1 (参考1G)温度計の種類 1次温度計: 熱力学温度そのものの測定が

2017 年 1 月 8 日
戸田昭彦
(参考1G)温度計の種類
1次温度計: 熱力学温度そのものの測定が可能な温度計。
1.定積気体温度計
一定体積に保たれた気体の圧力と熱力学温度との関係を用いる。
nR
例)理想気体の状態方程式 p =
T
V
∆p100
∆p0
定積
気体
定積
気体
液体
液体
氷水
沸騰水
2.音響気体温度計
音速と熱力学温度との関係を用いる。
KS 1 / 2
γRT 1 / 2
) =(
)
ρ
M
nM
∵ 分子量 M の気体について,密度 ρ =
V
γ
また,断熱変化では pV = A (定数) なので,
例)理想気体( pV = nRT )の音速 V = (
体積弾性率 KS = −V (
∂p
d (AV − γ )
) S = −V
= γ AV − γ = γp
∂V
dV
ただし,比熱比 γ (=
⇒ V =(
5
単原子気体)
3
V
RT 1 / 2
γp)1 / 2 = ( γ
)
nM
M
V = (KS / ρ)1 / 2 と同様な関係の例:
自然長 ℓ,係数 k のバネでつながれた
y
質量 m のおもりを伝わる縦波の速さ V = [k /(m / ℓ)]1 / 2
ただし,m / ℓ は,おもりの線密度
m k
ℓ
1
3.熱雑音温度計(ジョンソンノイズ温度計)
電子の熱運動に起因して抵抗体に生じる熱雑音の強度と熱力学温度との関係を用いる。
抵抗 R で発生する熱雑音電圧 VR は,周波数範囲 ∆f 当たり,次式のように表される。
VR = (4kB TR ∆f )1/ 2
(熱力学温度との関係の定性的な説明) 右図のような回路では,熱雑音
電圧 VR によりキャパシタに電荷が蓄えられる。容量 C のキャパシタのエネ
R
V meas
C
2
ルギーは C (V meas ) /2 と表されるが,エネルギー等配分の法則により,熱
力学温度 T と以下のように関係づけられる。
1
1
kT
E = C (V meas )2 = kBT
⇒
V meas = ( B )1/2
2
2
C
VR
4.放射温度計
物体の放射する電磁波の強さ(エネルギー)と熱力学温度との関係を用いる。
8πhc
1
温度 T の電磁波の分光エネルギー密度 uλ : uλ dλ = 5 hc / λ k T
dλ
B
λ e
−1
→ プランクの法則
ただし, λ : 波長,c : 光速度,h : プランク定数
温度 T の輻射のピーク波長 λ max :
hc
1
≅ 4.965⋯ ⇒ λ max ∝
λ max kB T
T
→ ウィーンの変位則
∞
温度 T の電磁波の全エネルギー密度 u : u = ∫ uλ dλ =
0
8π
(kBT )4 ∝ T 4
15(hc )3
→ シュテファン・ボルツマンの法則
6800 K
5800 K
4800 K
300 K
6000 K
1500 K
300 K
0
-2
-3
10
uλdλ /Jm
3
uλdλ 10 /Jm
-3
2
10
1
-4
10
-6
10
uλmax
-8
10
0
10
0
500
1000
λ /nm
1500
2000
0.1
可視光: 400-700 nm
2
∝(λmax)
-10
2
4
6 8
1
2
4
6 8
λ /µm
10
2
-5
4
6 8
100
2次温度計: 温度と共に変化する物理量について,1次温度計による目盛り付け(校正)をおこなうこ
とで温度計として利用できるもの。
1.電気抵抗の温度変化
q
物質中で電流に寄与する電荷を担う粒子をキャリアーという。
v
キャリアーの電荷 q ,密度 n ,易動度 µ とするとき,抵抗 R ∝ (n q µ)
−1
(a) 金属抵抗温度計 (例)白金抵抗体
金属ではキャリアーは電子で,その数は室温付近ではあまり変化しない。原子の振動や金属中の不
純物に電子が散乱されることにより生じる抵抗は温度の上昇と共に大きくなる(易動度 µ は温度の上
昇と共に低くなる)。室温付近では,抵抗は温度上昇と共にほぼ直線的に増加する。
R t = R 0 [1 + α (t / ℃)]
(b) 半導体抵抗温度計 (例)サーミスタ
半導体ではキャリアーは電子や正孔で,その数(密度 n )は exp[−Q / kB T ] に比例し,温度の上昇と共
に増大する。ここで, Q = Eg / 2 は活性化エネルギーと呼ばれ, Eg は価電子帯と伝導帯のエネルギ
ーギャップ(バンドギヤツプ)である。抵抗は温度の上昇とともに指数関数的に減少する。
R T ∝ exp[ +Q / kB T ]
2.5
3
ゲルマニウム
抵抗の温度依存性
2
1.5
R/
Rt/R0
2.0
1.0
1
0.5
-200
0
200
t/
0
400
20
40
t/
60
80
2.熱電対温度計
異なる種類の金属線の両端をつなぎ両接点に温度差を与えると、起電力が生じる(ゼーベック効果)。
そこで,接点の一端(冷接点)の温度が分かれば,起電力の値から他端の温度が分かる。
高温
低温
50
起電⼒ V /mV
V ( ∆T )
V ( ∆T )
40
30
20
10
0
-10
測温接点
K 熱電対の起電力
クロメルーアルメル
冷接点=0℃
冷接点
0
400
t /℃
3
800
1200
(参考) 音波の速さ:
音波とは,圧力と変位速度の振動が位相を揃えて伝搬することでつくられる波動である。
体積V = ∆x∆y∆zの微小立方体について,
∂u
y 軸方向の変位 uy,変位の速度 vy = y とする。
∂t
∂v
A
1
1)Newton の運動方程式 ρV y = − δp A
=
なので,
∂t
V ∆y
∂vy
1 ∂p
=−
圧力場の勾配が変位速度の時間変化をもたらす。
∂t
ρ ∂y
∆y
p
V
z
u
p + δp
u + δu
y
x
V = ∆x ∆y ∆z = A∆y
ρ
∂p
δV
δp
p − p0
→
=−
=−
∂V
V
K
K
∂uy
∂uy
δV ∂uy
V →
δV ≡ δuy A =
∆yA =
=
V
∂y
∂y
∂y
∂
u
∂vy
p − p0 δV
1 ∂p ∂ ∂uy
∂ ∂uy
∴ −
=
= y 
→
−
=
(
)
=
(
)
=
K
V
∂y
K ∂t ∂t ∂y
∂y ∂t
∂y
∂
v
∂p
= − K y 変位速度の勾配が圧力の時間変化をもたらす。
∂t
∂y
2)断熱体積弾性率 K = −V
A
1),2)より,
∂v
∂ ∂vy
1 ∂ ∂p
1 ∂ ∂p
1 ∂
K ∂ ∂vy
(
) =−
( ) =−
( ) =
(K y ) =
(
)
∂t ∂t
ρ ∂t ∂y
ρ ∂y ∂t
ρ ∂y
∂y
ρ ∂y ∂y
∂ ∂p
∂ ∂v
∂ ∂v
∂ 1 ∂p
K ∂ ∂p
( ) = −K ( y ) = − K ( y ) = K (
) =
( )
∂t ∂t
∂t ∂y
∂y ∂t
∂y ρ ∂y
ρ ∂y ∂y
∂ 2vy K ∂ 2vy
 2 =
ρ ∂y 2
 ∂t
→ 波動方程式  2
2
∂ p = K ∂ p
 ∂t2
ρ ∂y 2
補)
波動方程式
2
∂2u
2 ∂ u
=
V
∂t2
∂y 2
音速 V = (
一般解
u(y, t) = f (Vt + y ) + g (Vt − y )
2
∂ 2f
∂ 2f (s)
2 ∂ u
s ≡ Vt + yで, 2 = V 2
=
V
∂t
∂s2
∂y 2
K 1/2
)
ρ
例:平面波
2π
u = A cos[ (Vt − y )]
λ
圧力の振動により密度も振動する。 ρ = ρ0 exp[( p − p0 ) / K ] 疎密波の一例である。
δρ
δV δp
δp
ρ
1
∵ δ(ρV ) = 一定 ⇒ V δρ = −ρδV ⇒
=−
=
⇒ δ ln ρ =
⇒ ln( ) = ( p − p0 )
ρ
V
K
K
ρ0
K
4
(参考) ジョンソン熱雑音:
熱雑音による電流を導線に流れる波長 λ ,振動数 f ,速さ v の交流の波と捉える。ただし, λf = v 。
右図のように,1対の抵抗 R が長さ L の2本の導線に対称に繋がれていると
き,熱雑音による電流も対称であるはずなので,導線上では定在波が立ち,
境界条件 2L / λ = n (n = 1,2,⋯) を満たす。そこで,周波数当たりの定在波
dn
d 2Lf
2L
の数は
=
(
)=
と な り , 周 波 数 範 囲 ∆f の 定 在 波 の 数 は
df df v
v
(
R
R
dn
2L
)∆f =
∆f と表される。
df
v
一方で,1つの定在波当たりの平均エネルギーは,エネルギー等配分の法則より,電波と磁場の2
つ分で kB T となる。
以上より,エネルギーU が以下となる。
2L
U = kBT ( ∆f ) = 2L kBT ∆f
v
v
定在波は1つの導線の両側にある2つの抵抗から熱雑音により供給されるエネルギーによって維持
される。ただし,熱平衡にあるので総電流は差し引きゼロである。そこで,1つの抵抗から単位時間当
たりに供給されるエネルギー,すなわち電力量 P が以下のように表される。
P = 1 v U = 1 v ( 2 kB T∆f ) = kB T ∆f
2 L 2 v
電力量は以下のようにも表されることから,ジョンソン熱雑音の表式が得られる。
P = I2 R = (
V 2
1
V2
) R=
2R
4R
∴
V 2 = 4RkB T ∆f
(文献) H. Nyquist, Phys. Rev. 32, 110 (1928).
補) 考え方としては下記の(エネルギーが等配分された)電磁波の黒体輻射の1次元版ともいえる。
5
(参考) プランクの法則:
温度 T に保たれた空洞内で熱平衡にある輻射光(電磁波)を考える。これを黒体輻射という。上のジ
ョンソン熱雑音の場合と同様に,輻射の熱平衡を長さ L の立方体内に電磁波の定在波が立っている
状況と捉える。このとき,周波数範囲 dν の定在波の数は, (2L / c)3(4 πν2dν /8)2 = 8π(L / c)3 ν2dν と
表される。ただし, c は光速度であり,定在波の総数を勘定する必要があるので,最初の項は周波数
空間の単位体積当たりの定在波の数,次の項が周波数(ν x , ν y , ν z ) 空間で(半径 ν の球の表面積)
× dν ÷ 8( ν x , ν y , νz が全て正の象限),最後の2は偏光の数である。 ε(ν) を周波数 ν の定在波のもつエ
ネルギーとすると,空洞の単位体積当たりのエネルギー密度 u は, udν = ε(ν)(8πν2 / c 3 )dν となる。
(A) ボルツマン分布: 温度 T の熱源に接触している系が熱エネルギー ε を受け取り,状態数 WS の
状態にあるとき,その確率 P は全系のエントロピー変化 ∆Stot から以下のように表される。
ε
W
∆S
ε
+ kB ln WS ∴ P ∝ tot
= exp[ tot ] = exp[−
]WS
0
T
Wtot
kB
kBT
ε
ε
すなわち, P dε = exp[−
] Ω(ε)dε / ( ∫ exp[−
] Ω(ε)dε) となる。ただし, Ω(ε)dε はエネルギーが
kBT
kBT
∆Stot = ∆SR + SS = −
ε ∼ ε + dε にある状態の数である。そこで,平均のエネルギー ε は,以下となる。
ε = ( ∫ ε exp[−
ε
ε
] Ω(ε)dε) / ( ∫ exp[−
] Ω(ε)dε)
kB T
kB T
(B) プランクによるエネルギー量子化の原理: 微視的な状態が取り得るエネルギーは離散的
ε = nhν (n = 0,1,2,⋯) である。ただし,プランク定数 h ≅ 6.626 × 10-34 J s。
1)上式の ε を求める積分は,取り得る全ての状態に関する和として以下のように表される。ただし,
エネルギー ε = nhν の各々の状態は,特定の1つの状態なので WS = 1 とする。
∞
ε = (∑ n=0 nhν exp[−
ここで ∑ exp[ −
∞
nhν
nhν
]) / (∑ n =0 exp[−
])
kB T
kB T
∂
nhν
hν
] = 1 /(1 − exp[ −
]) ,さらに (∑ exp[−nx]) = −∑ n exp[−nx] なので,
kB T
kB T
∂x
nhν
hν
hν
B
B
B
∑ n exp[− k T ] = exp[− k T ] / (1 − exp[− k T ])
ε = hν(∑ n exp[−
2
となり,結局,以下となる。
nhν
nhν
hν
]) / (∑ exp[−
]) =
kB T
kB T
exp[hν / kB T ] − 1
2)温度 T の熱源と熱平衡にある共鳴子が,振動数 ν の電磁波を発して,この輻射場をつくる場合を
考えることでも同様の結論に至る。 M 個の共鳴子からなる系が熱源から総エネルギー U を受け取り,
状態数 W の状態にあるとする。上記1)と同様に,エネルギー ε にある各共鳴子をそれぞれ1つの状
態とすると, U = Nhν = ε M を M 個の共鳴子に配分する分け方の総数が W となる。 M , N ≫ 1 であ
り,スターリングの近似式 ln n ! ≃ n(ln n − 1) を用いることで,
W=
(N + M − 1)!
N !(M − 1)!
∴ ln W =
S
∼ (N + M ) ln( N + M ) − N ln N − M ln M
kB
6
ε
ε
ε
ε
S
N
N
N N
1 ∂S
= ( + 1)ln( + 1) −
ln
=(
+ 1) ln(
+ 1) −
ln
であり, =
から
kBM
M
M
M M
T ∂U
hν
hν
hν hν
1
1 ∂S
1 ∂S
1
hν
hν
=
=
=
ln(1 +
) となり,整理すると ε =
kBT kB ∂U kBM ∂ ε
ε
exp[hν / kBT ] − 1
hν
なお上式は,エントロピー S が < ε > / ν の関数となることを意味している。共鳴子のモデルとなる調和
振動子に相当する振り子の単振動を例にとるとき,断熱下(エネルギーの散逸なし)で振り子の長さを
準静的に変える仕事を行うと,エネルギー ε と振動数 ν が共に変化し,比 ε / ν が一定に保たれる(断
熱不変量となる)ことが示される。 そこで,熱の出入りにより S と ε / ν が共に変化する,すなわち S が
ε / ν の関数となるのは妥当であろう。共鳴子の ε が量子化されるとき,その単位が ν に比例する
( ε = nhν )ことを意味している。
(*参考) 朝永振一郎 「量子力学 I」 みすず書房(ISBN:4622025515)
3)上記2)の共鳴子の集団についてのボルツマン分布から平均エネルギーを直接計算することでも,
以下の関係が成り立つことが確認できる。
U = hνN = hν∑ i =1 ni について,
U
hν
M
hν
M
PU ∝ W exp[−
n ] = W ∏ i =1 exp[−
ni ]
] = W exp[−
∑
i =1 i
kB T
kBT
kB T
M
∑
∑
∞
W ∏ i =1 exp[−
M
N =0
∞
hν
M
hν
∞
ni ] = ∏ i =1 (∑ n = 0 exp[−
ni ])
i
kB T
kB T
U W ∏ i =1 exp[−
M
N =0
∞
hν
hν
M
hν
∞
∞
M
ni ] = ∑ j =1 (∑ n = 0 hνnj exp[−
nj ])∏ i ≠ j (∑ n = 0 exp[−
ni ])
j
i
kBT
kBT
kBT
U = ∑ N = 0 U W ∏ i =1 exp[ −
M
∞
= ∑ j =1 (∑ n
M
j
hν
M
hν
∞
ni ] / ∑ N = 0 W ∏ i =1 exp[ −
ni ]
kB T
kB T
hνnj exp[−
=0
∞
hν
hν
∞
M
nj ]) / (∑ n = 0 exp[−
nj ]) = ∑ j =1 ε = M ε
j
kBT
kB T
ただし, ε = (∑ n = 0 hνn exp[−
なお,
hν
hν
∞
hν
n]) / (∑ n = 0 exp[−
n]) =
kBT
kB T
exp[hν / kBT ] − 1
hν
≪ 1 のとき, ε ≈ kBT となり,エネルギー等配分の法則を表す。
kBT
以上より ε(ν) = ε =
hν
であり,温度 T の電磁波の分光エネルギー密度に関するプラ
exp[hν / kB T ] − 1
ンクの法則の表式が以下のように得られる。
uν dν = ε(ν)8π
8πhν3
1
ν2
dν =
dν
3
3
c
c
exp[hν / kB T ] − 1
あるいは, λν = c から, dν = −(c / λ2 )dλ なので,
uλ dλ =
8πhc
1
dλ
5
λ exp[hc / λ kB T ] − 1
ただし,光速度 c = 299,792,458 m s-1。
7
温度 T の輻射のピーク波長 λ max について,
d 1
1 duλ
1
1
ehc / λ kB T
+ hc λ −7
( 5
) = −5λ −6
=
8πhc dλ
dλ λ ehc / λ kB T − 1
(ehc / λ kB T − 1)2
ehc / λ kB T − 1 kB T
=
λ −6
ehc / λ kB T
そこで,x ≡
ehc / λ kB T − 5)
( hc
− 1 λ kB T ehc / λ kB T − 1
duλ
= 0 となる。
dλ
λ max で
x
hc
として,
= 5 から,x = 4.965⋯ (定数)
λ maxkB T
1 − e−x
1
∴ λ max = hc ∝
ただし, hc ≅ 2.898 × 10−3 Km
xkB T
T
xkB
温度 T の電磁波の全エネルギー密度 u について,
∞
8πh ∞
1
u = ∫ uν dν = 3 ∫ ν3
dν
/
k
0
0
h
ν
BT − 1
c
e
1
ehν / kB T − 1
∞
∫0 ν
u=
=
1
e
1 − e −hν / kB T
nh
−
ν
3 e kB T dν
k T
=3 B
nh
∞
∫0
− hν
kB T
= (1 + e
nh
−
ν
kB T
2
ν e
− hν
kB T
+e
−2 hν
kB T
⋯) e
− hν
kB T
=e
− hν
kB T
+e
− 2 hν
kB T
+e
−3 hν
kB T
⋯
nh
−
ν
∞
k T
k T
dν = 6 ( B )2 ∫ ν e kB T dν = 6 ( B )4
0
nh
nh
k T
8πh ∞ 3
1
8πh ∞
48π
8 π5
4
(
)
(
)
(kBT )4
dν = 3 ∑ n =1 6 ( B )4 =
k
T
ς
4
=
ν
B
∫
3
3
/
k
T
0
3
h
ν
B
nh
c
c
(hc )
15(hc )
−1
e
∞
ただし,リーマンゼータ関数 ς(4) ≡ ∑ n =1
1
π4
=
n 4 90
なお,シュテファン・ボルツマンの法則は,放射発散度(単位面積の放射源から単位時間当たりに放
射されるエネルギー) M e に関する法則であり, M e = (c / 4)u = (2π5kB4 / 15h3c2 ) T 4 = σ T 4 と表される。
ここで, σ はシュテファン・ボルツマン定数であり,
2π5kB4
≅ 5.670 × 10−8 Wm− 2K−4
3 2
15h c
π / 2 2π
c
sin θ dθ dϕ c 1
c
係数 は ∫ ∫ c cos θ
= [− cos 2θ ]0π / 2 = による。
θ=
0
ϕ=
0
4
4π
4 2
4
ただし, θ は頂角, ϕ は方位角であり, c cos θ は右図のように頂角 θ の方向
σ=
c cos θ
θ
c
に単位表面から単位時間当たりに放射される電磁波を含む体積となる。また,電磁場が等方的であ
れば,電磁波は全ての方向に一様に放射されているので,頂角 θ ∼ θ + dθ ,方位角 ϕ ∼ ϕ + dϕ を向
く電磁波の割合は sin θ dθ dϕ /(4π) となる。以上より,単位体積当たりの電磁場のエネルギー u を c / 4
倍することで M e が得られる。
8
(分光放射発散度 M eλ の例)
下図は,太陽,グラフェンナノ構造,宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の分光放射発散度である。
CMBは自然界で最も理想的にプランクの法則に従う輻射スペクトルをもつとされている。ビッグバン
から約40万年後に約3千Kで物質と熱平衡にあった輻射の温度が,「宇宙が晴れ上がる」ことで輻射
と物質の相互作用がなくなり,宇宙膨張によってそのまま低下した現在の状態(2.726 K)を観測して
いる。
グラフェンナノ構造も同様に理想的な輻射を放出する物質として注目されている。
太陽からの輻射は光球からの輻射を観測していることになるが,波長(周波数)により吸収率が異な
り,見ている深さが異なることになる。光球では深部になるほど温度が高くなるが,長波長(短波長)の
電磁波は,より深(浅)い層から届いている。放射発散度に関するシュテファン・ボルツマンの法則
M e = σT 4 から算出された光球の平均温度が太陽表面の実効温度5,777 Kである。太陽定数と呼ば
れる地球に届く輻射エネルギー ISC = 1,367 W m-2,太陽までの平均距離 r0 = 149,597,890 km,太陽
の平均半径 rs = 695,980 kmから, ISC / M e = (rS / r0 )2 を用いて逆算されている。
(文献) http://aether.lbl.gov/www/projects/cobe/
Matsumoto T, Koizumi T, Kawakami Y, Okamoto K, Tomita M, Optics Express 21 (2013) 30964
Iqbal M, "An Introduction to Solar Radiation", Academic Press 1983, Ch. 3
10
1
2
10
10
3
4
10
8
10
10
5
Sun
Planck@5777 K
graphene@1600 K
[email protected] K
10-9
7
10
-10
Meλ dλ /Wm
-2
10
6
10
-11
10
105
-12
10
4
10
10-13
0.1
10-5
γ線
1
10-4
10-3
X線
10-2
10
100
λ /µm
10-1
100
光
紫 可
外 視
9
101
102
1000
103
104 μm
電波
赤
外
マイクロ波
(プランクの法則と量子性・波動性について)
共鳴子のエネルギーの平均 ε の以下の表式から,
εν = ε =
∑
nhν
]
kB T
hν
=
∞
nhν
hν
exp[
]−1
∑ n =0 exp[− k T ]
k
T
B
B
∞
n =0
(nhν) exp[−
熱容量に相当する ε ν の温度微分 cν が2つの項の和として表されることが以下のように分かる。
cν
1 ∂εν hν hν / kB T
hν hν / kB T
hν 2 hν / kB T
=
=
− 1) −2
e
=(
− 1) −2 ehν / kB T
(e
) (e
2
kB kB ∂T
kB
kB T
kBT
ε
hν 2 hν / kB T
hνεν
=(
− 1) −1 + (ehν / kB T − 1) −2 ] =
+ ( ν )2
) [(e
2
kB T
kBT
(kBT )
一方で, cν はエネルギーの揺らぎ(平均2乗誤差) (∆ε)2 に相当することが以下のように分かる。
∞
∞
nhν
nhν
nhν
nhν
nhν
exp[−
] ∑ n = 0 nhν exp[−
] ∑ n =0
exp[−
]
2
2
cν
1 ∂εν
1
kB T
kB T
kBT
kB T
kB T
=
= [
−
]
∞
∞
nhν
nhν 2
kB kB ∂T kB
(∑ n = 0 exp[ −
])
∑ n =0 exp[− k T ]
kBT
B
∞
∞
nhν
nhν
(nhν)2 exp[−
] ∑ n = 0 (nhν) exp[−
]
∑
n =0
1
kB T
kBT 2
=
−(
[
) ]
∞
∞
nhν
nhν
(kB T )2
∑ n =0 exp[− k T ]
∑ n =0 exp[− k T ]
B
B
1
1
1
2
=
( ε2 − ε ) =
(ε − ε )2 =
(∆ε)2
(kB T )2
(kBT )2
(kB T )2
∑
補) ε = ( ∫ ε exp[−
以上より, (∆ε)2 = kB T 2
∞
n =0
nhν
ε
ε
] Ω(ε)dε) / ( ∫ exp[−
] Ω(ε)dε) でも同様の関係が得られる。
kB T
kB T
∂εν
= h νε ν + ε ν 2
∂T
このうち第1項は,低温あるいは高周波数のとき,エネルギーの量子性を意味する。
∂ε
hν
≫ 1 ε ν ∼ hν e − hν / kB T
(∆ε)2 = kB T 2 ν = (hν)2 e − hν / kB T = hνεν
kBT
∂T
すなわち, ε ∼ hν e − hν / kB T / (1 + e − hν / kB T ) , (∆ε)2 ∼ (hν)2 e − hν / kB T / (1 + e − hν / kB T ) と表され, hν ( n = 1 )
のエネルギーをもつ光子の場合となっている。
また第2項は,高温あるいは低周波数のとき,エネルギー等配分の法則に従う項となり,熱雑音の場
合と同様に,エネルギーが等配分された定在波の場合となる。
∂ε
hν
≪ 1 ε ν ∼ kBT
(∆ε)2 = kB T 2 ν = (kBT )2 = εν 2
kBT
∂T
統計的に独立な性質をもつ複数の誤差があるとき,各々の誤差の2乗平均の積算として全体の誤差
の2乗平均が決まることが知られている。そこで上の関係は, ε の平均2乗誤差として表されるエネル
ギーの揺らぎが,量子化されたエネルギーの揺らぎの項と,量子化されない波動エネルギーの揺ら
ぎの項の和として表されていると解釈することができる。
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