼
合が多かったのです。
ばれ、貝殻に九穴があるもので、そのあわびは千
生のあわびにくらべて、のしあわびはつくる手
年貝とも万年貝とも呼ばれていました。
間ひまがかかります。あわびの肉を薄くカンピョ
普通のあわびの呼水孔は4つか5つであり、た
ウのように剥ぎ取り、乾燥させ、伸ばしたもので、
くさんあるように見えても、古い孔は埋まってし
高価でした。
まうので、いつも一定です。
高価なのしあわびは、庶民にはなかなか手が出
あわびにはタウリンが豊富に含まれていて、心
ないものでした。
筋を丈夫にして血行をよくし、脳や肝臓の若さを
保つ働きまであり、まさに不老長寿食であります。
※三宝……神饌を載せるための台
2017.1 44
労務資料
5 就労 するために企業に望むのは「 健 康 管理 」で、
国に対しては、
「企業が 歳以上の人を雇用する
4 就労
するため取り組もうと思うことは「健康・体
力づくり」が半数を超えている。
も多かった。
3 就労にあたり重視していることでは、
「体力的に
無理なく続けられる仕事であること」が %で最
インセンティブづくり」が多かった。
「 株 式 会 社 G M O リ サ ー チ 」に 登 録 し て い
るウェブモニターから 歳以上の人を選択し、
(2)調査の方法・対象・調査期間
の就労に関する認識」について紹介した。
上の7項目。本誌ではこのうち①の「高齢期
意向、⑥地域の支え合い、⑦ダブルケア、以
④高齢期の一人暮らし、⑤現居住地への居住
②高齢期の健康づくり、③高齢期の過ごし方、
高齢期の就労に関する認識
「高齢社会に関する意識調査」結果から
─
厚 生 労 働 省 は、 高 齢 社 会 に 対 す る 意 識
の世代・地域・所得ごとなどの傾向を把握
し、 高 齢 社 会 を 克 服 す る 論 点 な ど を 浮 彫
りにするための基礎資料とするために「高
齢社会に関する意識調査」を実施しました。
本 誌 で は こ の 発 表 資 料 を も と に、 調 査
結果の概要を紹介します。 (編集部)
調査の概要
集計割合が人口構成に応じたものとなるよう
・0%、現在働
に し た。 回 答 は 3 0 0 0 件( 次 頁 の 表 )。 こ
のうち、現在働いている人
いていないが再び働きたい人
・4%、現在
(1)本調査の趣旨・目的
・
日から
44
【調査結果のポイント】
働いておらず、今後も働く気はない人が
11
調 査 は 2 0 1 6( 平 成 )年 2 月
2月 日にかけて実施された。
24
6%である。
「 高 齢 社 会 に 関 す る 意 識 調 査 」は、 高 齢 社
会に対する意識を探り、高齢社会の論点や方
向性を浮彫りにして、今後の制度検討の基礎
資料とするために実施した。
28
1 現在
働いている人、現在働いていないが就労を希
望する人の、希望最高就労年齢をたずねると、
「働
44
67
調査項目は、①高齢期の就労に関する認識、
29
け る う ち はいつま で も 」が3 割 を 超 え、最 も 多
かった。
2 就業を希望する理由は「経済上の理由」が7割近
くあり、最も多かった。
45 エルダー
40
65
表 年代別・地域別集計者数
男性
単位:人
女性
単位:人
40 代
50 代
60 代
70 代以上
40 代
50 代
60 代
70 代以上
北海道
14
15
16
16
15
16
18
24
東北
23
28
26
29
23
28
27
45
関東
130
110
121
107
121
106
125
148
中部
59
57
63
62
57
56
66
89
関西
61
56
68
63
63
58
73
89
中国
18
20
23
23
19
20
24
37
四国
10
11
12
13
10
11
13
19
九州・沖縄
計
34
41
39
42
38
43
43
66
349
338
368
355
346
338
389
517
図1 就労希望年齢(N=₁,₆₆₂)
1.3
調査結果の概要
1.就労希望年齢(回答は1つ)
25.7
0%
20%
15.2
40%
60 歳くらいまで
75 歳くらいまで
31.2
80%
65 歳くらいまで
76 歳以上
70 歳くらいまで
働けるうちはいつまでも
0
10
20
30
40
50
60
70
経済上の理由(自分と家族の生活を維持するため、
生活水準を上げるためなど)
90 100
23.2
生きがい、社会参加のため
歳くらいまで( ・7%)
」
、
「
( ・5%)」と続いている(図1)。
25
80
68.1
健康上の理由(健康に良いからなど)
18
100%
図2 高齢期の就業希望理由(N=₁,₆₆₂)(単位:%)
38.7
時間に余裕があるから
2.高齢
期の就業希望理由
(回答2つまで)
12.8
0.5
図3 高齢期の就業希望理由(年齢別)(単位:%)
0
10
20
30
経済上の理由(自分と家族の生活を維持するため、
生活水準を上げるためなど)
17.4
20.1
健康上の理由(健康に良いからなど)
50∼59 歳
70∼79 歳
80 歳以上
その他
60
44.6
70
53.6
80
90
77.5
74.2
46.1
58.3
50.0
10.1
10.4
18.2
19.6
16.7
時間に余裕があるから
60∼69 歳
50
33.9
32.7
33.3
33.2
34.2
生きがい、社会参加のため
40∼49 歳
40
33.3
60
歳 く らい まで
① 就 業 希 望 理 由 に つ い て み る と、「 経 済 上
の理由( ・1%)」が最も多く、「生きが
い、社会参加のため( ・7%)
」
、
「健康上
38
68
8.1
60%
その他
の理由( ・2%)
」と続いている(図2)
。
23
現在働いている人または現在働いていない
が就労を希望している人に対し、何歳まで働
65
きたいかについてたずねたところ、
「働けるう
ちはいつまでも( ・2%)」が最も多く、
「
31
18.5
0.7
0.2
0.3
1.2
0.0
2017.1 46
労務資料
30
40
50
60
70
80
90
100
34
66.8
48.3
28.7
34.0
14.5
7.2
2.3
7.2
2.1
7.5
0.3
13.6
図6 就労にあたり重視すること
(主要項目:年齢別)(単位:%)
10
20
30
40
24.2
28.0
28.7
32.9
34.6
勤務日や勤務時間を
選べること
23.5
経験したことのある
職種であること
50∼59 歳
80 歳以上
47 エルダー
特にない
4.9
5.9
35.3
38.0
33.7
31.0
11.7
11.8
14.4
19.5
14.8
18.1
21.6
32.1
80
75.3
73.1
ることがうかがえる(図5)。
38.7
38.3
自分の能力を発揮できること
70∼79 歳
70
62.1
60.1
50.6
56.1
55.2
46.0
自分のペースで進められる仕事であること
60∼69 歳
60
と」、「自分のペースで進められる仕事で
体力的に無理なく続けられる仕事であること
50
② 年齢別にみると、年齢が低いほど「体力
的に無理なく続けられる仕事であるこ
0
66
20
10
② 年齢別にみると、
年齢が低くなるほど「経
済上の理由」をあげる割合が高く、年齢
0
体力的に無理なく続けられる仕事であること
自分のペースで進められる仕事であること
自分の能力を発揮できること
勤務日や勤務時間を選べること
経験したことのある職種であること
気心の知れた仲間がいる職場であること
以前と同じ勤務先であること
経験したことのある業界であること
勤務先の事業目的・経営ビジョン
給料がよいこと
その他
特にない
48
3.就労にあたり重視すること
(回答は3つまで)
図5 就労にあたり重視すること(N=3,000)(単位:%)
が高くなるほど「生きがい、社会参加の
その他
ため」
、
「健康上の理由」をあげる割合が
0.0
0.0
0.5
0.7
0.6
1.5
1,000万円以上
40∼49 歳
あること」、「勤務日や勤務時間を選べる
200 ∼ 400万円未満
400 ∼ 600万円未満
800 ∼1,000万円未満
① 就労にあ たり重視することに ついては、
「体力的に無理なく続けられる仕事であ
0∼ 200万円未満
高い(図3)
。
11.8
9.1
11.4
12.6
15.6
21.9
時間に余裕があるから
600 ∼ 800万円未満
こと」をあげる割合が高く、年齢が高い
38.2
40.7
35.7
46.1
44.9
生きがい、社会参加のため
・ 8 %)」が 最 も 多 く、「 自 分
29.0
る こ と(
27.7
26.2
19.6
21.0
20.4
健康上の理由(健康に良いからなど)
ほど「自分の能力を発揮できること」、「経
54.6
19.0
のペースで進められる仕事であること
経済上の理由
(自分と家族の生活を維持するため、
生活水準を上げるためなど)
80
75.1
71.8
67.6
68.2
67.7
③ 世帯年収別にみると、年収が低くなるほ
ど「経済上の理由」をあげる割合が高く、
70
験したことのある職種であること」をあ
60
( ・3 %)」、
「勤務日や勤務時間を選べ
50
年収が高くなるほど「生きがい、社会参
40
げる割合が高い(図6)。
30
る こ と( ・0 %)」と 続 い て い る。 現 役
20
加のため」
、
「 時 間 に 余 裕 が あ る か ら 」を
10
世代よりも無理のない働き方を望んでい
0
あげる割合が高い(図4)
。
図4 高齢期の就業希望理由(世帯収入)(単位:%)
4.就労
するために自身が取り組むこと
(回答は3つまで)
・1%)」の順で
36
① 高齢期に就労するため取り組もうと思う
こ と に つ い て は、
「 健 康・ 体 力 づ く り
るための意欲の維持(
( ・4 %)
」
、
「いつまでも現役で活躍す
あった(図7)
。
51
図7 就労のために自身が取り組むこと(N=3,000)(単位:%)
0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
現在の業種や職種に関する専門的な知識・技能の習得
22.0
現在の業種とは異なる業種でも就労できるよう、
異なる分野の知識・技術の習得
12.6
シニア起業に向けての必要な準備
8.4
健康・体力づくり
51.4
いつまでも現役で活躍するための意欲の維持
36.1
幅広い人脈づくり
10.8
その他
0.1
特にない
27.0
図8 就労のために自身が取り組むこと(年齢別)(単位:%)
能の習得」、
「現在の業種とは異なる業種
でも就労できるよう、異なる分野の知識・
10
現在の業種や職種に関する専門的な知識・技能の習得
20
30
40
50
9.4
11.4
7.4
6.8
8.0
8.3
10.6
6.2
異なる分野の知識・技術の習得
シニア起業に向けての必要な準備
健康・体力づくり
29.8
その他
50∼59 歳
0.0
0.1
0.1
0.3
0.0
10.9
10.2
9.1
12.4
14.8
22.6
20.3
60∼69 歳
70∼79 歳
特にない
43.2
48.9
51.6
53.1
52.6
37.6
37.9
39.1
33.3
いつまでも現役で活躍するための意欲の維持
幅広い人脈づくり
60
30.5
27.7
17.4
14.9
13.6
16.8
13.9
現在の業種とは異なる業種でも就労できるよう、
40∼49 歳
をあげる割合が高い(図8)。
5.就労
するために企業に望むこと
(回答は1つ)
については、
「健康や体力に配慮した配置、
① 高齢期に就労するために企業に望むこと
社内での健康づくりの取組などの健康管
技術の習得」をあげる割合が高く、年齢
が高いほど「健康・体力づくり」
、「いつま
でも現役で活躍するための意欲の維持」
② 年齢別にみると、年齢が低いほど「現在
の業種や職種に関する専門的な知識・技
0
80 歳以上
29.3
32.6
44.4
図9 就労のために企業に望むこと(N=3,000)
4.0
35.2
0%
20%
26.4
40%
0.1
8.6
60%
25.7
80%
100%
健康や体力に配慮した配置、社内での健康づくりの取組などの健康管理
経験・知識・能力の適切な評価 教育訓練 職場に同年代の人がいること
その他 特にない
2017.1 48
労務資料
35.8
60%
80%
6.就労
促進について国が取り組むべき
施策(回答は3つまで)
40%
28.7
100%
健康や体力に配慮した配置、社内での健康づくりの取組などの健康管理
)。
10
経験・知識・能力の適切な評価 教育訓練 職場に同年代の人がいること
その他 特にない
0
10
20
30
40
60
70
80
90
100
36.3
希望者全員が 65 歳まで働ける仕組みの徹底
11
)
。
企業が 65 歳以上の人を雇用するインセンティブ作り
39.1
70 歳までの定年延長
24.2
ハローワークでの高齢者への職業紹介の取組の強化
29.1
高齢者の教育訓練
36
12.6
シルバー人材センターで紹介できる職種の拡大など
シルバー人材センターの機能強化
その他
50
25.6
0.5
65
19.9
図₁₂ 就労促進について国が取り組むべき施策(年齢別)
(単位:%)
0
5
10
15
20
25
30
希望者全員が 65 歳まで働ける仕組みの徹底
40
シルバー人材センターの機能強化
40∼49 歳
50∼59 歳
その他
60∼69 歳
70∼79 歳
80 歳以上
49 エルダー
特にない
0.9
0.4
0.4
0.4
0.0
21.0
20.0
16.4
22.2
19.1
28.0
32.2
35.8
65
12
歳まで働ける仕組みの徹底」
20.9
20.6
シルバー人材センターで紹介できる職種の拡大など
者全員が
15.8
14.8
39
☆ ☆
10.6
11.5
11.8
24.4
30.8
27.2
25.5
30.2
28.7
32.1
24.7
ハローワークでの高齢者への職業紹介の取組の強化
高齢者の教育訓練
40.1
36.8
41.5
38.6
65
をあげる割合が高い(図 )。
32.1
70 歳までの定年延長
50
45.3
47.2
28.0
28.3
企業が 65 歳以上の人を雇用するインセンティブ作り
20.1
19.8
45
② 年齢別にみると、年齢が低いほど「希望
22.2
35
歳まで働ける仕
特にない
35
26
図₁₁ 就労促進について国が取り組むべき施策(N=3,000)
(単位:%)
理( ・2%)
」
、「経験・知識・能力の適切
20%
な評価( ・4%)
」の順であった(図9)
。
0%
① 高齢者の就労促進についての国が取り組
むべき施策については、
「 企業が 歳 以 上
25.9
23.5
19.5
30.9
0.0
② 年齢別にみると、年齢が低いほど「健康
や体力に配慮した配置、社内での健康づ
80 歳以上
2.9 8.5
0.0
1.2 13.6
27.7
の人を雇用するインセンティブ作り( ・
32.2
2.5 9.9
23.8
くりの取組などの健康管理」をあげる割
70∼79 歳
4.7 7.5
0.1
30.6
21.4
0.0
「 高 齢 期 の 就 労 に 関 す る 認 識 」以 外 の 調 査
項目は厚生労働省のホームページを参照して
32.8
0.3
1%)
」
、「希望者全員が
60∼69 歳
7.6
合 が 高 い。 ま た、
「 特 に な い 」は 年 齢 が
37.6
50∼59 歳
6.5
いただきたい。
23.9
組みの徹 底( ・3%)
」の順であった(図
40.3
40∼49 歳
高いほど高い割合である(図
図₁0 就労するために企業に望むこと(年齢別)
新春
特別講演
﹁平成
年度 高年齢者雇用開発フォーラム﹂記念講演から
・労働適応能力評価システムの標準化
行政レベルの取組み
・仕事の対処能力評価システムの構築
神代雅晴
世紀に、英国のウィリアム・
えき がく しゃ
ペティと いう医師であり、 疫学者、経済学 者、
言葉を信じて私は研究に取り組んできました。
をしようと思ったら働くことですよ」と。この
は健康から生まれる」
。すなわち、
「健康づくり
400年近く前の
「 労働寿命の
神代雅晴 と申します。本日は、
延伸が健康寿命の延伸につながる」という考え
人口統計学者としても活躍した方がこのように
こよみ
に基づいて、暦年齢にかかわりなく活躍できる
﹁健康は労働から生まれ、 満足は健康から生まれる﹂
かった方も多いと思います。しかし、私はこれ
「 逆 の こ と を い っ て い る じ ゃ な い か 」と い ぶ
れからは「労働適応能力」 ※を客観的に測ること
差しで定年を決めることは限界にきており、こ
を設けています。しかし私は、暦年齢による物
「昭和
さて、私たちがよく口にする年齢とは、
何年に生まれたから何歳だよ」という「暦年齢」
まで行ってきた研究成果から、世間でいわれて
ができる物差しが必要だろうと考えています。
、すなわち、
一般的には「健康だから働ける」
健康寿命を延ばしていった先に、働く力が生ま
いるのとは逆の、
「労働寿命を延ばすことが、健
です。日本の多くの企業が暦年齢による定年制
康寿命を延ばす」という信念を持っています。
これは私だけが唱えていることではなく、約
そ し て こ の「 労 働 適 応 能 力 」を 適 切 に 評 価 す
ることができると、その時点で、労働寿命を長
れるといわれていますから、
私の言葉に対して、
いっています。
「健康は労働か ら生まれ、満足
17
社会づくりについてお話ししたいと思います。
一般財団法人 日本予防医学協会理事長 ・労働適応能力評価システムの開発
・労働適応能力に対応した賃金・処遇制度制定
・暦年齢基準による定年制の廃止
企業レベルの取組み
・職場改善活動
職場レベルの取組み
・運動機能の向上
・体力の向上
・生活習慣病の予防
個人レベルの取組み
観点から、以下の取組みを提案されました。
は、 労 働 寿 命 を 延 ば す こ と が 重 要 で あ る と い う
健康で活力ある高齢者を増やし、年齢にかか
わりなく働ける生涯現役社会を実現するために
本講演のポイント
∼労働寿命の延伸から健康寿命の延伸へ∼
生涯現役社会を目指した
日本的健康経営戦略
28
※労働適応能力…仕事の要求を成し遂げる労働者の能力
2017.1 50
新春特別講演 生涯現役社会を目指した日本的健康経営戦略 ~労働寿命の延伸から健康寿命の延伸へ~
産年齢人口は、2060年に向けて減り続けて
015年版の『高齢社会白書』のデータをみま
歳以上で何らかの自覚症状を訴えてい
くするためにはどうしたらよいか 、 そ の 対 策 を
歳から
歳以上の割合
歳の人口が減ってい
題で日常生活動作や仕事、外出などに影響のあ
る人は半数近くの ・6%。また、健康上の問
る人は ・8%で、全体の約4分の1となって
歳以上は「老年人口」といわれますが、こ
の割合は、2030年には人口の3人に1人、
測されています。
このような状況にある人を可能なかぎり少な
くして、健康で働くことのできる 歳以上をど
います。
が非常に高くなっていくという状況も同時に予
くなかで、
「中高年」といわれる
います。これは
すと、
いくことが「日本の将来予測人口」で示されて
講ずることができるようになりま す 。 本 日 は そ
うしたお話をします。
歳以上が働かなければ 社会を維持できない時代に
日本人の平均寿命は右肩上がりに延びてき
て、2015年度の平均寿命は「男性 ・ 歳」、
「女性 ・ 歳」となっています。
歳の生産年齢人口は2人に1人まで減って
2060年には2・5人に1人になる一方、
~
い き ま す。 つ ま り、
現役世代1人で高齢
者1人を支える社会
れだけ増やしていけるのか。このことが日本の
将来にとってとても大事になっています。
健康寿命と平均寿命
その差を縮めるには
らく不可能になると
維持することはおそ
ですから、高齢者
が働かないで社会を
厚生労働省が調査した日本の健康寿命の推移
をみますと、健康寿命も平均寿命と同じく年々
件を満たしていることをさします。
している」、
「要介護ではない」という3つの条
になります。
思 い ま す。 ま さ に、
延びてきていて(図1)
、2013年では「男性
「日常
近ごろよく耳にする「健康寿命」とは、
生活の制限がない」
、
「自分が健康であると自覚
歳以上が
日 本 は「
・ 歳」
、
「女性 ・ 歳」
。20 01年と比較
い時代を迎えた」と
すると1・5 ~ 1・8歳ほど延びています。
働かなければならな
もいえる状況にある
のです。
寿命は ・
こ の 健 康 寿 命 を 平 均 寿 命(『 平 成 年 簡 易 生
命 表 』か ら 引 用 )と 比 較 し ま す と、 女 性 の 平 均
21
歳の生
出典:橋本修二,厚生労働科学特別研究事業,健康寿命の国内と海外の現状把握と分析評価
に関する研究,平成26年度 総括・分担研究報告書,江副聡,pp62, Secular trend of Life
Expectancy and Healthy Life Expectancy in Japan を元に作成(http://toukei.umin.jp/
kenkoujyumyou/houkoku/H26_toku.pdf)
65
歳 で す か ら、 健 康 寿 命 と の 差 が
26
21
61
2013 [年]
働くことに着目しますと、 歳 か ら
15
65
・4歳、男性は平均寿命が ・ 歳ですから、
51 エルダー
45
46
74
65
(差 9.02 歳)
15
65
69
71.19
72
05
25
19
86
72.69
2010
2007
2004
2001
66 0
15
87
2012 年3月、産業医科大学を定年退職し、同大
学名誉教授と一般財団法人日本予防医学協会理事
長に就任。産業保健人間工学会会長、国際産業保
健会議(ICOH)
「加齢と労働」に関する科学委員会
委員長、国際人間工学会(IEA)安全衛生技術委員
会委員長、日本産業衛生学会エイジマネジメント
研究会代表世話人、日本人間工学会理事などを歴
任。高齢労働対策をテーマとした著書に『高齢者
雇用に役立つエイジマネジメント』
、
『高年齢労働
者のための職場づくり』などがある。
64
一方、高齢者の健
康状態について、2
80
女
67
71
12
(差 12.4 歳)
[歳]
75
64
男
68
男性の平均寿命 80.21歳
69.47
69.4
70
73.62
73.36
72.65
70.42
80
79
73
女性の平均寿命 86.61歳
図1 健康寿命の推移
64
74.21
74
70.33
71
65
神代雅晴 (くましろ まさはる)
健康ではなかったことになります 。
取り組んで、労働適応能力を上げ、労働寿命を
命を算出し、労働余命を延伸するための改善に
制度ではなく、労働適応能力を評価して労働寿
能力を発揮する人はいますから、年齢ありきの
ルヘルスにもかかわるのです。同様に、ストレ
習慣の有無は体力的なことのみならず、メンタ
かりにくいことが示されました。つまり、運動
つ症状にかかりやすく、運動習慣がある人はか
研究結果においても、運動習慣がない人は抑う
状との関係を調べた産業医科大学時代での調査
健康寿命を延ばすことでこの差 を 縮 め る こ と
おびや
ができる わけですが、では、「健 康寿命を 脅か
延ばしていくのです。
があり、運動強度が高いほど、ストレス耐性が
歳になっても仕事の
している要因は何か」と探りますと、大きなポ
2つ目の戦略は、健康管理です。これは病気
になる前から取り組む第一次予防に重点を置
強くなってくるという結果が示されました。
めた定年制の廃止です。
イントになっているのが生活習慣 病 で す 。
き、健康関連因子と作業関連因子の両面から取
健康寿命との差は9・ 歳。つまり、この間は
特に、日本人に多い三大生活習慣病(高血圧
症、脂質異常症、糖尿病)は、厚生労働省の調
り組むことが必要です。健康関連因子に対して
それから、目を開けて片足で立つ調査(開眼
片足立ち)
をある企業の男性1016人に行い、
とがわかっています。 歳以上で は さ ら に 顕 著
に増え、 歳ぐらいまで増え続け て い ま す 。
厚生労働省の発表によると、平成 年度の日
本の医療費は 兆610億円とな っ て お り 、 そ
歳以上の人に費やされていま
大し、2025年には 兆円にな る と さ れ て い
厚生労働省の予測によると、医療 費 は 今 後 も 増
す。 日 本 の 高 齢 化 は こ れ か ら も 進 み ま す か ら 、
の ・7 % が
25
ます。医療費を抑えるためには、 生 活 習 慣 病 を
予防することがとても大事になり ま す 。
とお話ししました。そして、国の 医 療 費 を い か
に低減していくのか。この2つが 現 在 の 日 本 の
そこで私は2つの戦略を提案い た し ま す 。
大きな課題であると考えています 。
ス耐性を調べた調査結果では、これは運動習慣
査結果によると 歳以上から増え 始 め て い る こ
は、主に生活習慣病などの予防が主力となりま
年齢階級別に結果を比較したところ、 歳を過
70
す。作業関連因子については職場改善などに取
45
65 40
先ほど、日本 の人口構造のデー タから、「
歳以上が働かなければならない時代を迎えた」
65
ぎると1分間も立てない人が増えて、さらに年
も、
歳を過ぎるとやはり増えていました。
齢が高くなるほど増えていました。また、片足
り組むことです。
で立ったままで靴下を履くことができない人
加齢にともなう関節や筋力の衰えは、
「転倒・
転落」という労働災害につながります。放って
おくとどんどん衰えてしまいますが、運動習慣
を持つことによって鍛えることができます。
四股踏みのような体操です。股関節のストレッ
こ ふ
全国の企業で働いている人の最大酸素摂取量
や肺活量などの調査結果から、運動習慣のある
チ に な り、 腸 腰 筋 ※を 鍛 え る こ と が で き ま す。
し
人はない人に比べ、運動機能や体力の低下を抑
それによって片足立ちの持続につながり、片足
例えば、職場でラジオ体操を行うのもよいで
しょう。私がある会社に助言したのは、相撲の
制できることがわかってきました。
で立ったまま靴下を履くこともできるようにな
ちょうよう きん
また、ストレスの指標の1つになる抑うつ症
動習慣を持つことが大きなポイントです。
第1段階の戦術は、生活習慣病の予防や体力
維持・向上に自分で取り組むこと。これは、運
職場改善のポイント
中高年齢者の労働を意識した
これらを具体的に進めていく方法として、4
段階の戦術を立てています。
50
75
1つは冒頭にも申し上げた、暦 年 齢 に よ り 定
※腸腰筋…腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群
だいたいこつ
ようつい
02
55
54
50
57
2017.1 52
新春特別講演 生涯現役社会を目指した日本的健康経営戦略 ~労働寿命の延伸から健康寿命の延伸へ~
おすすめしています。
場体操に四股踏み運動を取り入れましょう」と
ずは、会社の従業員の体力をつけ ま し ょ う 。 職
をどうしたらいいのかといった内容ですが、「ま
ば手すりをどうつけたらいいのか 、 階 段 の 高 さ
労働災害の防止に関する相談で よ く 聞 か れ る
のは転倒・転落を防ぐには人間工 学 的 に 、 例 え
り、転倒・転落しにくい体になる の で す 。
数として評価されます。ほかの5問は本人が自
について医師による客観的な判断を仰ぐもの。
WAIでは、7つの設問によって労働適応能
力の評価を行います。その1つは、現在の疾患
ルが開発され、使われています。
う7種類の指標を用いた労働適応能力診断ツー
フィンランドでは、1980年代に「ワーク
アビリティインデックス」
(以下、WAI)とい
金、処遇制度などを制定することです。
ティブエイジングインデックス」
( 以 下、 A A
力 を 評 価 す る 方 法 を 研 究 し、 こ の ほ ど「 ア ク
方々のご協力を得ながら日本独自の労働適応能
環 境 と 日 本 で 働 く 人 た ち に、 よ り 適 し た 評 価
ば、自己の過去の最良時と比べた場合の現在の
I)※2というツールを開発しました。
労働適応能力は、職務満足や
ストレス反応などに影響する
AAIの 年以上にわたる開発過程を通して
徐々にいろいろなことがわかってきました。
ツールを提供する必要性を感じ、日本の企業の
第2段階の戦術は、職場における取組みです。
作業関連因子の第一次予防として 、 ま ず 職 場 改
分で判断して答えた内容で評価されます。例え
例えば、WAIで算出された「労働適応能力」
が 高 い 人 は、
「 職 務 満 足 」 が 高 い の で す。鶏と
カ月の欠勤状況が点
善を行うことです。
労働適応能力について、
「一番よかった状態を
卵ではないですが、どちらが先か答えは出ていま
それからもう1つ、過去
中高年齢者の労働を意識した職 場 改 善 の ポ イ
ントとして、私は3点をあげてい ま す 。 1 つ は
ですか」
、と
いう設問です。
せんが、いずれにしても職務満足と労働適応能
とすると、 現在は8ですか、
す。2つめは、
「重量物の取扱い」に関すること。
力 」が 高 か っ た 人 が 何 か の 拍 子 で 低 く な ると、
「作業姿勢」。いわゆる不良作業姿勢を改善しま
3つめは「目の環境」です。明るさや細かな作
7つの設問から算出された合計得点により、
評価は4段階に分けられています。7点から
点を取る
「職務満足」も低いという状況が出るのです。
能 力 」が 低 い 人 は「 ス ト レ ス 感 情 」が 非 常 に 高
それから「ストレス」とWAIによって算出
された「労働適応能力」の関係では、
「労働適応
ます。
トレス」が低い。同じストレッサーを受けてい
点から
力には明らかな関係があります。
「労働適応能
業に配慮した環境を整えます。
いという評価。最高評価の
点は「プアー」で、これは労働適 応能力が乏し
改 善 を は か る 際 は、「 人 間 工 学 ア ク シ ョ ン
チェックリスト ※1」をつくって取り組むことを
と、
「エクセレント」
( 素 晴 ら し い )と 評 価 さ れ
このツールは現在 カ国以上で翻訳されて使
われています。日本でもWAIの日本語版を私
ても「労働適応能力」の高低によりストレス反
い。逆に、「労働適応能力」
が高まってくると
「ス
のいた産業医科大学産業生態科学研究所人間工
応は変わってくることが示されました。
学研究室で翻訳し、高齢労働研究で活用してき
評価する
第3段階は企業レベルでの戦術 で 、 日 本 で は
まだ例が少ないのですが、労働適 応 能 力 を 評 価
49
「抑うつ症状」とWAIによる「労働適
また、
労働適応能力(ワークアビリティ)を
おすすめしています。
10
10
12
たところです。その経験をもとに、日本の労働
26
44
することです。そして、その能力 に 対 応 し た 賃
53 エルダー
27
10
※1 人間工学アクションチェックリスト……現場支援型ツールに特化した改善指向型のチェックリスト。チェックリストの項目は
「このようであってほしい」
という理想的な状態・状況が掲げられている。 ※2「アクティブエイジングインデックス」は、
(一財)日本予防医学協会の登録商標。
蓄積疲労感が増大して、そこからストレス反応
日常の疲労感が増大し、それがくり越されると
していきます。さらに、職場での仕事によって
立てました。そして、 の質問項目に答えるこ
意欲」、
「社会的な対処能力」という4つの柱を
「身体機能」
、
「精神的許容能力と回復力」
、
「働く
満足感が低下したりして、労働適応能力が下が
レスが増大したり、抑うつ反応が出たり、職務
一方、職場の要因として、量的労働負荷が多
かったり、仕事への裁量権があまりないとスト
に大きく影響してくるわけです。
てきたりと、WAIの評価による労働適応能力
満足感が低下したり、慢性疲労症状が絶えず出
が増大したり、抑うつ反応が出てきたり、職務
このAAIの開発過程においても、日本予防
医学協会ではいろいろな調査研究とその結果を
れるように工夫しています。
と労働寿命が延びます」
、という具体策が示さ
この4段階に、労働寿命を延ばすための対策
を4つの柱にわけて全部で256通りの対策を
4段階で労働寿命を示します。
と で 得 ら れ た 点 数 に よ り、
「 S、A、B、C 」の
(-)
職場要因
るわけです。ここで注目されるのは、上司・同
用いた相関関係を検討しました。例えば、AA
体力低下
含まれています。つまり、
生活習慣病の有無が、
労働寿命の長短に大きく影響するということ
しました。
こうした研究などをふまえて、日本予防医学
協会では、「AAI」という評価ツールを開発
それから、
「ストレス」は「労働寿命」の長短
に影響します。ストレス耐性を高めることで、
あることがわかりました。
働寿命を延ばすためにもそのことがポイントで
で、先ほど生活習慣病を防止するためには運動
図2は、産業医科大学時代の研 究 や 調 査 結 果
から示唆されたことをまとめた図 で す 。
AAIとWAIとの違いは、AAIは労働寿
命を推定する目的を持って開発した点にありま
労働寿命を延ばすことがわかりました。
習慣を持つことであるとお話ししましたが、労
個人の要因としては、運動習慣 が な い 、 あ る
いは運動習慣を持っていても運動 強 度 が 弱 過 ぎ
す。そ の た め に さ ま ざ ま な 研 究・ 調 査 を 行 い、
それから、運動習慣があると「労働適応能力」
が上がるという関係も示されまし た 。 運 動 習 慣
かりやすい」ということがわかりました。
疲労感増大
は、労働適応能力にも影響するの で す 。
用意し、
「あなたはこういうことに気をつける
僚の支援や家族の支援があると労働適応能力が
(-)
個人要因
運動習慣なし、
運動強度が弱い
ると体力維持にはあまり貢献せず 、 体 力 は 低 下
労働寿命を推定する 労働適応能力評価システム(AAI)
I に よ っ て 評 価 さ れ た「 労 働 寿 命 」は、 神 経・
WA I 結果から 労働適応能力の低下に大きく影響
上 が っ て く る ということもわかったことです。
ストレス増大/抑うつ反応/
職務満足感の低下/慢性疲労症状
感覚系の疾患に比べて「内分泌・代謝系の疾患」
家族の支援
とくに、上司・同僚、家族と円満な関係である
23
緩衝要因
(+)
(-)
に大きく影響することがわかりました。
内分泌・
上司・同僚の
支援
ことがストレスのみならず、労働適応能力の緩
(-)
応能力」の関係では、
「労働適応能力」が低い人
仕事のコントロール
代謝系の疾患には、糖尿病などの生活習慣病が
(-)
衝要因として大きいことがわかってきました。
量的労働負荷
は「抑うつ症状にかかっている」、もしくは「か
図2 労働適応能力への影響要因
2017.1 54
新春特別講演 生涯現役社会を目指した日本的健康経営戦略 ~労働寿命の延伸から健康寿命の延伸へ~
すなわち、「 労働寿命の延伸が、 健康寿命を
延伸をさせる」ことも示唆され、ウィリアム・
こうした調査研究から示唆された わ け で す 。
価値観・意識」は労働意欲向上への支援を示し
を置く」は健康支援であり、2階部分の「意欲・
意識する・健康を意識する・第一次予防に力点
図3は、ここまでのお話ししたことの概念を
まとめたものです。1階部分の「生活習慣病を
とができます。
より、個々人の「職務遂行能力」を評価するこ
を 意 識 し な い 就 労 能 力( 生 涯 現 役 )が 示 さ れ、
イジング能力 ※が評価され、それにより暦年齢
①と②を足すことにより、プロダクティブ・エ
能力向上への支援をしていく。これを②とし、
図の3階 では「技能・知識・経験 」をベース
にした仕事対処能力評価により、直接的な職務
されます。これを①とします。
しました。また、AAIによって労働寿命が示
冒頭にお話ししたように、「労働意欲が高い
か ら 健 康 を つ く り 上 げ る 」の で あ っ て、「 健 康
世紀に語った「健康は労働から生ま
ています。この1階と2階を評価するシステム
ペティが
だ か ら 労 働 意 欲 が 高 ま る 」のではないことが、
れ、 満 足 は 健 康 か ら 生 ま れ る 」と い う こ と が、
いかと考えています。
行能力を発揮できる社会が創設できるのではな
最終的に、暦年齢を意識せず生涯現役で職務遂
また、労働適応能力を評価する方法を導入し、
把握できるようになれば、個々の職務能力とそ
の労働者が従事する職務とのミスマッチを防げ
るのではないかとも考えています。
このことも、
健康経営戦略にとって大事なことでしょう。
このようにして、暦年齢を意識せずに働くこ
とができるようになると、健康で活力ある高齢
者が増え、医療費を抑えることができるでしょ
う。そして、高い生産能力を有する高齢労働者
集団=プロダクティブ・エイジングが出現する。
そうなりますと、少子高齢化が進む日本も負の
構造への防御ではなく積極的に前進する明るい
未来が感じられる社会になるのではないか、こ
※プロダクティブ・エイジング能力…生産的な活動を行い、その知識や経験で社会貢献する高齢者の能力
として、労働適応能力を評価するAAIを紹介
生涯現役(暦年齢を意識しない就労能力)
証明されたのです。
暦年齢を意識しない
就労能力を評価する
さて、最後の第4段階の戦術と し て 、 企 業 レ
ベルでAAI、あるいは同様のも の を 開 発 し て
生活習慣病を意識する
健康を意識する
第一次予防に力点を置く
普及すること。同時に、仕事の対 処 能 力 評 価 シ
ステムをつくり上げていくことを 提 案 し ま す 。
意欲
価値観
意識
そして、行政レベルで労働適応能力の標準化
をはかること。これらにより、暦年齢基準によ
る定年制を廃止する。すると、個 々 人 に よ る 労
働適応能力を評価することができ る よ う に な り
労働意欲向上への
支援
(技能+経験+知識)
技能
知識
経験
② 仕事対処能力評価
直接的な
職務能力向上への支援
①+②
プロダクティブエイジング能力
① AAI
(アクテイブ
エイジング
インデックス)
健康支援
ます。
仕 事 の 対 処 能 力 評 価 シ ス テ ム と は、「 技 能・
知識・経験」について、
「~ができる」、
「~を知っ
ている」、
「~をしたことがある」というチェッ
のように考えています。
ご清聴ありがとうございました。
55 エルダー
クリストから評価点を出すもので す 。 こ の 仕 事
の対処能力評価とAAIと組み合 わ せ る こ と に
図3 生涯現役への取組みの概念図
17
仕事としてはじめる“農”をテーマに第2の人生と向き合う
小さな農でつかむ生きがいと収入
定年就農
本書は、
代、
代の人たちが農業にたずさ
外少なくないのではないか。
り組んでみたい。こんな夢を抱いている人は案
りをしたい。それも趣味ではなく仕事として取
定年後は田舎に暮らしてこだわりの野菜づく
神山安雄 著/
素朴社/ 1500 円+税
憧れの暮らしを実現した
組の生き方を丁寧な
農・移住のために必要な情報も掲載している。
画の立て方、新規就農で成功する秘訣など、就
農業を始めるための相談窓口の紹介、就農計
二の人生を考えるうえでのヒントにもなる。
ど、それぞれに異なる軌跡が描かれていて、第
た実感、田舎暮らしの地元の人たちとの交流な
就農までにたどった具体的な道筋、農業を始め
たら取り返しがつかないという気持ちの揺れや、
などの事例がある。就農に憧れながらも失敗し
み、自然体の暮らしを実現した元サラリーマン
こだわった小規模のくだものづくりに取り組
ナーからぶどう農家に転身した男性、手作業に
レストランを開いた夫婦や、アパレルのデザイ
住し、自分で育てた野菜などを食材にする農園
例えば、役職定年を機に故郷の町の近くに移
取材によって紹介している事例集である。
20
ためのガイドブックであり、農業を仕事にする
わりながら、活き活きとした第二の人生を送る
60
Q&Aで納得!
労働問題解決のために読む本
く参考図書としてお勧めしたい。
人の
がますます重要になる。担当者が常に手元に置
人手不足が深刻化する昨今、適正な雇用管理
様なニーズに応える構成となっている。
を手がかりにさらに深く知ることもよし﹂と多
ま直面するテーマから読んでよし﹂、﹁参考文献
ろん、
﹁関心のあるテーマから読んでよし﹂
、
﹁い
ているのが特徴だ。全体を通読することはもち
えておきたいポイントが簡潔明瞭にまとめられ
弁護士と社会保険労務士があたっており、押さ
執筆には雇用管理の実務に精通した、
勤の実務﹂の6テーマに分けて収められている。
則﹂
、
﹁賃金﹂
、﹁労働時間﹂
、
﹁休暇制度﹂
、
﹁出張・転
24のQ&Aが、
﹁改正労働者派遣法﹂、
﹁就業規
用管理にかかわる課題解決のヒントとなる、1
にうってつけの書籍で、職場で起こりがちな雇
本書は、こうした課題に悩みを抱える担当者
ことが求められる。
当者には、改正内容を正確に把握して運用する
方が問われかねないので、経営者や人事労務担
解釈を誤れば、企業のコンプライアンスのあり
える法令が頻繁に改正されている。改正内容の
働法﹂など、企業の雇用管理に大きな影響を与
﹁ 労 働 契 約 法 ﹂や﹁ 労 働 者 派 遣 法 ﹂、
﹁パート労
一般社団法人
日本労務研究会
編集・発行/
1900 円+税
15
50
雇用管理上の課題をQ&A方式でわかりやすく解説
※ こ の コ ー ナ ー で 紹 介 す る 書 籍 の 価 格 は 、「 本 体 価 格 」( 消 費 税 を 含 ま な い 価 格 ) を 表 示 し ま す
2017.1 56
卓越したリーダーたちの考え方を知るためのブックガイド
定年前後の悩みにこたえる
お金の相談Q&A
著者はファイナンシャル・プランナーとして、
ミドル・シニア世代の生活設計をテーマに、こ
れまでに5000人以上の相談に対応してき
た。その多くの相談者が、
﹁老後の生活設計﹂に
必要な基本的な情報を知らないまま、老後に不
安を抱えているように感じたそうだ。実際、そう
した相 談 者のお金や公 的 年 金な どを整理する
と、最後は安心して帰るケースがほとんどとい
う経験が本書をまとめる原動力になったという。
本書の内容は、ミドル・シニア世代の代表的
な お 金 の 悩 み を 解 消 す る た め の ア ド バ イ ス を、
のQ&A形式で伝えている。加えて、今後
認する﹁ライフプランと資金計画表︵キャッシュ
フロー表︶﹂のフォーム例や﹁ライフスタイル自
一般向けの本だが、企業や団体などでミドル・
己診断表﹂などを巻末に掲載している。
シニア世代の生活に関する相談を受けている人
にも役立つ一冊ともいえる。
﹁ お 金 の こ と を 考 え る こ と は、 自 分 の 生 き 方
が問われることでもあります﹂、
﹁自分にとって
本当に大事なものは何かを見極め、その裏付け
となる経済面の備えが必要です﹂という著者の
言葉も印象に残る。
∼ 人を育て活かす経営理念
協力し学び合う日本型組織のつくり方
心がある方々にお勧めしたい。
る視点も大切だろう。人を活かす経営理念に関
とすれば、働く人の幸福度で企業の優劣を論ず
く、社会からも評価されるようになりつつある
社員が大切にされている会社ほど業績もよ
レーザーしかりである。
﹁ ト ッ プ イ ン タ ビ ュ ー﹂で 紹 介 し た、︵ 株 ︶日 本
な っ た 企 業 し か り、 本 誌 2 0 1 5 年 2 月 号
ば、直木賞受賞作﹃下町ロケット﹄のモデルと
と、その兆しは、各地で見え始めている。例え
と﹂が必要と訴えている。本書の第4章を見る
させ、経営を人間らしい行為の集合体に戻すこ
が著者の見方であり、﹁健全な組織原理を復活
日本企業の組織原理は失われつつあるというの
と こ ろ が 市 場 原 理 主 義 の 行 き 過 ぎ に よ っ て、
することを第一と考えてきた﹂のである。
とに基づ く。﹁企業は公器であり、 社会に貢献
が必ずしも利潤追求を第一としてこなかったこ
原理を重視した経営を行ってきた。それは企業
そ も そ も 日 本 の 企 業 は、 市 場 原 理 よ り も 組 織
の分野まで巻き込まれてしまったという。
その結果、市場原理にはなじまないはずの労働
﹁ 市 場 原 理 主 義 ﹂が 産 業 界 に 流 れ 込 ん で き た。
平成不況下、市場重視の資本主義、いわゆる
竹村之宏、竹村亘弘 著/
日本生産性本部生産性
労働情報センター/
1500 円+税
カリスマ経営者の名著を読む
﹁ カ リ ス マ ﹂と 称 さ れ る 人 た ち が い る。 彼 ら
が勤めている企業や店舗がマスコミなどに取り
上げられ、にわかに世間の注目を集めることも
珍しくない。
﹁カリスマの一端に触れてみたい﹂
という心理がそこに働いているのだろう。しか
し﹁ カ リ ス マ 経 営 者 ﹂に 関 し て は、 本 人 の 声 を
聞く機会がなかなかないのが現実。コンサルタ
ントとして活躍する著者がカリスマ経営者本人
が書いた著作を厳選し、そのエッセンスを紹介
したブックガイドでもある本書は、こうした要
柳沼正秀 著/
近代セールス社/
2000 円+税
数年の生き方とその裏付けとなる資金収支を確
10
望に応える役割を果たしている。
取り上げられた﹁名著﹂は、井深大、本田宗一
郎、稲 盛 和 夫、松 下 幸 之 助、柳 井 正、坂 根 正 弘、
デ ー ビ ッ ド・ パ ッ カ ー ド、 サ ム・ ウ ォ ル ト ン、
リチャード・ブランソン、カルロス・ゴーンの
手になるもの。すでに神格化されている経営者
から、最近まで第一線で活躍していた経営者、
そして現役の経営者まで、目配りが効いている。
それぞれの代表的な著作のエッセンスを手際よ
くまとめて紹介している本書は、企業のマネジ
メント層のみならず、若手ビジネスパーソンに
とっても、貴重な参考書となるだろう。本書の
読後にそれぞれの原典にあたれば、さらに理解
が深まるのはいうまでもない。
57 エルダー
99
高野研一 著/
日本経済新聞出版社
(日経文庫)/
1000 円+税
退職後の生活を見通すための一冊
働く人の幸福度を第一とする経営理念と組織のあり方を論じる
ポータルサイト
﹁スタートアップ労働条件﹂を開設
厚生労働省
﹁平成
年度 現代の名工﹂決定
厚生労働省は2016︵平成 ︶年 月 日、そ
の道で第一人者と目され、卓越した技能を有する
20
厚生労働省
厚生労働省は2016︵平成 ︶年 月1日、事
業者のための労務管理・安全衛生管理診断サイト
11
日、東京都港区の明治記念館で表彰式
び産業の発展に寄与し、他の技能者の模範と認め
られる現役の人に対して、厚生労働大臣が表彰を
﹁現代の名工﹂の表彰制度は、極めてすぐれた技
能を有し、技能を通じて労働者の福祉の増進およ
①﹁募集、採用、労働契約の締結﹂
行うもの。1967︵昭和
改善に向けた労働関係法令の情報が得られる。
②﹁就業規則、賃金、労働条件、年次有給休暇﹂
す ること がで き る。 ま た、 診 断 結 果 に 基 づいて、
の特性などをふまえた創意工夫のある事業構想を
③﹁母性保護、育児、介護﹂
2016︵平成 ︶年度の第2次募集は、同年8
月上旬から9月中旬にかけて行われ、提案主体か
0万円で、事業期間は最大3年。
と特別区は3000万円、その他市町村は200
度あたり都道府県は4000万円、政令指定都市
要時間約
ウェブ診断は、ゲストユーザーの場合は 問︵所
要時間約 分︶
、 登 録 ユー ザ ー の 場 合 は 問︵ 所
⑥﹁労働保険、社会保険、その他﹂
⑤﹁安全衛生管理﹂
④﹁解雇、退職﹂
54 40
らのヒアリングを経て、外部の有識者からなる第
が 行 われて以 来、今 年 度で 節 目の
回 目 となる。
今年度の主な受賞者を紹介すると、人形製造工
の川 﨑 幸子さん︵ 歳︶は、古事記や万葉人など、
人が表彰を受けている。
今回受賞の160人を含めて、これまで6047
50
42
④京都府元気シニア活躍協議会
③生涯現役促進地域連携鎌倉協議会
②神奈川県生涯現役促進協議会
採択された団体は次の通り。
①大館市高齢者活躍支援協議会
三者委員会により実施団体が採択された。
診断を通じて、労働基準法などの関係法令の基
礎知識や遵守すべき事項、行うべき手続き、具体
き点を発見することができる。
状や点数により、改善すべき点や伸ばしていくべ
チャートに表示され、そのレーダーチャートの形
全衛生管理上の要点に関する診断結果がレーダー
建築大工の福森靜男氏さん︵ 歳︶は、自然の素
材をいかした数寄屋大工技術などを通じて、国内
で一貫作業する技能を身につけている。
織布工の川戸久幸さん︵ 歳︶は、原糸から丹後
ちりめんの織上げ全行程を伝統製法により産地内
多人形の世界に新たな分野を開拓した。
なお、本誌巻頭グラビア﹁技を支える﹂では、2
016年度の受賞者から、洋生菓子・焼菓子製造
さわっている。
ルマガジンの発行も行っている。
また、事業主に対する各種支援情報を提供する
﹁お役立ち・支援情報﹂を掲載しているほか、メー
⑧長崎県生涯現役促進地域連携協議会
勇さん︵4月号︶を紹介する予定。
工の大山栄藏さん︵2月号︶と機械込造型工の永瀬
http://www.startup-roudou.mhlw.go.jp
ポータルサイト﹁スタートアップ労働条件﹂
77
71
各採択団体では、2016年 月1日以降、事
業を開始する予定とされている。
⑦公益社団法人福岡県雇用対策協会
⑥徳島県生涯現役促進地域連携事業推進協議会
外で日本の伝統建築の魅力を発信する仕事にたず
強さや激しさを表現する独自の作風を確立し、博
日本の古代史を題材に、女性の内面に秘められた
73
的な届出方法などを身につけることもできる。
分︶に答えると、自社の労務 管理や安
20 15
⑤米子市生涯現役促進協議会
28
︶年度に第1回の表彰
した協議会などに委託するもの。委託費は、1年
コンテスト方式で選定し、その事業の実施を提案
高齢者の雇用に寄与する事業構想を募集し、地域
を行った。
し、同月
現役の技能者160人を﹁現代の名工﹂として決定
28
2017.1
平成 年度生涯現役促 進 地 域 連 携 事 業
第2次実施団体を決定
28
同事業は、地方自治体が中心となって労使関係
者や金融機関などと連携する﹁協議会﹂などから、
新規起業事業場などが労務管理・安全衛生管理
などについて、ウェブ上で診断を受けられるサイ
﹁スタートアップ労働条件﹂を開設した。
11
行政
厚生労働省
厚生労働省は、今年度から新たに実施している
﹁平成 年度生涯現役促進地域連携事業﹂の第2次
28
トで、以下の6項目について、自社の状況を診断
21
28
実施団体として、8団体の採択を決定した。
28
12
L E
I
E W S
ニュース ファイル
2017.1 58
2017.1 Januar y
ニュース ファイル
﹁体力・運動能力調査﹂結果を公表
東京都
﹁高齢者の生活実態﹂結果を公表
東京都は、 歳以上の在宅高齢者を対象に実施
した﹁高齢者の生活実態﹂︵平成 年度東京都福祉
スポーツ庁
スポーツ庁は、2015︵平成 ︶年度の体力・
運動能力調査を実施し、結果をまとめた。調査は
月に実施し、6∼
保健基礎調査︶における主な調査結果について、こ
年5∼
歳の男女6万
平成
5904人︵回収率 ・8%︶から結果を得た。
﹁握力﹂
、
高 齢者︵ ∼ 歳の男 女︶の調 査では、
﹁ 上 体 起こし ﹂
、
﹁長座体前屈﹂
、
﹁開眼 片足 立ち﹂
、
﹁
m障害物歩行﹂
、
﹁6分間歩行﹂の6項目とAD
L︵日常生活活動テスト︶による調査を実施。
その結 果、体 力テストを 点 数 化 した合 計 点は、
﹁ ∼ 歳﹂の女子、
﹁ ∼ 歳﹂の男女で過去最高
﹁働く人の電話相談室﹂の集計結果
調査・研究
日本産業カウ
ンセラー協会
一般 社 団 法 人日 本 産 業カウンセラー協 会︵河 野
慶三代表理事︶は、昨年9月9日から 日までの
﹁働く人の電話相談室﹂の集計結果をまとめた。そ
のほど報告書をまとめて公表した。
この調査は、東京都における高齢者の生活実態
を明らかにし、今後の高齢者施策推進の基礎資料
れによると、延べ467人から計756件の相談
日∼同年
月
日に
また、すべてのテスト項目が実施可能な〇の判定
年度調査と比べて、約4分の1となった。
なっている。三世代世帯は減少が続き、1985
相談内容を分野別にみると、最も多かったのは、
﹁職場の悩み﹂で266件︵全体の ・2%︶
、次い
が寄せられた。
3日間にわたって実施した2016︵平成 ︶年度
︶年度
を得ることを目的として、1980︵昭和
月
から5年ごとに行っており、今回で8回目。今回
︶年
実施し、調査対象者︵都内に居住する基準日現在
は2015︵平成
歳以 上の在 宅高 齢 者6000人︶のうち、43
90人から回答を得た︵回収率 ・2%︶
。4390
人の平均年齢は ・8歳。
﹁一世 代︵ 夫 婦 の
世 帯 構 成 を 世 代 別 に み る と、
み︶
﹂の割合が最も高く ・1%、次いで﹁二世代﹂
であった高齢者の割合は、男女ともに加齢にとも
﹁仕事をしてい
収入のある仕事についてみると、
る﹂割合は ・2%で、
﹁仕事をしていない﹂は ・
28
で、
﹁家族に関する悩み﹂101件︵同 ・4%︶
、
﹁メ
ンタル不調・病気の悩み﹂ 件︵同 ・1%︶
、
﹁自
分自身に関する悩み﹂ 件︵同 ・8%︶
、
﹁キャリ
アに関する悩み﹂ 件︵同
いる。
・0%︶の順となって
相談件数が多かった﹃職場の悩み﹄について細か
くみると、
﹁人間関係﹂が最も多く106件︵
﹃職場
の悩み﹄の ・8%︶
、次いで、ハラスメントに関す
る相談︵
﹁パワハラ﹂
、
﹁セクハラ﹂
、
﹁その他のハラ
スメント﹂
︶が多く 件︵同 ・3%︶となっている。
が過半数の ・7%、次いで、
﹁同僚﹂ ・6%、
﹁非
者に、その悩みの対象を尋ねると、
﹁ 職 場の 上 司 ﹂
﹃職場の悩み﹄について、﹁人間関係﹂
、﹁セクハラ﹂
、
﹁パワハラ﹂
、
﹁その他ハラスメント﹂に関する相談
ト増加している。
べると、
﹁仕事をしている﹂の割合は2・2ポイン
13
13
となり、高齢者の体力が向上していることが明ら
かになった。
歳﹂で、テスト項目により実施が不可能な×
﹁立ったままでズボンやスカートが
ADLでは、
はける﹂などの 項目により回答を集計する。
﹁
∼
・3%、
﹁単身世帯︵ひとりぐらし︶
﹂ ・4%と
・7%︶
、
歳﹂で801人︵
歳﹂は
歳 ﹂で は 6 3 2 人
∼
歳﹂で752人︵ ・4%︶
。女子は﹁
∼
ない減少するが、男子では﹁ ∼ 歳﹂で804人
2%となっている。前回︵2010年度調査︶と比
∼
︵ ・7%︶
、
﹁
∼
﹁
∼
歳﹂の778人︵ ・5%︶から、
﹁
・ 6 %︶
、
﹁
以上で働けるまで﹂ ・3%で、合わせて ・8%
歳頃まで﹂ ・4%、
﹁ 歳頃まで﹂7・9%、
﹁ 歳
80
を合わせた割合は ・8%となっている。
となっている。一方、﹁ 歳頃まで﹂と﹁ 歳頃まで﹂
74
正規﹂3・8%となっている。
代、
代の女性からの相談が目立った。男
性の相談者の年代は 代が突出して多かった。
では
相談者467人のうち約6割が女性で、件数に
おいても約6割が女性からとなっている。年代別
26
7 1 5 人︵
35
12
何歳頃まで働ける社会が理想であるかをたずね
た設問では、
﹁ 歳頃まで﹂の割合が ・1%、
﹁
合計点の平均について、過去に運動経験があり現
︵ ・5%︶と大幅な減少を示した。
99
12
29
と 判 定 された 高 齢 者 はほとんどみられなかった。
27
また、高齢者の運動・スポーツ実施状況と体力・
運動能力との関係を分析した結果、体力テストの
在も週1日以上運動している者は週1日未満の者
に比べて男女とも3∼4点高い結果となった。
59 エルダー
68
75
74
11
65
70
95
69
97
40
27
79
70
31
20
52
50
35
65
80
60
11
17
40
79
79
65
74
65
90
70
91
13
88
75
75
78
14
73
65
87
94
79
39
10
37
69
55
11
21
65
27
74
10
79
12
65
31
27
10
65
79
75 97
69
79
次 号
若手社員から見た生涯現役(仮)
特集
2 月号
予 告
解説 岩間夏樹氏(日本生産性本部客員研究員)
リーダーズトーク
杉山仁朗氏(富士特殊紙業株式会社代表取締役社長)
〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉
JEED メールマガジン
メールマガジン無料配信中! ぜひご登録を!
お
知 ら せ 本誌を購入するには —
編集アドバイザー
今野浩一郎……学習院大学経済学部教授
本誌の定期購読は株式会社労働調査会にお申し込みください。
1冊ずつの購入もこちらで受け付けます。
★定期購読についてのお申し込み・
お問い合わせ先:株式会社労働調査会
〒170-0004 東京都豊島区北大塚 2 - 4 - 5
電話 03-3915-6415 FAX 03-3915-9041
奥井 禮喜……有限会社ライフビジョン代表取締役
菊谷 寛之……株式会社プライムコンサルタント代表
阪本 節郎……株式会社博報堂エルダーナレッジ開発
新しい大人文化研究所統括プロデューサー
⃝丸善(丸の内本店、日本橋店)
⃝MARUZEN&ジュンク堂書店
(札幌店、梅田店)
深尾 凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員
真下 陽子……有限会社人事マネジメント代表
⃝一般社団法人高齢者活躍支援協議会
(電話03-6661-0018)
平野 茂夫……株式会社マイスター 60 取締役会長
大嶋江都子……株式会社前川製作所人事採用研修グループ
編 集 後 記
● 新 年 明 け ま し て お め で と う ご ざ い ま す。 昨 年 は
本誌をご愛読いただき、ありがとうございました。
生涯現役社会の実現に向けた期待がますます高ま
るなか、みなさまにご協力いただいた読者アンケー
編集人—企画部次長 児玉順子
ト の 結 果 な ど を 参 考 に、 こ れ ま で 以 上 に 誌 面 の 充
実 に 努 め て ま い り ま す。 本 年 も 引 き 続 き、 ご 愛 読
発行人—企画部長 宮原真太郎
歳 ま で の 雇 用 確 保 措 置 が す っ か り 定 着 し、 職
65
いただきますようお願いいたします。
●発 行—独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
●
●発行日—平成29年1月1日(第39巻 第1号 通巻447号)
場 で 高 齢 社 員 が 活 躍 し て い る こ と 自 体、 珍 し い こ
月刊エルダー1月号 No.447
と で は な く な り ま し た。 こ の よ う に 高 齢 者 雇 用 が
広がりを見せるなか、その機運の一助となるよう、
当機構では毎年、厚生労働省との共催により「高年
齢者雇用開発コンテスト」を実施して、先進的な取
組 み 事 例 を 募 集 し て い ま す。 当 機 構 で は、 こ の ほ
歳雇用先進事
70
か に も、 高 齢 者 雇 用 に 関 す る 取 組 み 事 例 を 掲 載 し
た『エルダー活躍先進事例集』や『
例集』などを作成しています。また、本誌の連載企
画「高齢者の現場 北から、南から」では、全国の
高齢者雇用に関する取組み事例を紹介しています。
こ う し た 事 例 は、 職 場 で 高 齢 者 雇 用 を 進 め る 際 の
ア イ デ ア の 宝 庫 と も い え る で し ょ う。 そ こ で 今 回
の 特 集 で は、 当 機 構 の 事 例 集 な ど に 収 め ら れ た 取
組 み 事 例 を テ ー マ ご と に 分 類 し て み ま し た。 だ れ
もがいきいきと働くことができる職場づくりの方
法 を 考 え る 手 が か り と し て、 こ の 特 集 を 参 考 に し
ていただければ幸いです。
●当機構が1月 日に都内で開催する、
「平成 年度
生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム~定年
引上げ企業に学ぶ~」の申込みの締切りが迫ってい
ま す。 シ ン ポ ジ ウ ム で は、 東 京 学 芸 大 学 教 授 の 内
田 賢 氏 が 講 演 を 行 い ま す。 ま た、 定 年 引 上 げ 企業
として、サトーホールディン グス
(株)
、サントリー
発表、パネルディスカッションに登壇します。裏表
ホールディングス
(株)
、野村證券
(株)が企業事例の
紙のお知らせをご覧のうえ、ぜひご参加ください。
28
坂下 多身……一般社団法人日本経済団体連合会
労働政策本部主幹
⃝政府刊行物サービスセンター(霞が関)
※都
合により、書店販売は 4 月号をもちまして終
了とさせていただきます。定期購読、オンライ
ン書店でご利用をお願いします。
25
藤村 博之……法政大学経営大学院
イノベーション・マネジメント研究科教授
★下記の書店・団体でも購入できます。
⃝八重洲ブックセンター本店 ⃝ジ ュンク堂書店(池袋本店、仙台店、新潟
店、名古屋店、福岡店)
★雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサ
ービス」でご注文いただくこともできます。
URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder
検 索
読者の声
募集!
高齢で働く人の体験、企業で
高齢者の人事を担当している
〒261‐8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課)
方 の 体 験 などを 募 集します。
ホームページURL http://www.jeed.or.jp メールアドレス [email protected]
文字量は 400 字〜 1000 字
●発売元 労働調査会
〒170‐0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618
*本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。
(禁無断転載)
程度。また、本誌についての
ご 意 見 もお 待 ちして い ます。
左記宛てに FAX、メールなど
でお寄せください。
2017.1 60
Leaders Talk
No. 21
たかはし・かつのり
さん
会社の根本が変わらない現状
〝要注意職場〟が増えつつある
職 場 が ギス ギスしている 理
﹁リーマン・ショック﹂や﹁東日本大
2 0 0 8 年 1 月 の こ と。 そ の 後、
機 嫌 な 職 場 ﹄が 出 版 さ れ た の が、
由を示唆した高 橋さんの著 書﹃不
︱
高橋克徳
導して﹁働き方改革﹂が進められて
震 災 ﹂が発 生し、現 在は政 府 が主
います。そのなかで、果たして職
場は変化してきたのでしょうか。
高橋 バブル崩壊後の不況で、一
時 期 採 用 が 停 止され たことも あ
り、ある年代がごそっと抜けてい
る企業があります。そして、成果
主義が導入されたこともあり、目
の前の仕事に没頭しなければなら
なくなり、同僚との人間関係が弱
まりました。ところが、企業の業
績は一向に回復せず、報われた感
じがしないので会社に対する不満
は一層募るばかり。こうした閉塞
感を持つ人たちが増えてきた状況
を憂慮し、
﹃不機嫌な職場﹄を執筆
するに至りました。
しかし、本当にそうした職場の
ままでよいのでしょうか。お互い
が頑張っているのに追い詰められ
て、そこから前に進めない。この
61 エルダー
株式会社ジェイフィール代表取締役社長、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授
一橋大学大学院商学研究科修士、慶應義塾
大学大学院政策・メディア研究科博士課程
単位取得退学。野村総合研究所、ワトソン
ワイアットにて、組織・人事コンサルティン
グに従事。その後、組織の感情問題の解決
と組織活力の向上を支援する新会社・ジェ
イフィールの設立に参画。
『不機嫌な職場』
をはじめ、企業革新やマネジメント、リー
ダーシップに関する著書多数。
高橋さんは、著書を通じた情
報発信にも力を入れている
高橋 職場には大きく4つのタイ
プがあると考えています。職場内
向が見られますか。
知恵がないので、管理職もどんど
いでしょうか。閉塞感を打開する
それは結局、会社のあり方や根
幹が何も変わってないからではな
浸透していないように思います。
場のなかでは、その変化はあまり
よ う ﹄とする 変 化です。ただ、職
す。それは﹃ 絆 や 仲 間 を大 切にし
持 ち に 変 化 が あったのは 事 実 で
その後、リーマン・ショックや
東日本大震災があり、日本人の気
いている人たちに届けました。
けるのか﹂という メッセー ジを 働
本では﹁こんな 職 場 をいつまで 続
年先、
層 や 管 理 職 層 に 対 し て、
﹁なぜ
逃 げ きり 世 代 〟といわれる 経 営 者
きがもっと必要です。ところが、
〝
社会全体で働き方を変えていく動
職場環境が変わり、世界中がつ
な がって 仕 事 を す る 時 代 な の で、
きたのが現状だと思います。
を期待していない人たちが増えて
せ、職場に対してそれ以上のこと
社 がすべてではない﹂といい聞 か
社生活に不満を持ちながらも、
﹁会
方が浸透していることもあり、会
ワーク・ライフ・バランスの考え
てしまっている状態です。最近は、
要注意職場は、閉塞感で満たさ
れていて、なかば職場全体が諦め
多いように感じます。
要注意職場に移行している職場が
場 〟です。最 近は、快 適 職 場 から
と段取りをつけていく力を身に着
らいろんな情報を得ながらきちん
のすごくいい効果があったという
合わせて、海外展開を任せたらも
した。高齢社員と若い社員を組み
をして、多様な経験を積んできま
高橋 高度成長期に活躍した世代
は、自分でいろいろなチャレンジ
たしていけばよいのでしょうか。
は高齢社員はどのような役割を果
有する機会を提供するためです。
いの感情を出し合い、考え方を共
に、対話する場を意図的につくり
私 は、企 業 向 け に〝 ご 機 嫌 な 職
場づくり 運動〟を展 開し、定期的
︱
いまの職場にはどのような傾
年先をみすえて会社を残
員が不満を抱えています。
いいけど活力がない〝快適な職場〟
ることができますか。
職場を活発にしていくために
そ う し た 関 係 を 築 く う え で、
し、高齢者が活き活きと働ける職
高橋 企業はシニア向けの研修に
もっと力を入れるべきです。ただ
ですか。
企業はどのような取組みをすべき
︱
くことができるようになります。
け、補完的な関係で仕事をしてい
例もあります。若い社員はそこか
︱
退職する最後の日まで
活き活きと働ける職場を
出しています。対話を通して、互
でよい感情が交流している〝ご機
そ う と し な かったのか ﹂と 若い社
ん追い詰められています。
嫌 職 場 〟が 3 割 く ら い あ り ま す。
ま た、 よ い 感 情 が そ こ そ こ あ り、
が2割ほど。さらに、よい感情が
高橋 まずは、それぞれの世代や
人によって大切なものが異なるこ
その不満はどうすれば解消す
多少はあるものの、悪い感情が表
様な職場をうまく結び付けるには
何よりも対話が重要です。
とを理解し合うことです。その多
全に壊 れかけている〝 不 機 嫌 な職
面 化 しつつ あ る〝 要 注 意 職 場 〟が
︱
10
4割。そして、残りの1割弱が完
悪い感情はあまりなく、居心地は
20
2017.1 62
来 ど う するのか﹂といって、高 齢
意 味 が あ り ま せ ん。
﹁ あ なたは将
場にすることを前提にしなければ
できるようになります。
することで、周囲のために行動が
必要とされることの大切さを理解
自分が居場所を失わず、周囲から
よりよい行動が生まれます。
場 の 大 き なエ ネ ル ギ ー に な る し、
んなでつくっていくほうがより職
りが自発的になっている状態をみ
働いている人たちが行動を起こ
せるような機会を企業がもっとつ
くり出すことで、高齢者が職場で
間のコラボレーションや、多くの世
活躍する機会も増えますし、世代
が増えていくなかで、企業の持続
代が集まることで生まれるイノベ
今後ますます、職場に高齢者
可能性を考えるうえでも、モチベー
︱
世代間の協力を積極的に進め
高齢社員が職場の活力剤に
社員を追い込むのではなく、同じ
職場の仲間たちとどう働いていく
のかを考えていく機会にしなけれ
ばなりません。退職する最後の日
まで必要とされ、働き続けられる
高齢社員自身がモチベーショ
ようになる支援が必要です。
︱
高 橋 ﹁ 自 分のなかにある 原 動 力
は何か﹂を問いかけるタイミング
れば成長する時代は終わりまし
高橋 昔のように企業が支援しな
くても、働く人一人ひとりが頑張
要なテーマになりそうですね。
れからを考えるうえでも非常に重
高齢社員が活躍するような職
ーションが起きていくと思います。
は、若いうちから少しずつ作った
た。知恵を出し合わないとうまく
高橋 最近、あまり明るい企業の
ニュースを見ませんが、
﹁高齢社員
︱
ほうがいいと思います。その原動
進まない時代になっています。そ
が職場で活躍することで盛り上が
取組みは必要ではないでしょうか。
力 に は 3つ の ポ イ ン ト が あ って、
こに取り組まない組織は、結局自
っている﹂という話題が広がれば、
ションを維持してもらえるような
1つ目は、世の中に対する正義感
分の成果のためにしか頑張れない
若い世代にも刺激を与えてくれる
どのような準備が必要でしょうか。
や 義 憤 の よ う な 思 い を 持つこ と。
ので成果が出なければ諦めてしま
力剤となって若者たちに漂ってい
と思います。高齢社員が職場の活
ンを維持しながら働き続けるには、
2つ目は夢とか好奇心。そして3
できることはないかという自発性
います。ほかの人のために自分が
楽しいと思える仕事は何か。これ
場内に波及していきます。
を育てることで、その自発性は職
からの日本企業は明るさを取り戻
る閉塞感を打ち破らないと、これ
場を作れるかどうかが、日本のこ
ある原動力は何か。本当の意味で
つ目は使命感です。自分のなかに
らはいきなり出てくるものでもあ
高齢社員が頑張っているから、自
撮影/福田栄夫
聞き手・文/労働ジャーナリスト吉田大樹
せないのではないかと思います。
原 動 力が持てる職 場にするに
は、相互支援の仕組みが必要です。
分も頑 張ろう﹂という 雰囲気にし
りません。
個々を孤立させずに、相互補完し
て、気がついたら職 場の一人ひと
なかなか自発的になれない人も
なかにはいると思いますが、
﹁あの
合うことが組織力を向上させます。
63 エルダー
株式会社ジェイフィール代表取締役社長、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授
高橋克徳 さん
Leaders Talk
元気で長く働き続けるためには、中高年から食事に気をつけることが大切です。
みなさんもつくってみませんか?
た い
鯛のかぶら鍋
第 21 回
1人あたりのカロリー 329 kcal
新年とをそ迎え、祝い膳に向かっ
てお 蘇をいただくと、改まっ
た気分になります。寒さが厳し
くなると、ひきこもりがちにな
りますが、正月には初詣や恵方
参 り と 外 出 の 機 会 も 多 く な り、
適度な運動にもなって食欲もわ
いてきます。
ねぎ(ねぎの青い部分を10cm 程度に寸切りにし、表
面に焼き目を入れる)
、しょうが 10g を加え、40 分
た
ほど焚く。
③ ②のだし汁 600cc に塩、酒、しょうゆを加えて味を調
え、水溶き片栗粉 15㏄、すりごまを溶き入れる。
④ 鯛の切り身は3cm ほど、蕪は薄切りにし、椎茸は石
突きを取る。人参は1cm ほどの厚さに切る。豆腐は
塩………………… 小さじ1/3 杯
(2g)
柚子胡椒………… 適量
い冬の料理では、鯛の旨味
寒
かぶ
を蕪にじっくりと含ませ、鯛と
スターでこんがりと焼く(180 ∼ 200℃で15 分程度)
。
② 鍋に水 1000cc、昆布10cm、①を入れ(写真)
、焼き
酒………………… 大さじ 3 杯
(45cc)
水溶き片栗粉…… 15 cc
ともにおいしくいただくという
濃口しょうゆ…… 大さじ 5 1/3 杯
(80cc)
鯛と蕪の組み合わせが定番です。
① 鯛のアラに薄く塩を振り、2時間ほど置き、オーブントー
豆腐…………1/3丁(100g) ごま…………適量
〔調味料〕
今回は、お正月に家族で集まり
昆布…………10g(10cm)
召し上がれるよう、鍋に仕立て
しょうが……10g
長ねぎ………1 本(100g)
てみました。
蕪……………3 個(300g)
しょう しょう
鯛の切り身…6 切れ
(250g) 春菊…………50g
鯛のアラ……適量
人参…………20g
鯛はカリウムやカルシウムが
こつ そ
豊富で、高血圧、骨粗鬆 症を防
椎茸…………2 枚(30g)
ぎます。蕪には消化酵素のアミ
ラーゼが含まれており、お正月
〔材料(2 人分)
〕
で疲れた胃を助けてくれます。
鯛のアラからとった濃厚
なだし汁は、ご飯を加えて、
溶き卵と三つ葉でとじた雑
炊にしてもとても美味しく
召し上がれます。お鍋のシ
メにぜひ、おすすめです!
おめでたいお正月は鯛と蕪で温まりましょう!
②
3cm ほどに切り、春菊は適当な長さに切る。
⑤ ③のだし汁に④を入れ、煮えたら柚子胡椒を溶き入
レシピ・料理制作/「長峰」店主 長島 博、料理撮影/福田栄夫
れる。
長島 博 ( ながしま・ひろし )
1 9 4 6 年生まれ。八彩懐石
「長 峰 」店主。江戸の名工、
現代の名工ほか受賞。2015
年 2 月より「日本食普及の
親善大使」としても活躍。
2017.1 64
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課
所在地等一覧
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害
者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受
平成29年1月1日現在
付、啓発等)
を実施しています。
名称
所在地
電話番号(代表)
北海道支部高齢・障害者業務課
〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351
青森支部高齢・障害者業務課
〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内
017-721-2125
岩手支部高齢・障害者業務課
〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階
019-654-2081
宮城支部高齢・障害者業務課
〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内
022-361-6288
秋田支部高齢・障害者業務課
〒010-0951 秋田市山王3-1-7 東カンビル3階
018-883-3610
山形支部高齢・障害者業務課
〒990-2161 山形市大字漆山1954 山形職業能力開発促進センター内
023-674-9567
福島支部高齢・障害者業務課
〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内
024-526-1510
茨城支部高齢・障害者業務課
〒310-0803 水戸市城南1-1-6 サザン水戸ビル7階
029-300-1215
栃木支部高齢・障害者業務課
〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内
028-650-6226
群馬支部高齢・障害者業務課
〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階
027-287-1511
埼玉支部高齢・障害者業務課
〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内
048-813-1112
千葉支部高齢・障害者業務課
〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階
043-204-2901
東京支部高齢・障害者業務課
〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階
東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〃 〃 03-5638-2794
03-5638-2284
神奈川支部高齢・障害者業務課
〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内
045-360-6010
新潟支部高齢・障害者業務課
〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階
025-226-6011
富山支部高齢・障害者業務課
〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内
0766-26-1881
石川支部高齢・障害者業務課
〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内
076-267-6001
福井支部高齢・障害者業務課
〒910-0005 福井市大手2-7-15 明治安田生命福井ビル10階
0776-22-5560
山梨支部高齢・障害者業務課
〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内
055-242-3723
長野支部高齢・障害者業務課
〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内
026-258-6001
岐阜支部高齢・障害者業務課
〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-front Ⅱ7階
058-265-5823
静岡支部高齢・障害者業務課
〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内
054-280-3622
愛知支部高齢・障害者業務課
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4-2-28 名古屋第二埼玉ビル4階
052-533-5625
三重支部高齢・障害者業務課
〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階
059-213-9255
滋賀支部高齢・障害者業務課
〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内
077-537-1214
京都支部高齢・障害者業務課
〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内
075-951-7481
大阪支部高齢・障害者業務課
〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内
大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〃 〃 06-7664-0782
06-7664-0722
兵庫支部高齢・障害者業務課
〒650-0023 神戸市中央区栄町通1-2-7 大同生命神戸ビル2階
078-325-1792
奈良支部高齢・障害者業務課
〒630-8122 奈良市三条本町9-21 JR奈良伝宝ビル6階
0742-30-2245
和歌山支部高齢・障害者業務課
〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内
073-462-6900
鳥取支部高齢・障害者業務課
〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内
0857-52-8803
島根支部高齢・障害者業務課
〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内
0852-60-1677
岡山支部高齢・障害者業務課
〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内
086-241-0166
広島支部高齢・障害者業務課
〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内
082-545-7150
山口支部高齢・障害者業務課
〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内
083-995-2050
徳島支部高齢・障害者業務課
〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階
088-611-2388
香川支部高齢・障害者業務課
〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内
087-814-3791
愛媛支部高齢・障害者業務課
〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内
089-905-6780
高知支部高齢・障害者業務課
〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内
088-837-1160
福岡支部高齢・障害者業務課
〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階
092-718-1310
佐賀支部高齢・障害者業務課
〒849-0911 佐賀市兵庫町大字若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内
0952-37-9117
長崎支部高齢・障害者業務課
〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内
0957-35-4721
熊本支部高齢・障害者業務課
〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内
096-249-1888
大分支部高齢・障害者業務課
〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内
097-522-7255
宮崎支部高齢・障害者業務課
〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内
0985-51-1556
鹿児島支部高齢・障害者業務課
〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内
099-813-0132
沖縄支部高齢・障害者業務課
〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階
098-941-3301
65 エルダー
平成28年度
生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム
∼定年引上げ企業に学ぶ∼
2017
1
平成
年
29
月1日発行︵毎月1回1日発行︶
1
世界に類を見ない高齢化が進むなか、高齢者を安定的に雇用することにより、高齢者が
いきいきと働きつつ企業の戦力となるような環境を整えていくことが、きわめて重要な課
題の一つであるといえます。
政府においても「ニッポン一億総活躍プラン」
(平成 28 年 6 月2日閣議決定)や「未来へ
の投資を実現する経済対策」
(平成 28 年 8 月 2 日閣議決定)において、65 歳以降の継続雇用延長
や 65 歳までの定年延長を行う企業などに対する支援が重要なテーマとなっています。
このような背景をふまえ、本シンポジウムでは、
「生涯現役社会」の実現のために、企業におけ
る定年延長等に向けた取組みについて、講演や企業の人事労務担当者からの具体的な企業事例の
紹介、意見交換を行うことで、今後の高齢者雇用の方向性について、みなさまとともに考え、展
望します。
第
巻第
39
号通巻
1
号 ︿発行﹀独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 ︿発売元﹀労働調査会
447
入場
無料
日時
平成 29 年 1 月 25 日(水)
13:00∼16:00(開場12:30)
会場
品川 THE GRAND HALL
(東京都港区港南 2 - 16 - 4 品川グランドセントラルタワー 3 階)
JR 品川駅 港南口から徒歩3分
実施内容
・挨拶および講演(当機構より)
・企業事例の発表およびパネルディスカッション
出演者
コーディネーター:東京学芸大学教授 内田 賢 氏
発表企業:サトーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社
野村證券株式会社 (50音順)
先着
350
名
● 申込み方法 ●
①参加者のお名前(ふりがな)、②会社名、③役職をご記入のうえ、平成 29 年 1 月 20 日(金)
までに参加申込専用アドレス([email protected])あてにメールをお送りください(※
②、③は企業関係者の方のみご記入ください)。折り返し、お申込み受付確認のメールをお送り
いたします(土日祝日など休日の場合や混雑状況により、ご連絡が遅くなる場合があります)。
なお、シンポジウム申込みによりいただいた個人情報については、本シンポジウム実施のた
めのみに利用させていただきます。利用目的の範囲内で適切に扱うものとし、法令で定められ
た場合を除き、第三者には提供いたしません。
定価︵本体458円+税︶
● お問合せ先 ●
独立行政法人高齢 ・ 障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課
TEL 043-297-9527 / FAX 043-297-9550 / http://www.jeed.or.jp
主催/独立行政法人高齢 ・ 障害・求職者雇用支援機構
後援/厚生労働省